やる気のない社員の特徴と原因~周囲に与える悪影響や対処法を解説

生産性の向上は、日本の企業が抱える大きな課題。DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進と共に、社員一人ひとりには高いパフォーマンスが求められています。そのような中、「やる気のない社員」への対応は、生産性の向上のみならず、組織の活性化にとって重要なポイントといえるでしょう

そこで本記事では、やる気のない社員の特徴と原因、周囲に与える悪影響を考察。人材獲得が難しい採用市場において、解雇せず、やる気を引き出す対処法を解説します

【本記事で得られる情報】

・やる気のない社員の特徴
・やる気のない社員が生まれる原因
・やる気のない社員を放置する悪影響
・簡単に「クビ・解雇」してはいけない理由
・やる気のない社員を減らす7つの改善策

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

やる気のない社員の特徴

はじめに、やる気のない社員の特徴を考察します。

【やる気のない社員の特徴】

・仕事に対する使命感や責任感がない
・仕事が雑でミスを繰り返す
・愚痴や批判が多い
・自主的に行動することができない
・問題を発見し定義することができない

ひとつずつ解説します。

仕事に対する使命感や責任感がない

やる気のない社員は、仕事に対する使命感や責任感がありません。そもそも使命感や責任感といった感情は、仕事に向き合う「目標意識」や「目的意識」から生まれます。やる気のない社員は、仕事に対する目標や目的といった意識が希薄なのです。

使命感や責任感は、仕事の社会的意義に対する意識を高めます。これがなければ、パフォーマンスが上がらないのも当然でしょう。生産性を悪くするばかりでなく、会社の活性を下げてしまう恐れすらあるのです

仕事が雑でミスを繰り返す

やる気のない社員は、仕事が雑でミスを繰り返す傾向があります。集中力が続かず仕事がいい加減なため、頻繁にミスをしてしまいます。ミスが多くなれば、仕事のスケジューリングにも影響を与えます。

仕事が雑でミスを繰り返す社員の多くは、「学ぶ姿勢」を持っていません。なぜミスが続くのか、どうすれば失敗を減らせるのか。ミスを振り返り、失敗から学び改善しようとする姿勢が欠落しています

愚痴や批判が多い

やる気のない社員は、「他責思考」です。総じて、周囲に対する愚痴や批判が多くなります。ミスが起きても自分事として捉えず、本質的な原因に目を向けようとはしません。これも、仕事に対する使命感や責任感の欠如が原因です。

こういった社員を放置したままでは、周囲の社員が委縮し、コミュケーションが停滞するばかりではなく、仕事を進める上で欠かせないチームワークが乱れてしまいます

自主的に行動することができない

やる気のない社員は、自主的に行動することができません。言われた仕事しかやらないし、最低限のことだけ考える傾向が顕著です。優先順位や効率を意識しないため、処理に時間がかかり生産性が悪くなります。

仕事に対する社員の自主性は、生産性に大きな影響を与えます。やる気のない社員の自主性を、どのように高めていくのか。企業にとって大きな課題といえるでしょう。

問題を発見し定義することができない

やる気のない社員は、問題意識が希薄です。問題意識とは、物事の本質を捉え、自ら関わろうとする意識のこと。やる気のない社員は、問題を発見し定義することができないのです。問題を認識できなければ、解決することもできないでしょう。

問題は、顕在化しているものばかりではありません。隠れている問題もあれば、将来起こりえる問題もあります。複雑化する社会においては、問題意識を全社員が持ちコミットする姿勢が求められています。

関連記事:組織を活性化するには/方法や事例(取り組み)を紹介

やる気のない社員が生まれる原因

なぜ社員は、やる気をなくしてしまうのでしょうか?ここでは、やる気のない社員が生まれる原因を考察します。

【やる気のない社員が生まれる原因】

・人間関係のストレス
・仕事にやりがいを感じていない
・評価や待遇に対する不満
・会社の教育制度が整っていない
・私生活上の問題

詳しく解説しましょう。

人間関係のストレス

人間関係のストレスは、社員からやる気と会社に対する帰属意識を奪ってしまいます。ストレスが続くようであれば、メンタル不調に陥り離職につながる可能性すらあるのです。

多いのは、やはり上司と部下の人間関係でしょう。正しい指導をしているつもりでも、部下にストレスを与えているケースは少なくありません。対応を間違えば、パワハラ扱いになるケースさえあります

その他、意外な要因として「座席の配置」があります。「上司に近い」「座席間のスペースが狭い・離れすぎている」「視線が気になる」「フリーアドレスで落ち着かない」など、座席の配置がストレスとなり人間関係が悪化。やる気をなくしてしまいます。

関連記事:ハラスメントとは?「種類・意味」職場で起こる原因とその対策を解説

仕事にやりがいを感じていない 

仕事にやりがいを感じていない場合も、やる気をなくしてしまいます。社員はなぜ、仕事にやりがいを感じなくなるのでしょうか。その要因を、「社員サイド」と「企業サイド」に分けて考えてみましょう。

【社員サイドの要因】

・スキルと仕事がマッチしていない
・成長の実感が持てない
・仕事の社会意義を理解していない
・会社の将来に対する不安

【企業サイドの要因】

・適材適所の人材配置ができていない
・「理念・ビジョン・パーパス」が周知できていない
・中長期的なキャリアパスを提示できていない
・働き方や福利厚生といった職場環境の整備が遅れている

こういった要因が重なると、仕事にやりがいを見いだせなくなり、社員はやる気をなくしてしまいます。

評価や待遇に対する不満

評価や待遇に対する不満もまた、社員がやる気をなくす原因です。頑張りが正当に評価されていないと感じれば、社員はやる気をなくすでしょう。待遇面も同じです。待遇が成果に見合っていなければ、やる気をなくしてしまいます。

やる気の喪失は、業務効率を悪化させます。製品やサービスの質も劣化し、顧客満足度が低下。ブランドイメージは傷つき、離職者の増加が懸念されます。

仮に、離職者が増え人手不足になれば、社員一人あたりの業務負担が増加します。こうなると、社員はますますやる気をなくしてしまい、最悪、経営状態の悪化につながりかねない事態になってしまうのです。

会社の教育制度が整っていない 

やる気のない社員が生まれる原因として、会社の教育制度が整っていないことがあげられます。教育制度が整っていなければ、人材育成が進みません。成長意欲が高く優秀な人材ほど、こういう状況に不満を持ちます。社員によっては、成長機会を逃し放置されていると感じるでしょう。

人材育成には、時間がかかります。その場しのぎの教育では、社員の中長期的な成長は望めません。スキルアップや自己成長の実感が持てなければ、社員はやりがいをなくしてしまいます。教育制度の構築は、社員のやる気を維持するためにも不可欠の取り組みといえるのです。

私生活上の問題

私生活上の問題も、やる気を低下させる原因です。「家庭内不和」「金銭トラブル」「健康不安」など、私生活の問題がマイナスの影響を与えるのは想像に難くないでしょう。また、勤務時間や福利厚生、産休や育休といった休暇制度の在り方も、社員の私生活に影響を与えます

残業や休日出勤の多さは、社員のプライベートを圧迫するでしょう。産休や育休を取りづらい雰囲気は、社員にストレスを与えるばかりではなく、出産や子育てに直接「負の影響」を与えます。

社員の私生活に、会社が積極的に関与するのは難しいでしょう。だからといって、無関心はNGです。社員と良好な関係性を保つ上で、どのようなコミュニケーション環境を整えていくのか。勤務時間の見直し、また福利厚生や休暇制度の充実化と共に、クリアすべき大きな課題といえます。

関連記事:社員のモチベーションを上げる方法とは~取り組みと企業の事例を紹介

やる気のない社員を放置する悪影響

やる気のない社員は、周囲を悩ませます。放置すれば、悩みは大きくなるばかりです。ここでは、やる気のない社員が周囲に与える悪影響を考察します。

【やる気のない社員が周囲に与える悪影響】

・社員全体のモチベーションが低下する
・業務量が偏る
・優秀な社員の離職につながる

詳しく解説します。

周囲のモチベーションが低下する

やる気のない社員を放置すると、「そういった姿勢が許されるのだ」という意識が会社に広がってしまいます。こうなると、やる気のなさが波及し、社員全体のモチベーションが低下する恐れがあります

「要領よく仕事をした方が楽だ」「頑張っても意味がない」など、周りの社員が不満を持つようになり、次第にモチベーションを低下させていくのです。モチベーションの低下は、会社全体の活力を下げ、生産性や顧客満足にも悪影響を与えてしまうのです

業務量が偏る

やる気のない社員は、仕事のパフォーマンスが低く生産性が上がりません。その後始末は、周囲の社員が肩代わりすることになります。当然、業務量が偏ります。悪いことに、真面目な社員ほど多くの仕事を背負い込み、悪影響を受けやすい傾向にあります。

こうなると、真面目に頑張る社員が長時間労働になりかねません。業務量の偏りは、真面目な社員の不公平感となり、会社に対する不満へと拡大していくのです

優秀な社員の離職につながる

やる気のない社員は、社員全体のモチベーションを低下させます。さらに、業務量の偏りは不公平感を高め、会社に対する不満につながります。これでは、チームワークが乱れマネジメントも機能しなくなるでしょう

こういった状況を、優秀な社員ほど冷静に見ているものです。優秀な社員は、より良い環境に転職することができます。やる気のない社員が与える最も大きな悪影響は、優秀な社員が離職することです。転職が当たり前の時代。優秀な社員の転職を防ぐためにも、やる気のない社員への対応は必須といえます。

関連記事:社員の離職防止対策/離職率を下げるには

クビ・解雇は尚早!やる気のない社員をどうする?

やる気のない社員は、「クビ・解雇」すればよいのでしょうか。答えは、“NO”です。なぜなら、簡単に「クビ・解雇」してはいけない理由があるからです。ここでは、その理由を解説します。

【簡単に「クビ・解雇」してはいけない理由】

・労働法による解雇制限の問題
・原因が組織自体にある問題

ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

労働法による解雇制限の問題

簡単に「クビ・解雇」してはいけない理由のひとつ目は、労働法による解雇制限の問題があるからです。日本では、労働法によって解雇が厳しく制限されています。ここで、解雇について整理しておきましょう。

解雇
会社側の意思や事情によって、労働者と結んでいる労働契約を一方的に解消すること

解雇の定義からすれば、やる気のない社員を「クビ・解雇」することは不可能ではありません。しかしそこには、次のような厳しい制限があるのです。

労働契約法第16条

「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする / 労働契約法」                            

このように、労働法に照らして考えれば、「クビ・解雇」よりも「退職勧奨:退職に向けて会社側が労働者を説得し、労働者との合意のもとで労働契約の解消を目指すこと」がベターな選択といえます

原因が組織自体にある問題

簡単に「クビ・解雇」してはいけない理由のふたつ目は、原因が組織自体にある問題を無視できないからです。これは、労働法による解雇制限の問題よりも本質的な問題といえます。

先述の通り、社員がやる気をなくす原因の多くは、会社の制度や体制、環境にあります。この問題を無視しては、何も変わりません。

「クビ・解雇」の決断をする前に、会社を見直してみましょう。人材獲得が難しい時代、苦渋の決断は“やるべきことをやった後”でも決して遅くはないのです。

では、やるべきこととはどのような方策なのでしょうか。次項で詳しく解説します。

関連記事:モチベーションが下がる職場・低い社員の特徴~原因や上げ方を解説 

やる気のない社員を減らす7つの改善策

では、やる気のない社員を減らす7つの改善策を「問題の抽出~課題解決」のステップにそって解説します。

【やる気のない社員の改善策】

・サーベイを実施し組織の課題を洗い出す
・1on1ミーティングでコミュニケーションを積極的に取る
・会社の考え方や方向性を共有する
・人材育成の制度を整備する
・評価制度を見直す
・職場環境を見直す
・コンサルティングを利用する

詳しく見ていきます。

サーベイを実施し組織の課題を洗い出す

まずは、サーベイを実施し組織の課題を洗い出すことが重要です。組織課題を把握しなければ、効果的な改善策を立案することはできません。サーベイとは、組織の状態を可視化するアンケート調査のこと。従業員の声を吸い上げ、組織が内包する課題を明確化します。

実施するサーベイは、「従業員満足度調査(ES調査)」や「エンゲージメントサーベイ」がおすすめです。社員の満足度を調査する従業員満足度調査(ES調査)「思考面・情緒面・行動面」における社員のエンゲージメントの度合いを調査するエンゲージメントサーベイ

どちらのサーベイも、社員のやる気を数値化し調査結果から課題を設定。アクションプランの立案に役立ちます。※サーベイについては「組織サーベイとは?目的や種類、ツール別の質問項目を解説」をご一読ください。

1on1ミーティングでコミュニケーションを積極的に取る

1on1ミーティングでコミュニケーションを積極的に取りましょう。直接ヒアリングすることで、「仕事や組織に対する不満」「人間関係のストレス」「私生活の問題」など、日頃話すことができない社員の本音を吸い上げることができます。

1on1ミーティングのポイントは、「傾聴」と「フィードバック」です。まずは、社員の話をしっかり聴きましょう。そして、その声を受け入れることが大切です。傾聴は、信頼関係を構築すると共に心理的安全性を高め、話しやすいコミュニケーション環境を整えます

フィードバックは、単なる伝達で終わらないことを意識します。フィードバックによって、社員の課題や目標を整理しながら今後の行動指針を共有し、やる気を喚起することが重要です。

関連記事:人事評価のフィードバック方法~コメント例文や面談のポイントを解説

会社の考え方や方向性を共有する

どれだけ素晴らしい商品やサービスを開発しても、社員がその「意図」を理解していなければ、効果的なPR活動はできません。大切なことは、会社の考え方や方向性を共有することです。

まずは、「理念・ビジョン・パーパス」の周知を徹底しましょう。会社の「意図」が分かれば、会社の将来や仕事が持つ社会的意義を理解することができます。加えて、中長期的なキャリアパスを示すことで将来不安を払拭し、やりがいの向上、そしてやる気の醸成へとつなげていきましょう。

人材育成の制度を整備する

やる気のない社員を減らすために、人材育成の制度を整備します。成長意欲の高い社員に応える教育研修の実施は、会社の役割であり、中長期的なキャリアパスを提示する上でも重要です。スキルアップの場を提供し、成長に向けて伴走する姿勢を示すことで、社員のやる気を高めましょう。

OJTはもちろん、OFF-JTも積極的にとり入れ、人材育成を「制度」として確立します。資格取得の支援も、やる気の促進に効果的。社内ニーズに合った教育研修の実施が、社員のやる気に直結します。

評価制度を見直す

評価制度を見直すことも、やる気のない社員の改善策として効果的です。評価制度は、待遇にも関わる重要な制度。内容次第で、社員のやる気は大きく変化します。ここで、評価制度を見直すポイントを紹介しましょう。

【評価制度を見直すポイント】

・組織の現状分析の実施
・目的の明確化
・評価基準や評価項目の明確化
・評価者研修の実施
・周知の徹底と制度内容の共有
・定期的な見直し
・360度評価の実施

評価制度の見直しで意識すべきは、評価の正当性を確保し社員の納得感を高めることです。評価制度を、「360度評価」にすることも社員の納得感を高めます

360度評価とは、様々な立場の社員(上司・部下・同僚・他部署の社員など)が対象となる社員を多面的に評価し、その評価結果をフィードバックする人事評価のひとつです。客観性や公平性、正当性が担保されるため、社員の高い納得感が得られます。

関連記事1:360度評価とは?内容や項目~やり方やメリットデメリットを解説
関連記事2:人事評価制度を「見直す・改善する」ポイント

職場環境を見直す

職場環境の見直しも不可欠です。会社に合った柔軟な働き方の導入、残業や休日出勤の削減は、社員のワークライフバランスに直結する取り組み。福利厚生の充実化と共に、社員のやる気を高めるでしょう。

また、人事異動の見直しも職場環境の改善につながります。人事異動による仕事とスキルのミスマッチは、社員に大きなストレスを与え、やりがいを奪ってしまいます。人事異動の見直しは、社員の能力を最大化し、適材適所の人材配置を実現する上でも重要な取り組みといえるのです。

コンサルティングを利用する

社員のやる気の改善に、コンサルティングを利用する方法もあります。外部のコンサルタントを活用することで、社員の自己分析が進み課題が明確になります。コンサルティングのプロが行う客観的なアドバイスは、社員に新たな視点と気づきを与え、やる気の向上が期待できるでしょう。

また、プロのコンサルタントは「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」といったサーベイにも精通しています。プロの活用は、社員のやる気を改善させるばかりではなく、組織課題を明確化するサーベイの実施においても有効なのです。

まずはサーベイを実施し、組織の課題を見つけ出そう

社員のやる気を改善するには、まずは会社が内包する課題を把握することが不可欠。それには、本文で示した通り「サーベイ」の実施が効果的です。

サーベイを自力で行うことは不可能ではありません。ただ、自力でやるには「人的」な手間と「時間的」なコスト、専門的な「ノウハウ」が必要になるため、十分な結果が得られない可能性があります

サーベイを外部委託すると、費用が発生するのは事実です。しかし、「人的・時間的・ノウハウ的」な問題をクリアし十分な調査結果を得るためには、やはり外部プロに委託することをおすすめします

リアルワン株式会社は、調査・評価の専門会社です。信頼性の担保された従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で、従業員と組織が内包する課題を定量的に可視化します。

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