360度評価には、“バレる?筒抜け?”といった疑問や不安の声があるのは事実です。これは、実際に評価を行う評価者はもちろん、360度評価の導入を検討している担当者にとっても、事前にクリアしておきたい懸念事項といえるでしょう。ではどうすれば、その懸念を払拭できるのでしょうか。
そのキーワードは、「匿名性」です。匿名性を担保することが、「バレる・筒抜け」といった懸念の払拭につながるのです。今回は、360度評価の「バレる・筒抜け」という懸念に焦点をあて、その原因やリスクを考察すると共に、匿名性を担保すべき理由を解説します。
【本記事で得られる360度評価の情報】
・「バレる・筒抜け」の原因
・「バレる・筒抜け」が招くリスク
・「記名式・匿名式」のメリット・デメリット
・匿名性を担保すべき理由
・匿名性を担保する方法や注意点
目次
360度評価は「どうしてバレる?なぜ筒抜け?」
360度評価は、「どうしてバレるのか?」「なぜ筒抜けになるのか?」。それには、次の原因が考えられます。
【360度評価が「バレる・筒抜けになる」原因】
・記名式で評価を実施
・自由記述欄のコメント内容から評価者が特定される
・結果の閲覧範囲に制限がない
・評価者同士が評価内容を共有する
ひとつずつ、詳しく見ていきましょう。
記名式で評価を実施
評価を「記名式」で行う場合は評価者が開示されるため、誰が行った評価なのか、誰が書いたコメントなのかが明確になります。評価方法を記名式で行っているので、「バレる・筒抜け」とは状況が違うものの、評価対象者に評価者のことが分かってしまう点では同じです。
後述する通り、記名式には相応のメリットがあります。実際、あえて記名式を採用している企業があるのも事実です。ただしそれには、心理的安全性の確保が絶対条件になります。そうでない場合、「バレる・筒抜け」が招くリスクを、記名式がクリアするのは難しいと言わざるを得ないでしょう。
関連記事:360度評価とは?そのやり方
自由記述欄のコメント内容から評価者が特定される
360度評価には、選択設問と共に「自由記述欄」が設けられています。この自由記述欄に書くコメントの内容から、評価者が特定される可能性があります。当事者しか知りえない具体的なエピソードや個人情報を含むコメントは、特定の従業員に関連づけられる可能性が高くなります。
自由記述欄のコメントは、評価者の本音が分かる重要な部分。とはいえ、評価者が分かってしまうのはリスキーでしょう。360度評価を実施する際は、コメントの書き方についても注意を払う必要があるのです。
結果の閲覧範囲に制限がない
評価結果の閲覧範囲に制限がない場合も、「バレる・筒抜け」の原因になります。評価結果に誰でもアクセスできる状態は、リスクの温床になりかねません。閲覧範囲には、明確な制限が必要です。
もちろん、閲覧範囲をどう制限するのかは360度評価の目的次第で違ってくるでしょう。ただ閲覧範囲は、従業員の安心感や納得感を左右する部分でもあります。評価者の回答しやすさと特定されにくさを考え、閲覧範囲を決定する必要があるのです。
関連記事:360度評価の効果的な運用方法
評価者同士が評価内容を共有する
360度評価を実施した後、評価者同士で評価内容を共有することも「バレる・筒抜け」の原因になります。軽い気持ちでお互いの評価結果を話し合うことは、評価対象者と評価者のプライバシーを守る観点からNGなのです。
誰かを評価することには、「責任」が伴います。評価者には、「守秘義務」が求められるのです。全ての従業員が、評価者になり評価対象者になるのが360度評価の特徴です。責任や守秘義務を社内に浸透させ、従業員一人ひとりが高い意識を持って360度評価に取り組む姿勢が不可欠になります。
360度評価のコメントや評価者がバレるリスク
360度評価のコメントや評価者がバレる場合、次のようなリスクが考えられます。
【360度評価のコメントや評価者がバレるリスク】
・社内コミュニケーションの停滞を招く
・社内の人間関係が悪化する
・従業員のモチベーションが低下する
・忖度や根回しで評価制度が機能しなくなる
詳しく解説しましょう。
社内コミュニケーションの停滞を招く
評価者が特定されると、従業員間や部署間に「しこり・わだかまり」が発生し、社内コミュニケーションの停滞を招く可能性があります。
「しこり・わだかまり」の原因は、360度評価に対する従業員の理解不足です。理解不足は思考を偏らせ、チームや部署、さらには組織全体の風通しを悪くしてしまいます。そしてそれが、コミュニケーションの停滞につながっていくのです。
社内の人間関係が悪化する
360度評価のコメントや評価者が、バレたり筒抜けたりすることをきっかけに、評価対象者と評価者との人間関係が悪化する可能性があります。また、評価者に良い評価をするように依頼することや、上司という立場で圧力をかけることも考えられます。
評価者の好き嫌いや思い込みからくる評価も、人間関係に影響を及ぼしかねないリスクといえるでしょう。
従業員のモチベーションが低下する
評価者が分かりショックを受けて落ち込んでしまい、評価された従業員のモチベーションが低下する可能性があります。
モチベーションの低下は、「やる気がなくなる」「やるべき指導をしなくなる」など、仕事に取り組む姿勢そのものに悪影響を与えかねません。それはさらに、従業員の生産性を下げ、組織の活性化をも妨げるリスクとなる可能性があるのです。
忖度や根回しで評価制度が機能しなくなる
「忖度」や「根回し」で、評価制度自体が機能しなくなるリスクも考えられます。360度評価の実施後を考えて、「余計な評価はやめよう」「仕返し評価をされたくない」「人間関係を壊したくない」といった忖度が働いてしまうのです。これでは、適切な評価は期待できないでしょう。
さらに、先述した「依頼・圧力」といった根回しも、評価制度を妨げるリスクといえるでしょう。
360度評価は「記名式・匿名式」のどっちで評価する?
360度評価の評価方法には、「記名式」と「匿名式」があります。実際、どっちで評価する方がよいのでしょうか。ここでは、双方のメリット・デメリットを明確にしてみます。
360度評価「記名式」のメリット・デメリット
はじめに、「記名式」のメリット・デメリットを明確にします。
【記名式のメリット】
・評価責任が可視化され無責任な評価が減る
・正確な評価を得やすい
・心理的安全性が確保されていればコミュニケーションが活性化する
【記名式のデメリット】
・評価に遠慮や忖度が入り透明性や公平性が損なわれる
・評価前に根回しされる可能性がある
・人間関係が悪化する恐れがある
記名式の場合、評価責任が可視化されるため、無責任な評価が減り正確性が高まります。とはいえ、評価に慣れていない従業員も多いため心理的な負担が増し、デメリット面が強く出る傾向があります。
360度評価「匿名式」のメリット・デメリット
では、「匿名式」のメリット・デメリットを明確にします。
【匿名式のメリット】
・本音の評価を得やすい
・気兼ねなく評価ができる
・心理的な負担が少なくなる
【匿名式のデメリット】
・個人批判になる恐れがある
・感情的な評価になりやすい
・評価責任が希薄になる
匿名式で評価する場合は、「バレる・筒抜け」といった心理的負担が減り、本音の評価を得やすくなります。しかしその一方で、評価責任が希薄になるため、批判的・感情的な評価になりやすい傾向があるのも事実です。
関連記事:360度評価とは?導入する目的やメリット・デメリット、項目を解説
360度評価は匿名性を担保すべき!その理由とは?
ここまで、360度評価の「バレる・筒抜け」という懸念に焦点をあて、その原因やリスクを考察すると共に、記名式と匿名式のメリット・デメリットを明確にしました。その上で本記事は、匿名式を採用し「匿名性を担保すべき」と考えます。
その理由は、全ての従業員が評価しあう360度評価には、他の評価制度にはない独特のリスクがあるため、「失敗しない環境作り」が極めて重要になるからです。そしてそのベースが、匿名性を担保することなのです。
理想は、心理的安全性の確保でしょう。しかし、心理的安全性を確保するにはステップが必要です。そのステップの第一段階として、匿名性を担保し360度評価を組織に浸透させていく。そして、評価することに慣れていない従業員が徐々に評価スキルを高め、最終的に誰もが意見や考えを言い合える心理的安全性の確保された組織につなげていくのです。
360度評価は、一度実行して終わりではありません。継続してこそ、大きな意味を持ちます。だからこそ匿名性を担保し、「失敗しない環境作り」に継続的に取り組んでいく必要があるのです。
関連記事:心理的安全性を作るポイント
360度評価の匿名性を担保する方法・注意点
匿名性を担保するポイントは、360度評価への理解を深め「納得感・安心感」を醸成することです。それには、次のことを意識します。
【360度評価の匿名性を担保する方法・注意点】
・事前説明を行う
・閲覧や活用の範囲を明確にする
・適切な評価協力者を選ぶ
・アフターフォロー環境を整備す
・360度評価を専門の調査会社に依頼する
それぞれ、詳しく解説します。
事前説明を行う
全従業員に対して、360度評価を何のために導入するのか、その目的や理由、実施方法や期待する成果など、事前説明を行います。従業員が納得感を持って取り組めることが守秘義務への理解を深め、匿名性を担保することにつながります。
自分を評価されること、また他者を評価することに不安を感じる従業員は多いものです。事前説明を行うことで従業員の不安を解消し、匿名性の担保について従業員が納得するまで説明していきましょう。
閲覧や活用の範囲を明確にする
360度評価の匿名性を担保するには、閲覧や活用の範囲といった「運用ルール」を明確にする必要があります。
【明確にすべき360度評価の運用ルール】
・閲覧範囲:評価結果の閲覧範囲
・活用範囲:人事考課に紐づけるか否か
・実施回数:1回だけの実施なのか継続的に実施するのか
・匿名性の担保:特別な意図がない限り匿名式を採用
運用ルールを明確にすることは、従業員の納得感や安心感につながります。運用ルールは必ず明確にし、周知徹底するようにしましょう。
適切な評価者を選ぶ
匿名性が担保されていない場合は、リスクが顕在化する可能性があります。匿名性を担保するには、事前に十分な説明を行うこと、運用ルールを明確にすること、そして「適切な評価者を選ぶ」ことが重要です。
どのような基準・方法で評価者を選ぶのか、何人選任するのか。360度評価の目的を踏まえ、適切な評価者を従業員が納得する基準・方法に則り必要十分な人数を選任する。それが匿名性を担保し、質の高い360度評価の実現につながるのです。
アフターフォロー環境を整備する
360度評価に対する納得感を高めるには、アフターフォロー環境の整備も重要です。評価対象者が適切なフィードバックやサポートを受けてこそ、前向きな行動変容や質の高いパフォーマンスにつながるのです。
360度評価は、「やりっぱなし」では意味がありません。アフターフォローまでを視野に入れたトータルな環境整備が、360度評価に対する従業員の納得感を高め、匿名性に対する理解を深めることになるのです。
360度評価を専門の調査会社に依頼する
匿名性を担保するには、360度評価を専門の調査会社に依頼するのがベターです。360度評価に自力で取り組むことは、不可能ではないでしょう。とはいえ、実施・運用する担当者にとっては「人的・時間的」に大きな負担となってしまいます。匿名性を担保するにも、相応のノウハウが必要です。
「費用的」な負担は発生します。しかし、担当者の負担を軽減し匿名性を担保する上で、専門の調査会社に依頼するのはベターな選択といえるのです。
関連記事:360度評価の失敗例と成功例
最後に
360度評価は「バレる・筒抜け」という懸念にフォーカスし、匿名性を担保する必要性や重要性について解説しました。本文でも述べましたが、匿名性の担保は360度評価を実施する上で、特別な意図がない限り必須の取り組みといってよいでしょう。
その匿名性を担保するには、やはり専門の調査会社に依頼するのが「人的・時間的・ノウハウ的」にベターといえます。本記事の最後に、専門の調査会社に依頼するポイントをまとめておきます。
【360度調査を専門の調査会社に依頼するポイント】
・独自ノウハウや高い専門性を持つ専業の調査会社である
・顧客の要望に寄り添う柔軟な対応力を持っている
・独自のデータを所有し信頼性や妥当性が担保されている
・豊富な実績を持ち情報の取扱いが厳格である
・担当者の負担を軽減するサポート体制を提供している
どれも、匿名性を担保し360度評価を成功させるためには、必要不可欠のポイントです。
リアルワン株式会社は、100万人超の利用実績を持つ調査・評価の専門会社です。信頼性・妥当性の担保された「360度評価」で、従業員の成長と組織の活性化をサポートします。独自のデータと第一線の研究者による監修に基づいた360度評価は、事業規模50人程の企業から4万人超の大企業まで、業種・業界を問わず活用されています。
導入にあたっては、事前準備から説明会の実施、運用そしてフィードバックまで、専門スタッフがトータルでサポート。実施担当者の要望に応じた、様々な研修にも細かく対応しています。費用についても、明確な料金テーブルを設定しているので、企業様の目的に則した導入プランを検討いただけます。
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