資料請求・ご相談

従業員満足度調査

エンゲージメント調査

360度評価

その他サービス

事例・インタビュー

組織づくりコラム

リアルワンについて

お問い合わせ

インフォメーション

2020.12.17

COLUMN

エンゲージメント調査

従業員エンゲージメント(Employee Engagement)
―その定義、効果、そして診断する意義とは?― 後編

【目次】

3.リアルワン(R-O)エンゲージメント尺度の開発とポイント
3-1.開発の背景
3-2.開発のプロセスと尺度の信頼性・妥当性
3-3.R-Oエンゲージメント・サーベイからみた日本企業における社員の現状
4.R-Oエンゲージメント・サーベイはどのような組織に貢献できるか

3.リアルワン(R-O)エンゲージメント尺度の開発とポイント

3-1.開発の背景

 上述のような「エンゲージメント概念」の学術的な背景や意義について、筆者の知人であるリアルワン株式会社の青山社長とお話しする機会が2年ほど前にありました。科学的根拠や理論的な裏付けを重視した調査・診断サービスの提供を信条とする青山社長と20年以上にわたり組織行動学の実証研究に従事し国内外の主要学術誌に掲載してきた筆者は意気投合し、ならば実務的にも貢献度の高いリアルワン独自の本格的なエンゲージメント・サーベイを共同で開発しようという話になりました。

 開発で目指したのは、既存のエンゲージメント尺度とは異なる独自の尺度を開発すること、特に、我々が設定した「思考面」、「情緒面」、「行動面」の3つの要素を独立した因子として測定可能なツールにすることでした。当然のことながら、上記3要素が三位一体となって、初めて「従業員エンゲージメント」として機能することはすでに述べた通りです。その一方で、思考、情緒、行動の各側面をそれぞれ独立して測定・診断可能な状態を担保することにより、このサーベイを活用するクライエント企業ないしは組織とって、エンゲージメントのそれぞれの側面から自組織の強みや改善点を把握していただくことが重要であると考えたからです。

 

3-2.開発のプロセスと尺度の信頼性・妥当性

 開発の過程で特に力を入れたのは、作成した項目の妥当性と信頼性の検証の部分です。技術的な話はここでは控えますが、12ヵ月間にわたり、パイロット調査を断続的に繰り返し実施し、適宜文言や表現の修正を加えつつ、最終的に弁別可能な3因子9項目(いずれも5段階評定)のリアルワン・エンゲージメント(以下、R-Oエンゲージメント)尺度の開発に成功しました。この縦断的なパイロット調査には、延べ約8,300名の回答者に協力をいただきました。

 表2は、最終版の因子分析と信頼性の結果です。いずれの項目も複数の因子に重複して高い因子負荷量を示すことなく、それぞれ独立した因子に高い負荷量を示しています。また、各測定尺度における項目間の内的整合性からみた信頼性の指標であるクロンバック(Cronba-ch)のα係数は、いずれもα > .85と十分に高い値を示しています。加えて、4ヵ月間のインターバルを設けて、同一回答者から採取した2時点(Time 1及びTime 2)の回答データ間の級内相関(ICC)を算出したところ、いずれの値も慣例的な基準であるICC > 0.70を全て大きく上回っており、再検査信頼性(test-retest reliability)が確認されています。

 

表2.R-Oエンゲージメント測定項目の因子分析結果
(Time 2データ:n=2566)

 次に、開発したR-Oエンゲージメント尺度が、実際に従業員のエンゲージメントを測定できているのかについて見てみます。本稿の2-1で紹介したリッチらの研究で使用されたエンゲージメント尺度と開発したエンゲージメント尺度がどの程度相関があるのかを検証しました。その結果、R-Oエンゲージメント尺度とリッチらのエンゲージメント尺度との相関は、r = .85と高い相関関係にあることが確認されました。特に、R-Oエンゲージメント3側面のうち、行動的エンゲージメントとの相関が最も強く(r = .79)、次いで思考的エンゲージメント(r = .76)、情緒的エンゲージメント(r = .65)の順でした。いずれにしても、職務成果との関係が明らかとなっているリッチらのエンゲージメント尺度と高い相関関係が確認されたことは、R-Oエンゲージメント尺度の妥当性を示唆するものといえるでしょう。

 

3-3.R-Oエンゲージメント・サーベイからみた日本企業における社員の現状

 開発の過程で、設定したエンゲージメント3側面のそれぞれの特徴が浮かび上がってきました。ここで少しだけ、R-Oエンゲージメント・サーベイを通じて見えてきた、現在の日本企業における従業員エンゲージメントの特徴を紹介します。図4~7は、パイロット調査におけるR-Oエンゲージメント(全体と各下位次元)の回答分布を表したものです(下位次元とは、エンゲージメントを構成する思考、情緒、行動のそれぞれの側面を指します)。

 図4は3つの下位次元を1つにまとめたR-Oエンゲージメント(全体)の回答分布です。5段階尺度のため、回答は0~4点の範囲に分布し、低得点ほどエンゲージメントが低く、高得点ほど高いことを意味します。図4から平均値である2.2点付近を頂点とする綺麗なベル型の形状(bell-shape)になっており、正規分布化していることが確認できます。図5と6はそれぞれ、行動面と思考面のエンゲージメントの結果ですが、こちらはいずれも3点付近の回答が最も多くなっています。また両者は、分布の形状そのものが似ているため、行動面と思考面のエンゲージメントについては、回答傾向が類似しているようです。

 

図4.R-Oエンゲージメント尺度(全体)の回答分布

 
図5.R-Oエンゲージメント尺度(行動面)の回答分布


図6.R-Oエンゲージメント尺度(思考面)の回答分布


図7.R-Oエンゲージメント尺度(情緒面)の回答分布

 一方で、図7の情緒面のエンゲージメントの結果は、前の2つと見比べると、分布の形状が異なっていることがわかります。平均値も、1.7点と他の2側面の平均値よりかなり低くなっています。さらに興味深いことに、図7からも明らかなとおり、「0点台」の回答が相当数存在していることがわかります。この結果は筆者も解析をしながら目を疑い、原データに戻って誤りがないか、1件1件再度確認したほどです。

 結論から言いますと、これは決してデータ上の誤りでもなく、また、回答者が惰性で回答したことから生じている訳でもないようです。なぜなら、行動的エンゲージメントや思考的エンゲージメントには「0」以外の回答をしている回答者でも、この情動的エンゲージメントを構成する3つの項目には明確に「0」に該当する選択肢に回答しているのです。

 この結果はまさに、冒頭のギャラップ社の調査結果で「熱意がある」日本人社員の割合がわずか6%と極端に低かった点、また「全く熱意がない」(英語では、“actively disengaged”)に該当する社員が23%も存在していた点と符合します。先述の通り、ギャラップ社で測定している12項目のエンゲージメント・サーベイは、R-Oエンゲージメントの「情緒的」側面に相当する内容のものが中心です。こうした点を踏まえると、現在の日本企業が抱えている人材面の大きな課題は、仕事に対し情緒的エンゲージメントを全く抱けない「積極的な情緒的ディスエンゲージメント」社員への対応といえるかもしれません。

 仕事を楽しいと全く感じられない、また仕事に熱意も全く沸かない、その一方で、業務目標の達成に向け、頭の中では常に仕事のことを考え、かつ自らに鞭を打って動いている、そのような現状が少なからず日本の企業社会の中に存在していることが、この調査データから示唆されます。

 

4.R-Oエンゲージメント・サーベイはどのような組織に貢献できるか

 最後に、R-Oエンゲージメント・サーベイがどのような組織に役立つかについて触れておきます。

 まず、大前提として、このサーベイは非常に汎用性が高く、「仕事をしている人」であれば、基本的に誰でも回答可能です。職業や職種、勤務形態(正規・非正規等)などにより回答に向き不向きがあるものではありません。対象組織としても、業種や形態(営利・非営利等)に関わらず、診断することができます。

 そのなかで、R-Oエンゲージメント・サーベイによる診断が特に有益だと考えられる組織としては、売上高人件費比率ないしは労働分配率の高い企業が挙げられるでしょう。すなわち、売上高や利益に占める人件費の割合が高い組織は、このサーベイによる診断を検討されるとよいでしょう。なぜなら、これらの数値が高い組織は、人件費の効率が良くない、もしくは収益・利益の鍵を内部人材が握っている組織だからです。いずれも、従業員エンゲージメントの向上により、財務体質の改善もしくは更なる向上が期待できると考えられます。

 人件費効率が悪い場合、手っ取り早い手段として人件費を削減するという選択肢がありますが、組織が置かれている状況にはよるものの必ずしも推奨はできません。むしろ社員のエンゲージメント水準をさらに低下させ、一層のパフォーマンス低下や離職リスクの増大を招く可能性があります。特に、経営状況が徐々に悪化し、会社の資源が失われていくなかでの更なる人件費の削減が、会社を「資源損失」(リソース・ロス)スパイラルに陥れてしまうトリガーとなる可能性があります。

 人件費比率が高いということは、すでに従業員に一定の投資をしている状況だと判断されます。問題は、投資した資源が、従業員の仕事の質・量を含めたアウトプットに繋がっていない、ひいては、そこからボトムアップのプロセスで得られる経営の成果向上に導かれていないことです。すなわち、本稿の2-3で示した会社が従業員に投資する資源と従業員のパフォーマンスとの間の「ブリッジ」の役割を果たす従業員エンゲージメントが低下しているため、投資に対して十分な回収が得られていない可能性が考えられます。

一方で、利益の多くの部分を「人」に依存している労働分配率の高い企業でも、人への投資の効果をより一層高める上で、従業員エンゲージメントが極めて重要な役割を果たします。したがって、人件費比率や労働分配率が高い組織では、まずは自社社員のエンゲージメント水準を正確に把握し、思考、情緒、行動のどの部分のエンゲージメントを改善する必要があるのかを明確にすることが求められます。

 なお、売上高人件費比率、労働分配率いずれの値にしても、適正水準は業種や規模などの諸要因により異なりますので、一概に境界となる数値をここで示すことはできません。業界の平均やベンチマークとなる競合他社の状況を見ながら、自社がどの程度、人材に依存した組織であるのか、また人材投資に対して十分なリターンを得られているのかを把握しておく必要があるでしょう。また、他社との相対的な比較による判断だけではなく、これら(人件費比率、労働分配率など)の数値の経年変化(例えば、急な上昇、あるいは年々増加傾向にあるなど)にも目を向け、適切なタイミングでR-Oエンゲージメントの診断を受けることが大切だと考えます。

 

【引用文献】

Gallup (2017). State of the Global Workplace. New York, NY: Gallup Press.

Harter, J. K., Schmidt, F. L., & Hayes, T. L. (2002). Business-unit-level relationship between employee satisfaction, employee engagement, and business outcomes: A meta-analysis. Journal of Applied Psychology87(2), 268-279.

Kahn, W. A. (1990). Psychological conditions of personal engagement and disengagement at work. Academy of Management Journal33(4), 692-724.

日本経済新聞 (2017). 「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査. 日本経済新聞, 5月26日朝刊.

Rich, B. L., Lepine, J. A., & Crawford, E. R. (2010). Job engagement: Antecedents and effects on job performance. Academy of Management Journal53(3), 617-635.

竹内 規彦〈早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授〉
Norihiko Takeuchi, Ph.D.
名古屋大学大学院国際開発研究科博士後期課程修了。博士(学術)学位取得。
専門は組織行動論及び人材マネジメント論。
東京理科大学准教授、青山学院大学准教授等を経て、
2012年より早稲田大学ビジネススクールにて教鞭をとる。
2017年より現職。
2019年より京都大学経営管理大学院・客員研究員を兼任。
Asia Pacific Journal of Management副編集長、米国Association of Japan-ese Business Studies会長、 欧州Evidence-based HRM誌 (Emerald Publi-shing) 編集顧問、経営行動科学学会副会長、産業・組織心理学会理事、 組織学会評議員等を歴任。組織診断用サーベイツールの開発及び企業での講演・研修等多数。

 

SNSでシェア

Archive :

03-6222-8741

[営業時間] 9:00~18:00