従業員満足度調査は『組織の健康診断』ともいわれており、従業員と組織の今の状態を正確なデータとして表すことができます。従業員満足度が高い結果でている組織では、生産性や顧客満足度(CS)も高く、離職率は低いといわれています。
ここでは、従業員満足度が高い職場環境の特徴や5つの企業事例を紹介いたします。
目次
そもそも従業員満足度調査(ES調査)とは?
従業員満足度調査とは、名称通り自社の従業員の満足度を図るための調査です。英語表記のEmployee Satisfactionの頭文字をとって、ES調査ともよばれています。
従業員満足度調査は、アンケート形式やインタビュー形式で行なうのが一般的です。
従業員満足度は、組織で働く人が、自分の職場環境や仕事内容・待遇・福利厚生・人間関係等をどんな風に感じているかを表す概念です。
従業員満足度は、科学的な長い研究を重ねてきた結果、最も信頼できる指標ともいわれています。
アメリカの心理学者エドウィン・ロックによると、従業員満足度は「個人の仕事への評価や仕事からの経験によってもたらされる喜ばしい、もしくは肯定的な感情」と定義しています。
>>従業員満足度について、詳しくはこちらをご覧ください。
従業員満足度(Employee Satisfaction)とは何か?定義、研究事例、効用について紹介 – 従業員満足度調査・360度評価のリアルワン株式会社 – 人と組織の成長を支援
従業員満足度調査(ES調査)は、主に次の6つの目的で導入されることが多いようです。
<従業員満足度調査(ES調査)を実施する目的>
- 人事・組織面の活動結果を示す経営指標として活用
- 組織全体、部署別などの現状と課題の把握
- 計画や施策の立案、浸透度合いなどの効果検証
- 課題を特定した制度見直しや改定
- 管理職のマネジメントツール
- 強固なチームワークの形成
組織の課題点、従業員のモチベーションなどをデータとして可視化し、イキイキと活躍できる組織を創り上げれば、企業にとって大きなメリットになるでしょう。
では次は、どんなメリットが得られるかを紹介いたします。
従業員満足度の向上によって企業側が享受できる3つのメリット
ES調査の結果を経て従業員満足度が高まると、大きくは次の3つのメリットが期待できます。
- パフォーマンスの向上
- 人材の定着率の向上
- CS(顧客満足度)の向上
それでは、各メリットについて見ていきましょう。
メリット1:パフォーマンスの向上
従業員満足度が高い組織では従業員のモチベーションも高く、それぞれが能動的、自律的に業務に邁進しています。コミュニケーションも活発で組織が活性化しているので、新規事業の起ち上げやイノベーションも起こりやすいのです。ひいては、企業の生産性、業績の向上にもつながるといわれています。
メリット2:人材の定着率の向上
それぞれの従業員が高い満足度で働いていれば職場環境が良く、勤続意欲や帰属意識も高くリテンション効果も期待できます。また、高い成果をだせる知識やスキル、技術も豊富に持ち合せた勤続年数の長い従業員が多ければ生産性は向上します。それだけでなく、企業の魅力もアップし採用活用も有効的になるでしょう。
メリット3:CS(顧客満足度)の向上
職場環境が良い組織で働いていると、当然ながら自社への愛着心も高まり、会社愛は会社への高い貢献意識となります。能動的に自社の商品を分析して、新しい製品やサービスを創出しようと積極的に取り組むようになるでしょう。このポジティブな好循環が、CS(顧客満足度)も満足させるという相乗効果を生み、企業にとっての最強なメリットとなるのです。
従業員満足度が高い職場環境の共通点と構成要素
従業員満足度調査の結果が高い職場環境には、以下のような共通点がみられます。
- 従業員同士のコミュニケーションが活発である
- 業務効率化の仕組み・ノウハウを共有できる体制が整っている
- ワークライフバランスのバランスがとれている
- 評価制度や人事制度が整っている
このような職場は従業員満足度が高い傾向にあります。
また従業員満足度は主に、5つの要素で構成されるといわれています。
従業員満足度を高めるために必要な5つの要素は次の通りです。
<従業員満足度を高めるための5つの要素>
- 企業ビジョン・行動方針への高い共感度
- 物理的にも心理的にも快適な職場環境
- 仕事やその評価に対する納得感
- 賃金・福利厚生・制度面の満足感
- 円滑なコミュニケーションと良好な人間関係
それぞれの解説は、以下をご覧ください。
要素1:企業ビジョン・行動方針への高い共感度
企業ビジョンや行動方針に共感している従業員は、会社に対して期待感や信頼感を持ちやすいです。その結果、従業員は能動的かつ自律的に自社に貢献する行動をとるようになります。やらされ感がないためパフォーマンスも向上し、業績の向上にもつながります。
要素2:物理的にも心理的にも快適な職場環境
物理的な好環境とは、デスク周りの基本的な設備、パソコンやネットワークなどの情報インフラが整備されていること。心理的にはワークライフバランスが配慮されていて、理想の働き方が実現できている状態であれば、従業員の満足度は向上するといわれています。
要素3:仕事やその評価に対する納得感
身に付けた知識やスキルを活かして成長している従業員や、会社への貢献度を実感している従業員は、従業員満足度が高まりやすいです。その成果に対して、上司やマネジャーが正しく評価し、それに見合うポジションや報酬を提供されていればなおさら。より高いモチベーションで業務に邁進することができます。
要素4:賃金・福利厚生・制度面の満足感
給与や待遇などが満足してるかどうかは、働く上で非常に重要なポイントになるでしょう。要素3で記したように、成果に見合った給与が支払われていると満足度は高くなります。福利厚生が充実していたり、新しい制度を次々に取り入れられていたりすれば、離職率の低下にもつながるでしょう。
要素5:円滑なコミュニケーションと良好な人間関係
一般的な退職理由としても上位に挙げられる“劣悪な人間関係”は、従業員満足度を低くする大きな要因です。劣悪な人間関係が続くと、従業員は仕事にやりがいを感じられず、モチベーションも低下していきます。その結果生産性が低下し、離職率が高まってしまいます。良好な人間関係は、従業員満足度の高い職場の重要な要素といえます。
従業員満足度が高い企業の取り組み方や事例5選
独自の取り組みにより、従業員満足度を高めている企業は多数あります。ここでは、その取り組み方がユニークな企業の実施事例を見ていきましょう。具体的な取り組み方も紹介いたしますので、併せてチェックしてみてください。
事例1:自社のバリューを明文化し行動指針として掲げる/株式会社ユーザベース
株式会社ユーザベースはオンライン経済メディア「NewsPicks」などを全世界に展開する企業です。同社は従業員の増員をしていく過程で、企業ビジョンや行動方針を共通の価値観で共有する大切さを知ったといいます。そこで、まず従業員が守るべき7つのルールを作成。コンパクトな冊子形式にして、従業員がいつも携帯できるようにして自社の行動指針の浸透を図ったそうです。
<企業ビジョンや行動方針を共有するための取り組み事例>
- 共通の価値観となるバリューを、『7つのルール』として定義
- より共通の理解の浸透のために、7つのルールをブレイクダウンした『31の約束』を作成
- 31の約束をイラスト入りの冊子にまとめ、『DO(すべきこと)』と『DON’T(すべきでないこと)』を具現化
事例2:100人100通りの働き方を目指しワークスタイルを見直す/サイボウズ株式会社
クラウドベースのグループウェア『サイボウズ Office』や業務構築アプリ『kintone』などのサービス展開を軸に、社会のチームワーク向上を支援するサイボウズ株式会社。同社では、100人100通りの働き方改革を目指し、それぞれに快適な多様なワークスタイルを導入しています。例えば、育児・介護のための時短勤務や在宅勤務、子連れ出勤など。多様性を受け入れる制度を設けて、従業員満足度の向上に貢献しています。働き方改革に取り組むすべての人を応援するようになってからは、離職率が大幅に減らせたそうです。
<ワークバランスを配慮した取り組み事例・最長6年間の『育児・介護休暇制度』>
- 働く時間を短縮できる『育児・介護短時間勤務制度』
- 妊娠が分かった時から取得可能な『産前休暇』
- 勤務時間や場所を従業員が選択できる『働き方宣言制度』
- 従来の自宅での勤務を可能とする『在宅勤務制度』
- 在宅勤務制度をさらに進化させた『ウルトラワーク制度』
- 退職する人でも最長6年間はサイボウズへ復帰可能な『育自分休暇制度』
- 上司の承認や報告の義務も必要ない『副(複)業許可』
- 緊急時に限り、子どもと一緒に出勤できる『子連れ出勤制度』
事例3:フラットな等級制度を導入し評価方法を明確化/株式会社Colorkrew(カラクル)
ISAOから社名を変更し、引き続きHR・総務Techサービスで社内の活性化や効率化を実現するColorkrew。同社では前身のISAO時代から承継している『バリフラットモデル』、管理職0ゼロ、階層0ゼロ、チーム力∞無限大というユニークな人事制度を採用しています。バリ=超、フラット=階層のない組織。あるのは『等級』のみで、一般的な組織にはびこる権威意識を徹底的に削除して個々の主体性、リーダーシップの発揮を促しているのだとか。オープン&フラットの原則を体現した組織では、全員が経営者視点でイキイキと仕事をしているようです。
<バリフラットな等級・評価制度の取り組み事例>
- 11段階階の等級を設置
- 等級を構成する『コア』、等級の定義『5つの要素』を策定
- 等級は給与と完全に連動させ、必要に応じて見直しを実行
- 昇降級などの情報を、社内SNS『Goalous』上で公開
- 従業員が指名した人による『360度評価』の実施
- 個人の成長を支援する『コーチ制度』の導入
事例4:人生の転換期を支援する福利厚生制度を拡充/株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、安心して簡単に売り買いが楽しめる日本最大のフリマサービスを展開しています。同社の制度のなかで、特に力を入れているのが福利厚生。日本企業の多くの福利厚生制度は平等主義で策定されているそうですが、メルカリでは従業員の人生のターニングポイントでのサポートが強化されています。産休・育休・介護休業から復職する場合には、復職一時金も支給しているそうです。
<人生のターニングポイントで支援する福利厚生の取り組み事例>
- 産休・育休・介護休業時の復職一時金支援
- 育休・産休中の給与を100%保障
- 妊活のサポート
- 卵子凍結費用の補助
- 認可外保育園の保育料補助
- 病児保育費の支援
- 0歳児保育費用の補助
事例5:コミュニケーションの円滑化/エバラ食品工業株式会社
エバラ食品工業株式会社は「こころ、はずむ、おいしさ。」の提供をスローガンに、食品事業を中核に、物流事業、広告宣伝事業、人材派遣事業を行っています。同社では、社長を含む全国の営業拠点から工場までが『Chatter』を利用。営業担当はスマートフォンでChatterを確認できる体制を取っているため、スピーディーに対応できるようになっています。双方向コミュニケーションから販促活動につながるアイデアもでているようです。
<コミュニケーションの円滑化を図る取り組み事例>
- 本社をはじめ、全国の営業拠点や工場に、社内SNSを導入
- スマートフォンからも『Chatter』でアクセスできる環境を作成
- グループを作成し社長が社内外で気付いた点を社員に共有
- お客さま相談室によせられる消費者の声を各部門が共有
- 社員同士の双方向なコミュニケーションを実践
従業員満足度を高める具体的な方法
前述しましたが、次の5つの構成要素を高めておく、または満たしておくことで、従業員満足度の高い職場環境を整えることができます。
- 企業ビジョン・行動方針への高い共感度
- 物理的にも心理的にも快適な職場環境
- 仕事やその評価に対する納得感
- 賃金・福利厚生・制度面の満足感
- 円滑なコミュニケーションと良好な人間関係
具体的な方法の一例をお伝えします。
「1.企業ビジョン・行動方針への高い共感度」を得るためには、マネジメントを通して従業員個人の考えるパーパスにまで落とし込んでおくことが大切です。「組織は何のために存在し、自分は何のために働いているのか」といった本質的な目的や指針を常に意識させ、従業員の組織での存在意義を明確にしておくのが重要です。
「物理的にも心理的にも快適な職場環境」にするためには、時短や在宅勤務、フレックスタイム制などの多様な働き方を提供するのも一つの手でしょう。マネージメント方法やルールを設けるにあたり会社の負担は一時的に増えますが、「育児や介護などの事情を受け入れてくれる」「多様な働き方を認めてくれる」と感じられる企業であれば安心して働き続けられ、ワークライフバランスの向上やモチベーションの向上にもつながります。
「3:仕事やその評価に対する納得感」「4:賃金・福利厚生・制度面の満足感」などに従業員が満足や納得していなければ、人事制度・給与制度の見直しが最も効果的です。会社・従業員の実情を把握し、従業員の満足度を把握するためにも、従業員満足度調査の実施をおすすめします。
>>従業員満足度調の詳しい方法に関しては、こちらをご覧ください。
https://realone-inc.com/work/es-questionnaire/#ES
従業員満足度調査に関するよくある質問
「従業員満足度調査は定期的に実施してはいるものの、本当に満足度が高まっているか分からない」「アンケート項目やインタビュー内容は、どうやって作成すればいい?」などとお悩みの人事ご担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな方々には、以下のよくある質問をご参考にしていただければと思います。
従業員満足度が高い企業・低い企業の特徴は?
従業員満足度が高い企業には、次のような特徴が見られます。
<従業員満足度が高い企業の特徴>
- 企業ビジョンや行動方針が組織に浸透している
- 職場環境は物理的にも心理的にも快適である
- 具体的な評価基準が設けられている
- 給与、福利厚生、制度面が充実している
- コミュニケーションが円滑で良好な人間関係が築かれている
従業員満足度が低い企業の特徴は、以下の通りです。
<従業員満足度が低い企業の特徴>
- ビジョンやパーパスが浸透していない
- トップダウンで業務が遂行されている
- ネガティブな雰囲気がまん延している
- 評価制度や評価基準があいまい
- 社内インフラが整っていない
ネガティブな雰囲気がまん延している組織では、人間関係が険悪なことも少なくありません。形骸化した制度や昔のままの福利厚生も不満の要因となります。
従業員満足度調査は、従業員の不満の解消や社内環境の改善のために定期的に実施する必要があります。
満足度が高い従業員・低い従業員の特徴は?
高い満足度で働いている従業員の特徴は、能動的、主体的に物事に取り組んでいます。具体的には、次のようなアクションを起こしている人が多いです。
<満足度の高い従業員の特徴>
- 円滑なコミュニケーションで活発に意見交換をしている
- 目標達成のためにリーダーシップを振るっている
- 率先して後輩や同僚のフォローしている
- 組織のなかで円滑な人間関係を築いている
満足度が高い従業員は、企業のベクトルと同じ方向で進める人財が多いのも特徴です。そして、上記のような行動で、結果的に生産性の向上につなげています。そのため評価も高く待遇も良く、満足度が高いという好循環で働く人が多いのです。
満足度が低い人には、次のようなマインドが潜在しているようです。
<満足度の低い従業員の特徴>
- やらされ感がある
- 信頼感を持てない
- 成長を感じられない
- やりがいを持てない
ネガティブなモチベーションで業務を遂行していれば、当然、結果をだせずに評価は悪く給与も低いです。このような負のスパイラルは、マネジメントや人事評価、企業理念への共感、人間関係、職場環境、福利厚生などへの不満へと派生してしまうものです。
その状況をそのまま放置しておくと、最終的に従業員の離職につながる可能性もあります。そんな事態に陥る前に、従業員満足度調査や1on1ミーティングの活用が大事です。業務適性や裁量、能力などを理解し、部署を変えることで従業員のモチベーションが変わり不満解消につながるかもしれません。
従業員満足度アンケート項目の具体的な作成手順は?
従業員満足度調査のアンケート項目やインタビュー内容は、従業員の本音を引きだす要となります。正確な調査結果を導きだすアンケート項目の作成には、専門知識が必須。膨大な時間やノウハウも必要なため、信頼できるベンダーに依頼するのが一般的です。
新たな設問項目を作る際の開発手順は、一般的に次のステップを踏んで進められます。
<社内アンケートの設問項目を作る際の開発手順>
Step1:調査したい領域を定義
Step2:設問項目の草案を作成
Step3:パイロットテストの実施
Step4:大規模サンプルでのテスト
Step5:より多様なサンプルでのテスト
>>設問項目を作る際の開発手順の詳細はこちらの記事をご覧ください。
従業員満足度アンケートとは?設問項目例・テンプレートもあり | ソシキビト
従業員満足度が高い組織を目指すには、従業員の満足度がどれくらいなのかをまずは正確なデータとして取得しておくことが大切です。科学的根拠に基づいた信頼性の高い調査・評価で定評のあるリアルワンのES調査ツールなら、現状をしっかりと把握することができます。