「嫌がらせ」や「いじめ」によって、相手に苦痛を与える行為である「ハラスメント」。職場ハラスメントは、近年増加傾向にあり、ハラスメント防止への対応は企業にとって大きな課題となっています。
「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」「パワハラ防止法」といった法律によって、「セクハラ・マタハラ・パワハラ」は防止措置が企業に義務付けされています。しかし、ハラスメントはそれだけではありません。様々なハラスメントを防止していくには、まずハラスメントに対する理解を深めることが重要です。
本記事では、ハラスメントの種類や意味を解説すると共に、職場で起こる原因、また、ハラスメントをどう防止していくのか、その対策について解説します。
【本記事で得られる情報】
・ハラスメントの種類や意味
・ハラスメントが起こる原因
・ハラスメントがもたらすリスク
・ハラスメント防止の重要性
・ハラスメントを防止する施策
目次
ハラスメントとは?意味や種類を簡単に解説

はじめに、ハラスメントの意味と種類について解説します。
ハラスメントの定義
「ハラスメント:harassment」とは、相手に対して不快感を与える言動や行動のことです。「嫌がらせ」や「いじめ」などの迷惑行為によって、人の尊厳を傷つけたり不利益を与えたりすることを指します。
ハラスメントは、故意に行ったかどうかは関係ありません。被害者が苦痛を感じ、不利益を被ったと思えば、それは「ハラスメントに該当する」ことになります。
ハラスメントの種類
現在では、40種類以上もあると言われるハラスメントですが、ここでは職場で起こりがちな6つのハラスメントについて解説します。
【6種類の職場ハラスメント】
・セクシャルハラスメント
・パワーハラスメント
・モラルハラスメント
・マタニティハラスメント
・ジェンダーハラスメント
・カスタマーハラスメント
詳しく見ていきましょう。
セクシャルハラスメント
セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、本人の意に反する性的な嫌がらせのことです。性別に関係なく行われますが、男性から女性へのケースが多くなっています。
【セクシャルハラスメントに該当する行為】
・意味もなく異性の身体に触れる
・性的な話や冗談を言う
・性的な写真を見せる
・しつこく誘う
最近では、本人の意に反するようであれば、同性間でもセクハラと認定されるケースも起こっています。
パワーハラスメント
パワーハラスメント(パワハラ)とは、優越的な立場を利用し、適正範囲を超えて従業員に身体的・精神的苦痛を与える行為です。
【パワーハラスメントに該当する行為】
・殴る、蹴る、叩く
・叱責を続ける
・脅迫
・情報共有をしない
パワハラは、「上司から部下」「先輩から後輩」だけではなく、上司に対する「逆パワハラ」や「集団パワハラ」といったケースもあります。
モラルハラスメント
モラルハラスメント(モラハラ)とは、言葉や態度によって継続的に相手を傷つけ、精神的苦痛を与える行為です。暴力をともなわないのが特徴です。
【モラルハラスメントに該当する行為】
・無視
・誹謗中傷
・仲間外れ
・過度な介入
モラハラは、立場や力関係ではなく、個人間の関係性の中で行われる点でパワハラと区別されます。
マタニティハラスメント
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、「妊娠・出産・育児」を理由に、女性に対して嫌がらせを行うことです。
【マタニティハラスメントに該当する行為】
・産休、育休、時短勤務などが拒否される
・退職を促される
・嫌味や皮肉を言われる
・評価が下がる
マタハラは、女性のキャリアに悪影響を与えるばかりでなく、出産に対する心理的ストレスを増大させる可能性があります。
尚、男性が子育てに関わることで、不当な評価や嫌がらせを受けることをパタニティハラスメント(パタハラ)といいます。
ジェンダーハラスメント
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)とは、性別を理由にした差別や偏見、嫌がらせのことです。
【ジェンダーハラスメントに該当する行為】
・「男のくせに、女のくせに」を強調する
・「男らしく、女らしく」を押しつける
・「男性だから、女性だから」を基準にする
・プライベートへの干渉
性別を理由に、仕事に差をつけたり役割を決めたりするのがジェンハラの特徴です。LGBTQ+といった、性の多様性についての差別的発言もジェンハラに該当します。
カスタマーハラスメント
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客が企業の商品やサービスに対して、理不尽なクレームや不当な要求を行うことです。
【カスタマーハラスメントに該当する行為】
・暴言
・脅迫
・土下座の要求
・差別的な発言
顧客の要求に妥当性があれば、カスハラにはあたりません。正当なクレームなのかカスハラなのか、見極める対応マニュアルが求められます。
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なぜ職場でハラスメントが起こるのか?原因や理由を解説

では、なぜハラスメントが起こるのでしょうか。ここでは、その原因や理由を解説します。
【職場でハラスメントが起こる原因・理由】
・コミュニケーション不足
・企業の文化や価値観
・労働条件や職場の環境
・アンコンシャスバイアス
ひとつずつ見ていきます。
コミュニケーション不足
コミュニケーションが不足すると、お互いの考え方や価値観への理解が進まず、認識に齟齬が生まれます。認識の違いは、言葉や行動に対する誤解を生み、それがハラスメントを招いてしまうのです。
企業の文化や価値観
企業の文化や価値観は、ハラスメントの発生に影響を与えます。「失敗が許されない」「ねばならない・べき思考が強い」「多様性がない」など、企業固有の文化や価値観がハラスメントにつながります。
労働条件や職場の環境
「長時間労働は当たり前」「休みが取りにくい」。こういった職場の環境は、従業員の心身を疲弊させるでしょう。厳しい労働条件は、仕事や仲間に向き合う心の余裕を奪ってしまいます。その余裕のなさが、ハラスメントにつながるのです。
アンコンシャスバイアス
アンコンシャスバイアスとは、無意識の思い込みや偏見のことです。例えば、「部下は上司より早く帰ってはいけない」「お茶をだすのは女性の仕事」「男は育児より仕事が大切」など。無意識の思い込みや偏見は、ハラスメントを招きます。
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ハラスメントがもたらすリスクと防止の重要性

ここでは、ハラスメントが企業にもたらすリスクと、ハラスメントを防止する重要性について解説します。
職場ハラスメントによる企業のリスク
ハラスメントが企業にもたらすリスクには、次のようなものがあります。
【ハラスメントによる企業のリスク】
・生産性の低下
・成長力の低下
・離職の増加
・法的責任の発生
・損害賠償の請求
ハラスメントは、従業員のモチベーションを低下させます。モチベーションの低下は、生産性を低下させ、ひいては企業の成長力を低下させるのです。そのような職場環境では、離職の増加が懸念されます。
さらに、ハラスメントを放置すれば、最悪の場合、法的責任を問われ損害賠償を請求されることにもなりかねません。
職場ハラスメントを防止する重要性
リスクを回避するためにも、職場ハラスメントの防止は不可欠でしょう。それだけではありません。様々なことが複雑化し、先が見えにくくなった時代において、全ての従業員が自分らしくいきいきと働ける職場を作ることは企業の大きな役割といえます。
それには、ハラスメントが起こらない職場環境の整備が重要であり、ハラスメントの防止は、企業経営にとって最重要課題といえるのです。
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企業が行うべきハラスメント対策

では、企業が行うべきハラスメント対策を見ていきましょう。
【企業が行うべきハラスメント対策】
・組織の現状を把握する
・ハラスメント研修を実施する
・ハラスメントに対する社内ルールを明確にする
・ハラスメント相談窓口を設置する
詳しく解説します。
組織の現状を把握する
まず大切なことは、組織の現状を把握することです。現在、自社はどのような状態なのか。どんな問題を抱えているのか。何を改善すればよいのか。会社が抱える課題を洗い出していきます。尚、組織が抱える課題を可視化するには、組織サーベイが有効です。
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ハラスメント研修を実施する
ハラスメント研修を実施し、「ハラスメントとは何か」を全社的に共有しましょう。ハラスメント問題の難しさは、誰もが被害者にも加害者にもなり得ることです。それを防ぐには、ハラスメントに対する理解を深める必要があります。
「昔はこうだった」は通用しません。ハラスメントの種類や内容、行ってはいけない理由を伝え、世代に捉われない新しい価値観の共有が重要です。
ハラスメントに対する社内ルールを明確にする
ハラスメ ントに対する社内ルールを明確にします。会社が取り組むハラスメント対策の方針やルールを設定し、就業規則などに規定、従業員に周知します。被害者への対応、また加害者に対する措置を明確にすることも忘れてはなりません。
ハラスメント相談窓口を設置する
ハラスメント相談窓口を設置することも重要です。被害者はもちろん、ハラスメントが疑われる状況ついて相談できる窓口を整えることが、早期発見、防止につながります。
プライバシーに配慮し、相談にネット環境を利用するのも有効です。社内で相談窓口を設置することが難しい場合は、外部機関に委託することも視野に入れましょう。
最後に

ハラスメントが放置される環境で、働きたいと思う人材はいません。従業員一人ひとりが自分らしさを発揮し、のびのびと働いていくためにも、ハラスメントが起こらない環境整備が求められています。
ただし、それにはまず自社の現状を把握する必要があります。自社の状態、そして課題を可視化するには、先述の通り組織サーベイが効果的です。
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ハラスメント対策に向け、自社の状態、そして課題を把握したいとお考えの企業様は、リアルワンの組織サーベイをぜひご活用ください。