少子高齢化による人材不足が深刻になる中、人材の流出を防ぎ定着につなげる「リテンション」が注目されています。リテンションは、マーケティング領域でも使われる言葉ですが、今回は人事領域におけるリテンションについて深掘りします。
本記事では、人材の流出防止に効果的なリテンション施策の具体例を示しながら、成功のポイントを解説。合わせて、リテンションに取り組む企業の成功事例を紹介します。
【本記事で得られる情報】
・リテンションの意味
・リテンション施策の重要性
・リテンションマネジメントの意味
・リテンション施策を導入するメリット
・リテンションを高める施策の具体例
・リテンション施策を成功させるポイント
・リテンション施策を導入する企業の事例
目次
リテンションとは?~人事・マーケティングにおける違い

リテンションとは何か。まずは、リテンションの意味を解説します。
リテンションの意味
「リテンション:retention」とは、直訳すると「維持・保持・保有」を意味する言葉です。ビジネスの世界では、主に「人事領域・マーケティング領域」で使われています。それぞれ、簡潔に解説しましょう。
【人事領域におけるリテンション】
優秀な人材の流出(退職・転職)を防ぎ、企業の競争力や生産性を維持すること。「人材の確保」という意味。
【マーケティング領域におけるリテンション】
既存顧客との関係性を維持し、顧客ロイヤルティを高めることで商品やサービスの継続的な利用につなげること。「既存顧客を維持するマーケティング活動」という意味。
今回の記事では、「人事領域のリテンション」について解説していきます。
リテンション施策とは?注目される背景・重要性
次に、「リテンション施策」の意味と注目される背景・重要性を解説します。
【リテンション施策の意味】
リテンションを高めるための様々な施策のこと
なぜ今、リテンション施策が注目されているのでしょうか。
【リテンション施策が注目される背景】
・労働力不足への対応
・人材流出によるリスクの回避
・働く価値観の多様化
労働力不足への対応は、全ての業界における重い課題です。新たな人材の確保が難しくなる中、既存の戦力を維持していくことは極めて重要でしょう。
また、人材流出によるリスクを回避することも、リテンション施策が注目される背景です。ここでいうリスクとは、企業のコアな情報やノウハウ、人脈などが流出することです。時間をかけ積み上げてきた貴重なリソースが、人材の流出によって失われてしまえば、企業にとってそのダメージは計り知れません。
最後に、働く価値観が多様化し、転職が増えたこともリテンション施策が重要視される理由です。こういった背景により、リテンション施策に注目が集まり、その重要性が増しているのです。
リテンションマネジメントとは?
リテンションを高める様々な施策が「リテンション施策」だとすれば、リテンションを高める様々な人事管理の手法が「リテンションマネジメント」です。
ただし、両者は大きく区別することなく使用されているのが実情です。意味や内容については、ほぼ同義と考えておいてよいでしょう。
関連記事:社員の離職防止対策/離職率を下げるには
人事が知っておきたい!リテンション施策を行うメリット

では、リテンション施策を行うメリットを考えてみましょう。
【リテンション施策を行うメリット】
・採用コストの削減
・「スキル・ノウハウ・人脈」の蓄積
・エンゲージメントの向上
リテンションが高まり、人材の流出を防ぐことができれば、採用コストを削減できます。先述した、人材流出に伴うリスクが回避できるため、企業の貴重なリソースである「スキル・ノウハウ・人脈」を蓄積することができます。
また、リテンション施策によって、従業員が「この会社で働きたい」と思える企業になっていけば、エンゲージメントの向上も期待できるでしょう。
このように、リテンション施策による人材の確保は、企業にとって大きなメリットがあるのです。
リテンションを高める施策・対策の具体例

それでは、リテンションを高める「施策・対策」の具体例を見ていきましょう。
【リテンションを高める施策・対策の具体例】
・社内コミュニケーションの活性化
・労働環境の改善
・能力開発の推進
・キャリア形成支援
・納得感の高い人事評価制度の構築
詳しく解説します。
社内コミュニケーションの活性化
社内コミュニケーションを活性化させることで、リテンションを高めることができます。なぜなら、自由闊達に意見交換ができる風通しの良い環境では、エンゲージメントが向上しリテンションが強化されるからです。
1on1ミーティングやフリーアドレス制の導入、グループウェアや社内SNSの活用など、自社に合った施策を取り入れ、社内コミュニケーションの活性化を図ります。
労働環境の改善
労働環境の改善も、リテンションを高める効果があります。在宅勤務やリモートワークの導入、育児や介護の両立支援など、柔軟な働き方への対応は、今や必須の取り組みです。また、残業時間の削減や有給休暇の取得促進など、ワークライフバランスやウェルビーイングを意識した施策がリテンションを高めます。
関連記事:ウェルビーイングとは
能力開発の推進
従業員の能力開発の推進は、リテンションの強化につながります。能力開発を推進することは、従業員に成長機会を提供することです。スキルアップを実感することで、従業員は働きがいを持つことができるでしょう。研修の実施や資格取得の支援、ジョブローテーションなどを通して、従業員の能力開発をサポートします。
キャリア形成支援
リテンションを高めるには、従業員のキャリア形成を支援することも重要です。人生100年時代。企業と従業員の関係性は、「相互依存」から「自律対等」なつながりへと変化しています。従業員はキャリア形成を続け、企業はパートナーとしてそれを支援する。この関係性の在り方が、リテンションを高めます。
納得感の高い人事評価制度の構築
納得感の高い人事評価制度の構築は、リテンションを高める重要な施策です。人事評価制度は、「等級制度・評価制度・報酬制度」で構成され、3つがリンクすることで成り立っています。等級に応じた能力を明確にし、評価と報酬が連動した透明性の高い人事評価制度を構築することが、納得感とリテンションを高めます。
関連記事:人事評価制度の作り方~導入手順
リテンション施策を成功させるポイント

では、どうすればリテンション施策を成功させることができるのでしょうか。ここでは、そのポイントを見ていきましょう。
【リテンション施策を成功させるポイント】
・組織サーベイを活用し現状を把握する
・内包する課題を明確にする
・課題に応じた施策を実行する
・実行後の「評価・改善・実行」を継続する
ひとつずつ解説します。
組織サーベイを活用し現状を把握する
まずは、組織サーベイ(※)を活用し会社の現状を把握する必要があります。自社の現状が分からなければ、何を改善すべきかが見えてきません。改善すべき点が分からなければ、施策の打ちようがないでしょう。まずは、組織サーベイを行い自社の現状を把握することが重要です。(※)組織サーベイ:従業員と組織の状態を可視化するアンケート調査
関連記事:組織サーベイとは?目的や種類、ツール別の質問項目を解説
内包する課題を明確にする
自社の現状が把握できたら、内包する課題を明確にします。「従業員は、なぜ会社を辞めてしまうのか」「どこに不満があるのか」「何を改善すべきなのか」、課題が明確になれば、取るべき施策・対策も見えてきます。
課題に応じた施策を実行する
内包する課題が明確になったら、課題に応じたリテンション施策を実行します。実行する際は、従業員の階層(役職・立場・年代・勤務年数・職務など)に注意しましょう。階層によって、リテンション施策の内容は変わってきます。課題と共に、従業員の階層に即した施策の実行が、リテンション施策の効果を高めます。
実行後の「評価・改善・実行」を継続する
リテンション施策を実行した後は、効果を評価し、必要に応じて改善を行います。リテンション施策は、即効性を期待できるものではなく、継続してこそ効果を発揮します。時間がかかっても、「実行→評価→改善→実行」を継続することがリテンションを高めるポイントです。
リテンション施策を行う企業の事例

ここでは、リテンション施策を行う企業の成功事例を紹介します。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車は、労働環境を改善することでリテンションを高めています。目指したのは、働きやすい環境作りです。具体的な取り組みを紹介しましょう。
・年功序列を廃止し若手の給与水準を上げる
・再雇用制度を見直し定年後も働ける制度を導入
・内容を選べる「選択型福利厚生制度」の導入
・ワークライフバランスの推進
・従業員のキャリア形成支援 etc.
働きやすい環境を整えたことで、3年間(2019年~2022年)の離職率が「約1%」まで低下。リテンション施策が成功した好例といえます。
サイボウズ株式会社
高い離職率(28%/2005年)に悩んでいたサイボウズは、リテンション施策に着手。今では、離職率を「3%~5%」まで低下させています。サイボウズは、様々なリテンション施策を行っていますが、そのひとつが社内コミュニケーションを活性化させる「部活動の推進」です。
従業員が5人以上集まれば「社内部活動」として認められ、1人あたり年間10,000円の部活動費を支給。部活動によって、部署を越えた関係性の構築が可能になり、社内コミュニケーションが活性化。離職率を下げることに成功しています。
株式会社レオパレス21
レオパレス21は、リテンション施策として、従業員のキャリア形成支援や制度改革を実施しています。高くなった離職率に危機感を持ち、会社の現状や不満を把握するためにサーベイ(社内アンケート調査)を実施。「教育支援の不足」という、不満の原因を見つけます。
リテンション施策として取り組んだ内容は、役職や職責、部門や職務に合わせた能力開発研修の導入です。同時に、人事制度や評価制度を見直すこと、労働時間を短縮することを推進。その結果、15%前後あった離職率が「約9%」まで低下し、リテンションを高めることに成功しています。
最後に

本文で述べた通り、リテンション施策を成功させる最初のステップは、「組織サーベイを活用し現状を把握する」ことです。
組織サーベイは、自力で行うことも不可能ではありません。ただ、それには「人的な手間」「時間的なコスト」「専門的なノウハウ」が不可欠です。そのため、自社で行った場合、十分な結果が得られない可能性が高くなります。
組織サーベイを専門の調査会社に委託すると、費用が発生します。しかし、「手間」「時間」「ノウハウ」の問題をクリアし十分な結果を得るためには、組織サーベイを専門とする調査会社に外部委託することをおすすめします。
リアルワン株式会社は、組織サーベイを専門に行う調査会社です。信頼性の担保された「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で、組織の現状を定量的に可視化し、内包する課題を明確化。課題解決のリテンション施策の立案から実行まで、万全の体制でサポート。実施後の効果測定にも対応します。
効果的な施策でリテンションを高め、従業員の定着を図りたいとお考えの人事担当者の方は、リアルワンの組織サーベイをぜひご活用ください。

