様々な従業員が評価を行う人事評価システムが「360度評価」です。多面的な視点を取り入れることで、公平かつ的確な人事評価を実現し従業員の成長や組織の活性化を図ります。
この360度評価で、重要な要素となるのが「評価項目」です。360度評価の成功は「適切な評価項目を作成することからはじまる」といっても過言ではありません。本記事では、360度評価における評価項目の具体例と共に作成ポイントや質問例を解説します。
▼本記事で得られる360度評価の情報
・評価項目の具体例
・評価項目の作成ポイントや質問例
・360度評価実施の流れ
360度評価の概要
はじめに、360度評価の概要を解説します。
360度評価とは?
360度評価とは、評価対象者の行動や職務遂行能力を様々な立場の従業員(評価者)が評価し、得られた評価結果を基にフィードバックを行う人事評価の手法です。
複数の評価者が多面的な視点から評価するため「多面評価」とも呼ばれ、上司が部下を評価する従来型の人事評価とは一線を画しています。
関連記事:360度評価とは?導入する目的やメリット・デメリット、項目を解説
360度評価の目的
360度評価の目的は、次の3つです。
【360度評価の目的】
1.客観的かつ公平な評価の実現
2.従業員特性の的確な把握
3.行動変容の促進
この3つの目的をクリアし、従業員の成長と組織の活性化を図ることが360度評価の大きな目的です。
360度評価で期待できること
360度評価で期待できることを整理してみましょう。
【360度評価で期待できること】
・人事評価に対する納得感の向上
・他者評価と自己評価を比較することによる改善点への気づき
・自己特性の客観的な把握
・従業員同士の関係性の把握
360度評価のデメリット
360度評価は、多様な視点から評価することで、従業員の能力や行動を客観的に把握し、成長を促すための評価制度です。しかし下記のようなデメリットもあるため、導入・運用には十分な注意が必要です。
【360度評価のデメリット】
・主観的な評価になりやすい
・忖度する可能性がある
・従業員の関係性が悪化するケースがある
・「人・時間・費用」的なコストが発生する
・運用を間違うと効果が得られない
評価者に対する理解が深まっていないと、評価者の好き嫌いや思い込み、人間関係が評価に影響を及ぼし、主観的になりやすくなります。また、評価後の関係性を考えて「余計な評価は控えよう」「自分も悪い評価をされたくない」「関係性を壊したくない」といったバイアスが働く恐れもあります。
360度評価は、公平かつ的確な人事評価を実現し従業員の成長や組織の活性化を図る有効な人事制度ですが、これらの点に留意した上で効果的に運用する必要があります。
関連記事:360度評価とは?導入する目的やメリット・デメリット、項目を解説
360度評価の評価項目とは?
360度評価の評価項目は、評価対象者の役割や課題といった立場の違いを考慮し、次のような区分けで作成します。
【360度評価の評価項目】
・リーダー・管理職向けの評価項目
・一般従業員向けの評価項目
リーダー・管理職向けの評価項目
リーダー・管理職向けの評価項目で中心となるのは「マネジメント能力」です。日頃から、効果的なマネジメントができているのかを評価する項目を設定します。
具体的には、目標達成に向けチームのメンバーに働きかる「リーダーシップ能力」。業務を最後までやり遂げる「業務遂行能力」。現状を分析し課題を明確にする「課題発見能力」。チームのメンバーを育てる「人材育成能力」などです。
リーダー・管理職向け評価項目の質問例
評価項目ごとに、具体的な質問例を紹介します。
【リーダーシップ能力】
・日頃からリーダーシップを発揮している
・チームメンバーのモチベーションを引き出している
・メンバーの意見を尊重しながら仕事をしている
【業務遂行能力】
・業務を遂行するために必要な専門スキルや知識を持っている
・業務を遂行するにあたり状況に応じた対応をしている
・メンバーや関連部署と連携しながら業務を行っている
【課題発見能力】
・管理職として的確な課題発見ができている
・組織の課題を発見し適切な解決策が提示できている
・環境変化を察知し解決すべき課題を考えている
【人材育成能力】
・適切なフィードバックやフォローができている
・メンバーの良いところを見つけ成長を促している
・メンバーごとに目標を設定し理解を深めている
一般従業員向けの評価項目
一般従業員向けの評価項目で中心となるのは「仕事に対する姿勢」です。日頃から、成果につながる行動を自らとっているのかを評価する項目を設定します。
具体的には、自分で考え行動する「主体性」。業務を遂行する「判断力」。自らの言葉で話し、人の意見を聴く「コミュニケーション能力」。チームメンバーとしての「協調性」などです。
一般従業員向け評価項目の質問例
評価項目ごとに、具体的な質問例を紹介します。
【主体性】
・指示待ちではなく自分で考え工夫しながら行動できる
・変化に応じて学びを継続し成長を目指している
・課題を周囲や環境のせいにせず自分事として捉えている
【判断力】
・責任感をもって意思決定し業務を遂行している
・広い視野で物事を捉え状況を判断している
・予期せぬ問題にも冷静に対処し適切な決断をしている
【コミュニケーション能力】
・周囲と適切にコミュニケーションをとっている
・周りの意見や提案に耳を傾けている
・わからないことがあれば積極的に質問をしている
【協調性】
・周囲のアイデアを受け入れ協力しながら仕事をしている
・課題を解決するために提案をしている
・感情をコントロールしメンバーに敬意を払っている
関連記事:360度評価・評価項目のテンプレート
360度評価の「自由記述」とは?
自由記述とは、評価対象者をコメントで評価することです。評価者は、自分の意見を自由に記します。ただ「どのように書けばよいかわからない」といった評価者が多いのも事実です。
自由記述欄には、「評価対象者への期待」や「建設的で具体的なアドバイス」を記し、評価対象者が成長の糧にできるようにします。具体的な質問例を紹介します。
【自由記述の質問例】
・対象者の強み(優れている点)を自由に書いてください
・対象者の弱み(改善を望む点)を自由に書いてください
・対象者が強みを発揮し成果につながったことを自由に書いてください
・対象者が弱みを克服し得られた成果を自由に書いてください
関連記事:360度評価・自由記述のコメント例
360度評価の評価項目を作成する際のポイント
評価項目を作成する際は、次のポイントを意識しましょう。
【評価項目の作成ポイント】
・評価項目は対象者の立場に応じて作成する
・設問数は「多すぎず少なすぎず」を意識する
・回答形式は選択式と自由記述式で構成する
評価項目は対象者の立場に応じて作成する
評価項目は対象者の立場に応じて作成します。リーダー・管理職に求められるものと、一般従業員に求められるものが異なるのは明白でしょう。
立場やポジションごとに評価項目を作成することで、評価対象者をより的確に評価できます。また、評価対象者ごとに評価に取り組むという姿勢が、360度評価に対する信頼性も高めます。
設問数は「多すぎず少なすぎず」を意識する
設問数が多すぎると、失敗する可能性が高くなります。多すぎる設問が評価者の負担となり、評価の精度を下げてしまう恐れも。
設問数は「多すぎず少なすぎず」を意識します。具体的には20~50問。回答時間は、15分~20分が目安です。評価者が捉え方を迷わない質問文にすることも回答のしやすさとなり、負担の軽減につながります。
回答形式は選択式と自由記述式で構成する
評価の回答形式は「選択式」と「自由記述式」で構成します。選択式の回答段階は、4~6段階が一般的です。「どちらともいえない」が集中する中心化傾向を避けたい場合は、偶数段階を設定します。
自由記述形式を加えることで、より具体的な評価かつ選択式評価の補足になるため、評価対象者の納得感も高くなります。ただし、コメント次第では評価対象者が落ち込む可能性もあるので、記述には注意が必要です。
関連記事:360度評価を失敗する理由
360度評価~実施の流れ
360度評価は、次の流れで進めます。
【360度評価実施の流れ】
ステップ1:実施目的・活用方法を決定する
ステップ2:評価対象者・評価者を選定する
ステップ3:実施方法を決める
ステップ4:運用の範囲・ルールを決める
ステップ5:スケジュールを決定する
ステップ6:評価項目・設問を作成する
ステップ7:従業員へ周知する
ステップ8:360度評価を実施する
ステップ9:フィードバックを行う
ステップ1:実施目的・活用方法を決定する
はじめに、360度評価を「何のために行うのか」という実施目的、評価結果を「どのように活用するのか」という活用方法を決定します。
実施目的や活用方法は、従業員の納得感を醸成する大切な要素です。時間をかけ丁寧に策定しましょう。
ステップ2:評価対象者・評価者を選定する
評価対象者と評価者を選定します。評価対象者は、リーダー・管理職と一般従業員といった区分けで選ぶ方法、部署やプロジェクト単位で選ぶ方法があります。
評価者選定の注意点は「評価対象者をよく知っていること」です。一緒に仕事をしている関係性の深い従業員を中心に、対象者1人あたり5~10人選びます。
ステップ3:実施方法を決める
実施方法は、Webまたは冊子を使います。回答や集計の面でWebの利便性が高いため、最近はWebの活用が主流です。
実務は、自力で行う方法と外部に委託する方法があります。「人・時間」的なコスト、ノウハウを考えれば外部の専門会社に委託する方がベターでしょう。
ステップ4:運用の範囲・ルールを決める
運用に関する範囲とルールを決めます。
【運用の範囲とルール】
・活用範囲:人事評価に反映するのか、配属や異動の参考にするのか
・閲覧範囲:結果の閲覧は評価対象者だけか、人事や上司、経営者に開示するのか
・実施回数:1回のみか継続的に実施するのか
・回答方式:回答は匿名式か記名式か
ステップ5:スケジュールを決定する
事前準備から実施、フィードバックまで、一連のスケジュールを決定します。
目的を達成するために必要なステップを網羅し、評価に影響を与える可能性がある人事考課の時期や繁忙期を避け、自社にとって最適なスケジュールを決定します。
ステップ6:評価項目・設問を作成する
評価対象者の立場やポジションごとに、評価項目と設問を作成します。
360度評価は、従業員の成長と組織の活性化を図るものです。評価項目や設問は、実施後のアクションプランにつなげることを意識して作成しましょう。
ステップ7:従業員へ周知する
従業員への周知を行います。大切なことは、従業員の納得感を高めること。360度評価はセンシティブな面を持つため、周知は特に重要です。次の点を丁寧に説明しましょう。
【従業員への周知ポイント】
・実施目的や活用方法
・得られる効果
・実施方法、運用の範囲とルール
・実施スケジュール
・フィードバックの方法
・相談窓口の利用方法
・評価対象者と評価者の選定理由
ステップ8:360度評価を実施する
従業員の納得感が得られたら、360度評価を実施します。期間中は状況を確認しながら、回答が進まない場合はメッセージを送り励まします。
実行の途中で質問や問い合わせが発生した場合は、しっかり対応すると共に全てを記録に残し、今後に活かしていきましょう。
ステップ9:フィードバックを行う
360度評価は、実施してからが始まりです。評価結果のフィードバックは、必ず実行しましょう。
フィードバックは、伝え方次第で効果が大きく変わります。評価対象者一人ひとりに寄り添い、フィードバックセッションや1on1ミーティングを通じて、慎重かつ丁寧に行いましょう。
関連記事:360度評価の導入事例
最後に
適切な評価項目の作成は、360度評価の成否に直結します。ただ評価項目の作成や、360度評価を実施するには専門的なノウハウが必要です。さらに、実施担当者の人的・時間的なコストを考えれば、費用が発生しても専門の調査会社に依頼する方がベターでしょう。
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