社内アンケートや評価制度の際、「どんなことを書けばいいのだろうか」「ネガティブなことを書いたら後が怖い」といった不安になる評価者。「今回もコメント欄は空白ばかり」「フィードバックに有効なコメントが少ない」といった悩みを抱える担当者。これは、従業員同士がお互いを評価し合う取り組みの中で起こる“あるある”なエピソードです。
全ての従業員が評価に関わる、「社内アンケート」や「360度評価」といった施策が注目を集める一方で、仲間を評価する従業員や施策を実施する担当者は、先のような不安や悩みを抱えています。そしてそれは、部下が上司に向けた評価コメントを書く際、最も顕著になるのです。
その上司に向けたコメント例文を、職種別に紹介するシリーズの3回目。今回は、事務職の部下が「上司に期待すること」のコメント例文を、心理的安全性の作り方を交えて解説します。
▼本記事で得られる情報
・心理的安全性の高い環境の作り方
・事務職の部下が上司を評価する際の注意点とポイント
・「事務職の上司に期待すること」のコメント例文
目次
部下が上司を評価するには?
ここでは、部下が上司を評価する環境について考察します。
全ての従業員が評価に関わるには「心理的安全性」の高い環境を作ることが極めて重要です。心理的安全性の重要性については、前回の記事「技術職の上司に期待することのコメント例文~部下が上司を評価するには?」でも解説しました。そこで今回は、心理的安全性の作り方を解説していきます。
組織の中に心理的安全性を作るには、次のようなポイントを意識します。
【心理的安全性を作るポイント】
・DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に取り組む
・発言の仕方を見直す
・共通認識を持つ
・雑談の機会を増やす
・評価方法を改善する
ひとつずつ詳しく解説します。
DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に取り組む
DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)とは、Diversity(多様性)・ Equity(公平性)・Inclusion(包括性)を組み合わせた言葉です。その意味は「多様性・公平性・包括性」を認め、多様な人材が公平な機会のもとで、尊重しあいながら能力を発揮できる環境を実現していくことです。
多様化する社会において、組織がDE&Iに取り組むことは、全ての従業員が自分の意見や考えを自由に言葉できる環境を構築する上で、必須の取り組みといえるでしょう。
発言の仕方を見直す
心理的安全性が低い集団である、または、同僚や部下・上司へ率直な意見を伝えられない、と感じる場合は、ミーティングにおける「発言の仕方」を見直す必要があります。ある特定のメンバーだけが発言するミーティングでは意味がありません。
参加者の全員が1回は発言できるようにし、ミーティングの後にも総括する意見交換の時間を設けるなどの対応が求められます。ミーティングを円滑に進める「ファシリテーター」の育成も大切なポイントです。
共通認識を持つ
チームメンバー全員で「共通認識」を持つことも重要なポイントです。各メンバーが共通認識のもと、同じ方向性を持って進むことは、チームに一体感をもたらします。認識が共有できているチームでは、たとえ意見が異なっても、違いを受け入れ建設的な議論ができるものです。
前向きな議論の中でこそ、本当の信頼関係が構築されます。深い信頼関係は、心理的安全性を高めることにつながるのです。
雑談の機会を増やす
信頼関係を深める取り組みは、なにも建設的な議論だけではありません。仕事を離れた「雑談」でも、十分に信頼関係を深めることができるのです。趣味や興味、タイムリーな話題など、雑談の「ネタ」はあふれています。
1on1ミーティングに限らず、ランチ会や飲み会での腹を割った話は、従業員の相互理解につながります。雑談の機会を増やし、信頼関係を深めていきましょう。
評価方法を改善する
上司が部下を評価する一方的な評価方法は、改善するのがベターでしょう。一方的な評価方法ではなく、全ての従業員が評価に参加し、お互いを評価し合う方法は、公平かつ客観的な評価を実現させます。
公平性・客観性が保たれた評価方法は、従業員満足度やエンゲージメントを高め、ひいては心理的安全性を高めることになるのです。
関連記事:部下が上司を評価する360度評価とは
事務職の部下が上司にコメントする際の注意点
事務職の部下が上司にコメントする際の注意点は、正確性や効率化に取り組む姿勢に焦点をあてることです。
AIやIoT、RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)に代表されるDX化は、事務職の働き方を大きく変える可能性があります。自ら率先して新しい事務職の働き方を考え、正確性や効率性を追求しつつ業務改善に取り組む姿勢に注目しましょう。
そして、忘れてはならないのが「周囲との関わり方」です。事務処理ばかりでなく、部署内及び他部署や顧客との関わり方にも注目する必要があります。
事務職の部下が上司にコメントする際のポイント
それでは、事務職の部下が上司にコメントする際に意識すべきポイントを解説します。
【コメントする際に意識すべきポイント】
・仕事の正確性
・業務改善への取り組み
・橋渡し役としての対応
・顧客対応の柔軟性
正確性と業務改善への意識、周囲との関わり方に焦点をあてます。過小評価・過大評価を避け、感情を入れ過ぎないように注意しましょう。もちろん、誹謗中傷はNGです。
関連記事:部下から上司へコメントする際のポイント
事務職「部下が上司に期待すること」のコメント例文
ここでは、事務職の部下が上司に「期待すること」のコメント例文を具体的に紹介します。
仕事の正確性に関するコメントの例
部署内で間違いが続いたときには、ダブルでチェックする体制を構築され、以前と比べて大幅に間違いを減らすことができました。常に各メンバーの仕事状況を把握されており、全体を俯瞰した正確なチーム運営をされていると感じています。
その反面、メンバー全員に厳しい姿勢で関わられることが多く、委縮してしまうメンバーがいるのも事実です。オンとオフの使い分けが上手で、オフはとても楽しい方です。オンでも、もう少しメンバーの自主性を尊重していただければ、のびのびと仕事ができより結束したチームになるのではないかと思います。
業務改善への取り組みに関するコメントの例
会社全体の経費削減を考えて、積極的にアイデアを出されています。日々のルーティンワークについても、少しでも業務改善につながるように効率性を追求されています。デジタル技術といったDXにも関心が深く、最新技術の導入にも積極的です。
ただ、なかにはデジタルデータの取り扱いに慣れていないメンバーもいるため、メンバー全員がミスなく迅速に事務処理ができるようデジタル技術のスキルアップに力を入れて欲しいと思います。DXは、これからどんどん進んでいくと思います。ぜひ、期待したい取り組みのひとつです。
橋渡し役としての対応に関するコメントの例
私はチームメンバーとして日が浅いため、部署を横断する仕事の際はいつもサポートしていただいています。先日も、営業マンの採用に関する外部エージェントと営業部とのやり取りの中継において、上司の経験をもとにコツを教えていただき、橋渡しとしての役割を果たすことができました。
私自身、これからもっともっと社内ネットワークを広げていきたいと思っています。できれば、部署同士の定期的なミーティングやオフ会などを計画いただければありがたいです。キーパーソンを紹介いただければ、私が動きます。ぜひ、ご検討ください。
顧客対応の柔軟性に関するコメントの例
事務職は、社内や社外の様々な方々と接する機会が多くやりがいを感じます。上司の顧客対応は素晴らしくて、早く追いつきたいと思っています。留守の従業員に向けた顧客からの連絡も、私では思いつかないような内容を確認されており、社内での安心感は抜群です。
顧客からの無理な要求にも柔軟に対応されており、スケジュール調整では他部署との連携も迅速で、いつもうまくセッティングされています。しいていえば、顧客との決定事項をメンバーにも共有していただくと、顧客からの急な予定変更の連絡に対しても、メンバーが対応しやすくなるのではないかと思います。
最後に
3回にわたって、部下が上司に「期待すること」のコメント例文を職種別に紹介しました。営業職・技術職・事務職、それぞれの仕事内容にそってコメントすることが重要ですが、より効果を高めには「コメントの書き方」に関する研修を行いましょう。
中には、評価自体が初めてという従業員も多くいます。従業員が評価に参加する施策を導入する際には、必ず導入研修を行い、施策の目的や運用ルールを共有すると共に、コメントの書き方について理解を深めるようにしましょう。研修を自社で行うのが難しい場合は、専門の調査会社に依頼するのもひとつの方法です。
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