仕事に対する考え方や働き方が多様化する中、マネジメントの手法も変化してきています。強力なリーダーシップのもとで組織を管理する従来型の手法は、ハラスメントに対する意識の高まりもあり、曲がり角を迎えているといって良いでしょう。
そこで、注目されているのが「ピープルマネジメント」です。今回は、このピープルマネジメントを深掘り。ピープルマネジメントの意味や注目される背景を紹介しながら、従来型マネジメントとの違いやメリット、導入する際のポイントを解説します。
【本記事で得られる情報】
・ピープルマネジメントの意味
・ピープルマネジメントが注目される理由
・従来のマネジメント手法との違い
・ピープルマネジメントを導入するメリット
・ピープルマネジメントを成功させるポイント
・ピープルマネジメントの課題
目次
ピープルマネジメントとは?意味と注目される背景

はじめに、ピープルマネジメントの意味と注目される背景を解説します。
ピープルマネジメントの定義
ピープルマネジメントとは、その名の通り「人」にコミットすることで、成果を引き出すマネジメント手法です。従業員一人ひとりの仕事観や価値観と真摯に向き合い、能力や可能性を引き出すことで成果を最大化し、組織の成長を図ります。
ピープルマネジメントで重要になるのが、従業員とのコミュニケーションです。ピープルマネジメントは、成長に向けて従業員と組織が伴走するスタイルが特徴。話を傾聴し対話を重ねながら、従業員の意識を高めるコミュニケーションが求められます。
ピープルマネジメントが注目を集める理由
今なぜ、ピープルマネジメントが注目を集めるのでしょうか。それには、次のような理由があります。
【ピープルマネジメントが注目を集める理由】
・価値観の多様化
・テクノロジーの発達
・ビジネス環境の変化
・雇用の流動化
従来型のマネジメントは、「成果」にコミットし、いかにパフォーマンスを最大化するかが重要でした。しかし、時代は変わり価値観が多様化。仕事に対する考え方や働き方も、一括りにできない時代になっています。インターネットやクラウドといったテクノロジーの発達も、多様化が拡大した要因でしょう。
テクノロジーの発達は、ビジネス環境を変化させます。DX化やAIの発達により、産業構造の変革が加速。雇用の流動化が叫ばれ、転職が当たり前になりつつあります。こういった変化もあり、組織の考え方で従業員を一方的に統制し、成果を求めるマネジメントに限界が見え始めているのです。
ピープルマネジメントは、上から目線で管理する手法ではありません。従業員の仕事観や価値観を尊重し、共に「成功」を目指すのがそのスタイル。従業員と組織の関係性が自律対等なつながりへと変化する中で、魅力的な組織を作るために必要な手法がピープルマネジメントであり、注目を集める理由でもあるのです。
ピープルマネジメントと従来のマネジメント手法との違い

ここでは、従来型のマネジメント手法を振り返ります。ピープルマネジメントとの違いを確認しておきましょう。
【従来型のマネジメント手法の例】
・タスクマネジメント
・プロジェクトマネジメント
・タレントマネジメント
ひとつずつ解説します。
タスクマネジメントとは?
タスクマネジメントとは、タスク(業務)の進捗状況を適切に管理する手法です。処理すべきタスクを細かく洗い出し、優先順位をつけて振り分け、作業効率を向上させます。タスクにフォーカスすることで、業務の全体像が把握しやすくなり漏れを防ぐと共に、特定の従業員への負荷の偏りを防止します。
ピープルマネジメントは、従業員一人ひとりの考え方や可能性に寄り添うことで、成果を引き出す手法です。一方タスクマネジメントは、「タスク」に注目し業務を細分化。優先順位をつけ、目標達成を目指すという点で違いがあります。
プロジェクトマネジメントとは?
プロジェクトマネジメントとは、プロジェクトの納期を守るために、どのように遂行すればよいのか、細かく計画を立て、管理コントロールしていく手法です。「いつ、どの段階まで、どういったクオリティで仕上げるのか」を明確にし、そこから逆算する形で、プロジェクトの成功に向けてプロセスを構築、管理していきます。
プロジェクトマネジメントもピープルマネジメントとは違い、焦点を当てるのは「プロジェクト」です。プロジェクトの成功を目指し、進捗の管理・監督、指導を行う点でピープルマネジメントとは異なります。
タレントマネジメントとは?
タレントマネジメントとは、従業員一人ひとりの「資質・能力・才能=タレント」を適切に把握することで、「適材適所」の配置を実現し、人材の活用を最適化する手法です。従業員の「資質・能力・才能」を一元的に管理することで、適材適所の人材活用が可能になると共に、能力やモチベーションを向上させます。
タレントマネジメントは、「人」に焦点を当てる点ではピープルマネジメントと同じです。しかし、タレントマネジメントは従業員の具体的な能力やスキルに注目し、活用を最適化する手法です。ピープルマネジメントが、従業員の潜在能力、また従業員との関係性といった定性的な部分を重視する点で大きく違っています。
ピープルマネジメントのメリット

続いて、ピープルマネジメントのメリットを解説します。
【ピープルマネジメントのメリット】
・従業員との信頼関係が深まる
・仕事に対するモチベーションが向上する
・組織に対するエンゲージメントが高まる
・キャリア自律を促進する
詳しく見ていきましょう。
従業員との信頼関係が深まる
「人」にコミットするピープルマネジメントは、従業員との信頼関係を深めます。先述の通り、ピープルマネジメントはコミュニケーションを重視します。従業員と真摯に向き合い受け入れることは、信頼関係を構築すると共に、離職防止にもつながるでしょう。
仕事に対するモチベーションが向上する
信頼関係が構築された環境では、安心感と自信を持って業務に取り組むことができます。「自分は必要とされている」という意識の中で、仕事に対するモチベーションが向上するでしょう。
組織に対するエンゲージメントが高まる
信頼関係が深まり、仕事のモチベーションが向上すれば、組織に対するエンゲージメントが高まるのは言うまでもありません。高いエンゲージメントは、従業員の定着率を高め、生産性の向上につながります。
キャリア自律を促進する
ピープルマネジメントは、話を傾聴し対話を重ねることで、従業員の意識を高めます。対話が深まる中で、従業員は自分のキャリアを再確認し、多くの気づきを得るでしょう。そしてそれは、キャリア自律を促進することにつながるのです。
キャリア自律とは、自分のキャリアを自分で決め、自ら行動できる意識のこと。高いエンゲージメントと共に、キャリア自律を促進すれば、従業員一人ひとりが指示を待つことなく自分で考え行動し、成果に向けて前進する組織を作ることができるのです。
ピープルマネジメントを成功させるコツ・ポイント

ピープルマネジメントを成功させるには、どうしたらよいのでしょうか。ここでは、そのコツとポイントを見ていきましょう。
【ピープルマネジメントを成功させるコツ・ポイント】
・心理的安全性を確保する
・マネジメント研修を実施する
・1on1ミーティングの回数を増やす
・目標設定のフレームワークを活用する
詳しく解説します。
心理的安全性を確保する
ピープルマネジメントを成功させるには、心理的安全性を確保する必要があります。心理的安全性とは、周囲を意識することなく、自分の意見や考え方を自由に発言し受け入れられる環境のことです。
ピープルマネジメントは、コミュニケーションを深めることで成り立ちます。まずは、組織内に心理的安全性を確保し、風通しの良い環境を整えましょう。
関連記事:心理的安全性を高め、組織の生産性を高めるリーダーとは?
マネジメント研修を実施する
ピープルマネジメントで大きな役割を担うのが、従業員と積極的に関わる「リーダー・管理職」です。リーダー・管理職に、マネジメント研修を実施するのは必須といえます。
ピープルマネジメントの理解を深める研修はもちろん、適切なかかわりを行うには、「傾聴・質問・フィードバック」といったスキルが欠かせません。研修を通して、ぜひ身につけたいスキルです。
1on1ミーティングの回数を増やす
ピープルマネジメントを成功させる重要な取り組みが、従業員一人ひとりに対して行う定期的な1on1ミーティングです。この1on1ミーティングの回数を増やしていきましょう。
回数を増やすことで、従業員とのかかわりを深めつつ、1on1ミーティング自体の質を高める。従業員との関係性、そしてミーティングの質は、回数をこなすことで高まります。
目標設定のフレームワークを活用する
ピープルマネジメントを進める上で、不可欠なのが目標設定です。目標設定のフレームワークを活用し、従業員に主体的な行動を促します。
フレームワークには、「OKR:Objectives Key Results」などがあります。OKRは、O(Objectives:目標)に対して、KR(Key Results:主要な成果)を設定し、従業員と組織が目標を共有。同じ方向性を持って、目標達成を目指します。
ピープルマネジメントの課題

多くのメリットがあるピープルマネジメントですが、課題がないわけではありません。
ひとつは、従業員と直接かかわるリーダー・管理職の負担が重くなることです。ピープルマネジメントが、一部の従業員のストレスになっては本末転倒。負担を軽減するには、役割分担などの施策が必要です。
もうひとつは、ピープルマネジメントを進めるには時間がかかるということです。結果は、すぐには出ません。ピープルマネジメントは、中長期的な取り組みであることを組織内で共有します。そこで重要になるのが、定性的であるピープルマネジメントを補う施策です。
数値で表れない要素をどう可視化し、修正しながら取り組んでいくのか。この課題をクリアするには、組織サーベイの実施が有効です。
組織サーベイとは、アンケートによって、従業員と組織の現状を定量的に可視化する調査のこと。ピープルマネジメントを導入する前に実施し、導入後は一定の節目ごとに実施することで、課題に対する施策がより効果的になるはずです。
関連記事:組織サーベイとは?目的や種類、ツール別の質問項目を解説
最後に

ピープルマネジメントは、新しい時代の組織作りにとって重要な手法です。働く従業員一人ひとりの成長のため、また組織の活性化に向け、ぜひ取り入れたいマネジメント手法といえます。
ただそれには、従業員と組織の現状を把握する必要があります。従業員の状態、そして組織の課題を数値で把握するには、先述の通り組織サーベイが有効です。
リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。第一線の専門家が監修する「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で、従業員と組織の現状を定量的に可視化します。
従業員と組織の現状を把握し、ピープルマネジメントを進めたいとお考えの担当者の方は、ぜひリアルワンにご相談ください。