心理的安全性だけでは足りない? 満足度・エンゲージメントと関係する「承認・称賛」の重要性

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青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

はじめに:調査して終わりではなく、職場改善につなげるには

従業員満足度調査やエンゲージメントサーベイを実施する企業は増えています。一方で、人事部門からは「結果は見えているが、次に何をすればよいかわからない」「部署別のスコアは把握できたが、具体的な改善策に落とし込めない」といった声も多く聞かれます。

調査は、職場の状態を可視化するために重要です。しかし、調査結果を職場改善につなげるには、満足度やエンゲージメントそのものを見るだけでなく、その背景にある要因を確認することが大切です。

リアルワン株式会社は、働く人の仕事や職場に対する意識を把握するため、2026年5月、働く人500名を対象にした独自調査「働く人の仕事と職場に関する意識調査」を実施。本記事では、その結果をもとに、心理的安全性、承認・称賛と、満足度・エンゲージメントの関係を解説します。

特に注目したいのは、「安心して意見を言える職場」だけでなく、「努力や貢献を認めてもらえる職場」も、働く人の満足度や前向きさと関連している可能性があるという点です。

心理的安全性と承認・称賛とは

「心理的安全性」とは、職場で必要なことを率直に伝えやすい状態、言いにくさや過度な遠慮が少ない状態を指します。

たとえば、「疑問や懸念を伝えられる」「反対意見を言っても一方的に否定されない」「困っていることを相談しやすい」といった状態です。本記事では、心理的安全性が高い職場を、わかりやすく「安心して意見を言える職場」と表現します。

心理的安全性について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
関連記事:心理的安全性を高め、組織の生産性を高めるリーダーとは?

一方、「承認・称賛」とは、自分の仕事ぶりや貢献が認められ、その行動や成果に対して、周囲から肯定的な言葉や態度が示されている状態を指します。

たとえば、「上司や同僚が日々の努力に気づいてくれる」「成果だけでなく工夫や周囲への協力も認めてくれる」「良い行動を具体的に伝えてくれる」といった状態です。本記事では、承認・称賛が高い職場を「努力や貢献を認めてもらえる職場」と表現します。

心理的安全性は「意見や不安を言いやすいか」、承認・称賛は「自分の行動や貢献を見てもらえているか」に関わるものです。どちらも職場づくりにおいて重要ですが、それぞれの役割は少し異なります。

働く人500名の意識調査で見えたこと

リアルワン株式会社の独自調査「働く人の仕事と職場に関する意識調査」では、働く人500名を対象に、「心理的安全性」「承認・称賛」「満足度・エンゲージメント」などを尋ねました。

本記事で扱う満足度は、現在の職場や仕事に対する全体的な満足感を表す指標です。また、ここでいうエンゲージメントは、「仕事を面白いと感じる」「仕事に前向きに取り組める」「生き生きと働けている」といった、仕事に対する前向きな感情を表す指標です。

従業員満足度とエンゲージメントの違いについては、以下の記事でも解説しています。
関連記事:従業員満足度調査とエンゲージメントサーベイの違い

なお、本記事で紹介する結果は、一時点で実施した意識調査にもとづく分析です。心理的安全性や承認・称賛が、満足度やエンゲージメントの原因であることを示すものではありません。あくまで、今回の調査で見られた傾向としてご覧ください。

心理的安全性が高い職場では、満足度が高い人の割合が70.8%

まず、心理的安全性と満足度の関係を確認しました。

心理的安全性が低い群では、満足度が高い人の割合は3.9%(6/152)でした。中間群では24.2%(48/198)、高い群では70.8%(97/137)でした。心理的安全性が高い群と低い群の間には、66.9ポイントの開きが見られました。

この結果から、「安心して意見を言える」と感じている人では、満足度が高い人の割合も高い傾向が見られました。「職場で疑問や懸念を伝えにくい」「困っていることを相談しにくい」「反対意見を言いにくい」といった状態では、働く人の満足感とも関係している可能性があります。

承認・称賛が高い職場では、満足度が高い人の割合が78.9%

次に、承認・称賛と満足度の関係を確認しました。

承認・称賛が低い群では、満足度が高い人の割合は7.2%(12/167)でした。中間群では23.7%(49/207)、高い群では78.9%(90/114)でした。承認・称賛が高い群と低い群の間には、71.8ポイントの開きが見られました。

今回の3つの集計の中で最も大きな開きが見られたのは、この承認・称賛と満足度の組み合わせでした。もちろん、これだけで「承認・称賛が満足度を上げる」と言い切ることはできません。しかし、「努力や貢献を認めてもらえている」と感じることは、働く人の満足度と強く関連している可能性があります。

職場づくりを考える際には、安心して意見を言える環境だけでなく、日々の努力や貢献が見過ごされていないかにも目を向ける必要があります。

承認・称賛が高い職場では、エンゲージメントが高い人の割合も82.5%

さらに、承認・称賛とエンゲージメントの関係を確認しました。

承認・称賛が低い群では、エンゲージメントが高い人の割合は18.8%(31/165)でした。中間群では61.2%(126/206)、高い群では82.5%(94/114)でした。承認・称賛が高い群と低い群の間には、63.7ポイントの開きが見られました。

エンゲージメントは、仕事への前向きな感情と関係する指標です。今回の調査では、承認・称賛が高いと感じている人では、エンゲージメントが高い人の割合も高い傾向が見られました。

この結果は、職場の中で「自分の努力が見られている」「貢献が認められている」と感じられることが、仕事への前向きさとも関連している可能性を示しています。

エンゲージメントサーベイの基本については、以下の記事も参考になります。
関連記事:エンゲージメントサーベイ(エンゲージメント調査)とは

なぜ「認められている」と感じることが大切なのか

調査結果を読み解くうえでは、いくつかの心理学・組織行動論の考え方が参考になります。

まず、「組織的支援認知」という考え方があります。これは、従業員が「会社や職場は自分の貢献を評価し、気にかけてくれている」と感じる程度を指します。承認・称賛は、「自分の仕事ぶりや貢献が見られている」という感覚につながりやすく、満足度やエンゲージメントを考えるうえで参考になります。

また、「自己決定理論」では、人が前向きに行動する背景として、「自律性・有能感・関係性」という基本的な心理欲求が重視されます。承認・称賛は、「自分は貢献できている」と感じる有能感や「職場とのつながり」を感じる関係性と結びつきやすいと考えられます。

さらに、「社会的交換理論」は、人や組織との関係を、「支援・配慮・報酬・負担」などのやり取りとして捉える考え方です。職場で「自分の努力や貢献が認められている」と感じることは、「この組織に前向きに関わりたい」という態度と関連している可能性があります。

これらの理論は、今回の調査結果の因果関係を示すものではありません。ただし、なぜ承認・称賛が満足度やエンゲージメントと関連しうるのかを考えるうえで参考になる視点です。

調査結果を改善につなげるためのポイント

従業員満足度調査やエンゲージメント調査は、結果を確認するだけでは十分ではありません。大切なのは、調査結果をもとに、職場でどのような行動を変えていくかを考えることです。

たとえば、心理的安全性が低い職場では、「会議や1on1ミーティングで意見を出しやすい雰囲気があるか」「上司や同僚が質問や懸念を受け止めているか」を確認することが考えられます。

意見が出にくい場合は、「会議の冒頭で全員に短く発言してもらう」「反対意見を歓迎する姿勢を明確にする」「ミスや失敗を責めるだけでなく改善点として扱う」といった取り組みが考えられます。

また、承認・称賛が低い職場では、成果だけでなく、「日々の努力や工夫」「周囲への協力が認められているかを確認する」ことが重要です。

上司が「何がよかったのかを具体的に伝える」、チーム内で「助け合いや良い行動を共有する」、1on1ミーティングで「感謝や期待を言葉にする」など、日常的な関わり方を見直すことが改善のきっかけになります。

調査結果を活用する際は、スコアの高低だけで判断せず、部署や職種、管理職の関わり方なども合わせて確認することが大切です。

改善施策として考えられる取り組み

心理的安全性や承認・称賛に課題が見られた場合、すぐに大きな制度変更を行う必要はありません。まずは、「日常の会議・1on1ミーティング・フィードバック・評価面談・チームミーティング」など、既存の施策を見直すことから始めましょう。

たとえば、以下のような取り組みが考えられます。

  • 会議で一部の人だけが話すのではなく、全員が短く意見を出せる時間を設ける
  • 上司が質問や懸念を受け止める姿勢を示す
  • 失敗やミスを責めるだけでなく、次にどう改善するかを一緒に考える
  • 成果だけでなく、努力、工夫、周囲への協力を具体的に認める
  • 「ありがとう」「助かった」だけで終わらせず、何がよかったのかを言葉にする
  • チーム内で良い行動や助け合いを共有する
  • 1on1ミーティングで、本人の工夫や成長、今後期待していることを伝える

こうした取り組みは、特別な制度を作らなくても始められるものです。

ただし、全社的に同じ取り組みを行うよりも、調査結果をもとに、「部署・階層・職場」ごとに「何が課題になっているか」を確認し、「優先順位を決める」ことが重要です。

従業員満足度調査・エンゲージメント調査・360度評価でできること

心理的安全性や承認・称賛は、満足度やエンゲージメントの背景にある代表的な要因です。

リアルワンの「従業員満足度調査」「エンゲージメント調査」は、働く人の満足度や前向きさだけでなく、その背景にある職場の状態も可視化できます。

エンゲージメントを把握するには、質問項目の設計も重要です。詳しくは以下の記事でも解説しています。
関連記事:エンゲージメントサーベイは質問項目が重要!

また、調査結果を見て終わりにせず、「どの項目を優先して改善すべきか」「部署や階層ごとにどのような課題があるか」「管理職や人事部門がどのようなアクションを取るとよいか」についてもご相談いただけます。

さたに、承認・称賛やフィードバックなど、管理職の日頃の関わり方を見直す場合には、「360度評価」を組み合わせることも有効です。

管理職の行動を多面的に振り返る方法として、以下の記事も参考になります。
関連記事:360度評価(多面評価)とは?

承認・称賛やフィードバックを管理職行動として確認する場合は、360度評価の評価項目設計も参考になります。
関連記事:360度評価における評価項目とは?

調査結果の分析から改善策の検討、管理職行動の振り返りまで、組織改善に向けた取り組みを支援します。

まとめ

リアルワン株式会社の独自調査「働く人の仕事と職場に関する意識調査」では、心理的安全性が高い群では、満足度が高い人の割合が70.8%でした。また、承認・称賛が高い群では、満足度が高い人の割合が78.9%、エンゲージメントが高い人の割合が82.5%でした。

この結果から、安心して意見を言える職場だけでなく、努力や貢献を認めてもらえる職場も、働く人の満足度や前向きな仕事感情と関連している可能性がうかがえます。

従業員満足度調査やエンゲージメント調査は、職場の状態を可視化するための手段です。ただし、大切なのは、結果を見て終わるのではなく、職場の行動や関わり方の改善につなげることです。

心理的安全性や承認・称賛の状態を把握し、管理職や職場メンバーの日常的な行動に落とし込んでこそ、組織改善の一歩につなげることができるのです。

よくある質問

心理的安全性とは、職場で必要なことを率直に伝えやすい状態、言いにくさや過度な遠慮が少ない状態を指します。「疑問や懸念を伝えやすい」「困りごとを相談しやすい」「反対意見を言いやすい」といった組織環境と関連します。

承認・称賛とは、自分の仕事ぶりや貢献が認められ、その行動や成果に対して、周囲から肯定的な言葉や態度が示されている状態を指します。成果だけでなく、努力や工夫、周囲との協力に対する評価も含まれます。

心理的安全性は、必要なことを安心して言えるかどうかに関わり、承認・称賛は、自分の努力や貢献が認められているかどうかに関わります。どちらも職場づくりおいて重要ですが、それぞれの役割、そして見ている側面は異なります。

本記事でいうエンゲージメントは、「仕事を面白いと感じる」「仕事に前向きに取り組めている」「生き生きと働けている」といった、仕事に対する前向きな感情のことです。つまり、仕事における「思考面・情緒面・行動面」の3つの側面に対して、働く人が積極的に関与している状態を表します。

従業員満足度は、現在の仕事や職場にどの程度満足しているかを表します。一方、エンゲージメントは、仕事に対して積極的に関与している状態を表します。

まずは、成果だけでなく、日々の努力や工夫、周囲への協力を認めることが大切です。「よかった」「ありがとう」だけでなく、「何がよかったのか」「どのように助かったのか」を具体的に示すと、相手に伝わりやすくなります。

確認できます。満足度やエンゲージメントだけでなく、その背景にある、心理的安全性や承認・称賛を測定することで、職場改善につながる要因を確認できます。

360度評価では、承認・称賛の行動を確認できますか?

確認できます。たとえば、上司が「部下の努力や成果を認めているか」「よい行動を具体的に伝えているか」「日常的なフィードバックを行っているか」といった行動を、周囲の評価を通じて振り返ることができます。

職場の満足度やエンゲージメントだけでなく、その背景にある要因を可視化し、改善に向けた手がかりを提示します。

管理職の日頃の関わり方やフィードバックといった行動を多面的に振り返り、職場改善や人材育成につなげます。

調査結果をどのように読み解き、どの項目を優先して改善するのか、管理職や人事部門がどのような方策をとった方がよいのか、アクションプランをご相談いただけます。