ジョブディスクリプションとは?書き方やテンプレートを事例と共に紹介

ジョブ型雇用の増加と共に、注目をされはじめた「ジョブディスクリプション。日本では、職務記述書と呼ばれるジョブディスクリプションを作成し、採用活動や組織活性化に活かしていきたいとお考えの担当者の方も多いことでしょう。

そこで今回は、このジョブディスクリプションを深掘りします。はじめて作成する方に向けて、ジョブディスクリプションの作り方や書き方、導入する際の注意点を解説。あわせて、企業の導入事例を紹介します。

【本記事で得られる情報】

・ジョブディスクリプションの意味や注目される理由
・ジョブディスクリプションの目的
・ジョブディスクリプションのメリット
・ジョブディスクリプションの作り方と書き方
・ジョブディスクリプションを導入する企業の事例
・ジョブディスクリプションを作成する際の注意点

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

ジョブディスクリプションとは?

まずは、ジョブディスクリプションの概要を解説します。

ジョブディスクリプションの意味

ジョブディスクリプション(job description)とは、職務内容やポジション、責任や権限の範囲、必要なスキルなどを詳しく規定した文書のことです。日本では、「職務記述書」と呼ばれています。

ジョブディスクリプションが注目される理由

これまで日本企業の多くは、終身雇用・年功序列といった雇用環境の中でジョブローテーションを行い、ゼネラリストを育成してきました。ゼネラリストには、幅広い知識や経験が求められます。つまり、職務を明確に規定する必要がなかったわけです。

しかし、グローバル化によるビジネス環境の変化から、専門分野を持つスペシャリストが求められるようになります。スペシャリストを採用し、能力を最大化するには、職務の範囲を決めて活動してもらうのが効果的。こういった求める人材像の変化から、職務を明確に規定する必要性が高まり、ジョブディスクリプションが注目されているのです。

ジョブディスクリプションと募集要項の違い

ジョブディスクリプションと混同されやすいのが「募集要項」でしょう。ただ募集要項は、企業が提供する待遇などの労働条件を示した情報であり、職務の内容や範囲を規定したジョブディスクリプションとは大きく異なるものです。

ジョブディスクリプションの目的(活用方法)

次に、ジョブディスクリプションの目的を解説します。

【ジョブディスクリプションの目的】

・ジョブ型雇用への対応
・スペシャリストの採用
・多様化する働き方への対応

詳しく見ていきましょう。

ジョブ型雇用への対応

近年、日本においても国際競争力を強化するため、職務を明確にしない「メンバーシップ型雇用」から、職務を明確に規定する「ジョブ型雇用」へとシフトする動きが広がっています。ジョブディスクリプションは、職務内容を規定した文書です。職務に紐づくジョブ型雇用においては、必須のものといえます。

関連記事:ジョブ型雇用とは?メリット・デメリット(失敗事例)やメンバーシップ型との違い

スペシャリストの採用

先に述べた通り、今、ビジネスの世界では、ゼネラリスト以上にスペシャリストが求められています。そのスペシャリストを採用するには、ジョブディスクリプションによって職務を明確にした上で募集するのが効率的。スペシャリストの採用に活用するのも、ジョブディスクリプションの目的のひとつです。

多様化する働き方への対応

多様化する働き方への対応も、ジョブディスクリプションの目的です。リモートワークや在宅勤務など、働く環境は多様化しています。その中で従業員一人ひとりをマネジメントし、結果を評価にするには、職務の範囲を規定するジョブディスクリプションが不可欠といえるのです。

ジョブディスクリプションの導入で期待できること(メリット)

ジョブディスクリプションの導入で、何が期待できるのか。詳しく解説しましょう。

【ジョブディスクリプションの導入で期待できること】

・評価の公平性を保つことができる
・マッチングの精度が高まる
・人材育成が効率化する

ひとつずつ見ていきます。

評価の公平性を保つことができる

ジョブディスクリプションの導入で、評価の公平性を保つことができます。職務内容や責任、目標などを記載するのがジョブディスクリプションです。評価項目は明確です。

ジョブディスクリプションに沿って評価を行えば、公平性を担保することができます。公平性の高い評価によって、従業員の定着率の向上も期待できるでしょう。

マッチングの精度が高まる

ジョブディスクリプションには、必要なスキルや資格が明記されています。この明確な人材要件によって、採用活動におけるマッチングの精度が高まるでしょう。マッチングの精度が高まり求める人材が増えていけば、生産性が向上し業績アップも期待できます。

人材育成が効率化する

ジョブディスクリプションによって、職務に紐づくスキルを持った人材を採用できます。そこにフォーカスしてスキルアップを図れば、人材育成を効率化させることができます。決められた職務の範囲でスキルをブラッシュアップできるため、専門性がさらに高まり従業員満足度の向上も期待できるでしょう。

ジョブディスクリプションの作り方

では、ジョブディスクリプションの作り方を見ていきましょう。

【ジョブディスクリプションの作り方~3つのステップ】

・ステップ1:職務の情報収集と従業員へのヒアリングを行う
・ステップ2:情報を精査し職務内容を決定する
・ステップ3:ジョブディスクリプションを作成する

詳しく解説します。

職務の情報収集と従業員へのヒアリングを行う

まずは、職務に関する情報収集と従業員へのヒアリングを行います。職務内容はもちろん、責任の範囲や権限、必要とされる知識やスキルなど、ジョブディスクリプションに記載する項目について、できるだけ詳細な情報を集めます。大切なことは、職務を担当している従業員の生の声を傾聴し、情報の精度を高めることです。

情報を精査し職務内容を決定する

次に、収集した情報を精査し職務内容を決定します。人事担当者や各部門のマネージャーを中心に、情報を分析し具体的な職務内容と記載項目を決定します。職務には優先順位をつけて、取り組む範囲を明確化しましょう。職務の以外の業務について、どう対処すべきかを決めておくことも重要です。

ジョブディスクリプションを作成する

最後は、決定した職務内容と項目、精査した情報を1枚の書式にまとめていきます。これで、ジョブディスクリプションの完成です。記載する項目は、組織に合った形で調整しましょう。現場担当者のチェックは、必ず行います。

ジョブディスクリプションの書き方

続いて、ジョブディスクリプションの書き方を解説します。

ジョブディスクリプションの項目と記載例

まず、ジョブディスクリプションに記載する項目を紹介します。

【ジョブディスクリプションの項目(例)】

・職務名、会社概要、職務概要、職務詳細
・ミッション、目標、責任、権限・評価方法
・必要なスキル、必要な資格
・雇用形態、勤務地、勤務時間、給与、時間外手当、福利厚生 など

主な項目については、記載例を紹介します。

関連記事1:コンピテンシー評価とは?書き方(例文あり)や評価基準を解説
関連記事2:360度評価とは?導入する目的やメリット・デメリット、項目を解説

ジョブディスクリプションのテンプレート(サンプル)

ジョブディスクリプションのテンプレートを掲載します。作成の参考にしてください。

ジョブディスクリプション~企業の導入事例

企業は、ジョブディスクリプションをどのように活用しているのか。ここでは、企業の導入事例を紹介します。

株式会社日立製作所

日立製作所は、ビジネス環境の変化に合わせて雇用形態を変化させています。2020年には、ジョブ型雇用の運用をこれまで以上に強化。そのベースには、ジョブディスクリプションの活用があります。

ジョブディスクリプションに沿って、従業員一人ひとりのスキルや経験、実績を評価して処遇を決定。事務系でも、職種に特化したコースを設定し、企業全体でジョブ型雇用の推進を強化しています。

富士通株式会社

富士通株式会社は、2020年から管理職を対象としたジョブ型雇用を導入しています。2021年には、「課長職」のジョブディスクリプションを作成。希望する従業員が立候補する形で、課長への登用を行っています。今後は、管理職だけではなく一般社員にもジョブ型雇用を拡大し、組織の活性化を目指しています。

株式会社資生堂

株式会社資生堂は、激変するビジネス環境に対応すべく組織改革を進めています。その改革のひとつとして、ジョブ型雇用を導入し、ジョブディスクリプションに則した人材採用を強化。従業員の多様性を経営に活かしながら、組織改革を進めています。

ジョブディスクリプションを作成・導入する際の注意点

ここでは、ジョブディスクリプションを作成・導入する際の注意点を見ていきます。

【ジョブディスクリプションを作成・導入する際の注意点】

・職務と実務にズレがないようにする
・人事評価とリンクさせる
・定期的に内容を見直す

ひとつずつ解説しましょう。

職務と実務にズレがないようにする

ジョブディスクリプションの内容は、職務と実務にズレがないようにします。もし乖離があれば、業務が滞り運営の妨げになってしまいます。そればかりか、ギャップを感じた従業員の早期離職につながりかねません。

ジョブディスクリプションを取り入れるにあたっては、情報取集とヒアリングを繰り返し、職務と実務が一致するよう徹底します。

人事評価とリンクさせる

ジョブディスクリプションは、人事評価とリンクさせることが不可欠です。評価は、ジョブディスクリプションに記載した項目にそって客観的に行います。逆に言うと、ジョブディスクリプションを無視した主観的な評価は絶対にNGです。

ジョブディスクリプションに基づき、評価の公平性を保つことが従業員の納得感を高め、エンゲージメントの向上につながります。

定期的に内容を見直す

ジョブディスクリプションは、一度作成したら終わりではありません。企業を取り巻く環境は、常に変化しています。定期的に内容を見直し、組織の状態に合わせた文書へと更新していきましょう。

その際、重要になるのが従業員と組織の状態を把握することです。従業員の満足度やエンゲージメント、組織が抱える課題を十分に把握する必要があります。それには、組織サーベイの実施が効果的。従業員と組織の状態が定量的かつ定性的に可視化され、ジョブディスクリプションの更新に役立つでしょう。

関連記事:組織サーベイとは?目的や種類、ツール別の質問項目を解説

最後に

社員

人口減少社会の中で、専門性の高い人材をどう採用するのか。また、組織にマッチした人材をどう育て、いかに定着を図っていくのか。ジョブディスクリプションの活用は、その課題をクリアするひとつの方策といえます。

ただそれには、従業員と組織の状態を把握することが不可欠です。新しい施策を導入したり改善したりする前には、組織が内包する課題を知る必要があります。それには、本文で述べた通り組織サーベイの実施が効果的です。

リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。信頼性が担保された従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価で、従業員と組織の状態を定量的かつ定性的に可視化します。

ジョブディスクリプションを取り入れ、、多様化する雇用環境に対応したいとお考えの担当者の方は、リアルワンの組織サーベイをぜひご活用ください。

>> リアルワンの組織サーベイに関するご相談はコチラのフォームをご利用ください。