不確実性が高い時代にあって、多様な人材を活用し、組織の活性化を目指す「インクルーシブリーダーシップ」が注目されています。インクルーシブリーダーシップとは、どのようなリーダーシップスタイルなのでしょうか。
今回は、このインクルーシブリーダーシップの特徴を紹介しながら、インクルーシブリーダーシップを育む多様性のある組織の作り方を解説します。
【本記事で得られる情報】
・インクルーシブリーダーシップの意味と重要性
・インクルーシブリーダーシップと従来型リーダーシップとの違い
・インクルーシブリーダーの特徴とメリット
・インクルーシブリーダーシップを育む組織の作り方
・インクルーシブリーダーシップに取り組む具体例
・インクルーシブリーダーシップの課題
目次
インクルーシブリーダーシップとは?その意味と重要性
インクルーシブリーダーシップとは、メンバー全員の意見を尊重し、組織とメンバーの力を最大限に活かすことで成果を出すリーダーシップスタイルです。インクルーシブ(inclusive)は、「包括的・包み込む」という意味。各メンバーの多様性を受け入れながら(包み込み)活用し、成果に導きます。
予測が難しく、不確実性の高い時代です。この複雑化した市場環境において、組織の競争力を高めるには、特定のメンバーがリーダーシップを発揮するだけでは、変化に対応することができません。激しい変化の中で、成果を出すには、多様なメンバーの活用が不可欠でしょう。
そこで、多様な価値観を持つメンバーをまとめ上げ、柔軟に活かしていくインクルーシブリーダーシップの重要性が増しているのです。
インクルーシブリーダーシップと従来型リーダーシップとの違い
では、インクルーシブリーダーシップと従来型リーダーシップとの違いを見ていきます。ここでは、クルト・レヴィンが提唱した3つのリーダーシップとの違いを確認しておきましょう。
【クルト・レヴィン3つのリーダーシップ】
・専制型リーダーシップ
・民主型リーダーシップ
・放任型リーダーシップ
ひとつずつ解説します。
専制型リーダーシップ
専制型リーダーシップとは、メンバーの行動の在り方や方向性のすべてを、リーダーが1人で決めるスタイルです。短期的に成果を求めるときに、有効とされています。ただ、メンバーが受け身になってしまい、成長につながらない難しさがあります。
民主型リーダーシップ
民主型リーダーシップとは、メンバー自らが行動の在り方や方向性を決定できるように、リーダーがサポート役に徹するスタイルです。メンバーの主体性が育つとされています。時間はかかるものの、強い組織づくりに効果的です。
放任型リーダーシップ
放任型リーダーシップとは、メンバーの行動の在り方や方向性の決定にリーダーが関与せず、全てをメンバーに任せるスタイルです。意思決定にリーダーが介在しないため、統制がとれない難しさがあるものの、自律的なメンバーが多い組織では、業務がスピーディーに進み生産性が高まります。
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インクルーシブリーダーシップを実践するリーダーの特徴
インクルーシブリーダーシップを実践するリーダー(インクルーシブリーダー)には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、その特徴を解説します。
【インクルーシブリーダーの特徴】
・多様性(ダイバーシティ)を尊重できる
・受容・共感・自己一致ができる
・双方向のコミュニケーションをとれる
・エンパワーメントを推進できる
詳しく見ていきましょう。
多様性(ダイバーシティ)を尊重できる
インクルーシブリーダーは、多様性(ダイバーシティ)を尊重できます。自分とは異なるバックグラウンドを持つメンバーの意見や考え方、経験を受け入れ活かせるのが特徴です。
受容・共感・自己一致ができる
受容・共感・自己一致できるのも、インクルーシブリーダーの特徴です。受容とは、メンバーのありのままを受け入れること。共感とは、メンバーの気持ちに寄り添えること。自己一致とは、メンバーの考えと自分の理解をすり合わせ、それを正しく認識できることです。
受容・共感・自己一致ができるインクルーシブリーダーのもとでは、全てのメンバーが自由に発言し、その発言が尊重される環境が整います。
双方向のコミュニケーションをとれる
インクルーシブリーダーは、双方向のコミュニケーションをとれます。メンバーの話を傾聴できると共に、自らの意見をフィードバックし信頼関係を深めます。
エンパワーメントを推進できる
エンパワーメントとは、意思決定の権限を各メンバーに委譲することです。インクルーシブリーダーは、このエンパワーメントを推進できます。
エンパワーメントを推進するには、メンバー一人ひとりが、自律的でなければなりません。キャリア自律に向けメンバーを育成すると共に、常に組織全体の活性化に目を配り、エンパワーメントを推進する姿勢が特徴です。
関連記事:エンパワーメントとは?権限委譲を推進するための方法や成功事例をご紹介
インクルーシブリーダーシップのメリット
続いて、インクルーシブリーダーシップのメリットを見ていきましょう。
【インクルーシブリーダーシップのメリット】
・新しいアイデアやイノベーションが期待できる
・生産性が高まる
・定着率が高まる
詳しく解説します。
新しいアイデアやイノベーションが期待できる
アイデアやイノベーションは、異なる意見、そして多様な考え方のぶつかり合いから生まれます。多様性を尊重するインクルーシブリーダーシップによって、新しいアイデアやイノベーションが期待できるでしょう。「新たな気づき」は、違いを受け入れることから始まります。
生産性が高まる
メンバー全員の意見を尊重し、組織とメンバーの力を最大限に活かしながら成果を出すのがインクルーシブリーダーシップです。「自分は認められている」という感覚は、自己肯定感を高めます。仕事に向き合う姿勢も主体的になり、生産性が高まるでしょう。
定着率が高まる
インクルーシブリーダーシップは、メンバーの能力を最大限に活かすのがそのスタイル。メンバーは、自分の力が活かせる環境の中で、仕事に対する満足度や組織へのエンゲージメントを向上させるでしょう。それは、定着率が高まることにつながるのです。
インクルーシブリーダーシップが育つ組織の作り方
では、どのようにすればインクルーシブリーダーシップは育つのでしょうか。ここでは、インクルーシブリーダーシップが育つ組織の作り方を解説します。
【インクルーシブリーダーシップが育つ組織の作り方】
・多様な価値観を受け入れる
・公平性(エクイティ)を確立する
・心理的安全性を高める
ひとつずつ見ていきましょう。
多様な価値観を受け入れる
インクルーシブリーダーシップと多様性は、ワンセットで語られるべきものです。多様な価値観を受け入れることは、インクルーシブリーダーシップを育む上で必要不可欠といえます。多様な価値観を受け入れながら、コミュニケーションを深める。インクルーシブリーダーシップを育む重要なポイントです。
具体例な取り組み
・「女性・シニア・障がい者・外国人」の活用
・LGBTQに対する理解の促進
・柔軟な働き方の導入
公平性(エクイティ)を確立する
公平性(エクイティ)を確立することも、インクルーシブリーダーシップを育てる重要な視点です。公平な組織には、メンバー全員にチャンスがあり、正当に評価される環境があります。公平性は、メンバーの満足度やエンゲージメントも左右します。
また、公平性(エクイティ:E)は、D&I「多様性(ダイバーシティ:D)&包括性(インクルージョン:I)」と共に、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を形成する重要な要素。インクルーシブリーダーシップが育つ組織は、DE&Iを推進する組織であり、その実現を目指すのがインクルーシブリーダーシップともいえるのです。
具体例な取り組み
・評価制度の見直し
・コミュニケーションしやすい環境の整備
・相談窓口の設置
関連記事:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)で組織力を高める方法とは?
心理的安全性を高める
組織の中でメンバー全員が、立場や人間関係を気にすることなく、自由に意見を述べるには心理的安全性を高める必要があります。心理的安全性の確立も、インクルーシブリーダーシップが育つ組織作りに欠かせません。
心理的安全性を高めるには、メンバー同士の信頼関係を深め、風通しの良い環境を作ることが重要です。それはまさに、DE&Iを推進することに他なりません。
具体例な取り組み
・1on1ミーティングの実施
・違いを認める組織文化の醸成
・雑談できる時間の確保
インクルーシブリーダーシップを育む事例
では、インクルーシブリーダーシップを育む取り組みを紹介しましょう。
文部科学省が推進するインクルーシブ教育
インクルーシブリーダーシップを育む取り組みとして、文部科学省は「インクルーシブ教育」を推進しています。インクルーシブ教育とは、多様性を尊重し、障害の有無や国籍に関係なく、全ての子供たちが同じ環境で学ぶ教育のことです。
インクルーシブ教育への取り組みは、世界中で進んでいます。日本では、文部科学省がリーダーシップをとり「インクルーシブ教育システム」を構築。違いを尊重する機会を作り、互いに支え合う心の育成に努めています。
シリコンバレーが取り組むインクルーシブリーダーシップ研修
多くのIT企業やスタートアップが拠点とするシリコンバレーでは、インクルーシブリーダーシップ研修への取り組みが盛んです。アップルのティム・クックCEOは、「多様性が最高の製品を創造する」と、インクルーシブリーダーシップとイノベーションの関係性を語っています。
研修によって、多様性を尊重すること、違いを受け入れること、その環境作りを学び、実践することが新しいアイデアの創造につながる。実現に向けて、シリコンバレーの様々な企業がインクルーシブリーダーシップ研修を取り入れています。
インクルーシブリーダーシップの課題
ここでは、インクルーシブリーダーシップの課題を考察します。
最も大きな課題は、インクルーシブリーダーシップをどのように根付かせていくのかということです。新しい考え方が根付くには、相応の時間がかかります。取り組みを進めながら課題を吸い上げ、PDCAサイクルを回していく対応が求められます。
また、教育や研修に関する費用、そしてメンバー一人ひとりの特性の把握も大きな課題です。何事も、新しい施策を進めるには課題の把握が欠かせません。そのためにも、組織サーベイなどを実施し、メンバーと組織の現状を知る取り組みが求められます。
関連記事:組織サーベイとは?目的や種類、ツール別の質問項目を解説
最後に
新しい時代のリーダーシップスタイルとして、インクルーシブリーダーシップが必要であるのは明確です。しかし、課題があるのも事実です。課題をクリアするには、まずメンバーと組織の現状を知る取り組みが必須。それには、組織サーベイが効果的です。
リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。第一線の専門家が監修する「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で、メンバーと組織の現状を可視化します。
メンバーと組織の現状を知り、インクルーシブリーダーシップが育つ組織を作りたいとお考えの担当者の方は、リアルワンの組織サーベイをぜひご活用ください。