SL理論とは?PM理論との違いやリーダーシップの例をわかりやすく解説

多様性が求められる時代にあって、リーダーシップのスタイルも変化しています。今回は、部下の状況に合わせてリーダーの関わり方を変えていく「SL理論」を紹介します

SL理論とは、どのようなリーダーシップ理論なのか。PM理論との違いとは。本記事では、SL理論についてリーダーシップの例をあげながら分かりやすく解説します。

【本記事で得られる情報】

・SL理論の意味と活用するメリット
・SL理論とPM理論の違い
・SL理論における部下の成熟度
・SL理論におけるリーダーの行動スタイル
・SL理論4つのリーダーシップ
・SL理論のデメリットと有効活用するポイント

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

SL理論を分かりやすく解説

では、SL理論について分かりやすく解説しましょう。

SL理論とは

SL理論とは、「Situational Leadership Theory」のことです。日本では、「状況対応型リーダーシップ理論」と訳されます。その名の通り、「部下の状況・成長に合わせてリーダーシップのスタイル(関わり方)を変えていく理論」であり、ポール・ハーシーとケネス・ブランチャードによって提唱されました。

SL理論を活用するメリット

SL理論には、次のようなメリットがあります。

【SL理論を活用するメリット】

・成長を促すことができる
・定着率が向上する
・エンゲージメントが高まる

SL理論は、部下の成長段階によって関わり方を変えるため、状況に応じた成長を促すことができます。部下は、自分の状況に合ったペースでスキルアップができるため、行き詰まることもなく定着率が向上するでしょう。それは、従業員エンゲージメントを高めることにもつながります。

SL理論とPM理論の違い

PM理論は、三隅二不二によって提唱されたリーダーシップ理論です。リーダーがとるべき行動を、「P:Performance function=目標達成機能」と「M:Maintenance function=集団維持機能」の2つの機能で捉え、成果をだしていく理論になります。

SL理論とPM理論の違いをあげましょう。

SL理論:部下の状態によってリーダーシップスタイルを変える理論
PM理論:リーダー自らが自分のリーダーシップスタイルを確認し、理想の形を目指し変化していく理論

SL理論とPM理論は、リーダーシップ理論という点では同じです。しかし、SL理論が部下を見ているのに対して、PM理論は自分のリーダーシップ(とるべき行動)を見ているという点で大きく異なっています。

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SL理論における部下の成熟度とは?

SL理論では、部下の状態に合わせたリーダーシップが求められます。そのため、部下の状態を「成熟度」として4つに区分しています。ここでは、SL理論における部下の成熟度の状態を解説します。

【SL理論~部下の成熟度】

・成熟度1:成熟度が低い状態
・成熟度2:成熟度が少し高くなった状態
・成熟度3:成熟度がさらに高くなった状態
・成熟度4:成熟度が最も高くなった状態

詳しく見ていきます。

成熟度1:成熟度が低い状態

「成熟度1」は、成熟度が低い状態を表しています。業務や役割をこなす能力が不足しており、やるべきことも分からない未熟な状態です。新入社員や業界未経験の従業員が「成熟度1」に相当します。

成熟度2:成熟度が少し高くなった状態

「成熟度2」は、成熟度が少し高くなった状態を表しています。徐々に経験を積んでいる段階で、やるべきことは分からなくても、主体的にある程度の業務をこなせる、また学びについても積極的である状態です。入社して、ある程度の経験を積んだものの、まだまだ成果をだしていない従業員が「成熟度2」に相当します。

成熟度3:成熟度がさらに高くなった状態

「成熟度3」は、成熟度がさらに高くなった状態を表しています。必要最低限の指示で業務をこなすことができて、何をすべきか理解しているものの、ひとりで行動するには不安といった状態です。一定の能力を持っているけれども、十分に活かしきれていない従業員が「成熟度3」に相当します。

成熟度4:成熟度が最も高くなった状態

「成熟度4」は、成熟度が最も高くなった状態を表しています。責任感を持って業務に向き合い、高い成果が期待できます。専門的な能力を身につけており、業務を楽しむ余裕がある状態です。リーダーからの指示やサポートを、あまり必要としない意欲の高い従業員が「成熟度4」に相当します。

SL理論におけるリーダーの行動スタイル~指示的行動と援助的行動

SL理論は、部下の成熟度に合わせたリーダーシップと共に、部下に接するリーダーの「軸」となる2つの行動スタイルを定めています。ここでは、この2つの行動スタイル指示的行動援助的行動について解説します。

指示的行動

指示的行動とは、リーダーが部下に対して業務の手順やタスク処理の方法など、具体的な指示を行うことです。経験や知識が少ない部下は、具体的な指示がないと行動できません。その中で、部下が業務に取り組みやすい仕組みを作り、管理・監督を行うといった行動を指しています。

援助的行動

援助的行動とは、リーダーが部下との信頼関係を築くためにとる行動のことです。具体的には、傾聴や称賛、支援といった行動を指します。信頼関係を深めるには、密接なコミュケーションが欠かせません。部下のモチベーションを高めるためにも、指示だけではなくコミュケーションや承認が重要になります。

SL理論における4つのリーダーシップ

成熟度が違う部下に対して、同じスタイルで接していては成長を促すことができません。ここでは、部下の成熟度に合わせた、SL理論4つのリーダーシップについて解説します。

SL理論4つのリーダーシップ】

・教示型リーダーシップ
・説得型リーダーシップ
・参加型リーダーシップ
・委任型リーダーシップ

ひとつずつ見ていきましょう。

教示型リーダーシップ

教示型リーダーシップとは、「成熟度1」の部下に対するリーダーシップのスタイルです。部下の成熟度が低いため、多くの指示的行動が求められ、援助的行動をあまり必要としません。リーダーは、細かく指示をだして管理・監督を行います。

説得型リーダーシップ

説得型リーダーシップとは、「成熟度2」の部下に対するリーダーシップのスタイルです。成熟度が少し高くなっているため、指示的行動、そして援助的行動の2つが求められます。リーダー自身の考え方を部下に説明し、質問にも答えます。4つのリーダーシップの中で、最も時間がかかる段階です。

参加型リーダーシップ

参加型リーダーシップとは、「成熟度3」の部下に対するリーダーシップのスタイルです。成熟度がさらに高くなっているため、多くの援助的行動が求められ、指示的行動をあまり必要としません。リーダーは、部下が自ら意志決定できるようにサポートしていきます。

委任型リーダーシップ

委任型リーダーシップとは、「成熟度4」の部下に対するリーダーシップのスタイルです。成熟度が最も高くなっているため、指示的行動も援助的行動も必要ありません。リーダーは、業務遂行や意思決定、課題解決など、仕事の多くを部下に任せます。

SL理論のデメリット・注意点

続いて、SL理論のデメリットや注意点を見ていきましょう。

【SL理論のデメリット・注意点】

・多くの工程と時間がかかる
・不公平感を持つ可能性がある
・部下の変化を常に把握する必要がある

SL理論は、部下の成熟度を正確に把握する必要があります。リーダーがSL理論を習得する時間、社内環境を整える準備も必要です。SL理論を実践するには、このように多くの工程と時間がかかります

また、成熟度で関わり方を変えるため、部下によっては不公平感を持つ可能性があります。部下に合わせてスタイルを変えることに、負担を感じるリーダーもいるでしょう。しかも、部下の状態は日々変化しています。部下の変化を常に把握する必要があることも、SL理論の難しいところです。

SL理論を有効活用するポイント~部下の状態を把握する方法

SL理論を有効活用するには、部下の状態を把握する必要があります。またリーダーとして、組織課題の把握も重要でしょう。ここでは、その方法を解説します。

【部下と組織の状態を把握する方法】

・定期的に1on1ミーティングを行う
・組織サーベイを実施する

詳しく見ていきましょう。

定期的に1on1ミーティングを行う

定期的に1on1ミーティングを行うことで、部下の状態を把握することができます。スキルレベルはどの段階にあるのか、業務への向き合い方やモチベーションの状態、組織に対する感情など、1on1ミーティングを通じて定期的に確認します。

組織サーベイを実施する

組織サーベイを実施するのも効果的です。組織サーベイとは、アンケートによって、従業員の状態や組織の課題を定量的かつ定性的に可視化する調査のことです。部下やリーダーの状態をはじめ、満足度やエンゲージメント、組織が抱える目に見えない課題を的確に確認することができます。

関連記事:組織サーベイとは?目的や種類、ツール別の質問項目を解説

最後に

SL理論は、部下の状態に合わせて関わり方を柔軟に変化させるリーダーシップです。DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)が求められる社会において、ひとつの有効な理論といえます。

ただSL理論を実践するには、様々な課題があるのも事実でしょう。1on1ミーティングや組織サーベイを実施し課題をクリアすることで、部下の成長と組織の活性化を図っていきたいものです。

リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。専門家が監修する「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で、従業員と組織の状態を定量的かつ定性的に可視化します。

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