従業員と組織の状況を把握する施策として、「組織サーベイ」を実施する企業が増えています。組織サーベイは、従業員にアンケート(質問)調査を実施し、回答結果を分析。組織を取り巻く課題を目に見える形でデータ化し、様々な改善プランに活用していくものです。
ただし、組織サーベイには多くの種類があり、ツールごとに目的や質問項目が異なります。そこで今回は、組織サーベイの目的や種類、ツール別の質問項目を解説します。本記事が、組織サーベイについて調べている方の参考になれば幸いです。
【この記事で得られる情報】
・組織サーベイの意味
・組織サーベイが注目される理由
・組織サーベイの種類と目的
・組織サーベイのツール別質問項目
・組織サーベイのデメリット
・組織サーベイは外部委託した方がいい理由
目次
組織サーベイとは?意味や注目される背景

はじめに、組織サーベイの意味や注目される背景について解説します。
組織サーベイの意味
組織サーベイとは、従業員と組織の現在の状況を、従業員への質問によって可視化するアンケート調査のことです。従業員が抱える悩みや課題、組織が内包する問題や懸念、施策の進捗や成果などをアンケート調査によって吸い上げ、課題を明確化します。
「サーベイ:Survey」とは、「調査・測定」を意味する言葉。調査や測定によって明確になった課題から改善プランを立案し、従業員の成長と組織の活性化につなげていく施策が組織サーベイなのです。
組織サーベイが注目される背景
なぜ今、組織サーベイが注目されているのでしょうか。ここでは、その背景を考察します。
【組織サーベイが注目される背景】
・従業員の定着率を高めるため
・ブランド力をアップさせ他社との差別化を図るため
・組織サーベイの信頼性が増したため
人材獲得競争が増す中で、従業員の定着率を高める取り組みは必要不可になっています。生産年齢人口(15歳~64歳の人口)は、減少の一途をたどっています。昔と違い、転職も当たり前になりました。従業員をつなぎ止めるには、ブランド力をアップさせ他社との差別化を図る必要があるのです。
そのためには、従業員の「声」を真摯に受け止め、継続的に組織を改善していくことが極めて重要になります。その施策の一環として、従業員と組織の現在の状況を把握する組織サーベイが注目されているのです。
また、ITやAIといったデジタルテクノロジーの発達で調査精度が高まり、組織サーベイの信頼性が増したことも注目される背景のひとつになっています。
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組織サーベイの種類~4つのツールを比較

組織サーベイには、様々な種類があります。ここでは、次の4つのツールについて、それぞれの特徴と目的を解説します。
【組織サーベイ4つのツール】
・従業員満足度調査(ES調査)
・エンゲージメントサーベイ
・360度評価
・パルスサーベイ
ツール別に詳しく見ていきましょう。
従業員満足度調査(ES調査)
従業員満足度調査(ES調査)とは、仕事や職場に対する従業員の満足度を測定する調査のことです。従業員が仕事にどの程度満足しているのか、職場のどのようなことに不満を感じているのか、アンケートによって明確にします。英訳である「Employee Satisfaction」の頭文字をとって、「ES調査」とも呼ばれます。
従業員満足度調査(ES調査)の特徴は、従業員の状態を定量的に把握できることです。仕事内容や人間関係、給与や福利厚生、ワークライフバランスといった質問項目に回答してもらうことで、従業員の状態を定量的に可視化します。
質問数は、50~100問。実施頻度は、年に1回程度が一般的です。従業員満足度調査(ES調査)は、組織の健康診断、経営指標として多くの企業に活用されています。
従業員満足度調査(ES調査)の目的
次に、従業員満足度調査(ES調査)の目的を解説します。
【従業員満足度調査(ES調査)の目的】
・組織課題を設定する
・改善プランを立案し施策の検証を行う
・従業員の満足度を向上させる
・組織を定点観測する
従業員満足度調査(ES調査)は、従業員と組織の状態を定量的に可視化します。調査によって浮かび上がった問題から組織課題を設定、改善プランを立案し従業員の満足度向上につなげます。
また、定期的に実施すれば様々な施策の検証にも効果を発揮。従業員満足度調査(ES調査)は、組織を定点観測する機能も持ち合わせているのです。
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エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントとは、仕事における「思考面・情緒面・行動面」に対して従業員が積極的に関与している状態のことです。この関与の度合いを、定量的に可視化する調査がエンゲージメントサーベイです。愛社精神・相互信頼を表すエンゲージメント(engagement)と、調査・測定を表すサーベイ(survey)を合わせて、エンゲージメントサーベイと呼ばれています。
実施頻度は、年に1回程度。50~100問の質問に答えてもらうことで、従業員がどのレベルで仕事と組織に関わろうとしているのか、どれくらいコミットしているのかを明確にします。
エンゲージメントサーベイは、仕事や組織に対する従業員の「結びつきの強さ」を測定し、双方の関係構築に効果を発揮する組織サーベイなのです。
エンゲージメントサーベイの目的
エンゲージメントサーベイの目的は、次の通りです。
【エンゲージメントサーベイの目的】
・従業員と組織が抱える課題を早期に発見する
・従業員のエンゲージメントを向上させる
・組織パフォーマンスを向上させる
・従業員の定着を促進する
エンゲージメントサーベイによって、従業員と組織が抱える課題を早期に発見することができます。組織課題の改善は、従業員のエンゲージメントを向上させると共に、組織パフォーマンスを向上させるでしょう。そしてそれは、従業員の定着を促進することにもつながっていくのです。
360度評価
360度評価とは、対象となる従業員(評価対象者)を様々な立場の従業員(上司・部下・同僚・他部署・取引先関係などの評価協力者)が評価し、その結果をフィードバックする評価システムのことです。対象者の行動や職務遂行能力を、協力者が質問に回答することで評価します。
上司が部下を一方的に評価する従来型のシステムとは違い、立場の異なる複数の従業員が多面的に評価することから「多面評価」とも呼ばれています。
実施頻度は、年に1回ないし2年に1回。質問数は、20~50問が一般的です。360度評価は、複数の従業員が、多面的かつ客観的な評価を行うことで、対象者に多くの気づきを与えることができるのです。
360度評価の目的
360度評価の目的を解説しましょう。
【360度評価の目的】
・評価に対する納得感の醸成
・客観的かつ公平な評価を実現する
・従業員の特性や能力を把握する
・従業員自身が自覚していない気づきを促す
従業員のモチベーションをアップさせ能力開発を進めるには、評価に対する納得感の醸成が欠かせません。そのためには、客観的かつ公平な評価を実現する必要があります。持続的に能力開発を進めていくには、従業員の特性や能力を把握することも重要でしょう。
ただ、従業員の本質的な特性や能力は、本人も自覚していない場合が多いものです。そのようなとき、360度評価は、従業員自身が自覚していない気づきを促してくれる効果があるのです。
関連記事:360度評価の導入率はどれくらいか?
パルスサーベイ
パルスサーベイとは、仕事や組織に対する従業員の意識を定期的に測定するアンケート調査のことです。人の脈拍(パルス)を測るように、定期的な頻度で従業員の状態を調査(サーベイ)することからパルスサーベイと呼ばれています。
パルスサーベイの大きな特徴は、その実施頻度です。週に1回や月に1回、状況次第で数日に1回といった高い頻度、短いサイクルで調査を実施していきます。質問数は10問前後、多くても20問までが一般的です。
短いサイクルで調査を実施することによって、従業員の状態や組織が抱える課題をリアルタイムに捉えることができます。パルスサーベイは、従業員と組織の「今」の状況をタイムリーに捉え、課題改善につなげることができるのです。
パルスサーベイの目的
パルスサーベイの目的を解説します。
【パルスサーベイの目的】
・従業員と組織が内包する課題をタイムリーに発見する
・改善プランを立案し実行する
・従業員と組織のコミュニケーション効果を高める
・従業員の満足度をアップさせる
短いサイクルで調査を繰り返すパルスサーベイは、従業員と組織が内包する課題をタイムリーに発見できます。課題から改善プランを立案し実行することで、問題が大きくなる前に職場の環境を改善できるでしょう。
また、実施頻度が高いパルスサーベイは、従業員と組織のコミュニケーション効果を高めます。それは、従業員の満足度をアップさせることにもつながるのです。
関連記事:パルスサーベイとは?
組織サーベイ~ツール別の質問項目を解説

ここからは、組織サーベイの質問項目をツール別に解説します。※質問項目は、ツールを提供する会社によって異なります。記載した質問項目は、ひとつの例として捉えてください。
従業員満足度調査(ES調査)の質問項目
従業員満足度調査(ES調査)の質問項目は、「全体満足」と「領域別満足」から構成されています。
全体満足とは、仕事や組織に対する従業員の総合的な感情や態度を測る項目です。一方、領域別満足とは、仕事や組織の各領域に対する従業員の感情や態度を測る項目です。
【全体満足の質問項目例】
・組織
・仕事
・働きがい
・将来性
・製品
・サービス
・コミュニケーション
【領域別満足の質問項目例】
仕事内容
意義と責任・能力の活用・成長の実感・自律性・仕事の多様性など
組織
経営方針・意思決定・闊達な風土・変革の風土・顧客志向・情報伝達・モラルなど
職場仲間
経営者・上司・部署内の連携・部署の成長努力・部署間の連携など
待遇
給与・評価・昇進昇格・福利厚生・能力開発の機会・働く環境・仕事の負荷・雇用の安心感など
その他、細かい意見や要望については自由記述欄にコメントしてもらい、従業員の声を吸い上げていきます。
エンゲージメントサーベイの質問項目
エンゲージメントサーベイの質問項目は、「思考面・情緒面・行動面」に対する従業員のエンゲージメントを測る「中核指標」を紹介します。
【中核指標の例】
・思考エンゲージメント:仕事に集中し考えることができている度合い
・情動エンゲージメント:仕事に熱意を持って向き合えている度合い
・行動エンゲージメント:仕事に積極的に取り組み行動できている度合い
エンゲージメントサーベイも自由記述欄を設定し、従業員の細かい意見や要望を吸い上げていきます。
関連記事:エンゲージメントサーベイの質問項目
360度評価の質問項目
360度評価の質問項目は、評価対象者の立場の違いを考慮し、「リーダー・管理職向けの項目」「一般従業員向けの項目」といった区分で構成します。
【リーダー・管理職向けの質問項目例】
・リーダーシップ能力
・業務遂行能力
・課題発見能力
・人材育成能力
【一般従業員向けの質問項目例】
・主体性
・判断力
・コミュケーション能力
・協調性
その他、評価対象者に対する期待やアドバイスを記載する自由記述欄を設定することも、360度評価をより効果的にするポイントです。
関連記事:360度評価の質問項目と質問例
パルスサーベイの質問項目
パルスサーベイの質問項目は、仕事に対する満足度、組織に対するエンゲージメント、経営理念に対する共感が中心です。その他、職場環境、ワークライフバランスといった質問項目を設定します。
【パルスサーベイの質問項目例】
・満足度、エンゲージメント
・理念、ビジョン、パーパス
・職場環境、コミュニケーション
・ワークライフバランス、ダイバーシティ
・キャリアパス、キャリア形成
・将来性、成長性
関連記事:パルスサーベイの質問項目と質問例
組織サーベイのデメリット

従業員の成長と組織の活性化に効果を発揮する組織サーベイですが、デメリットもあります。ここでは、組織サーベイのデメリットを解説します。
【組織サーベイのデメリット】
・コストが発生する
・従業員の負担が大きい
・設計を誤ると効果があがらない
詳しく見ていきましょう。
コストが発生する
組織サーベイを実施するには、様々なコストが発生します。実施担当者はもちろん、アンケートに回答する従業員にとっても、時間的コストの負担は決して軽くはないでしょう。
また、自力で実施するにせよ、外部委託するにせよ、費用的なコストが発生するのはしかたがないことです。
従業員の負担が大きい
組織サーベイは、実務と並行して行われます。日々の業務をこなしながらアンケートに回答することは、従業員の負担が大きくなることを意味します。実施時期や回答のタイミングには十分な配慮が必要です。
導入したにも関わらず、調査に集中できず適当な回答になっては意味がありません。組織サーベイは、繁忙期を避け時間的に余裕があるタイミングを見極めながら実施する。回答者及び実施担当者、双方にとって重要なことです。
設計を誤ると効果があがらない
組織サーベイは、実施する前の設計が極めて重要です。なぜなら、設計を誤ると期待する効果があがらないからです。そればかりか、コストや従業員の負担を考えれば、組織にとってマイナスになる可能性すらあります。
組織サーベイを実施するには、相応のノウハウが必要です。導入前の準備段階から実施、改善プランの立案、フォローに至るまで、設計には十分時間をかけることが重要です。
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組織サーベイは外部委託する方が失敗しない!

組織サーベイは、専門の調査会社に外部委託する方が「失敗しない」といえます。
組織サーベイを自力で実施することは、不可能ではないでしょう。しかし、デメリットをクリアし、効果的な施策にするには相応のノウハウが必要です。組織サーベイの専門会社は、導入準備から運用に至る設計、実施担当者や回答者の負担軽減対策、社内に向けた情報共有のやり方といった専門ノウハウを提供してくれます。
せっかく導入したのに、効果がなかったでは意味がありません。費用は発生しますが、質の高い調査を求めるのであれば、やはり専門の調査会社に外部委託するべきでしょう。
また、組織サーベイは一度実施したら終わりではありません。継続的に実施してこそ高い効果が望めます。中長期的に運用し、従業員と組織の成長を持続的なものにするためにも、組織サーベイは専門の調査会社に外部委託する方が「失敗しない」といえるのです。
関連記事:従業員満足度調査(ES調査)を外部委託する際のポイント
最後に

今回は、組織サーベイについて解説しました。本記事では、4つの組織サーベイを紹介しましたが、それぞれのサーベイには、それぞれの特徴があり役割が違うことが分かります。どの組織サーベイも、従業員の成長と組織の活性化に効果を発揮します。
ただし、 実施にあたっては、目的が最も重要です。「何のために実施するのか」「何を可視化したいのか」「実施後、組織はどうありたいのか」を明確にし、自社に合った組織サーベイを有効活用したいものです。
リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。第一線の専門家が監修する、「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で従業員の成長と組織の活性化を支援します。導入にあたっては、設計から実施、改善プランの立案・実行まで、横断的なサポートが可能です。
自社に合った組織サーベイを検討されている実施担当者の方は、リアルワンまでお気軽にご相談ください。お問い合わせは、下記リンクから受け付けています。