インクルーシブリーダーシップとは?特徴と多様性のある組織の作り方

不確実性が高い時代にあって、多様な人材を活用し、組織の活性化を目指す「インクルーシブリーダーシップが注目されています。インクルーシブリーダーシップとは、どのようなリーダーシップスタイルなのでしょうか。

今回は、このインクルーシブリーダーシップの特徴を紹介しながら、インクルーシブリーダーシップを育む多様性のある組織の作り方を解説します。

【本記事で得られる情報】

・インクルーシブリーダーシップの意味と重要性
・インクルーシブリーダーシップと従来型リーダーシップとの違い
・インクルーシブリーダーの特徴とメリット
・インクルーシブリーダーシップを育む組織の作り方
・インクルーシブリーダーシップに取り組む具体例
・インクルーシブリーダーシップの課題

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

インクルーシブリーダーシップとは?その意味と重要性

会議

インクルーシブリーダーシップとは、メンバー全員の意見を尊重し、組織とメンバーの力を最大限に活かすことで成果を出すリーダーシップスタイルです。インクルーシブ(inclusive)は、「包括的・包み込む」という意味。各メンバーの多様性を受け入れながら(包み込み)活用し、成果に導きます

予測が難しく、不確実性の高い時代です。この複雑化した市場環境において、組織の競争力を高めるには、特定のメンバーがリーダーシップを発揮するだけでは、変化に対応することができません。激しい変化の中で、成果を出すには、多様なメンバーの活用が不可欠でしょう。

そこで、多様な価値観を持つメンバーをまとめ上げ、柔軟に活かしていくインクルーシブリーダーシップの重要性が増しているのです。

インクルーシブリーダーシップと従来型リーダーシップとの違い

では、インクルーシブリーダーシップと従来型リーダーシップとの違いを見ていきます。ここでは、クルト・レヴィンが提唱した3つのリーダーシップとの違いを確認しておきましょう。

【クルト・レヴィン3つのリーダーシップ】

・専制型リーダーシップ
・民主型リーダーシップ
・放任型リーダーシップ

ひとつずつ解説します。

専制型リーダーシップ

専制型リーダーシップとは、メンバーの行動の在り方や方向性のすべてを、リーダーが1人で決めるスタイルです。短期的に成果を求めるときに、有効とされています。ただ、メンバーが受け身になってしまい、成長につながらない難しさがあります。

民主型リーダーシップ

民主型リーダーシップとは、メンバー自らが行動の在り方や方向性を決定できるように、リーダーがサポート役に徹するスタイルです。メンバーの主体性が育つとされています。時間はかかるものの、強い組織づくりに効果的です。

放任型リーダーシップ

放任型リーダーシップとは、メンバーの行動の在り方や方向性の決定にリーダーが関与せず、全てをメンバーに任せるスタイルです。意思決定にリーダーが介在しないため、統制がとれない難しさがあるものの、自律的なメンバーが多い組織では、業務がスピーディーに進み生産性が高まります。

関連記事:あなたのリーダーシップスタイルはどれ?代表的な種類と特徴を解説

インクルーシブリーダーシップを実践するリーダーの特徴

インクルーシブリーダーシップを実践するリーダー(インクルーシブリーダー)には、どのような特徴があるのでしょうか。ここでは、その特徴を解説します。

【インクルーシブリーダーの特徴】

・多様性(ダイバーシティ)を尊重できる
・受容・共感・自己一致ができる
・双方向のコミュニケーションをとれる
・エンパワーメントを推進できる

詳しく見ていきましょう。

多様性(ダイバーシティ)を尊重できる

インクルーシブリーダーは、多様性(ダイバーシティ)を尊重できます。自分とは異なるバックグラウンドを持つメンバーの意見や考え方、経験を受け入れ活かせるのが特徴です。

受容・共感・自己一致ができる

受容・共感・自己一致できるのも、インクルーシブリーダーの特徴です。受容とは、メンバーのありのままを受け入れること共感とは、メンバーの気持ちに寄り添えること自己一致とは、メンバーの考えと自分の理解をすり合わせ、それを正しく認識できることです。

受容・共感・自己一致ができるインクルーシブリーダーのもとでは、全てのメンバーが自由に発言し、その発言が尊重される環境が整います。

双方向のコミュニケーションをとれる

インクルーシブリーダーは、双方向のコミュニケーションをとれます。メンバーの話を傾聴できると共に、自らの意見をフィードバックし信頼関係を深めます。

エンパワーメントを推進できる

エンパワーメントとは、意思決定の権限を各メンバーに委譲することです。インクルーシブリーダーは、このエンパワーメントを推進できます

エンパワーメントを推進するには、メンバー一人ひとりが、自律的でなければなりません。キャリア自律に向けメンバーを育成すると共に、常に組織全体の活性化に目を配り、エンパワーメントを推進する姿勢が特徴です。

関連記事:エンパワーメントとは?権限委譲を推進するための方法や成功事例をご紹介

インクルーシブリーダーシップのメリット

続いて、インクルーシブリーダーシップのメリットを見ていきましょう。

【インクルーシブリーダーシップのメリット】

・新しいアイデアやイノベーションが期待できる
・生産性が高まる
・定着率が高まる

詳しく解説します。

新しいアイデアやイノベーションが期待できる

アイデアやイノベーションは、異なる意見、そして多様な考え方のぶつかり合いから生まれます。多様性を尊重するインクルーシブリーダーシップによって、新しいアイデアやイノベーションが期待できるでしょう。「新たな気づき」は、違いを受け入れることから始まります。

生産性が高まる

メンバー全員の意見を尊重し、組織とメンバーの力を最大限に活かしながら成果を出すのがインクルーシブリーダーシップです。「自分は認められている」という感覚は、自己肯定感を高めます仕事に向き合う姿勢も主体的になり、生産性が高まるでしょう。

定着率が高まる

インクルーシブリーダーシップは、メンバーの能力を最大限に活かすのがそのスタイル。メンバーは、自分の力が活かせる環境の中で、仕事に対する満足度や組織へのエンゲージメントを向上させるでしょう。それは、定着率が高まることにつながるのです。

インクルーシブリーダーシップが育つ組織の作り方

では、どのようにすればインクルーシブリーダーシップは育つのでしょうか。ここでは、インクルーシブリーダーシップが育つ組織の作り方を解説します。

【インクルーシブリーダーシップが育つ組織の作り方】

・多様な価値観を受け入れる
・公平性(エクイティ)を確立する
・心理的安全性を高める

ひとつずつ見ていきましょう。

多様な価値観を受け入れる

インクルーシブリーダーシップと多様性は、ワンセットで語られるべきものです。多様な価値観を受け入れることは、インクルーシブリーダーシップを育む上で必要不可欠といえます。多様な価値観を受け入れながら、コミュニケーションを深める。インクルーシブリーダーシップを育む重要なポイントです。

公平性(エクイティ)を確立する

公平性(エクイティ)を確立することも、インクルーシブリーダーシップを育てる重要な視点です。公平な組織には、メンバー全員にチャンスがあり、正当に評価される環境があります。公平性は、メンバーの満足度やエンゲージメントも左右します。

また、公平性(エクイティ:E)は、D&I「多様性(ダイバーシティ:D)&包括性(インクルージョン:I)」と共に、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)を形成する重要な要素。インクルーシブリーダーシップが育つ組織は、DE&Iを推進する組織であり、その実現を目指すのがインクルーシブリーダーシップともいえるのです。

関連記事:ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)で組織力を高める方法とは?

心理的安全性を高める

組織の中でメンバー全員が、立場や人間関係を気にすることなく、自由に意見を述べるには心理的安全性を高める必要があります。心理的安全性の確立も、インクルーシブリーダーシップが育つ組織作りに欠かせません。

心理的安全性を高めるには、メンバー同士の信頼関係を深め、風通しの良い環境を作ることが重要です。それはまさに、DE&Iを推進することに他なりません。

インクルーシブリーダーシップを育む事例

では、インクルーシブリーダーシップを育む取り組みを紹介しましょう。

文部科学省が推進するインクルーシブ教育

インクルーシブリーダーシップを育む取り組みとして、文部科学省は「インクルーシブ教育」を推進しています。インクルーシブ教育とは、多様性を尊重し、障害の有無や国籍に関係なく、全ての子供たちが同じ環境で学ぶ教育のことです。

インクルーシブ教育への取り組みは、世界中で進んでいます。日本では、文部科学省がリーダーシップをとり「インクルーシブ教育システム」を構築。違いを尊重する機会を作り、互いに支え合う心の育成に努めています。

シリコンバレーが取り組むインクルーシブリーダーシップ研修

多くのIT企業やスタートアップが拠点とするシリコンバレーでは、インクルーシブリーダーシップ研修への取り組みが盛んです。アップルのティム・クックCEOは、「多様性が最高の製品を創造する」と、インクルーシブリーダーシップとイノベーションの関係性を語っています。

研修によって、多様性を尊重すること、違いを受け入れること、その環境作りを学び、実践することが新しいアイデアの創造につながる。実現に向けて、シリコンバレーの様々な企業がインクルーシブリーダーシップ研修を取り入れています。

インクルーシブリーダーシップの課題

ここでは、インクルーシブリーダーシップの課題を考察します。

最も大きな課題は、インクルーシブリーダーシップをどのように根付かせていくのかということです。新しい考え方が根付くには、相応の時間がかかります。取り組みを進めながら課題を吸い上げ、PDCAサイクルを回していく対応が求められます

また、教育や研修に関する費用、そしてメンバー一人ひとりの特性の把握も大きな課題です。何事も、新しい施策を進めるには課題の把握が欠かせません。そのためにも、組織サーベイなどを実施し、メンバーと組織の現状を知る取り組みが求められます

関連記事:組織サーベイとは?目的や種類、ツール別の質問項目を解説

最後に

新しい時代のリーダーシップスタイルとして、インクルーシブリーダーシップが必要であるのは明確です。しかし、課題があるのも事実です。課題をクリアするには、まずメンバーと組織の現状を知る取り組みが必須。それには、組織サーベイが効果的です。

リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。第一線の専門家が監修する「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」「360度評価」で、メンバーと組織の現状を可視化します。

メンバーと組織の現状を知り、インクルーシブリーダーシップが育つ組織を作りたいとお考えの担当者の方は、リアルワンの組織サーベイをぜひご活用ください。

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