自律型人材とは?特徴やメリットデメリット~育成法を事例と共に解説

変化のスピードが早く、不確実性が高い時代において、自らの意思で物事を決定し、柔軟に対応する「自律型人材」が注目されています。今回は、この自律型人材に焦点をあて詳しく解説します。

自律型人材とは、どのような人材なのか。その特徴やメリットデメリットをあげながら、育成方法のポイントを解説。合わせて、自律型人材を育成する企業の事例を紹介します。

【本記事で得られる情報】

・自律型人材の意味
・自律型人材が必要とされる背景
・自律型人材の特徴
・自律型人材のメリットデメリット
・自律型人材を育成するポイント
・自律型人材を育成する企業の事例

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

自律型人材とは何か?

自律型人材とは、どのような人材なのでしょうか。はじめに、「自律型人材とは何か?」について解説します。

自律とは?

まずは、「自律」という言葉の意味について整理しておきましょう。

自律】
他からの支配・制約などを受けずに、自分自身で立てた規範に従って行動すること。

出典:デジタル大辞泉

要するに、周囲から干渉を受けずに自分の価値観や自ら決めたルールに則って、行動をコントロール、あるいはマネジメントすることが「自律」の意味です。英語では、「self-directed」と表記されます。

自律と自立の違い

自律と同じ読み方をする言葉に「自立」があります。この2つは、どう違うのでしょうか。

【自立】
他への従属から離れて独り立ちすること。他からの支配や助力を受けずに、存在すること。

出典:デジタル大辞泉

要するに、他人の力に頼らず自分のことは自分でやるのが「自立」の意味です。英語では、「self-stood」と表記されます。では、自律と自立の違いを整理してみましょう。

【自律と自立の違い】

自律:理念や心情、意思決定といった「内的・精神的な要因」の独り立ち
自立:経済力や能力、体力といった「外的・物質的な要因」の独り立ち

このように「自律と自立」は、「独り立ち」という意味においては同じでも、その要因に大きな違いがあるのです。

自律型人材の意味

それでは、「自律型人材」の意味を解説します。実は、自律型人材についての明確な定義はありません。しかし、自律の意味を踏まえた上で、ビジネスの現場における自律型人材を考えれば、その意味は次のようになるでしょう。

自律型人材】

指示待ちではなく、自分の頭で物事を考えて意思決定し、主体的かつ能動的に行動する人材

自分の「意志」で仕事の目的や意図を「定義」し、自分自身を「マネジメント」しながら行動する人材が「自律型人材」といえます。

自律型人材が必要とされる背景

今なぜ、自律型人材が必要とされるのでしょうか。ここでは、その背景を考察します。

【自律型人材が必要とされる背景】

・柔軟な対応力が求められている
・労働環境が多様化している
・自律型組織の重要性が増している

ひとつずつ見ていきましょう。

柔軟な対応力が求められている

様々なビジネス領域において、変化が激しい時代です。デジタル技術の発達は、とどまるところを知らず、社会はますますボーダレス化。消費者のニーズは多様化し、国際競争は激化するばかりです。このような時代に必要とされるのは、柔軟な対応力でしょう。

不確実性が高い時代、企業が持続的に成長していくためには、市場の変化を敏感に感じ取り、自分で判断して行動する自律型人材の柔軟な対応力が求められているのです。

労働環境が多様化している

在宅勤務やリモートワークの拡大、フレックスタイムや時短勤務の導入など、働き方は多様化しています。さらに、雇用の流動化が叫ばれジョブ型雇用に注目が集まるなど、雇用の在り方も変化しています。このように、労働環境が多様化していることも、自律型人材が必要とされる背景のひとつです。

自律型人材は、指示待ち人間ではありません。自ら考え、判断することができます。多様化する労働環境においても、自分の意思で仕事を進め、なおかつ自分のキャリアを自らデザインし成長していける人材なのです。

自律型組織の重要性が増している

自律型組織の重要性が増していることも、自律型人材が求められる理由です。自律型組織とは、様々な権限を従業員に分散し意思決定を任せ、従業員自身が主体的かつ能動的に組織運営に関わる事業形態のこと。変化が激しく不確実な時代において、その重要性が増しています。

この自律型組織にマッチするのが、まさに自律型人材なのです。自律型組織は、自律型人材の「個々の力のつながり」が作るといっても過言ではありません。

自律型人材の特徴・育成するメリット

変化の時代に活躍が期待される自律型人材ですが、ここではその特徴と育成するメリットを見ていきましょう。

【自律型人材の特徴】

・自ら行動する主体性がある
・強い責任感を持っている
・キャリア自律に対する意識が強い

詳しく解説します。

自ら行動する主体性がある

自律型人材は、自ら行動する主体性があるのが特徴です。仕事の目的や課題、自分の役割を理解し、今とるべき行動を自ら考え、目標達成にコミットメントすることができます。

強い責任感を持っている

自律型人材は、強い責任感を持っています。指示待ちではなく、自らの意思で行動するため、自分の決定や行動に責任を持つことができるのです。

キャリア自律に対する意識が強い

キャリア自律に対する意識が強いのも、自律型人材の特徴です。キャリア自律とは、自分のキャリアを主体的に考え、自らキャリア形成に取り組む姿勢のこと。自分のキャリアのために行動するため、目標達成に向けて力強く前進することができます。

関連記事1:キャリア形成とは?考え方やサポートの方法について
関連記事2:従業員エンゲージメントの高い企業とは? 施策のポイントや具体的な事例を解説

自律型人材~育成のためのポイント

多くのメリットを持つ自律型人材ですが、ここでは育成するためのポイントを見ていきましょう。

【自律型人材の育成ポイント】

・自社に必要な自律型人材を定義する
・「理念・ミッション・パーパス」への理解を深める
・中長期的な視点を持つ
・自発的に学べる研修環境を整備する
・失敗を許容する環境を整える
・定期的に振り返る時間を設ける

ひとつずつ解説します。

自社に必要な自律型人材を定義する

先述の通り、自律型人材には明確な定義はありません。まず大切なことは、自社に必要な自律型人材を定義することです。目指す目標や従業員への期待、役割を明確にして、自社が求める自律型の人材像を定義します。

「理念・ミッション・パーパス」への理解を深める

自律型人材を育成するには、「理念・ビジョン・パーパス」への理解を深めることが重要です。自律型人材の主体的かつ能動的な行動、そこに向けた様々な意思決定は、「理念・ビジョン・パーパス」への深い理解があってこそ可能になります。

中長期的な視点を持つ

自律型人材の育成には時間がかかるため、中長期的な視点を持つことが重要です。中長期的なスパンで育成プログラムを設計すると共に、自律型人材が活躍できる組織へと会社自体も変化する必要があります。

互いにフィードバックし合える環境の構築、人事評価制度や人事評価基準の見直しも必須。中長期的な視点に立って、環境や制度を整えていきましょう。

関連記事1:人事評価制度とは?目的や作り方、事例を紹介
関連記事2:人事評価基準の作り方/評価表の項目例も紹介

自発的に学べる研修環境を整備する

自律型人材の育成に向けて、従業員が自発的に学べる研修環境を整備します。日々変化するビジネス環境に対応していくには、学びのアップデートが欠かせません。社内研修の実施や外部セミナーへの参加、eラーニングの導入も効果的。従業員が、持続的に学べる機会を提供しましょう。

失敗を許容する環境を整える

挑戦には、失敗がつきものです。ただ、挑戦と失敗の繰り返しこそが成長を促します。失敗を許容する環境を整えることは、自律型人材の育成にとって欠かせないポイントです。失敗を受け入れ、次の挑戦をフォローする体制を整えて「自律」の意識を醸成しましょう。

定期的に振り返る時間を設ける

自律型人材を中長期的に育成していく中では、想定外のことも起こり得ます。定期的に振り返る時間を設けることも、育成の大切なポイントです。定期的な1on1ミーティングで育成過程を振り返り、従業員の成長度合いやビジネス環境の変化に合わせて育成プログラムを修正、自律型人材への成長をサポートします。

関連記事:人材育成とは/目的や方法、具体例を紹介

自律型人材に関するデメリット

ここでは、自律型人材のデメリットを解説します。

【自律型人材に関するデメリット】

・一元管理が難しくなる
・育成には様々なコストがかかる

詳しく見ていきましょう。

一元管理が難しくなる

自律型人材に関する最も大きなデメリットは、一元管理が難しくなることでしょう。自律型人材は、個人で判断、意思決定ができる人材です。それは、裁量権が分散することでもあります。当然、情報を一元的に管理することが難しくなります。

自律型人材の育成は重要ですが、情報の共有は欠かせません。組織としてはもちろん、部署やプロジェクト単位でも情報を共有する仕組みの構築が必要です。

育成には様々なコストがかかる

先に述べた通り、自律型人材の育成には時間がかかります。そこには、時間的なコストはもちろん、研修や外部委託にかかる教育的コスト、メンターが付けば人的なコストも発生します。育成に様々なコストがかかることも、自律型人材に関するデメリットといえるでしょう。

だからこそ、何のために自律型人材を育成するのか、目指す目標、そして求める期待や役割など、自社に必要な自律型人材の定義が重要になります。

自律型人材~企業の育成事例

では、自律型人材を育成する企業の事例を紹介します。

株式会社リコー

株式会社リコーは、基本理念である「リコーウェイ」を指針として自律型人材の育成を推進しています。大きな目標は、変化の激しい市場環境にも適応できる企業風土を作ることです。

「従業員一人ひとりが、自分自身のキャリアのオーナーである」ことを意識し、キャリア自律に向けて支援制度や社内公募制度を構築。従業員が自発的に学び、行動できる環境を整備しています。従業員の主体性を尊重する姿勢が、積極的な挑戦を促す企業文化の醸成にもつながっています。

株式会社カインズ

株式会社カインズは、市場ニーズの変化や多様化に対応するため、自律型組織への転換を図るべく、自律型人材の育成に取り組んでいます。主なコンセプトは、「主体的な学び」です。学びの支援に向け、「CAINZアカデミア」を設立。従業員の学ぶ意欲を高めています。

この施策によって、従業員のキャリア自律に対する意識が高まり、誰もが多くのことを学び、成長できる文化を根付かせることに成功しています。

株式会社JTB

株式会社JTBは、従業員の成長を後押しするため「自律創造型社員」の育成を支援しています。自社の人材育成プラットフォーム「JTBユニバーシティ」を活用し、研修やeラーニングによって、従業員に800本以上の教育プログラムを提供。合わせて、海外研修や資格取得の支援も行っています。

その他、キャリア形成に向けて1on1ミーティングを行うなど、対話の機会を作ることで、従業員が自らキャリアプランを描けるよう積極的に支援しています。

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最後に

今回は、自律型人材の特徴やメリットデメリット、育成のポイントについて事例を交えながら解説しました。自律型人材は、変化のスピードが早く不確実な時代を乗り越えるために不可欠の存在。成長を目指す組織にとって、育成は必須の取り組みといえるでしょう。

ただそれには、自社の育成環境や評価制度、組織に対する従業員の意見を吸い上げる必要があります従業員や組織の状態を把握するには、組織サーベイが効果的。組織サーベイによって、従業員の意見や組織の課題を洗い出し、自律型人材を育成しやすい環境の手掛かりを見つけることができます(組織サーベイについては「組織サーベイとは?目的や種類、ツール別の質問項目を解説」をご覧ください)。

リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。信頼性の担保された「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で、従業員の意見や組織の課題を洗い出し、改善への道筋を「見える化」します

自社の環境を見直し、自律型人材を育成したいとお考えの企業様は、リアルワンにぜひご相談ください。

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