人事評価に納得いかない理由とは?悪影響や不満の改善ポイントを解説

人事評価に対する「納得感」は、従業員のパフォーマンスやエンゲージメントを左右する重要な要素のひとつです。この人事評価に“納得いかない”となれば、パフォーマンスやエンゲージメントが低下するばかりか、最悪、人材の流出を招く事態に陥りかねません。

では、なぜ人事評価に“納得いかない”となるのでしょうか。今回は、その理由を考察しながら、納得いかない従業員が与える悪影響や不満の改善ポイントを解説。合わせて、人事評価の納得感を高める「360度評価」を紹介します。

【本記事で得られる情報】

・人事評価に納得いかない従業員の割合
・人事評価に納得いかない理由
・人事評価に納得いかない従業員が与える悪影響
・納得感を高める人事評価のポイント
・人事評価の納得感を高める360度評価について

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

実は多い!人事評価に納得いかない従業員の割合

人事評価は、「モチベーションの向上」「人材配置の最適化」「人材育成の促進」などを実現する人事マネジメントのベースです。しかし、その人事評価に納得いかない従業員が多くなっている事実があります。

アデコ株式会社が、1,532人を対象に実施した「人事評価制度に関する意識調査」の数字を見ると、勤務先の人事評価制度について、「不満:24.0%」「どちらかというと不満:38.3%」となっています。驚くことに、全体の62.3%が勤務先の人事評価制度に対して不満を持っているのです。

ちなみに、勤務先の人事評価制度に「満足」と答えた割合はわずか「4.4%」であり、人事評価に納得いかない従業員の割合が“実は多い!”ことが数字で証明されています。

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人事評価に納得いかない理由とは

では、なぜ人事評価に納得いかないのでしょうか。ここでは、その理由を考察します。

【人事評価に納得いかない理由】

・人事評価基準が不明確で評価がばらつく
・自己評価と実際の評価にギャップがある
・評価結果のフィードバックが不十分である
・人事評価と報酬が連動していない

ひとつずつ解説します。

人事評価基準が不明確で評価がばらつく

理由のひとつは、人事評価基準が不明確で評価がばらつくことです。人事評価は、「業績評価・能力評価・情意評価」の3つの評価基準で成り立っています。この評価基準が明確でなければ、何を基準に評価すればよいのか分かりません。これが評価のばらつきを生み、“納得いかない”となってしまうのです。

自己評価と実際の評価にギャップがある

自己評価と実際の評価にギャップがあるのも、納得いかない理由のひとつです。「自分が思うより評価が低い」「評価の理由が分からない」「適切に評価されていない」など、自己認識とのギャップが不信感となり、不満を招くことになるのです。

評価結果のフィードバックが不十分である

評価結果のフィードバックが不十分であれば、評価に対する理解が得られないばかりか、人事評価制度に対する不満につながってしまいます。人事評価は、実施自体が目的になっては本末転倒。評価結果のフィードバックが、従業員の成長につながるのです。

人事評価と報酬が連動していない

人事評価と報酬が連動していない場合、納得感が得られることはありません。評価と報酬がリンクしてこそ、従業員のモチベーションは向上します。人事評価と報酬の連動は、評価に対する納得感と共に、従業員のモチベーションを左右する重要な要素といえるのです。

関連記事:人事評価制度が失敗する原因とは?影響や改善の方法を事例と共に解説

人事評価に納得いかない従業員がいるとどうなる?

人事評価に納得いかない理由とは?悪影響や不満の改善ポイントを解説

人事評価制度に納得いかない従業員がいるとどうなるのでしょうか。ここでは、その悪影響を考察します。

【人事評価に納得いかない従業員が与える悪影響】

・人材の流出(退職・転職)につながる
・エンゲージメントが低下しパフォーマンスが落ちる
・職場の雰囲気が悪化し生産性が低下する
・不服申し立てのリスクが高まる

詳しく解説しましょう。

人材の流出(退職・転職)につながる

最も大きい悪影響は、人材の流出(退職・転職)につながることです。人事評価に納得いかない従業員は、正当な評価を求めるものです。特に、優秀な人材ほど正当な評価環境を求め、行動(退職・転職)を起こす可能性が高くなります。優秀な人材の退職や転職は、他の従業員にも影響を与え、流出の連鎖を招く恐れもあります。

エンゲージメントが低下しパフォーマンスが落ちる

エンゲージメントが低下し、従業員のパフォーマンスが落ちることも悪影響のひとつです。“納得いかない”といった感情は、会社に対する不信感につながります。会社への不信感は、エンゲージメントを低下させ、やる気を失いパフォーマンスを落とすことになってしまうのです。

関連記事:エンゲージメントとは(エンゲージメントの定義)

職場の雰囲気が悪化し生産性が低下する

エンゲージメントが低下し、パフォーマンスを落とす従業員が増えれば、職場の雰囲気が悪化するばかりでなく生産性が低下します。仕事に向き合うモチベーションも低くなり、製品やサービスの質が低下。業績不振に陥りかねない危険性があります。

不服申し立てのリスクが高まる

不服申し立てのリスクが高まることも、注意すべき悪影響でしょう。人事評価に納得いかない従業員が訴訟を起こし、最悪の場合、損害賠償を請求される恐れがあります。訴訟となれば、企業イメージは大きく傷つき、社会的信用の低下を招く可能性すらあるのです。

納得感を高める人事評価のポイント

人事評価の納得感を高めるには、どうすればよいのでしょうか。ここでは、そのポイントを解説します。

【納得感を高める人事評価のポイント】

・納得いかない原因を調べる
・透明性の高い人事評価制度を構築する
・人事評価基準と評価項目を明確にする
・評価者研修を実施し評価エラーをなくす
・定期的にフィードバックを実施する
・必要に応じて評価制度の見直しを行う

ひとつずつ見ていきましょう。

納得いかない原因を調べる

まずは、納得いかない原因を調べることが重要です。原因は、どこにあるのか。従業員への聞き取り調査やアンケート調査、1on1ミーティングを通じて、納得いかない理由を明確にします。

透明性の高い人事評価制度を構築する

納得感を高めるには、透明性の高い人事評価制度を構築する必要があります。人事評価制度は、「等級制度」「評価制度」「報酬制度」の3つで構成され、それぞれが連動することで成り立っています。等級ごとに必要な能力を明確化し、適正な評価と報酬がリンクした信頼できる人事評価制度の構築が高い納得感につながるのです。

関連記事:人事評価制度の作り方~導入手順

人事評価基準と評価項目を明確にする

先述の通り、人事評価基準は「業績評価・能力評価・情意評価」の3つで構成されています。この人事評価基準と評価項目(評価する内容)を明確にしましょう。人事評価基準と評価項目は、分かりやすい表現で言語化するのがポイントです。従業員が取り組みやすくなり、納得感を醸成します。

関連記事:人事評価基準の作り方/評価表の項目例も紹介

評価者研修を実施し評価エラーをなくす

人事評価制度を構築しても、制度に対する理解がなければ納得感は高まりません。従業員に周知することはもちろん、評価者研修を実施し評価エラーをなくすことが重要です。

評価エラーとは、評価者の価値観や感情に左右され、偏った評価を行ってしまうこと。事前の評価者研修が評価エラーを防ぎ、納得感の高い人事評価制度の実現につながります。

定期的にフィードバックを実施する

定期的にフィードバックを実施し、評価に対する従業員の理解を深めます。「なぜこのような評価になったのか」、理由が分かれば従業員の納得感も高まるでしょう。人事評価の実施とフィードバックはワンセットです。定期的なフィードバックが、人事評価制度に対する納得感を高めます。

関連記事:人事評価のフィードバック方法~コメント例文や面談のポイントを解説

必要に応じて評価制度の見直しを行う

人事評価制度は、「構築し、一度実施すれば終わり」ではありません。継続的に行ってこそ、効果を発揮します。その中で、必要に応じて評価制度の見直しを行いましょう

企業を取り巻く環境は、刻一刻と変化しています。変化に対応して、評価制度の内容を見直すのは当然といえるでしょう。継続と共に、評価制度をリニューアルしていくことが、従業員の納得感を維持します。

人事評価への納得感を高める「360度評価」とは?

人事評価制度自体を見直すことで、人事評価に対する従業員の納得感を高めることができます。そこで、おすすめしたい人事評価の手法が「360度評価です。

360度評価とは、対象となる従業員を様々な立場の従業員(上司・部下・同僚・他部署の従業員)が評価し、結果をフィードバックする人事評価の手法です。複数の従業員が多面的に評価することから「多面評価」と呼ばれています

上司が部下を一方的に評価する従来の手法と違い、公平性と客観性が担保されるため、人事評価に対する従業員の納得感を高めることができます。実施頻度は、1年に1回か2年に1回。継続的に実施することで、より高い効果が期待できます。

関連記事:360度評価とは?内容や項目~やり方やメリットデメリットを解説

360度評価を実施し従業員の納得感を高めよう!

人事評価に対する納得感を高める「360度評価は、自社で実施することも可能です。ただ、自力で行うには、「手間」と「時間」、そして何より「専門的なノウハウ」が求められるため、状況によっては十分な結果が得られないことがあります。

360度評価を外部の専門会社に依頼すれば、費用が発生するのは事実です。しかし、「手間・時間・ノウハウ」といった問題をクリアし、期待に見合った効果を得るには、外部の専門会社に委託するのがベターな選択といえます。

リアルワン株式会社は、調査・評価の専門会社です。科学的根拠に基づいた信頼性の高い「360度評価システム」で、従業員が納得する人事評価制度の構築をサポートします。

人事評価に対する納得感を高め、従業員のパフォーマンスを最大化したいとお考えの企業様は、100万人超の利用実績を持つリアルワンにぜひご相談ください。

>> リアルワンの「360度評価システム」に関するお問い合わせはコチラのフォームをご利用ください。