2021.02.01
シリーズ
Work & Life~それぞれのStory~
COLUMN
従業員満足度調査(ES調査)
ドキンさんのStory
夫の失踪と離婚。どん底に落ちた専業主婦が美容の世界でやりがいを見つけサロンオーナーへ
多様な価値観を尊重するダイバーシティ&インクルージョンが重視される昨今、職業人生(ワークライフ)における価値観も一様ではなくなってきています。また、コロナ禍で将来への不安を感じている方も少なくないでしょう。
このシリーズでは、将来のキャリアに迷っている20代・30代の方に向け、先人たちの職業人生を「ワークライフチャート」とともに紹介していきます。思いがけないつまずきや失敗も、振り返れば成功への足掛かりとなっていることがあります。先人たちのストーリーから、未来につながる一歩が見つかれば幸いです。
リアルワン株式会社では、職場の満足度向上と組織力の強化をサポートする「従業員満足度調査(ES調査)」を提供しています。誰もが生き生きと活躍し、豊かな職業人生を歩める社会に貢献できるよう、さまざまな角度からの提案を行っています。
今回のゲスト:ドキンさん(63歳・女性)
【現在のお仕事】
・業種:エステティック業
・職種:エステティシャン・エステティック講師
・勤務地:東京都
・役職:サロンオーナー
・勤続年数:18年
【経歴】
・企画・出版業(正社員)/3年
・専業主婦/12年
・保険営業(業務委託)/4年
・劇団制作部(正社員)/2年
・販売業などのパートタイム勤務/3年
・エステティック業(業務委託)/1年
・エステティックサロンオーナー/4年半
1. 【My Work & Lifeチャート】
・20~30代:初の勤務先を退職後は専業主婦になるも、夫が失踪という状況に
・43歳:上司からのネグレストと長引く裁判で自暴自棄になった時期
・45歳:美容の仕事にやりがいを感じ、徐々に充実度が向上
・49歳:国際試験に合格、フランスへの視察研修と夢が現実になっていった
・57歳:契約書を交わさず始めた講師の仕事で思いがけないトラブルに
・忘れられない出来事は子供のアレルギーから学んだ「親がやれること」
2.職業人生を充実させるために
・これまでの実践経験と研究を活かして社会貢献できれば自己実現度100%
・私にとっての仕事とは「人生を豊かにするもの」
・ミレニアル世代へのメッセージ
Work & Lifeチャートから人生を確認してみる
20~30代:初の勤務先を退職後は専業主婦になるも、夫が失踪という状況に
専門学校を卒業後に就職したのは、タウン誌の編集部でした。取材を通して、人や地域との関係性を深められることに喜びを感じていましたが、体調を崩したことをきっかけに24歳で退社。26歳のときに結婚し、以後は専業主婦として家事と育児に専念しました。
子育ても落ち着いた37歳のときに、嫁ぎ先の会社に営業職として職場復帰しました。しかし、社長である姑から評価されないという日々が続きます。そして、38歳のときに、夫が失踪。会社からも解雇されるという状況に……。
実家の助けを借りて子育てをしながら、保険会社の外務員を務めて食つなぐという日々が始まりました。その後、夫は見つかったものの家庭裁判所での争いとなり、心労は続くことに。気持ちが晴れず、子供の気持ちに寄り添えない日々を過ごしていました。
43歳:上司からのネグレストと長引く裁判で自暴自棄になった時期
42歳のときに、保険会社の営業先である劇団からスカウトされ、転職して営業職として働き始めました。しかし、1年後のある日、電話受注の際の確認ミスで公演をひとつ取り損ない、その処理をめぐって現場で意見が割れて、年下の上司からネグレストされるようになりました。
重ねて、元夫が新たな訴えを起こしたために裁判の終わりが遠のき、笑顔になれない日が続きます。このころは、自殺を考えたこともあるほど追い詰められ、子供たちにも心配をかけてしまいました。結局、心労が原因で休職し、数カ月後に退職します。
その後、ハローワークの就業支援教育を受けて簿記3級に合格しましたが、就活意欲が湧かず、家に引きこもる毎日。見るに見かねた兄が、強行的に実家に連れ戻してくれました。そこでようやく、自分一人で何とか乗り切ろうと意地になっていたことに気がつき、バツが悪い思いでした。
人生で一番、自暴自棄になっていた時期ですが、振り返れば死生観が大きく変化した時期でもあり、その後の人生に良い影響を与えた経験だったと思っています。
45歳:美容の仕事にやりがいを感じ、徐々に充実度が向上
離婚成立後はパートを掛け持ちして生計を立てていましたが、職場の人間関係は良好で、私も子供たちも精神的に落ち着いていきました。
45歳のとき、友人の勧めで化粧品会社の研修に参加し、肌に関する知識やお手入れの大切さを学んだことで、女性の肌と心には美容がとても良いことを実感。これをきっかけに、エステをしながら化粧品を販売するという外務員の仕事も始めました。
販売や技術の研修を月に2~3回受け、週に12時間の訪問販売とお手入れを繰り返しているうちにやりがいを感じ、エステティックを一生の仕事にしようと考えるようになっていきます。
ただ、パートの掛け持ちを続けながら生活費を工面していたので、別の友人からは「美容の仕事よりも介護職に就いて、しっかり安定した未来を設計したほうがよいよ」と忠告されました。しかし、私生活で心が消耗していたせいか、そのときの私は介護現場の厳しさのほうに目がいき、考えを変える気にはなれませんでした。
雇用される側になっても、結局、自分には決定権がない。窮屈な思いをしたり、人間関係で悩んだりするのは自分には向いていない。そう考え、個人事業主としての道を選びました。
化粧品会社の研修だけでは満足せず、業界認定資格取得に向けて通信教育でがんばれたのも、人から強要されたことではなく、自らの意志が働いたからだと思っています。裁判も終わり、市から児童手当を受け取れるようになったので、子供たちと話をする時間も増えていきました。収入はぎりぎりでしたが、ようやく充実感を得られるようになっていきました。
49歳:国際試験に合格、フランスへの視察研修と夢が現実になっていった
46歳のときに、実家の美容室の中にエステルームを開設しました。ほぼ無休で働く日々でしたが、やりがいを感じました。そして、48歳のときに、エステティック業界最高峰といわれる国際試験に1年がかりで合格。夢を達成するための努力は、いつか報われると信じることができるようになり、チャレンジするモチベーションがどんどん上がっていきました。
49歳のときに、エステティック協会の研修生に応募。論文選考で選ばれ、視察研修生としてフランスの福祉・医療のエステティシャン養成校で研修を受けました。帰国後は、地元の新聞にフランスでの活動を紹介する記事を連載することに。エステティック協会の国際委員に選出されたり、地元のグループホームで緩和ケアの活動を始めたりとサロンワーク以外にも活動範囲を広げ、充実した日々が続きます。
プライベートでは4人の子供たちが次々に進学・進級となり、人間関係の難しさで挫折しそうになりましたが、母の協力を得て前に進むことができました。このころにはパートの掛け持ちはしなくても良い状態となり、子供たちと過ごす時間が増えていきます。子供たちの言葉や世界観に触れるたびに成長を感じられ、それが私にとってとても楽しい時間でした。
57歳:契約書を交わさず始めた講師の仕事で思いがけないトラブルに
子供たちも自立し、サロンワークと緩和ケア、協会委員としての活動にくわえ、専門学校の外部講師としての仕事も増え、充実した50代を過ごしていました。
思いがけず充実度が下降したのは57歳のときのこと。東京でのハローワーク就業支援の講師を引き受けたことで、半年間、東京に滞在することになりました。当初は半年くらいなら地元との往復で何とかなると思って引き受けたのですが、他の講師が見つからず、結局1年間拘束されることになってしまったのです。
さらに、依頼主の経営状態が思わしくなく、報酬が遅延したり交通費が出なかったりしたため、頻繁に地元に帰るということもできず、本業のサロンワークが休止状態となってしまいました。
講師の仕事自体は、社会人の就業を支援するという新しい経験であり、やりがいもありましたが、地元での基盤が揺らぐ事態となり後悔しました。仕事を引き受ける際に、契約書をきちんと交わさなかったことが問題の発端だと思っています。依頼主が友人だったので情に押し切られた形になってしまいましたが、生活にゆとりがなくなる状態に追い込まれてしまったので、とても反省している出来事です。
忘れられない出来事は子供のアレルギーから学んだ「親がやれること」
長男が2歳のときに、喘息、アトピー性皮膚炎、蓄膿症とアレルギーがひどく、試行錯誤した結果、食事を見直しました。東洋医学をベースとしたマクロビオティックで体調を管理したのですが、そのときの経験で病気や社会に対する考え方が大きく変化しました。
その後12年間は西洋医学に頼らず、予防注射と歯医者以外は病院を利用することなく乗り切りました。東洋思想の良さを理解し、病院に行く前に親がやれることは多いとわかったことは、私にとって大きな気づきでした。
職業人生を充実させるために
これまでの実践経験と研究を活かして社会貢献できれば自己実現度100%
今後は、エステティックに関連することをテーマごとにスキーム化し、生徒さんに普及していきたいと考えています。50代後半から取り組んではいますが、どうしても目の前の作業に追われてしまう状況が続いていたので、ライフワークとして時間を割けるようにしたいというのが今の目標です。
コロナ禍でサロン経営はかんばしくない状況が続いていますが、逆に考えれば、今ならしっかり時間を割いて取り組めると考えています。これが実現したら、職業人生における自己実現度は100%。エステティックによる社会への貢献度が高まるはずと夢見ています。
私にとっての仕事とは「人生を豊かにするもの」
これまでの経験から、私にとっての仕事は次の3つに集約されると思っています。
「仕事は、自分の鏡と思っている」
「仕事と私生活は表裏一体である」
「だから、仕事は人生を豊かにすると思う」
ミレニアル世代へのメッセージ
メッセージというよりも常に自分自身に言い聞かせていることですが、「共感できることであれば取り入れる」というものです。ただし、正しいかどうかはわかりません。
時間は一秒でも後戻りしません。どんなに悔やんでも過去のことですし、どんなに達成感を得たとしても、それも過去になります。明日はどうなるのか、未来はどう変わるのかを他人の価値観で予想すると気疲れしてしまいます。
夢が叶うのは夢を持ち続けている人だけ。誰もが死にますが、死ぬまでは生きられるのです。『今』に集中して愉しむことができたら、自分で自分を褒めてあげましょう。人生は点描画のように、終わったら絵になるものだと思います。
まとめ
公私ともに起きた大きな困難を乗り越え、美容の世界にやりがいを見つけることができたドキンさん。職業人生としての充実度が向上したのは40代後半からですが、そこまで歩んだ道があったからこそ、夢の実現に向かって邁進できたのかもしれません。
「未来を他人の価値観で予想しない」「今に集中して愉しむ」というメッセージは、将来への不安で足踏みしてしまっている方にとって、ひとつのヒントになるのではないでしょうか。
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