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2019.07.02

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従業員満足度調査(ES調査)

従業員満足度従業員満足度(ES)を高めるには-仕事の内容や性質-

みなさんも、自分の体験として仕事や会社への満足度が上がったり、下がったりした経験があると思います。仕事が楽しくて充実し、もっと頑張ろうと思うことや、仕事が嫌で日曜日の夜が憂鬱になり、会社を辞めようかなと悩んだりします。

では、従業員満足度は何が原因で上がったり下がったりするのでしょうか。
お金でしょうか?確かに一理ありそうですがそれだけではないような気がします。やりがい?よく聞きますがやりがいとは何でしょうか?

さまざまな原因を挙げられますが、本シリーズではこれまでの研究成果をひも解き、従業員満足度に影響を与える要因について複数回にわたってご紹介していきます。

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【目次】

  1. 従業員満足度(ES)に影響を与える要因を知る
  2. 従業員満足度調査(ES調査)は組織の健康診断
  3. 従業員満足度に影響を与える要因の分類
  4. 職務特性理論について
    ・5つの職務特性
    ・3つの心理的状態
  5. 動機づけ・衛生要因理論(二要因理論)について
  6. 「仕事の充実化」と「仕事の拡大」の違い
  7. 仕事の役割が従業員満足度に与える影響
    ・「役割の曖昧さ」と「役割の葛藤」
  8. まとめ

1.従業員満足度(ES)に影響を与える要因を知る

従業員満足度に影響を与える要因を知ることは、満足度の低下の予防や、満足度を高める効果的な対策につながります。ちょうど病気の発生メカニズムと同じです。例えばガンや心臓病、脳卒中など成人病発症の原因を知れば、予防できたり治療したりすることができます。

もちろん影響を与える要因は数多くあり、ご紹介し尽くせませんが、貴社の従業員満足度の改善や低下防止に少しでも役立てていただければと思います。 病気の発症と予防・治療の例えを挙げたついでに、少しだけ指摘しておきたい点があります。前回の記事で従業員満足度調査を詳しくご紹介しましたが、まれに従業員満足度調査について誤解されているなと感じることがあります。

それは、調査を実施さえすれば満足度が上がると考えているような節がみられることです。 「調査を毎年実施しているが、なかなか満足度が上がらない、離職が止まらない」といった具合です。当然ながら調査を実施しただけでは満足度が上がることはありません。

 

2.従業員満足度調査(ES調査)は組織の健康診断

従業員満足度調査(ES調査)は、従業員が定期的に受診される健康診断に例えられることがあります。健康診断も受診したからといって健康になるわけではありません。診断結果から心身の健康状態を把握し、悪い箇所が見つかれば、食事に気をつける、運動する、リラックスするなど適切な行動や対策をとってはじめて健康を維持・促進することができます。

従業員満足度調査も同じであり、調査結果から組織の健康状態や課題を把握し、適切な対策をとってはじめて従業員満足度が向上し企業や組織が活性化するのです。

本シリーズでご紹介する従業員満足度へ影響を与える要因は、当然、従業員満足度調査(ES調査)の項目に含まれるべき内容です。従業員満足度調査は、調査によって現状を評価でき、しっかりとした対策を行えるような設計になっていることが理想です。

 

3.従業員満足度に影響を与える要因の分類

従業員満足度は、状況や事情により上がったり下がったりすることから「変数」と捉えることができます。そしてこのような変数に影響を与える要因のことを専門的には『先行要因』と呼びます。

従業員満足度はさまざまな分野で数多くの研究が行われています。「これが満足度に影響しているのではないか」、「あれが不満足につながる要因なのではないか」など、いろいろな仮説が研究者の好奇心をくすぐり研究が行われてきました。それらの研究を整理すると、従業員満足度の先行要因は、働く人の「仕事環境・仕事に関連した要因」と「個人的要因」の2つに大きく分けて理解することができるようです。

仕事環境・仕事に関連した要因とは、例えば従業員がどう扱われているのか、仕事の内容や性質、職場における他の人間との関係、報酬などが含まれます。

個人的な要因とは、文字通り性格や特性、それまでの経験などが含まれます。もちろんそれぞれが単独で影響するだけでなく、両者が相まって従業員満足度に影響を及ぼしていると考えられます。

本記事ではまず、仕事環境・仕事に関連した要因、中でも仕事の内容や性質に関する要因をご紹介します。仕事を通じて自分の内側から沸き起こってくるような満足感やモチベーションは、その強さや継続性から非常に良質なものだとされます。また、給与や賞与、昇進や昇格、働く環境などの外側からの刺激は有限ですが、興味、好奇心、楽しさなどの内側から沸き起こる感情は尽きることがありません。

そのような観点からも、仕事の内容や性質はまずしっかりと押さえていただきたいポイントです。従業員の心をつかみ、満足度やモチベーションを呼び起こす仕事とはどのようなものか? それを知る手がかりを、これまでの研究成果から紹介したいと思います。

 

4.職務特性理論について

仕事の内容や性質を扱った有名な研究に『職務特性理論』があります(Hackman and Oldham 1976, 1980)。

職務特性理論では、高い従業員満足度や強いモチベーション、低い離職率、コンプライアンスの遵守などにつながる仕事の特徴として、「技能の多様性」「タスクの一貫性」「タスクの有意味性」「自律性」「フィードバック」を5つの中核的な職務特性として挙げています。

 

5つの職務特性

1.技能の多様性

仕事に求められる能力や技能の多様性。多様な能力や技能が求められる仕事ほど、自分の仕事が有意義であり価値や重要性を感じる。

 

2.タスクの一貫性

仕事が全体のほんの一部分なのか、ある程度、始めから終わりまで一貫したまとまりのある仕事か。一貫性が高いほど、自分の仕事に意義や価値、重要性を感じる。

 

3.タスクの有意味性

仕事が会社内外の人々に及ぼす影響力の大きさ。影響が大きい仕事ほど、担当者は、自分の仕事は有意義であり、価値があり重要だと感じる。

 

4.自律性

仕事の段取りや進め方を自由に決められる程度。自由に決められる度合いが高い仕事ほど、自分の仕事の結果に個人的に責任があると感じる。

 

5.フィードバック

自分のした仕事がうまくいったのかをどの程度正確に知ることができるか。知ることができる仕事ほど、自分の努力が成果につながっているかを正確に理解できる。

従業員は、自分の仕事にこれらの特性が備わっていると感じられると、「仕事の有意義感」「結果への責任感」「結果についての知識」といった前向きな心理状態に達することができるとされています。

 

3つの心理的状態

1.仕事の有意義感

自分の仕事は有意義であり、価値があり、また重要だと感じる。

2.結果への責任感

自分は、個人的にも自分の仕事の結果に責任があると感じる。

3.結果についての知識

自分の努力が満足すべき結果を生んでいるかどうかについて系統立てて理解している。

 

そして、これらの心理状態が高まることで従業員満足度やモチベーションが高まり、職場の活性化、離職者の減少などの望ましい成果を得ることができるとしています。ただし、図にもあるように従業員が「成長への欲求が弱い」「能力や技術が低い」「環境(賃金、作業条件など)への満足度が低い」場合、職務特性をいくら改善しても効果はないか限定的だとしています。

一般に「仕事にやりがいを感じる」という表現をよく耳にしますが、まさに3つの心理状態が満たされている状況とも捉えられ、「やりがいのある仕事」とは、5つの職務特性を兼ね備えた仕事と理解することもできるのではいないでしょうか。

逆に、仕事の効率性や生産性の向上には、仕事を細分化・単調化し、細かなことまで指揮命令することが有効だと勘違いし、従業員の脱人格化を招いて、満足度やモチベーションを低下させている企業や組織をよく見かけます。

定期的に職務のあり方を見直すとともに、面談などの機会を通じて一人ひとりの状況を把握し、希望や考えを吸い上げて前向きな気持ちややりがいを持てる職務のあり方を模索し続けることが求められます。

 

5.動機づけ・衛生要因理論(二要因理論)

職務特性理論と合わせて理解したいのが、こちらも有名な「動機づけ・衛生要因理論(二要因理論)」です(Herzberg, 1968)。

提唱者のハーズバーグが行った、エンジニアと会計職員200名ほどを対象とした調査において、対象者が仕事上で特に幸福と感じたり不幸と感じたときに、どのようなことが身辺に起こっていたのかを詳しく調べた結果、満足度やモチベーションをもたらす要因と、不満足を生み出す要因は別物だったと報告されています。

つまり、従業員の満足度と不満足度の中身を検討する際は、それぞれ別々に要因を検討する必要があるということです。このときの調査結果をまとめたのが、以下の有名な図です。

この図から読み取れることは、全項目の中で10項目の内「達成」から「昇進」までは、満足の原因となった比率の方が不満足の原因となった比率よりも大きく、「会社の政策と管理」以下は、不満足の原因となった比率の方が満足の原因となった比率よりも大きいということです。

そこでハーズバークは、前者を満足につながる要因として「動機づけ要因」とし、後者を不満足を招く要因として「衛生要因」としています。先にご紹介した職務特性理論と対比すると、5つの職務特性、3つの心理状態が「動機づけ要因」部分を詳しく扱っているものだと理解できます。

この動機づけ・衛生要因理論が示す「満足度は仕事の内容から、不満足度は仕事の環境から」という主張は非常にシンプルかつ明快であり、実社会でも多くの企業や人事担当者が取り入れ参考にしています。

しかし、動機づけ・衛生要因理論には批判が多いことも事実です。その理由として、まず同じ方法で調査した場合でしか検証されないことが挙げられます。また、どうしても図のインパクトに惑わされてしまいますが、右側と左側をそれぞれだけで並び替えると違う事実が見えてきます。

 

右側だけで並べ替えると「満足度は動機づけ要因」からと言うのは適切だと考えられます。 しかし同様に左側だけ並び替えると、不満足度の要因には理論が示すような法則性はなく、 動機づけ要因と衛生要因のいずれからも発生していることが確認できます。つまり、「不満足度は衛生要因から」と言う主張はおかしいと考えられるのです(松井 1982)。

満足度は動機づけ要因から生まれるが、不満足度は動機づけ要因および衛生要因の両方から生まれる。衛生要因は不満の原因にはなるが、満足感の原因にはなりにくいという理解がより適切だと考えられます。

このような批判を踏まえた上でも、動機づけ・衛生要因理論の考え方は役立ちます。動機づけ要因を伸ばして満足度やモチベーションを高め、衛生要因をつぶして不満足を解消する、施策を立案するときはそのような大まかな整理をしておくと便利でしょう。

また、衛生要因が不満足な状態のままで、従業員の満足度やモチベーションを高めることは実際にはむずかしいことも理解しておく必要があります。

一般的に人には一貫性があるため、不満足でありながらモチベーション高く働くことは、短期間ではあり得るかもしれませんが多くの場合は無理な話です。また衛生要因が満たされていないような状態では、さまざまな施策を打っても効果は非常に限定的だと考えられます。

 

6.「仕事の充実化」と「仕事の拡大の違い」

これら両理論からも、仕事の内容や性質は従業員満足度において重要な要因であり、常に適切なあり方を模索することが求められますが、「仕事の充実化(Job enrichment)」と「仕事の拡大(Job enlargement)」の違いも理解しておくと役立ちます(Herzberg, 1968)。

仕事の拡大の例としては、
・やみくもに生産性の向上に挑戦させる。10個作っているところを20個作ることに挑戦させる。
・今の仕事にもう一つ無意味な仕事を付加する。どのように使われるかわからない報告書や入力作業を加える(ある人には意味があるかもしれないが)。
・充実化を図るべき仕事を順番に割り当てる。電話営業をしばらくした後に、メール営業をさせる。
・その仕事で最も困難な部分を取り除き、それほど難しくない仕事を数多くやらせる。システム開発でバグ取りを延々とやらせる。

例からもわかるように、仕事の拡大は「水平的職務負荷」とも呼ばれ、単純に仕事の量や範囲が広がっているだけであり、従業員は一時的にやる気を出して取り組んだとしても長続きするようなものではなく、結局満足度が下がり疲弊してしまいます。

一方で仕事の充実化は「垂直的職務負荷」と呼ばれ、次のような特徴を備えた見直しを言います。
・責任はそのままに、ある程度統制を省く(自由度を高める)。
・仕事に対する個人の責任を増やす。
・個人に完結する自然な仕事単位や範囲を広げる(モジュール、部門、地域など)。
・従業員が行動する際の権限を増やす。
・定期報告を上司経由ではなく本人に直接届ける(顧客の反応、後工程の進捗状況など)。
・経験のない、新しく、より困難な仕事を割り当てる。
・特殊な仕事を割り当て、その仕事のスペシャリストになることを可能にする。

つまり、仕事の充実は単純に仕事そのものが増えたり広がったりすることではなく、責任、自律、判断、学習といったキーワードが含まれており個人の成長につながることが重要なカギと言えます(Herzberg 1968)。

管理職の方々は、部下が仕事を覚え成果を上げるようになると「仕事の報酬は仕事」と言わんばかりにドンドン仕事を任せます。しかし任せ方によっては、部下の従業員満足度が下がり疲れ果ててしまうこともあるため、やる気が高まり成長を促すような対応を心がけることが求められます。

 

7.仕事上の役割が従業員満足度に与える影響

仕事の内容や性質の一側面として「役割」がありますが、仕事上の役割も従業員満足度に影響を与えます。一般的に、役割とは職場において各自に期待される一連の行動と捉えることができます。

通常役割は役職や職位などと関連しますが、必ずしもそれだけとは言えません。当然ながら役職や職位が同じでも違う役割を担っていたり、複数の役割を担っていたり、公式なものだけでなく非公式な役割も担っていたりします。

 

「役割の曖昧さ」と「役割の葛藤」

役割の中でも、従業員満足度への影響で最も研究されているのが「役割の曖昧さ」と「役割の葛藤」です。役割の曖昧さは、従業員が自分の役割や責任をどの程度把握できているかを意味します。自分がどのような役割を求められているのか、自分の責任がどこにあり、どこまでなのかを明確にできないと従業員満足度は低下します。

役割の葛藤は、従業員が自分の役割や責任に関して、会社や周りから実現不可能な要求をされたときに発生します。複数の上司の間で板挟みになったり、時間や予算などから明らかに無理な仕事を抱えたときなどに生じる内的な葛藤と、仕事とプライベートが両立せず、どちらかが犠牲になったりする場合に生じる外的な葛藤があり、共に従業員の不満足度を高めます。

葛藤については少し面白いことが明らかになっています。
それは、男性は女性よりも葛藤と従業員満足度との間の相関係数が高く、葛藤に対してうまく立ち回れない傾向にあるようです。その理由について研究者は、一般的に女性の方が家庭と仕事上での要求されることを上手くさばくことに長けていること、男性の方が仕事と家庭間の葛藤に過敏であること、女性の方が仕事に重きを置いていないことなどを挙げています(Parasuraman, Greenhaus, and Granorose, 1992)。

役割の曖昧さも役割の葛藤も、キーワードとなるのはやはり上司のマネジメント力です。
部下にどのような役割や責任が求められているのかを明確に伝えること、部下の仕事状況を把握し必要な助言やアドバイス、適切な介入を行うことが求められます。

こう指摘すると「なんだ、そんなことならやっているよ!」という声も聞こえてきそうです。しかし、そのタイミングは、人事考課のときや気づいたとき、思い立ったときなど不定期でバラバラなことがほとんどではないでしょうか。
上司と同様に部下も多くの仕事を抱えるなかで、そのようなタイミングだけでは不十分であり、部下の理解や納得が得られないことは容易に想像されます。加えて、現代のような変化の激しい時代は、役割も常に変化します。上司と部下の双方が常にすり合わせをしながら適応していく必要があります。

昨今では「1 on 1(ワン・オン・ワン)」と呼ばれる、上司と部下が毎週など短いスパンで定期的に行うミーティング手法が効果を挙げているように、コミュニケーションのあり方、頻度、柔軟性を見直す必要があります。

 

8.まとめ

従業員満足度に影響を与える要因として、まず仕事の内容や性質に関する要因をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
仕事の内容や性質の重要性をご理解いただけたとともに、高い給与や昇進、素晴らしい環境などを与えれば従業員満足度は向上するといった簡単な問題ではなく、忍耐が求められる課題だということもご理解いただけたのではないでしょうか。

リーダーシップの研究者であるロナルド・ハイフェッツが、企業やリーダーが直面する課題は、「技術的な課題」と「適応を要する課題」とに分けて理解する必要があると指摘しています(Heifetz 1998)。

技術的な課題とは、既にある知識や技術を組み合わせることで、あるいは習うことで解決できる課題を言います。適応を要する課題とは、自分のものの見方・捉え方といった先入観に気づいて、それを変化させたり、新しい見方・捉え方を取り入れて、予測できないなかでも行動してそこから学習したり、新たな課題に対して違った行動をとり学習するというサイクルを通して解決できる課題、つまり変化しながら対応し解決する課題のことを言います。

ハイフェッツは、多くの個人や組織が「適応を要する課題」であるにもかかわらず、「技術的な課題」を解決するやり方で取り組むことがほとんどであり、うまく解決できないジレンマに陥っていると指摘しています。

従業員満足度をめぐる課題もまさに同じです。
ご紹介した内容を振り返ると、仕事の内容や性質に問題がある場合、それは簡単に解決できるような技術的な課題ではなく、常に変化し続けることが求められる適応を要する課題だと捉えられます。

短期に成果が求められ、課題解決志向の強い現代では非常に厄介な課題ですが、多くの企業はそのような課題に覆い尽くされているのではないでしょうか。だからこそ逆に、真剣に、真摯に向き合う企業や個人の従業員満足度やモチベーションは高く、他社が真似のできない強みとなっていくのだと考えられます。

次の記事では、本記事でご紹介しきれなかった「仕事環境・仕事に関連した要因」の続きをご説明します。

 

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