様々な立場の従業員が、評価項目にそって対象者を評価し、フィードバックを行う評価の手法が「360度評価」です。ただ、上司が部下を評価する従来の評価制度とは一線を画すため、360度評価の導入・活用には独特の難しさがあります。では、何を意識して実施すれば良いのでしょうか。
本記事では、360度評価を実施、成功させるためのポイントを、評価項目と職種別のコメント例と共に解説します。必要箇所を入力するだけでダウンロードできる、「360度評価の無料テンプレート(Excelファイル)」もご用意(無料テンプレートの特徴は「360度評価を成功させるポイント」をご覧ください)。ぜひご活用ください。
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【本記事で得られる情報】
・360度評価の無料テンプレートがダウンロード可能
・360度評価の意味や目的
・360度評価を実施する際のポイント
・360度評価の評価項目
・360度評価の“職種別”コメント例
・360度評価を成功させるポイント
360度評価とは?
360度評価とは、対象となる従業員を様々な従業員(上司・部下・同僚・他部署の従業員・取引先の従業員など)が評価を行い、結果をフィードバックする評価手法のことです。評価者は、項目ごとに設定された質問に答える形で評価を行います。
質問数は、20問~50問。実施頻度は、年に1回、または2年に1回が一般的です。複数の従業員が多面的に評価を行うことから「多面評価」とも呼ばれています。
関連記事:360度評価とは?メリットや活用事例、注意点を解説
360度評価の目的

では、360度評価の目的を見ていきましょう。
【360度評価の目的】
・公平な評価の実現
・人材育成を促進し従業員のモチベーションを高める
・従業員満足度やエンゲージメントを向上させる
・ハラスメント防止や対策
詳しく解説します。
公平な評価の実現
360度評価によって、公平な評価が実現できるでしょう。様々な立場の従業員が、多面的に評価を行う360度評価は、上司が部下を一方向的に評価する従来型の評価手法とは大きく異なります。評価のバラツキやブレ、好き嫌いといったバイアスを防ぎ、公平性と客観性の担保された評価制度を実現できます。
人材育成を促進し従業員のモチベーションを高める
360度評価は、「強み・弱み」「できる・できない」といった従業員の特性を明らかにします。その特性を能力開発とリンクさせれば、人材育成を促進することができるでしょう。会社が行う積極的な人材育成は、従業員の成長性を高め、仕事に対するモチベーションを高めることにつながります。
従業員満足度やエンゲージメントを向上させる
成長の実感が得られれば、従業員はロイヤルティ(愛社精神・忠誠心)を高めます。ロイヤルティが高まれば、従業員の意識が前向きになり組織自体が活性化するでしょう。活性化した組織の中では、組織に対する満足度が高くなります。360度評価は、従業員満足度やエンゲージメントを向上させるのです。
ハラスメント防止や対策
360度評価は、ハラスメントの防止や対策にも効果的です。360度評価は、対象となる従業員を多面的に評価するため、内包するハラスメントの状態を可視化することができます。“ハラスメントの芽”をいち早く見つけることで、発生を未然に防いだり早期解決につなげたり、有効な対策を打つことができるのです。
関連記事1:360度評価がハラスメント対策に有効な理由とは
関連記事2:ハラスメントとは?「種類・意味」職場で起こる原因とその対策を解説
360度評価を実施する際のポイント

ここでは、360度評価を実施する際のポイントを解説します。
【360度評価を実施する際のポイント】
・実施方法と評価基準の共有
・フィードバックを必ず行う
・選択式設問と自由記述式設問を用意する
詳しく見ていきましょう。
実施方法と評価基準の共有
360度評価を実施する際は、実施方法と評価基準の共有が必須です。「どのようなやり方で実施するのか」、その方法を明確にし、全従業員に対する共有を徹底、理解を深めます。また、「何をどのように何段階で評価するのか」といった評価を行うための基準(評価ルールや評価項目)の共有も同時に行います。
関連記事:360度評価の失敗例
フィードバックを必ず行う
360度評価を実施した後は、必ずフィードバックを行いましょう。360度評価は、実施すること自体が目的になってしまっては意味がありません。評価結果を基にした丁寧なフィードバックが、対象者の気づきとなり、行動変容につながります。フィードバックは、主観を入れず具体的な目標を設定することがポイントです。
選択式設問と自由記述式設問を用意する
360度評価の設問は、「選択式設問」と「自由記述式設問」を用意します。選択式設問とは、回答を「4~6段階」の中から選んでもらう設問のことです。あやふやな回答を避けたければ、「どちらともいえない」をなくし偶数段階で設定します。
自由記述式設問とは、自由記述欄に評価者の意見を記載してもらう設問のことです。自由記述欄を設けることで、評価項目に設定できなかった評価対象者の問題点や課題、ハラスメントなどに対する評価者の意見を記載することができます。
関連記事:360度評価の「自由記述」とは?
360度評価の重要な評価項目

360度評価で重要になるのが「評価項目(評価する内容)」です。次は、この評価項目を見ていきましょう。今回は、360度評価の評価対象となるケースが多い「リーダー・管理職向け評価項目」の一例を紹介します。
【360度評価「リーダー・管理職向け」の評価項目】
・リーダーシップ能力
・業務遂行能力
・課題発見能力
・人材育成能力
評価項目は、評価しやすいように分かりやすく言語化するのがポイントです。それぞれ、具体的に紹介しましょう。
リーダーシップ能力
・日頃からリーダーシップを発揮しチームを引っ張っている
・メンバーのモチベーションを引き出し、目標達成を目している
・メンバーの意見を尊重しフォローしながら業務を行っている
業務遂行能力
・業務を遂行するにあたって必要になるスキルや知識を持っている
・状況に対応した適切な指示出しを行っている
・チームのメンバーや関連する部署と連携し業務を遂行している
課題発見能力
・リーダー、管理職として改善すべき課題を見つけている
・発見した課題に対して有効な解決策を示すことができている
・ビジネス環境の変化に応じた問題を発見し課題を設定している
人材育成能力
・メンバーの成長につながるフィードバックを行っている
・メンバーの強みを伸ばし成長を促す意識づけができている
・メンバーに合わせた目標を設定し達成に向けてサポートしている
関連記事:360度評価における評価項目とは?作成ポイントや質問例を解説
360度評価のコメント例

360度評価で“部下が上司”を評価する際、頭を痛めるのが自由記述欄に「何をどのように書くのか」でしょう。ここでは、その例文を紹介します。今回は、職種別(営業職・事務職・技術職)のコメント例を記載ポイントと合わせて紹介します。
営業職の場合
営業職は、実績が数字で表れます。ただ、数値化できない部分をどう評価するのかが重要なポイントです。数字にとらわれ過ぎず、日常の動きにもフォーカスしましょう。
【営業職“部下から上司”へのコメント例】
クレーム対応に悩んでいたとき、積極的にフォローしてもらいました。ただ単にアドバイスをいただくのではなく、クレームを解決するプロセスを教えていただきました。これまでにない視点だったので、大変参考になりました。
周囲のサポートもありましたが、おかげでクレームを解決することができました。この出来事で、クレームを解決するにはプロセスが重要であり、「顧客とのその後の関係性を決める」ことが分かりました。今後も、クレーム対応や課題解決スキルを○○課長から吸収していきたいと思っています。
事務職の場合
正確性と共に、効率化に取り組む姿勢を求められるのが事務職です。それだけではなく、顧客や他部署と関わる柔軟性や対応力も意識する必要があります。
【事務職“部下から上司”へのコメント例】
新しいシステムの導入を会社に提案していただき、業務効率が大幅にアップしました。チーム全体のことだけではなく、各メンバーに対するフォローも丁寧で、スキルアップをサポートしていただいています。
他部署とのコミュニケーションも積極的で、柔軟性や対応力をお持ちだと思っています。クライアント対応も、学ぶことばかりです。ひとつお願いを言わせていただければ、チーム内でもう少し情報を共有していただければ、ますます効率がアップすると思います。
技術職の場合
技術職の場合、技術力やスキルばかりではなく、「なぜ技術があるのか」「スキルをどう活かしているのか」といった部分に焦点を当てることが重要です。部下を育成する指導力も評価のポイントです。
【技術職“部下から上司”へのコメント例】
常に新しい技術を学び、メンバーに知見を提供されています。検査装置の開発プロジェクトにおいても、斬新なアイデアを提案されており、技術面における他社との差別化において、大きく貢献されています。
クライアント立ち合いの元での設備トライもクリアし、高い評価をいただくことができました。日頃から、技術的なノウハウも積極的に教えていただき、同じ部署で働けることに喜びを感じています。可能であれば、情報の入手方法を教えていただけたら嬉しいです。
関連記事:360度評価“部下から上司”へ改善点や強みをコメントする際のポイント
360度評価を成功させるポイント

それでは、360度評価を成功させるポイントを解説します。
【360度評価を成功させるポイント】
・事前準備を徹底する
・継続的な制度の見直しと改善を行う
・360度評価のテンプレートをダウンロードする
・外部の調査会社に依頼する
詳しく見ていきましょう。
事前準備を徹底する
導入・運用前の事前準備を徹底するのは、必須といえます。ここで言う事前準備の徹底とは、従業員への周知を徹底することです。360度評価の制度内容はもちろん、導入目的や運用ルール、評価基準や評価項目、フィードバックのやり方や実施後研修について従業員への周知を徹底します。
導入目的が分からなければ、評価に集中できません。評価基準が理解できていなければ、適切なフィードバックはできないでしょう。360度評価の成否は、実施に対する従業員の納得感にあるといっても過言ではありません。従業員の全てが360度評価について深く理解し、納得感が高まるまで繰り返し説明を行いましょう。
継続的な制度の見直しと改善を行う
360度評価は、一度実施したら終わりではありません。続けてこそ、大きな効果を得ることができます。ただし、それには継続的な制度の見直しと改善を行うことが必須であり、見直しや改善を行ってこそ効果が最大化されるのです。
変化が激しい時代です。ビジネス環境は、常に変化しています。変化に対応し、様々な制度を見直すことは不可欠でしょう。それは、360度評価においても同様です。評価項目はもちろん、実施方法やフィードバックのやり方など、定期的かつ継続的に見直しを行い、必要に応じて改善していくことが重要です。
360度評価のテンプレートをダウンロードする
360度評価のテンプレートをダウンロードし、活用しましょう。本コラム「ソシキビト」を運営する「リアルワン株式会社」は、360度評価の無料テンプレートをご用意しています(Excelファイル)。状況に合わせて、評価項目を書き換えながらご活用ください。
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・必要箇所を入力するだけですぐに使える
・匿名性を守れる無記名回答型
・文章や調査概要の記載あり
・専門会社のテンプレートだから評価項目が的確

外部の調査会社に委託する
外部の調査会社に委託するのも、360度評価を成功させる重要なポイントです。360度評価を失敗しないためには、専門的なノウハウが必要です。また、主観や忖度を排除し公平性や客観性をより高めるためには、心理的安全性を担保する必要があります。
自力での実施は、不可能ではないでしょう。しかし、専門的なノウハウや実施担当者の「人的・時間的コスト」を考えれば、費用はかかっても外部の調査会社に委託する方が効率的かつ効果的です。外部の調査会社に委託することで、心理的安全性を担保することにもつながるでしょう。
関連記事:360度評価の専門業者を選ぶポイント
最後に

360度評価を実施、成功させるためのポイントを、評価項目と職種別のコメント例と共に解説しました。360度評価は、多くの企業で導入されています(導入率については、コチラをご覧ください)。ダウンロードできる無料テンプレートを活用し、ぜひ360度評価を成功させてください。
ただ、本文で示した通り、360度評価の実施には専門的なノウハウが不可欠です。このノウハウの問題を考えれば、費用は発生しますが、やはり専門的なノウハウを持つ外部の調査会社に委託する方がベターといえるでしょう
リアルワン株式会社は、100万人超の利用実績を持つ調査・評価の専門会社です。第一線の研究者が監修した、信頼性の高い「360度評価システム」の導入・運用をワンストップでサポート。企業様の要望に応じたカスタマイズにも柔軟に対応します。
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