【第3章】エンゲージメントと関連する6つの概念 - 従業員満足度調査・360度評価のリアルワン株式会社 - 人と組織の成長を支援

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2021.04.01

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【第3章】エンゲージメントと関連する6つの概念 

目次

エンゲージメントと関連する6つの概念 

1.従業員満足(job satisfaction)

2.組織コミットメント(organizational commitment)

3.組織市民行動(organizational citizenship behavior)

4.職務関与(job involvement)

5.燃え尽き症候群(バーンアウト)との関係

6.仕事中毒(ワーカホリック)

エンゲージメントにはさまざまな6つの定義が存在し問題点が指摘されています。
特に、ビジネスの世界で使われる従業員エンゲージメントは、既に存在する伝統的な概念との重なりが大きいと指摘されています。

そこで改めて既存の主要な概念を整理し、エンゲージメントと対比して理解を深めます。

1.従業員満足(job satisfaction)

従業員満足、あるいは職務満足の定義として最も多く引用されるものは、おそらくアメリカの心理学者ロックの「個人の仕事への評価や仕事からの経験によってもたらされる喜ばしい、もしくは肯定的な感情」という定義です(Locke, 1976)。

エンゲージメントの定義と対比するとどうでしょうか?

私たちリアルワンのエンゲージメントの定義
思考面、情緒面、行動面の3つの側面において、自己が仕事に対し積極的に関与している状態

シャウフェリらの定義
ポジティブで、達成感に満ち、仕事に関連のある心の状態である活力、熱意、没頭をその特徴とする

定義から、従業員満足が、仕事や組織などについての感情であり、評価・判断的な面が含まれるのに対して、エンゲージメントは、仕事をしている時の自身の気分や感情を示していることがわかります。

また、シャウフェリ教授とバッカー教授によれば「いずれの概念も同様にポジティブな側面を持つが、その心理的な活性化レベルにおいては、エンゲージメントの方が職務満足度よりも高いものとして位置づけられる。

エンゲージメントには活性化(熱心さ、機敏性、興奮、意気高揚)という意味が暗に含まれているのに対し、満足感には飽和(満足、落ち着き、静寂、リラクゼーション)という意味が含まれる」としています(Schaufeli & Bakker, 2010)。

つまり、エンゲージメントの方が、心理的に動的で活発であり、従業員満足の方が、心理的に静的で落ち着きがあるとしています。

2.組織コミットメント(organizational commitment)

個人と組織との関係性で、最も研究される概念に「組織コミットメント」があります。有名な定義を2つ挙げます。

・特定の組織に対する個人の一体感と関与の相対的な強さ(Mowday, 1979)

・組織の目標・規範・価値観の受容、組織のために働きたいという積極的な意欲、組織に留まりたいという強い願望によって特徴づけられる情緒的な愛着(Porter et al., 1974)

いかがでしょうか?組織コミットメントは、会社など組織に対する愛着や、組織との一体感を表していることがわかります。一般的な言葉におきかえれば「愛着感」「愛社精神」「組織に対する思い入れ」といったところでしょうか。

先にシャウフェリ教授とバッカー教授の指摘を紹介しましたが、組織コミットメントは、実務分野の従業員エンゲージメントとの重なりが最も大きい概念の一つです。

内容から「古いワインを新しいボトルに変えただけ」と批判されるのもやむを得ないことかも知れません。

学術分野のエンゲージメントとの対比では、個人の感情の向かう先が違うことがわかります。エンゲージメントは、仕事や役割が対象であるのに対して、組織コミットメントは、会社などの組織が対象になり、両者が決定的に異なるポイントだと言えます。

3.組織市民行動(organizational citizenship behavior)

組織コミットメントとならんで、概念的な重なりが大きいとされるのが、この「組織市民行動」です。

インディアナ大学ケリービジネススクールのデニス・オーガン教授は、組織市民行動を「従業員の行動の中で、正式な職務要件ではないが、それにより組織が効果的に機能することを促進する行動。加えて、強制されたものではなく、正式な給与体系で保証されるものでもない」と定義しています(Organ, 1988)。

組織市民行動という名称は、堅苦しく、普段使いしない言葉ですが、至ってシンプルな内容です。例えば、同僚など他者を助ける行動、勤務態度の誠実さ、不平不満を言わないなどのフェアな姿勢、相手への配慮や尊重、積極的な参加・関与など、正式な仕事ではないけれども、会社や組織の保全、円滑な業務の遂行、業績の向上などにつながるため、望ましいとされる行動です。

実務分野の従業員エンゲージメントは、「組織への自発的な貢献欲求」「主体的な取り組み」などと定義され表現されることも多く、組織市民行動と非常に近い内容だと考えられます。

一方、学術分野のエンゲージメントは、仕事に積極的に関与している状態とされており、全く異なる概念だと捉えられます。例えば、エンゲージしている人が、他者を助ける、勤務態度が真面目である、相手に配慮するといった組織市民行動をとるとは必ずしも言い切れず、両者の関係性は必ずしも強いとは言えないようです。

4.職務関与(job involvement)

人と仕事との関りで古くから研究される概念に「職務関与」があります。

研究分野では、互いに議論や批判を交わすことで研究を洗練し充実させていきますが、エンゲージメントへの大きな批判の一つに、エンゲージメントと職務関与は、概念的に区別できるのかという疑問があります。

職務関与の定義で有名なものを2つほど挙げます。

・人が自分の仕事と心理的にどれほど一体化しているか、もしくは、ある人の総合的な自己イメージにおいて、仕事がどれほどの重要性を占めるかの程度(Lodahl & Kejner, 1965)

・人が従事している自分の仕事に対しての心理的な一体感(同一化)の程度 (Kanungo, 1982)

マスラック教授とライター教授は、エンゲージメントがエネルギー、関与、効力感の3つから成り立つとしています(Maslach & Leiter, 1997)。

シャウフェリ教授らのワーク・エンゲージメントも、活力、熱意、没頭の3つの下位概念から成り立つとしています(Schaufeli et al., 2002)。

単一の概念である職務関与との構造的な違いはありますが、2つを見比べると、やはり概念的な重なりは大きい印象です。

シャウフェリ教授やバッカー教授も、「(職務関与は、)エンゲージメントの構成概念と密接に関連するが、同義というわけではない」といった表現にとどまり、明確に違う概念だとは言い切っていないようです(Schaufeli & Bakker, 2010)。

5.燃え尽き症候群(バーンアウト)との関係

エンゲージメントをより深く理解するには、逆の心理状態である「燃え尽き症候群(バーンアウト)」と対比すると理解が深まるかもしれません。

ワーク・エンゲージメントを提唱したシャウフェリ教授らの研究では、燃え尽き症候群(Burnout)の対局としてエンゲージメントを位置づけました(Schaufeli et al., 2002)。

つまり、働く人々が仕事に対する興味を失い、やる気をなくしてしまうのではなく、仕事にやりがいや楽しみを見出し、イキイキと活動できるようにとの願いが込められた概念です。

燃え尽き症候群のように精神的な病で苦しむ人を通常の状態に戻す(-を0に)だけではなく、健全な状態を維持しより幸せにすることを目的としたポジティブ心理学の系譜が根底にあります。

6.仕事中毒(ワーカホリック)

エンゲージメントについて「仕事への積極的な関与」と説明すると、「“仕事中毒(ワーカホリック)”や“モーレツ社員”に似ている」と勘違いされることがあります。

一見すると同じ概念と考えられてしまうエンゲージメントと仕事中毒ですが、両者の決定的な違いは、仕事中毒の人が他の中毒症状と同じように、「仕事をしなければいけない」といった脅迫的な衝動で働いているのに対して、エンゲージしている人にはそれが見られない点です(Taris et al., 2010)。

つまり、エンゲージしている人が熱心に働くのは、仕事が好き、楽しいなど、積極的でポジティブな動機からであり、仕事中毒の人のように、本人が抵抗できないほど強い脅迫的な衝動からではないのです。

慶應義塾大学総合政策学部の島津明人教授は、「ワーク・エンゲージメントの高い人は、仕事が楽しく、仕事にやりがいを感じ、その仕事が重要だと思い、もっと仕事をしたい(I want to work)と考えています。

ところが、ワーカホリックな人は、(中略)罪悪感や不安を避けるために、仕事をせざるを得ない(I have to work)と考え、リラックスするために仕事をしているのです。」と説明しています。

また、仕事中毒の特徴は、職場や仕事以外の場面でも顕著です。仕事中毒の人は常に仕事のことで頭がいっぱいで、仕事をしていないと罪悪感や不安感を覚えるため心が休まらず、真にリラックスしづらいとされます。

なお、エンゲージメントは、モチベーション研究に端を発した概念と紹介しましたが、まさにモチベーション理論の中核にある「内発的モチベーション」とのかかわりが深いことがわかります。

仕事そのものから得られる内発的モチベーションを源泉に楽しんで働き、その結果、仕事に積極的に関与している状態(エンゲージ)がもたらされると考えられます。

続編⇒ 【第4章】リアルワンのエンゲージメント

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