従業員満足度調査を“組織の健康診断”として経営指標の一つに位置づけ、定期的に実施する企業が多くなりました。しかし、組織・従業員の活力を的確に把握する役割を担う一方で、正しく分析するのが難しいという側面もあります。
本記事では、従業員満足度調査の分析方法を解説するとともに、調査結果を次の施策・行動に活かすために留意すべき点をまとめました。ぜひ参考にしてください。
【本記事で得られる情報】
・従業員満足度調査の集計・分析方法
・分析結果を次の施策につなげるためのポイント
目次
従業員満足度調査(ES調査)の分析方法

従業員満足度調査の数値を様々な角度から見ることで、自社の課題が明確になり、有効な施策につなげることができます。調査結果の集計・分析手法として用いられるのは、主に次の5つです。
- 基本統計量
- クロス集計
- 経年比較
- 他社比較
- 相関係数
一つずつ見ていきましょう。
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基本統計量
基本統計量とは、データ全体の傾向や特徴をつかむための分析手法のことです。基本統計量の代表値として、主に次のものがあります。
例)
- 割合
- 平均値
- 最大値・最小値・中央値
たとえば、「全体満足度70%、平均値4.0」「仕事内容への満足度75%、職場仲間への満足度70%、待遇への満足度65%」というように、調査結果の全体傾向をひと目で把握することができます。
まずは基本統計量で全体的な傾向・特徴をつかんでから詳細分析に入っていくことで、データを正確に読み解きやすくなります。
クロス集計
クロス集計とは、2つ以上の質問項目をクロスした数値を見る手法のことです。次のような分析ができます。
例)
- 属性(性別・勤続年数・部署・役職など)×全体満足度
- 属性(性別・勤続年数・部署・役職など)×領域別満足度(仕事内容・組織・職場仲間・待遇)
たとえば、「性別によって満足度に差がある」「部署によって領域満足度が大きく異なる」などの数値がわかれば、自社の課題を捉えやすくなります。
また、クロス集計は「○○部×性別×満足度」のように3つ以上の項目を掛け合わせることも可能で、より詳細に組織課題の実情をつかむことができます。ただし、掛け合わせが多くなりすぎるとサンプル数(n数)が少なくなり、データの信頼性が損なわれることがあるため、分析の精度を担保できるように配慮する必要があります。
経年比較
従業員満足度調査を継続的に実施することで、経年変化を確認できます。施策による成果を翌年の調査で数値として確認できるため、基本的には継続実施をおすすめします。ただし、経年変化を見たい場合は、過去の結果と正しく比較できるよう質問項目を変えないようにするなど、調査設計の段階で留意すべき点があります。
他社比較
ベンダーやコンサルティング会社などを活用することで、従業員満足度の全国平均や業界平均、ベンチマーク企業との比較を行うことも可能です。全国・業界平均における自社の位置や水準を客観的に把握したい場合に役立つほか、自社の調査結果を見ているだけでは見落としがちな課題を発見できたり、満足度向上のヒントを得られたりすることもあります。
相関分析
相関分析とは、相関係数(2つのデータにおける関係性の強さを表す数値)を用いて2つの要素の関係性を明らかにする手法です。一方の数値が変化すると、もう一方の数値が増加・減少する場合、相関関係にあるという見方をします。
従業員満足度調査では、全体満足度に大きく影響している要素を特定したい場合に役立ちます。
例)
- 全体満足度に大きな影響を与えている項目は何か
- 全体満足度が高い従業員は、どの項目にもっとも満足しているか
- 全体満足度が低い従業員は、どの項目にもっとも不満を抱いているか
たとえば、「経営方針への共感」よりも「仕事内容へのやりがい」の相関係数が高い場合、全体満足度を高めるには仕事の意義や責任、得意なことを活かせる機会など、仕事内容へのやりがいを高めるための施策が有効と判断できます。
または、「職場仲間」に関する不満が全体満足度の低下と相関関係にあることがわかれば、職場内のコミュニケーションを見直す必要があるなど、問題点を抽出しやすくなります。
分析結果の効果的に活用するポイント

従業員満足度調査を分析したものの次の施策が定まらない、または行動につなげる方法がわからないという声も聞かれます。ここでは、分析結果を次のアクションにつなげるために留意すべき点を見ていきます。
施策の優先度を判断できるように分析する
従業員満足度調査によって様々な組織課題が見つかり、何から着手すべきか迷う場合があるでしょう。施策の優先度を判断する際に役立つのが、下図のように整理するポートフォリオ分析です。

縦軸に各項目の満足度、横軸に全体満足度への影響度を置いて整理します。全体満足度への影響度は、相関分析から算出しましょう。「各項目への満足度が低く、全体満足度への影響度が高い」右下枠に当てはまるものが重点的に改善すべき項目となります。
フィードバックを適切に行う
従業員満足度調査の集計・分析が完了したら、速やかに従業員にフィードバックしましょう。経営層にとっては耳が痛い結果が出ることもありますが、調査結果の開示を躊躇すると、従業員から次回の調査で前向きな協力を得られなかったり、会社への不信感につながったりしてしまう可能性もあります。調査結果は、できる限り包み隠さず開示することをおすすめします。
フィードバックでとくに留意したいのは、組織の長所と課題を明確にした上で「どのような改善策が有効か」をマネジメント層と従業員が“我が事”として取り組めるように推進することです。人事部門の一方向的な要求にならないよう、現場を巻き込む姿勢が大切です。
PDCAを回せる体制をつくる
従業員満足度を高めるための施策を実行しても、思ったような成果が出ないこともあれば、成果が目に見えるまで期間を要することもあります。そのため、従業員満足度を継続的に高めていくには「アクションプランの策定→施策実施→効果検証→改善」のPDCAをしっかり回せる体制をつくることも重要なポイントとなります。
ある企業の例では、現場のマネジメント層が従業員の声を拾い上げながら柔軟に施策の軌道修正を行い、成果につなげているケースもあります。人事部門と事業部門の役割を明確にして、継続的に従業員満足度向上の取り組みが推進される仕組みを構築するのも良い方法です。
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「ES(従業員満足度)なくしてCS(顧客満足度)なし」といわれるように、従業員満足度は企業の成長土台となっている認識が定着しつつあります。一方で、組織課題を的確に抽出するための分析には専門的な知見・ノウハウが必要なことから、従業員満足度調査を実施したものの「有益な情報を得られなかった」「次の行動計画に落とし込めなかった」というケースも見られます。
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