従業員満足度が低い会社は、従業員が定着しない、生産性が改善されない、社会的評価における悪印象など深刻な影響が懸念されます。従業員満足度の向上は多くの企業が注力している課題ですが、自社に合った施策を実施するには、まず満足度が低い理由を明確にすることが肝要です。
本記事では、従業員満足度が低い会社に共通する特徴とその理由を整理し、改善に向けた施策例、企業の取り組み事例まで解説します。
【本記事で得られる情報】
・従業員満足度が低い会社の特徴とその理由
・従業員満足度を高める施策例
・従業員満足度が高い企業の取り組み事例
目次
従業員満足度が低い会社に共通する特徴とは

従業員満足度が低い会社では、次のような特徴が見られます。
人材が定着しない
従業員満足度は人材の定着率に大きな影響を与えます。人材不足が叫ばれて久しいですが、見方を変えると、従業員にとっては転職の選択肢が増えているということです。人材の流動化が進み、従業員が会社を選ぶ時代においては「職場に不満があるなら転職しよう」という選択が特別なことではなくなっています。
従業員満足度が低く離職率が改善されないままでは、採用コストや教育コストの増加、スキル・ノウハウの流出、業績への影響など様々なデメリットが生じます。一つの会社に長く勤めることが当たり前ではない時代において、従業員から選ばれる会社であり続けるための取り組みは必須といえるでしょう。
従業員のモチベーションが低い
従業員満足度が低い会社では、意欲的に働いている従業員が少ない傾向が見られます。「指示された仕事以外はやらない」「改善の意識が低い」というように主体的な行動が見られないほか、「愚痴が多い」「従業員同士のコミュニケーションが少ない」など活気のない職場になっているケースもあります。
従業員のモチベーションが低い状態が続くと業務の質や効率が低下するため、結果として生産性が上がらないという悪循環を招きます。
従業員のストレスが大きい
従業員のメンタルヘルスの維持は不可欠な取り組みですが、従業員満足度が低い会社ではストレスが増大していることがあります。物理的なストレス要因には業務負荷や作業環境などがあり、心理的なストレス要因には職場の人間関係や過大なプレッシャーなどがあります。
ストレスが増大してメンタルヘルス不調になってしまうと、意欲が低下して他者とのコミュニケーションを避ける、遅刻・欠勤が増えるなどの影響が出ます。また、集中力・判断力が低下してミスを繰り返したり、重大なトラブルにつながったりすることもあります。生産性も下がるため、従業員にとっても企業にとっても大きなリスクとなります。
業績が安定しない
「従業員満足度(ES)なくして顧客満足度(CS)なし」といわれるように、従業員満足度は業績にも大きな影響を与えます。
従業員満足度が低い会社では、企業のビジョン・ミッションへの共感が薄い、業務改善の意識が希薄、挑戦意欲がないなどの問題点が挙がりがちで、イノベーション創出や顧客への提供価値を高める取り組みが進まない傾向があります。その結果、目まぐるしく変化するビジネス環境において競争力を保てなくなり、業績が安定しない状態に陥ってしまうことがあります。
従業員満足度が低い理由とは

従業員満足度が低い理由は会社によって異なりますが、主に次のような要因が挙げられます。
仕事そのものにやりがいを感じられない
仕事内容や職責にやりがいを感じられなかったり不満があったりすると、従業員満足度が下がります。具体的には、次のような要因が挙げられます。
- 希望する職務や部署に就けない
- 能力・スキルを活かせない
- 新しいことに挑戦する機会・環境がない
- 成長実感を得られない
逆に捉えれば、これらは頑張りたい気持ちがあるのに叶えられないという前向きな要因といえます。個々の従業員が活躍できる環境や制度を提供することで、改善を図ることが可能です。
職場の雰囲気が悪い
職場の雰囲気が悪く、風通しがよくないことも従業員満足度を下げる要因です。たとえば、次のようなことが起きています。
- コミュニケーションが少ない
- 自分の意見を出しにくい
- ミスをすると非難される
- 同じチームでも他者の仕事に興味がない
組織・チームとしての一体感がないと帰属意識や愛着心がなくなり、従業員満足度が低下します。
上司・同僚・部下とうまくやれない
職場の人間関係は従業員満足度を下げるだけでなく、心理的安全性を保てずストレスが増大する要因となります。次のようなケースがあります。
- ハラスメントがある
- 対話の機会がない
- 組織・チームで協力しようという意識がない
人間関係は、働く上での安心感や能力を存分に発揮するための土台となるものです。自社の問題点を明確にした上で、改善を図る必要があります。
評価制度に不公平感がある
評価制度は従業員のモチベーションに多大な影響を与える要素です。不公平感があるなどの不満が大きくなると、会社に貢献したい気持ちがなくなり、生産性や業績への影響が懸念されます。
以下に不満が出やすい例を挙げます。
- 評価基準が不明瞭
- 上司が主観的な評価をするため不公平感がある
- 評価が低い理由がわからない(フィードバックがない)
- 成果を出しても昇進・昇給に結びつかない
- 成果評価のみでプロセス評価がない
優秀人材の流出は、評価制度への不満に起因するケースが少なくありません。問題がある場合は見直しが必要です。
配属・異動に不満がある
配属・異動は従業員や組織の成長を鑑みて行われるものですが、不満の理由となることがあります。代表的な例を挙げましょう。
- 育児や介護など家庭の事情に配慮がない
- 本人の希望をまったく取り入れない
- 自分の能力を発揮できない
従業員に対し、どのようなことを期待した上での配属・異動なのかを伝えていないために不満を招いているケースもあります。とくに、これまで所属していた部署とまったく異なる業務となる場合は、従業員の負荷が大きくなります。モチベーションを下げないよう留意する必要があります。
待遇面に不満がある
待遇面の不満はモチベーションの低下につながり、離職率を上げてしまうことがあります。具体的には次のような例があります。
- 業務量と賃金が見合わない
- 成果を出しても賃金が上がらない
- 責任が増えても報酬に反映されない
- 各種手当や補助がなく生活が安定しない
このほか、スキルアップやキャリアアップのための補助や制度といった福利厚生も、従業員満足度に影響する要素です。
ワークライフバランスが悪化している
一人ひとりの従業員が望む働き方とライフスタイルを選択できる企業では、ワークライフバランスが実現され従業員満足度も高い傾向にあります。逆に、ワークライフバランスが悪化している場合、不満が大きくなりがちです。
次のような要因が挙げられます。
- 多様な働き方ができない(テレワーク、時短勤務など)
- 残業や休日出勤が多い
- 有給休暇を取りづらい
- 休暇制度が不十分
仕事と生活の調和を意味するワークライフバランスの実現は、単に従業員満足度を高めるだけでなく、従業員の視野が広がる、パフォーマンスが高まる、採用活動において好印象を与えられるなど、企業に様々なメリットをもたらします。従業員満足度を下げている理由となっている場合は、施策を検討する必要があります。
従業員満足度に影響する二要因理論とは

従業員満足度を高めるには、まず、どのようなことが満足・不満足をもたらすのかを理解しておくことが必要です。アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ氏は、職務における満足・不満足を引き起こす要因には「動機付け要因」「衛生要因」の2つがあるという二要因理論を提唱しています。
一つずつ見ていきましょう。
満足度を高める「動機付け要因」
動機付け要因とは、職務において満足感を得られる要因を指します。具体的には、次のような項目に分類されます。
- 仕事そのもの
- 仕事における達成感
- 周囲からの承認や評価
- 仕事における責任・権限
- 成長実感
- 昇進
上記からわかるように、モチベーションを高めたり、働きがい・やりがいを引き出したりする要素が動機付け要因の特徴です。よく引き合いに出されるマズローの欲求5段階説でいう、自己実現欲求・承認欲求・社会的欲求といった高次の欲求に当てはまると見ることもできます。
不満を招く「衛生要因」
衛生要因とは、不十分と感じた場合に不満足を引き起こす要因のことです。次のような項目があります。
- 会社の方針
- 労働条件
- 作業環境
- 職場内の人間関係
- 給与・報酬
- 保障
マズローの5段階欲求説に当てはめると、生理的欲求・安全欲求・社会的欲求に含まれるといえるでしょう。
ここで注意したいのは、衛生要因は減点要素であり、動機付け要因がなければ満足度は高まらないという点です。逆に、動機付け要因を強化しても衛生要因の問題点が改善されないままでは満足度は向上しません。したがって、不満につながっている衛生要因を改善するとともに、動機付け要因を強化する必要があることに留意しておきましょう。
従業員満足度を向上させるための施策例8つ

ここでは、従業員満足度を高めるための施策例を紹介します。自社の課題に応じて検討するとよいでしょう。
1.企業理念・ビジョンへの共感醸成
経営層と従業員が企業理念・ビジョンを共有できていると、組織に一体感が生まれ、仕事のやりがいを感じられるようになります。具体的には次のような施策があります。
- 経営トップが理念・ビジョンを表明する機会を設ける
- 研修を実施して浸透を図る
- 理念・ビジョンの理解を深める冊子やクレドカードを配布する
2.リスキリングによるキャリア支援
リスキリングとは、ビジネス環境の変化に応じて新たなスキルや高度な技術を身につけるための取り組みのことです。DX(デジタルトランスフォーメーション)人材を育成する必要性や、ハイブリッドワークが浸透する中で一気に注目度が高まりました。
新たなスキルを習得する機会を得ることで従業員のモチベーションが高まるほか、企業の競争力強化においてもメリットが大きい施策です。様々な領域の学習がありますが、とくに人気のあるスキル例を挙げます。
- ITスキル
- マーケティングスキル
- データ分析スキル
- 情報セキュリティスキル
- 語学
- 財務・会計スキル
リスクリングについて詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。
リスキリングとは?意味や定義~DX・AI時代における学び直しの必要性
3.客観性・透明性のある評価制度
評価制度への不満では、客観性・公平性がない、評価基準に納得していないなどの不満が多く挙がります。自社の課題に応じて、次のような施策を検討するとよいでしょう。
- 評価基準・指標の見直し
- フィードバック方法の見直し(1on1ミーティングなど)
- 評価者のトレーニングを実施して評価の仕方やフィードバックのスキルを向上
- 360度評価の導入
4.適材適所への配属・異動
適材適所の実現は従業員の満足度を高めるだけでなく、企業の持続的な成長においても重要なポイントになります。次のような施策を通じて実現を目指します。
- 従業員情報の把握・可視化(保有スキル・経験・適性・異動の希望など)
- ジョブローテーション制度の導入
- 社内フリーエージェント制度の導入
- 本人の希望を叶える制度の導入
5.多様な働き方によるワークライフバランスの実現
価値観やライフスタイルの多様化にともない、ワークライフバランスは働きやすさの指標としてより重視されるようになりました。多様な働き方ができることで、従業員の定着率や生産性の向上も期待できます。次のような取り組みがあります。
- テレワークやハイブリッドワークの制度を導入
- 時短勤務・フレックスタイム制度の導入
- 休暇制度の充実
6.交流の機会を創出
人間関係の不満では、多くの場合、コミュニケーション不足が起因しています。交流の機会を創出したり、コミュニケーションをとりやすくしたりすることで改善を図ります。
- 社内SNSやチャットツールを活用してコミュニケーション・情報共有を促進
- 社内イベントを実施
- 社内サークル活動を推進
7.感謝や称賛を伝えあう文化の醸成
普段から感謝を伝え合ったり褒め合ったりすることで、承認欲求が満たされ、職場の雰囲気も活性化される効果が期待できます。次のような施策例を通じて、会社として推進していくことで文化を醸成しやすくなります。
- ピアボーナス制度の導入
- 社内SNSなどにコーナーを設置
- ミーティングなどで感謝・称賛を伝える機会を創出
8.業務効率化による無駄の削減
業務効率化は、長時間労働の是正や従業員のストレスを軽減する上でも大切な取り組みです。非効率なアナログ業務や無駄の多い業務を洗い出して、改善を図るとよいでしょう。次のような取り組み例があります。
- デジタルツールを活用したアナログ業務の改善
- 人、時期による業務量の偏りを低減(アウトソーシング活用など)
- 現場を巻き込んで業務効率化を推奨する仕掛け
- 会議時間の短縮や準備物の削減
従業員満足度調査が高い企業の取り組み事例

ここでは、リアルワンの従業員満足度調査を活用しながらES向上に取り組んでいる企業の事例を2つ紹介します。ぜひ参考にしてください。
一般社団法人 全国労働金庫協会
一般社団法人全国労働金庫協会は、全国に13ある労働金庫の中央機関です。「労働金庫にふさわしい組織風土の確立に向けた取り組み」の一環として、全国の〈ろうきん〉および中央機関の職員1万人以上を対象とした従業員満足度調査を実施しました。
〈ろうきん〉では、そこで働く人たちを「雇う・雇われる」の関係性を超えて理念のもとに集まった対等なパートナーと位置付けており、「働きやすい環境を提供すること」「働きがいに応えること」の2つを実現する上で、まず職員が感じていることを把握する必要があると考え調査実施に至りました。
具体的な改善施策は各々の現場に任せており、人事制度の改定に踏み切った〈ろうきん〉や、ハラスメント研修・LGBTQ研修を企画したところもあります。調査結果をもとに施策を検討・実施したことで、翌年の調査で目に見えて満足度が向上した組織もあるといいます。また、調査結果を全国で共有し、他の〈ろうきん〉の情報も参考にできるようにしている点も成果を生み出しているポイントの一つといえるでしょう。
参照:|リアルワン|全国13金庫、1万人以上の職員を対象に従業員満足度調査を実施。〈ろうきん〉が労使一体となり実現を目指す「組織風土の確立」とは
オリコン株式会社
オリコン・グループは、「ORICON NEWS」「オリコン顧客満足度」「オリコンランキング」など多彩なコンテンツを提供する情報メディア・調査会社です。同社では、従業員満足度調査を会社の健康診断と位置づけ、調査結果をもとにした施策の検討・実施により、全国的にみても高い水準の従業員満足度を実現しています。
実際に行った施策は、リスキリングの導入や待遇改善、作業環境の改善など多数あります。以前から必要性は感じていたものの、調査によって優先度高く実施すべき根拠が示されたことで施策を打ちやすくなったといいます。
また、単に不満が多い項目に取り組むのではなく、不満を生む真因をしっかり捉えることが良い効果を生むポイントととのことです。従業員満足度調査が施策に反映されることで、従業員のポジティブな反応を見てとれるようになったと語られています。
参照:リアルワン|多様な人材が活躍する「オリコン」が従業員満足度を上げ続けられる理由とは
調査・評価専業「リアルワン」の従業員満足度調査とは

人材流動が当たり前となっている現代において定着率や生産性の向上を実現するには、従業員満足度を高め、エンゲージメントを維持する取り組みが必須といえます。しかしながら、従業員満足度が低く、施策を実施してもなかなか成果につながらないとお悩みの企業は少なくないのが現状です。
調査・評価専業のリアルワンでは、専門家の知見を活かした信頼性の高い従業員満足度調査を提供しています。高品質な調査設計から優先課題の分析・抽出、次のアクションにつなげるためのアドバイスもお任せいただけます。
<リアルワンの特長>
- 確かな理論に基づいた信頼性・妥当性のある調査設計
- 標準項目にくわえ、課題に応じたオリジナル項目の設計も可能
- 組織・人事の専門家としての視点から考察ポイントを提供
- 調査結果の詳細を簡単に集計・分析、ダウンロードできるWeb集計システムを活用
「従業員満足度調査を有効な施策につなげられるようにしたい」「プロの視点からアドバイスしてほしい」という企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。