働き方が多様化する中、企業やビジネスパーソンの意識が変化。時短勤務やフレックスタイム制の導入、また育児・介護休暇の取得が進み、在宅勤務を行う機会が増えてきています。ただ、そこで問題になるのがキャリア形成です。
キャリア形成は、人材獲得が難しくなる昨今、企業にとって取り組むべき重要な施策のひとつでしょう。顔が見えない在宅勤務者のキャリア形成を、どのように支援し成長を促すのか。人事担当者の方にとって、難しい問題といえます。
そこで本記事では、在宅勤務におけるキャリア形成の課題を考察すると共に、支援の方法を企業の具体例をあげながら解説します。
【本記事で得られる情報】
・在宅勤務中のキャリア形成が難しい理由
・在宅勤務が抱えるキャリア形成の課題
・在宅勤務におけるキャリア形成のポイント
・在宅勤務におけるキャリア形成の成功事例
・在宅勤務のキャリア形成支援の前にやるべきこと
目次
難しい在宅勤務(リモートワーク)中のキャリア形成支援

新型コロナウイルスのパンデミックによって導入が進んだ在宅勤務。コロナ禍は、テレワークやリモートワークといった言葉を一気に広げ、在宅勤務を身近な取り組みへと変えました。
コロナ禍の終息と共に、広がりに陰りが見える在宅勤務ですが、働き方の多様化や仕事に対する意識の変化もあり、あらためて広がっていくことが予想されます。ただ在宅勤務は、次のように難しい問題を抱えているのも事実です。
【在宅勤務の問題】
・時間管理がしにくい
・勤怠管理が難しい
・情報共有がしにくい
・評価が難しい
・メンバーとの意思疎通ができない
・プライベートとの区別がしづらい
在宅勤務によって、会社と従業員には物理的に距離が生まれます。お互いの顔が見えないことで、様々な問題が生じてしまうのです。こういった問題と同様に難しいのが、在宅勤務中のキャリア形成支援です。これまでキャリア形成は、人材育成に絡めて社内で行うのが一般的でした。OJT(On the Job Training)は、その代表でしょう。
ただ、「社内で行うキャリア形成が簡単か?」といえば決してそうではありません。現場で行うOJTにしても、「教え方」や「伝え方」、「教える側との相性」といった難しさがあります。そこを考えれば、離れて行う、在宅勤務中のキャリア形成支援がいかに難しいか、容易に想像がつくはずです。
では、在宅勤務中のキャリア形成支援には、どのような課題があるのか。次項で考察します。
在宅勤務が抱えるキャリア形成の課題

それでは、在宅勤務が抱えるキャリア形成の課題を考えてみましょう。
【在宅勤務が抱えるキャリア形成の課題】
・進捗状況の管理
・適切な人材育成
・双方向のコミュニケーション
・従業員のモチベーション維持
詳しく解説します。
進捗状況の管理
先に述べた通り、在宅勤務者との間に物理的に距離が生まれるため、仕事や研修に向き合う態度を観察できません。仕事や研修の進捗状況の管理は、在宅勤務における大きな課題です。
仕事や研修に対する理解度はもちろん、進め方や成果が見えにくくなります。また、体調面やメンタルの状態も把握しにくくなるため、マネジメント自体が難しくなってしまいます。
適切な人材育成
進捗状況の管理が難しい中、適切な人材育成をどのような方法で行っていくのか。これも、在宅勤務が抱えるキャリア形成の課題です。在宅勤務者向けの人材育成は、リアルな現場で行うOJTと違うため、従業員同士の一体感も生まれにくくなります。
双方向のコミュニケーション
双方向のコミュニケーションが不足してしまうのも、大きな課題でしょう。在宅勤務中は、業務上のアドバイスやサポートがタイムリーにできません。
一方、従業員からの発信も、上司や先輩と距離があるため少なくなりがちです。コミュケーション不足を補うためのツールの導入や使い方の共有も、在宅勤務が抱えるキャリア形成の課題といえるでしょう。
従業員のモチベーション維持
在宅勤務中は、従業員に気の緩みが生じ、モチベーションが低下しかねません。社内と違い、悩みを気軽に相談できないこともモチベーションの低下につながります。従業員のモチベーション維持は、重い課題のひとつでしょう。
モチベーションの状態は、従業員の離職にも関わる要素です。モチベーションの維持は、キャリア形成に限らず企業の活性化にとっても重要な課題です。
関連記事:社員のモチベーションを上げる方法とは~取り組みと企業の事例を紹介
在宅勤務におけるキャリア形成のポイント

在宅勤務におけるキャリア形成を、どのように進めればよいのか。ここでは、そのポイントを解説します。
【在宅勤務におけるキャリア形成のポイント】
・定期的にコミュニケーションをとる
・ITツールを活用する
・評価制度を見直す
・職務を細分化する
ひとつずつ見ていきましょう。
定期的にコミュニケーションをとる
定期的にコミュニケーションをとることは、必須の取り組みです。進捗状況の報告や悩みを相談する時間を決め、定期的にコミュニケーションをとる体制を整えましょう。
ITツールを活用する
ITツールを活用することも欠かせないポイントです。eラーニングやWeb会議ツールの導入は、在宅勤務中のキャリア形成を支援する上で不可欠といえます。気軽に「報告・連絡・相談」ができるように、ビジネスチャットの導入もおすすめです。
評価制度を見直す
評価制度を見直すことは、在宅勤務のキャリア形成とセットで進めるべき取り組みです。在宅勤務中は、従業員の様子を確認することができないため評価が難しくなります。
とは言え、評価は従業員のモチベーションに直結する重要な部分。明確な目標を設定し、進捗管理を徹底するなど、在宅勤務の課題を見据えた評価制度の再構築が求められます。
職務を細分化する
職責や役割など、職務を細分化し仕事の達成度合いを確認しやすくします。達成度合いが明確になれば、評価に整合性が生まれ、評価に対する不満を解消できます。役割分担も明確になり、仕事の効率化も進むでしょう。
関連記事:やる気のない社員の特徴と原因~周囲に与える悪影響や対処法を解説
在宅勤務のキャリア形成~企業の成功事例

在宅勤務のキャリア形成に、企業はどのように取り組んでいるのか。ここでは、企業の成功事例を紹介します。
定例ミーティングの実施
株式会社ZOZOテクノロジーズは、オンラインのアパレルショッピングサイトやZOZOTOWNを運営する会社です。同社は、コミュニケーションを深める定例ミーティングを、在宅勤務者のキャリア形成支援につなげています。実施するミーティングは、次の3つ。
・2週間に1回、30分の「1on1ミーティング」
・月に1回、2時間の「チームミーティング」
・週に1回、50分の「チーム定例ミーティング」
3つのミーティングにより、従業員同士の関係性やチームワークを強化し、在宅勤務者が安心して仕事や研修に取り組める環境を整えています。
Web会議ツールの活用
株式会社メンバーズは、企業のデジタルマーケティングをサポートする会社です。同社は、在宅勤務にWeb会議ツールを活用することでキャリア形成を進めています。主な活用方法は、オンライン研修の実施です。
部署別に構築した研修プログラムで、人材育成を推進。研修は、メンターとの1on1を基本に、必要に応じてマネージャーも参加するというスタイルです。
Web会議ツールによるオンライン研修によって、在宅勤務者のキャリア形成が進むと共に、モチベーションを高めることに成功しています。
オンライン交流アプリの導入
株式会社サイバードは、携帯電話向けのモバイルコンテンツ事業を展開する会社です。同社は、オンライン交流アプリを導入し、在宅勤務者のキャリア形成を支援しています。
オンライン上で、ワークショップやグループワークを実施。従業員同士の交流を深めながら、在宅勤務でもキャリア形成に取り組みやすい仕組みを構築しています。
また、オンラインイベントも開催。ゲーム大会やパーティといった交流の場を作り、従業員間のコミュニケーション維持に努めています。
ジョブ型人事制度を導入
KDDI株式会社は、携帯電話事業を手掛ける電気通信事業の会社です。同社は、在宅勤務におけるキャリア形成支援の施策として職務を細分化。ジョブ型人事制度を導入しています。
そのコンセプトは、時間ではなく、成果や能力、挑戦する姿勢を評価するというものです。従業員の成果や能力を適正に把握するため、職責や役割といった職務内容を細かく定義。在宅勤務で見えにくくなった従業員の働きぶりを細かく評価しています。
評価結果は、人事制度に反映すると共に、状況をフィードバックすることで成長をバックアップしています。
在宅勤務のキャリア形成支援~まずは組織の現状を把握する

ここまで、在宅勤務におけるキャリア形成のポイント、また企業の成功事例を見てきました。どれも在宅勤務のキャリア形成を進める上で、重要になるのは間違いありません。ただ、その前に大切なことがあります。それは、組織の現状を把握することです。
会社の状態や仕事に向き合う従業員のモチベーションなど、現状を把握し、自社が抱える課題を洗い出す必要があります。自社の現在地が分からなければ、これからの方向性を明確にすることはできないでしょう。
組織の現状を把握するには「従業員満足度調査(ES調査)」や「エンゲージメントサーベイ」といった組織サーベイが効果的です。
関連記事:組織サーベイとは?目的や種類、ツール別の質問項目を解説
最後に

今回は、在宅勤務におけるキャリア形成について解説しました。本文で述べた通り、在宅勤務者のキャリア形成を支援するには、組織の現状を把握する必要があります。
それには、組織サーベイが効果的です。組織サーベイによって、従業員や組織の状態を可視化し、在宅勤務のキャリア形成に活かしていきましょう。
リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。第一線の専門家が監修する信頼性の担保された「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で、組織と従業員の状態を可視化します。
自社の状態を把握し、キャリア形成に活かしたいとお考えの人事担当者の方は、リアルワンにぜひご相談ください。