人事評価制度が失敗する原因とは?影響や改善の方法を事例と共に解説

人事評価制度を導入してみたものの、「従業員の意識が低い」「運用がうまくいかない」「制度が機能していない」と悩んでいる担当者の方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、人事評価制度が失敗する原因を考察します。

人事評価制度は、なぜ失敗するのか。失敗が組織に与える影響とは、どのようなものなのか。要因を考察しながら、改善するポイントを事例と共に解説します。

【本記事で得られる情報】

・アンケート調査に見る人事評価制度の姿
・人事評価制度が失敗する理由
・人事評価制度の失敗が組織に与える悪影響
・人事評価制度を改善するポイント
・人事評価制度を導入している企業の成功事例

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

人事評価制度は意味ない?アンケートに見る人事評価制度の姿

人的資本経営に対する意識が高まり、「評価制度」を見直す動きが広がっています。「人事評価制度は意味ない」という声があるのは事実ですが、実際のところどうなのでしょうか。

ここでは、アデコ株式会社が実施した「人事評価制度に関する意識調査」を基に、人事評価制度のリアルな姿を見ていきたいと思います。

人事評価制度に満足している従業員の割合

はじめに、「人事評価制度に満足している従業員の割合」を見てみましょう。

「あなたはお勤め先の人事評価制度に満足していますか」という問いに対して、「満足」と答えた従業員はわずか「4.4%」という結果になっています。ちなみに、「どちらかというと満足(33.3%)」を入れても「33.7%」にしかならず、多くの従業員が勤務先の人事評価制度に対して不満(62.3%)を持っていることが分かります。

人事評価制度を見直す必要があると思う従業員の割合

次に、「人事評価制度を見直す必要があると思う従業員の割合」を見てみましょう。

「勤務先の人事評価制度を見直す必要があると思いますか」という問いに対して、「77.6%」の従業員が「必要があると思う」と回答。「必要があるとは思わない」と答えた従業員は「22.4%」しかおらず、数字からは従業員の納得感を得られていない人事評価制度の姿が浮かびあがってきます

関連記事:人事評価制度とは

人事評価制度が失敗する理由とは?

数字を見れば、成功しているとは言い難い(むしろ失敗している)人事評価制度ですが、なぜうまくいかないのでしょうか。ここでは、人事評価制度が失敗する理由を考察します。

【人事評価制度が失敗する理由

・人事評価制度自体に問題がある
・人事評価制度の運用に問題がある

詳しく解説しましょう。

人事評価制度自体に問題がある

失敗する理由のひとつ目は、「人事評価制度自体に問題がある」ことです。考えられる制度上の問題を列記してみましょう。

【人事評価制度が失敗する制度上の問題】

・目的や評価基準が曖昧である
・制度設計が自社の状態と乖離している
・評価者教育がうまくいっていない

最も大きな制度上の問題は、人事評価制度の目的や評価基準が曖昧なことです。なぜ曖昧になるのか。それは多くの場合、自社の現状を把握していないことが原因です。組織のリアルな状態を把握していないため、制度設計が自社の状態と乖離しているのです。

制度を機能させるには、組織の実情を把握した上で、企業の「理念・ビジョン・パーパス」と紐づけた「評価される人材像」を設定し、制度の目的や評価基準を決定する必要があります。制度設計が固まったら、実際に評価を行う「評価者」を教育するのも失敗しないための重要な取り組みです。

関連記事:人事評価基準の作り方/評価表の項目例も紹介

人事評価制度の運用に問題がある

失敗する理由のふたつ目は、「人事評価制度の運用に問題がある」ことです。考えられる運用上の問題を列記してみましょう。

【人事評価制度が失敗する運用上の問題】

・目的や内容が理解されていない
・制度に向き合う従業員の意識が低い
・フィードバックが行われていない

最も大きな運用上の問題は、人事評価制度の目的や内容が理解されていないことです。人事評価制度は、従業員の納得感が得られなければ決してうまくいきません。制度に向き合う従業員の意識も、低くなってしまいます

他にも、フィードバックが行われていない場合も失敗につながります。人事評価制度は、導入自体が目的にならないように注意し、従業員の成長と組織の活性化を目指す運用を心がけましょう。

関連記事:人事評価制度の種類とメリットデメリット

人事評価制度の失敗例~組織に与える悪影響

人事評価制度が失敗した場合、組織にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、人事評価制度の失敗が組織に与える悪影響を考察します。

【人事評価制度の失敗が組織に与える悪影響】

・従業員のモチベーションが低下する
・生産性の低下を招く
・人事担当者の負担が増える
・離職者が増加する

ひとつずつ解説します。

従業員のモチベーションが低下する

人事評価制度に問題があると、従業員のモチベーションが低下する可能性があります。頑張りが正当に評価されなければ、従業員は「頑張ってもムダ」と考えてしまうでしょう。次第に集中力を維持できなくなり、ミスを重ね、さらにモチベーションが低下するという悪循環に陥ります。

生産性の低下を招く

モチベーションの低下は、作業効率を悪化させます。その影響は周囲に広がり、チーム全体の士気を下げてしまいます。そして最終的には、生産性の低下を招くことになってしまうのです。

人事担当者の負担が増える

人事評価制度が失敗した場合、責任を人事担当者が負うケースが多くなります。改善に向けて、失敗の原因調査や対策案の策定、制度の再構築など、人事担当者の負担が増えることが想定されます。

組織の雰囲気が悪くなる

見てきたように、人事評価制度が失敗すると、従業員のモチベーションやチームの士気が下がり、生産性が低下します。こうなると、顧客からも信用を失い組織全体の雰囲気が悪くなってしまいます

離職者が増加する

人事評価制度に問題があれば、評価に対する信頼が失われてしまいます。評価への不満は、そのまま組織に対する不信感となり離職者の増加につながるのです。

人事評価制度を「見直す・改善する」ポイント

人事評価制度の失敗は、組織に悪影響を与えます。失敗を避けるには、制度の見直しが不可欠でしょう。では、どのような点を意識して改善すればよいのでしょうか。ここでは、そのポイントを解説します。

【人事評価制度を「見直す・改善する」ポイント】

・組織の現状分析を行う
・目的を明確にする
・評価基準や評価項目を明確化する
・研修を行う
・周知を徹底し納得感を高める
・定期的に見直しを実施する

詳しく見ていきましょう。

組織の現状分析を行う

まずは、組織の現状分析を行いましょう改善は、実情を把握することから始まります。分析は、具体的な数字を基に行う「定量分析」。そして、従業員に意見を聴くことで、定量化できない部分を明確化する「定性分析」を組み合わせて行い、組織の現状を分析、実情を把握します。

目的を明確にする

何のために人事評価制度を行うのか、その目的を明確にします。それと同時に、企業の「理念・ビジョン・パーパス」に紐づいた「評価される人材像」を設定し、従業員に提示することが重要です。

評価基準や評価項目を明確化する

「業績評価・能力評価・情意評価」といった評価基準、また「何を評価するのか」といった評価項目を明確にします。評価基準や評価項目は、分かりやすい表現で言語化するのがポイントです。

研修を行う

人事評価制度をうまく運用するには、担当者の評価スキルを高める必要があります。スキルアップを目指し、研修を行いましょう。研修は定期的に実施し、制度の目的と方向性を合わせることが重要です。

周知を徹底し納得感を高める

従業員への周知を徹底し、納得感を高めます。制度の目的や内容が伝わるよう丁寧に説明すると共に、成長に向けて伴走する姿勢を示すことが重要です。

定期的に見直しを実施する

人事評価制度は、一度構築したら終わりではありません。適切に運用するには、定期的に見直しを実施することが重要です。企業を取り巻く環境は、常に変化しています。変化に合わせ、制度内容を適時見直しブラッシュアップしていきましょう

関連記事:人事評価制度の作り方~導入手順

人事評価制度の問題点をクリアする企業の導入事例

失敗しないためには、様々なハードルがある人事評価制度ですが、問題点をクリアし組織を活性化している企業も多くあります。ここでは、人事評価制度を導入している企業の成功事例を紹介しましょう。

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社

富士フイルムビジネスイノベーション(旧富士ゼロックス)では、高い業績をあげる従業員の行動特性を基準とする「コンピテンシー評価」を導入しています。同社は、1999年に人事制度改革を行い「役割基準」を設定。その基準を、コンピテンシーで明確化しています。

コンピテンシー評価によって、従業員が「やるべきこと」を主体的に考えるようになり、中長期的な目標設定やキャリアプランの構築につなげています

関連記事:コンピテンシー評価とは

GMOインターネット株式会社

GMOインターネットは、評価のばらつきを解消するため「360度評価」を導入しています。360度評価とは、対象となる従業員を「上司・部下・同僚」などが評価を行い、結果をフィードバックする評価の手法です。

GMOインターネットが掲げる「ガラス張り経営」の一環でもある360度評価によって、質の高いフィードバックを実現評価に対する従業員の納得感を高めることに成功しています。

関連記事:人事評価における360度評価(多面評価)とは

最後に

人事評価制度を失敗しないためにまず大切なことは、本文で示した通り「組織の現状分析を行うこと」です。それには、組織サーベイ」が効果的です。組織サーベイとは、従業員と組織の状態を可視化するアンケート調査のこと。組織の現状分析を効率的に行えます。

リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。科学的根拠に基づいた信頼性の高い従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で、従業員と組織の状態を「定量的かつ定性的」に可視化します。

組織の現状を分析し、人事評価制度を改善したいとお考えの人事担当者の方は、ぜひリアルワンにご相談ください。

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