企業にとって「定着率」は、人材がどれだけ在籍し続けているかを示す重要な指標です。定着率が低いということは離職率が高いということであり、採用コストの増加や組織力の低下につながります。
では、定着率を上げ組織を活性化させるには、どのような施策を導入すればよいのでしょうか。本記事では、定着率の意味や計算方法を紹介しながら、定着率を「向上・改善」させる施策を解説します。
【本記事で得られる情報】
・定着率の意味
・定着率の計算方法
・定着率と離職率の違い
・定着率の平均と目安
・定着率が注目される背景
・定着率が高い企業の特徴
・定着率を「向上・改善」させる方法と施策
・定着率が高い企業の成功事例
目次
定着率とは?意味と計算方法を解説

まずは、定着率の概要を解説します。
定着率の定義
定着率とは、採用した人材が一定期間、企業に在籍し続けている割合を示す指標です。人材がどの程度「定着」しているかを把握することで、組織の安定性を客観的に評価することができます。
定着率は、採用活動や人材マネジメントの結果を評価する指標として活用されており、従業員が安心して長く働ける環境かを判断する基準にもなっています。
定着率の計算方法
定着率は、以下の計算式で算出します。
「定着率(%)」=「一定期間後の在籍人数」÷「一定期間開始時点の採用人数」×100
例えば、新卒採用で10人入社し、1年後に8人在籍していれば、定着率は80%となります。計算する期間やタイミングは、「入社1年後」「入社3年後」など、目的に応じて設定されるのが一般的です。
定着率と離職率の違い
定着率とよく混同されるのが離職率です。ただ両者は、全く逆の意味を持っています。定着率が「一定期間企業に在籍し続けた従業員の割合」であるのに対し、離職率は「一定期間内に企業を退職した従業員の割合」です。
例えば、1年後の定着率が80%であれば、その裏返しで離職率は20%になります。
定着率の平均~「高い・低い」の目安

定着率が高いのか低いのかを判断するには、国全体や新卒者の平均値と比較する必要があります。そこで、厚生労働省の調査結果を基に、定着率の「高い・低い」の目安を整理してみます。
【全体の定着率】
厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概況」を見ると、常用労働者の離職率は「15.4%」です。この数字を基に計算すれば、定着率は「84.6%(=100−15.4)」になります。
「高い・低い」は、この定着率が判断基準です。「高い・低い」の目安を以下に示します(参考値)。
- 90%以上:非常に高い
- 85%前後:標準的な水準
- 80%未満:低い
【新卒者の定着率】
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)」を見ると、就職後3年以内の離職率は「高卒38.4%」「大卒34.9%」です。この数字を基に計算すれば、定着率は「高卒61.6%」「大卒65.1%」になります。
「高い・低い」は、この定着率が判断基準です。ここでは、双方の定着率をおおまかにまとめた「高い・低い」の目安を以下に示します(参考値)。
- 70%以上:高い
- 60~65%程度:平均的
- 60%未満:低い
ただし、「全体・新卒者」とも、定着率の基になる離職率は「産業別・雇用形態」で異なり、かつ毎年変動します。よって、記載した目安を「絶対」とするのはNGです。あくまでも、「高い・低い」の目安を設定する際の「考え方」と捉えてください。
定着率が重要視される背景

なぜ、定着率が重要視されるようになったのでしょうか。ここでは、その背景を見ていきましょう。
【定着率が重要視される背景】
・人材獲得競争の激化
・若手従業員の早期離職の増加
・人的資本経営に対する意識の高まり
詳しく解説します。
人材獲得競争の激化
大きな背景として、人材獲得競争の激化があります。少子高齢化により、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)は減少の一途をたどっています。
優秀な人材の獲得が難しくなる中、せっかく入社した人材が離職すれば、採用や育成をはじめとする様々なコストが無駄になってしまうでしょう。そのような状況を回避し、事前対策を打てるよう定着率が重要視されています。
若手従業員の早期離職の増加
若手従業員の早期離職が増加していることも、重要視される背景です。人材の流動性が高まり、転職が常態化。新卒者の3年以内離職率が3割を超えているのは、先に示した通りです。
若手人材は、成長に対する意識が高く、自分のキャリアに合わないと感じた場合、早期に転職してしまうことが少なくありません。こうした事態を防止する方策の「ものさし」として、定着率が重要視されています。
人的資本経営に対する意識の高まり
人的資本経営に対する意識の高まりも、重要視される背景のひとつでしょう。人的資本経営とは、人材を価値を生み出す資本として捉え、企業価値の向上を目指す経営のあり方です。
2023年から、上場企業などでは「人的資本の開示」が義務化され、定着率やエンゲージメントといった指標が投資家からも注目されています。こうした動きに合わせて、定着率を重要視する流れが加速しています。
関連記事:人的資本投資とは?指標・KPI設定から効果・実践企業の具体例まで解説
定着率が高い会社の特徴

次に、定着率が高い会社の特徴を見ていきましょう。
【定着率の高い会社の特徴】
・人材育成や研修制度が充実
・キャリアパスが明確
・働きやすい職場環境
ひとつずつ解説します。
人材育成や研修制度が充実
定着率の高い会社は、人材育成や研修制度が充実しています。入社直後の研修から中長期的なスキルアップ研修まで、体系的な育成プログラムを準備しているのが特徴です。
キャリアパスが明確
定着率が高い会社は、キャリアパスが明確です。中長期的なキャリアプランは、従業員に安心感を与えます。従業員一人ひとりが、どのようなキャリアプランを描くのか、一緒に考える体制を作るのがポイントです。
働きやすい職場環境
働きやすい職場環境が整っていることも、定着率が高い会社の特徴です。多様化する働き方への対応はもちろん、コミュニケーションを活性化させ、心理的安全性を高めることも定着率の向上につながります。
関連記事:心理的安全性を高め、組織の生産性を高めるリーダーとは?
定着率を上げる方法~向上・改善させる施策

ここまでを踏まえ、定着率を上げる方法、向上・改善させる施策を整理してみましょう。
【定着率を上げる方法~向上・改善させる施策】
・サーベイの実施~従業員満足度調査・エンゲージメントサーベイ
・オンボーディングの強化
・公正な評価制度とキャリア支援
・職場環境の改善
・社内コミュニケーションの活性化
詳しく見ていきます。
組織サーベイの実施~従業員満足度調査・エンゲージメントサーベイ
まずは、組織の現状を把握することです。従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイといった「組織サーベイ」を実施し、会社が内包する課題を可視化します。
従業員の満足度やエンゲージメントを定期的に測定し、「組織課題の特定→改善施策の立案・実施→効果検証」を繰り返すことで職場環境が改善。定着率の向上につながります。
【具体的施策】
従業員満足度調査(ES調査)、エンゲージメントサーベイ、パルスサーベイ
関連記事1:従業員満足度調査(ES調査)とは
関連記事2:エンゲージメントサーベイとは
関連記事3:パルスサーベイとは
オンボーディングの強化
オンボーディングの強化は、定着率の向上・改善に直結します。オンボーディングとは、新しく入社した人材が、会社に定着・活躍できるように支援する取り組みのことです。
新入社員や中途採用者にとっては、入社後の数か月が「定着するかどうか」を決める重要な期間。業務理解を促進する研修やメンター制度、定期的なフォローアップ面談など、オンボーディングを強化することで安心して働ける環境が整います。
【具体的施策】
新人研修、OJT、メンター制度、フォローアップ面談、社内交流会、スキルアップ研修
公正な評価制度とキャリア支援
努力や成果が正しく評価される仕組みがなければ、従業員は不満を抱えてしまいます。公正な評価制度の構築は、定着率を上げる必須の施策。キャリア支援を充実させることも不可欠でしょう。
公正な評価制度とキャリア支援を連動させることが、従業員の「ここで成長できる」という意識につながり、定着率を向上・改善させます。
【具体的施策】
評価基準の明確化、評価プロセスの可視化、360度評価の導入、キャリアパスの明示、キャリアプランニング研修、定期的キャリア面談
関連記事:360度評価とは
職場環境の改善
職場環境の改善は、定着率の向上に直結する施策です。多様な働き方を支援する施策はもちろん、ワークライフバランスを支援するなど、従業員のウェルビーイングに投資することが定着率を向上・改善させます。
【具体的施策】
フレックスタイム、在宅勤務、有給休暇の取得促進、メンタルヘルスケア、オフィス環境の整備、相談窓口の設置
関連記事:ウェルビーイング経営とは?具体的な取り組み方や成功事例をご紹介
社内コミュニケーションの活性化
社内コミュニケーションの活性化は、定着率を向上・改善させます。風通しの良い職場では、情報やナレッジの共有が進み、生産性やアイデアの創出が高まるでしょう。意見が言いやすいことで、心理的安全性も高まり、安心して働ける環境が整います。
【具体的施策】
1on1ミーティング、部署間交流ミーティング、社内イベント、コミュニケーションツール、フリーアドレス、社内報
関連記事:社内コミュニケーションを活性化させる方法
定着率が高い会社の成功事例

それでは、定着率が高い会社の成功事例を紹介します。
サイボウズ~多様な働き方を実現し高い定着率を維持
サイボウズは、「100人100通りのマッチング」を意識し、従業員一人ひとりのライフスタイルや価値観を尊重する働き方改革を進めています。
勤務時間や勤務場所を個別に対応したり、業務内容や働き方をマネジャーと相談の上で決定したり、仕事と従業員のマッチングを徹底的に進めています。こうした取り組みにより、従業員の満足度がアップ。定着率を向上させることに成功しています。
富士通~ジョブ型人事とキャリア自律支援で定着率向上
富士通は、ジョブ型人事の導入を進めると共に、社内にキャリアカウンセラーを配置しキャリア支援を実施。従業員自らキャリアプランを描く、キャリア自律の実現を進めています。
採用から人材配置、育成・キャリア支援に至る一貫した人事改革が浸透した結果、従業員のエンゲージメントが向上し定着率もアップ。ジョブ型人事とキャリア自律支援が融合した成功事例として注目されています。
鳥貴族HD~フォローアップと従業員の声の可視化で早期離職防止
鳥貴族ホールディングスは、定着率を高める施策として、新人が配属された店舗を面接担当者が訪問し、フォローする仕組みを導入しています。
また、組織サーベイ実施し従業員の状態を可視化。従業員の声は、ミーティングで共有し、必要があれば個別に対策をとる体制を構築しています。こういった施策により、入社半年以内の離職率が大幅に低下。高い定着率を維持することに成功しています。
参考:企業が採用にLINEを活用することに対する若者の意識調査2025|株式会社Maneql
最後に

定着率を向上させる第一歩は、組織の現状を把握することです。まずは、組織サーベイを実施し課題を特定することから始めましょう。実施する組織サーベイは、本文で述べた通り従業員満足度調査(ES調査)やエンゲージメントサーベイがおすすめです。
リアルワン株式会社は、組織サーベイの専門会社です。第一線の専門家が監修する「従業員満足度調査(ES調査)」「エンゲージメントサーベイ」で、組織の現状を可視化します。従業員の「生の声」から課題を明確化し、改善施策の「立案・実施・効果検証」までをトータルでサポート。「360度評価」や「パルスサーベイ」にも柔軟に対応します。
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