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2019.10.10

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従業員満足度調査(ES調査)

従業員満足度調査(ES調査)と組織開発(OD)

今回の記事は組織開発の専門家であり、リアルワンのパートナーとしてご協力いただいている株式会社ラーニングデザインセンターの清宮さまより、「組織開発(OD)」における「従業員満足度調査(ES調査)」の役割についてまとめていただきました。

組織開発とはアメリカで1950年代終り頃に生まれ、欧米を中心に発展してきたアプローチ手法です。「Organization Development」を略して「OD」と呼ばれたりもします。
一般に、研修やOJTなどを通じて人材を育てる「人材開発」という言葉にはなじみがあるものの、「組織開発」という言葉にはなじみが少ないかもしれません。人材開発が「人」を対象とするアプローチであるのに対して、組織開発(OD)は人と人の間にある「関係性」や「相互作用」を対象とするアプローチだとお考えいただければ理解を進めていただけるのではないかと思います。
日本における組織開発(OD)研究の第一人者である南山大学の中村和彦先生は、著書の中で最も組織開発らしさが込められた定義としてウォリックの定義をご紹介されています。

「組織開発とは、組織の健全さ(health)、効果性(effectiveness)、自己革新力(self-renewing capabilities)を高めるために、組織を理解し、発展させ、変革していく、計画的で協働的な過程である」

組織における人の関係性や、互いの相互作用に適切に働きかけることで、組織の潜在能力を引き出し、組織を変革させていこうとするアプローチと言えるのではないでしょうか。
そして組織開発の究極的な目的は、組織の自己革新力を養うことです。これは、組織が絶えず学習し続け、外部の力(例:コンサルタントなど)の支援をかりなくても、自らの力によって変革に取り組み続けられるようになることと言えます。

変化の激しい現代において、組織力の向上は企業が存続する上での必須条件です。組織が停滞している、組織を変革するにはどうすればいいのか、チーム力をアップしていきたいと悩まれている方々には是非一読いただきたい内容です。

従業員満足度(ES)調査と組織開発(OD)

【目次】
1.センサスとパルスサーベイ
2.従業員意識調査(センサス)を組織開発に活用
3.ワークショップ設計とアクションラーニング

 長年、組織開発プラクテショナ―として、組織活動の改善を支援する立場で従業員満足度調査(ES調査)をみていると、最近「調査」の取扱いが変わってきたな、と思う点があります。

それは、中枢(センター)が、組織状況を数値化することによって組織課題の大枠をつかむために使うのではなく、状況の数値化によるフィードバックを各現場での支援ツールにする側面も強くなっているという点です。つまり、調査結果を事業部単位や、より細かい単位でブレークして、職場の長に渡し、それをもとに組織を改善、もしくは健全に保つよう取り組みをおこなう企業が増えてきたことです。また調査そのものも、テクノロジーの発展を背景に、全社やある規模の組織でおこなう従業員満足度調査(=センサス)というものだけでなく、一分程度で回答でき、高頻度で調査をする、いわゆるパルスサーベイ(脈を図るようなイメージ)が生まれてきています。いま、従業員満足度調査の目的は、組織課題の大枠をつかむこと、そして、組織の活性化という2つの軸があるといえます。

センサスとパルスサーベイ

調査をめぐる最近の潮流は、調査データを組織全体像をみるためのスナップショットで活用するだけでなく、そこから実際の組織へのフィードバックを意識的におこない、組織開発に活用するように展開していく方向になっているといえます。その最たるものが、いわゆるパルスサーベイです。

いままでの従業員満足度調査というものは、いわゆるセンサスといわれるようなもので、調査は母集団すべてに対しておこなうものでした。この全数調査だと

1)統計的数値の信頼性が高い
2)多重クロス集計などの分析に耐えうる調査数を担保しやすい
3)標本抽出の母集団となる

などの長所があり、全体の特徴を俯瞰してとらえるのには適しています。しかし反面

1)調査費用がかかる 
2)集計に時間がかかる 
3)調査の精度によっては誤差も生まれる 
4)分析に必要な特殊項目での調査がしにくい 

などの難点もあり、組織開発に活用するためには、それなりの仕組みと展開が必要なものです。対して、パルスサーベイは、導入もかなりライトであることが多く、その日の気分や体調なども反映することができます。これらのデータは、もちろん全体としてのビックデータとして価値もありますが、チーム開発のツールとして活用されます。これらのデータのフィードバックが、その場でその現場の人(多くはマネージャー)におこなわれることによって、コミュニケーションを変えることなど、その組織(=チーム)に関わるために活用することができるのです。

従業員意識調査(センサス)を組織開発に活用

 最近は全数調査であるセンサスを、より組織開発的に活用する動きも活発になってきています。センサス調査は前述のように統計処理をしたデータの比較などができます。いままでは、結果を経営が組織全体のスナップショットとしてみることで、各部門の状況を数値的に把握するものでした。各部門には数値のフィードバックはあっても、なかなか、それを組織開発に活用できる部門は少なかったのです。しかし、最近はそのデータをどう読み解くか、そのデータを活用して自部門でのワークショップを行うことなど、一連の組織開発的仕組みを用いた動きもでてきています。その動きをサポートする人事や組織開発担当(=経営企画が担っている場合も多い)が設定されていることも多いです。単に、「この部署の従業員満足度が低い」と指摘するだけでなく、そのための改善として、①現場の部門長への意識付けをおこなう②実際にどういうきっかけづくりをしたらいいかの方法論(ワークショップなど)を伝える③現場の展開に本部サポートをおこなう、の3つを主におこなっているといます。従業員満足度調査をただの結果データとしてみるのではなく、よりよい組織を創るツールとして活用する視点にたっているのです。

典型的な流れは以下のようになります

【本部(人事または経営企画)】
データの結果から、分析をおこなう 重点部署なども抽出する

【本部】
部門長への、結果の読み解きワークショップをおこなう

【部門展開】
そのワークショップそのものが、自部署展開のひな型になっており、部門展開のためのツールとする

【部門展開】
自部署でワークショップを展開する
人事部や組織開発のサポートをする部門がある場合は、事業責任者とともに実施する

ワークショップ設計とアクションラーニング

ワークショップは、自社の状況と調査結果の分析を合わせて、組織開発アプローチとして設計します。それには様々な展開が考えられます。ただ設計において、ポイントとなるのは、再現可能性の高い設計と自部署で同じことが展開できるようなスキームであることです。例えば、アクションラーニング※1は、実務課題の解決を考えるなかで、チームを作り、自身の意識変容をおこなう、会議展開のフォーマットをもっているので、このワークショップ設計には適しているといえます。

アクションラーニングフォーマットでの会議は、質問会議ともいわれています。このフォーマットで、ポイントになるのは以下の点です。

 1)質問を中心としたやり取りをおこなう
 2)ファシリテーター(アクションラーニングコーチ)が、振り返りを促進する介入をする
 3)問題を明確にする質問をする(解決策をいきなり考えない)
 4)それぞれが問題と思うものを再定義する(いろいろな視点が提示される)
 5)納得感のあるゴールが設定される
 6)チームとして、メンバーそれぞれ、解決を支援することを促進する

このような、フォーマットのなか、安全な状況で、従業員満足調査結果で提示されている課題を取り上げながら、その課題を再設定することをおこないます。そのなかで、ワークショップ参加者は、安全な状況で課題に対するやり取りを聴くことができます。そのなかで、それぞれに気づきや振り返り機会が提供されます。そのことで、調査結果をより納得感のある課題として認識することができるようになります。また、同時にどんな行動をおこすかも合わせて、話あう機会となります。

このフォーマットは、比較的平易なので、転用可能ですし、再現性も高いものがあります。ただ、ファシリテータ(アクションラーニングコーチ)の役割は非常に重要です。そのため、トレーニングを積んだ、人事や組織開発担当者がサポートとして入ったりします。また、場合によっては、あえて入らず、部門長がその役割をおこなうことで、彼自身の課題に対する俯瞰感を高め、より深い状況に対する理解を生み出す機会としたりします。その場合でも、所属長には事前にこの場合のファシリテータの役割と、どのようなふるまいをするのかを理解するトレーニングは必要になります。

このように、アクションラーニングを活用することで、より結果を深く考え、チームメンバーの支援を得ながら、意識変容をおこすような取り組みの設計がしやすくなります。従業員意識調査は、単なる数値結果をつまびらかにし、全体の状況を把握するだけでなく、その結果を用いて、個別の組織開発アプローチを設計することで、その価値がより高くなります。逆にいえば、従業員満足度調査をおこなったのであれば、組織開発アプローチの設計まで考ないと、せっかくの結果の活用が不十分であるともいえます。(清宮 普美代)

清宮 普美代

 

株式会社ラーニングデザインセンター 代表取締役 http://www.ldcjp.com

NPO法人日本アクションラーニング協会 代表理事  https://www.jial.or.jp

WIAL公認マスターALコーチ
ODネットワークジャパン 理事
ジョージワシントン大学大学院 人材開発学修士

東京女子大学文理学部心理学科卒業後、毎日コミュニケーションズ(現:マイナビ)にて事業企画や人事調査などに責任者として携わる。
その後、渡米。ジョージワシントン大学大学院では、マイケル・J・マーコード教授の指導のもと、日本組織へのアクションラーニグ導入についての調査・研究を重ねる。外資系金融 人事責任者、社長室長を経て、人・組織の成長と学習する組織、社会を生み出す機会提供をしたいと2003年ラーニングデザインセンターを設立。
また、続いてALコーチ養成講座を開始。翻訳著書に「実践アクションラーニング入門」(ダイヤモンド社)マイケルJ・マーコード著。

 

<著書>
『質問会議』(PHP研究所2008年)
『「チーム脳」のつくり方』(WAVE出版2009年)

『対話流』(三省堂 2009年)
『20代で身につけたい質問力』(中経出版 2011年)

まとめ

今回、リアルワンのパートナーとしてご協力いただいている株式会社ラーニングデザインセンター清宮様に寄稿いただきました。従業員満足度調査(ES調査)の結果を用いて、組織開発(OD)の一つの手法である質問会議(アクションラーニング)やワークショップを行っていただいています。

質問会議(アクションラーニング)の詳しいご紹介は書籍やリンク先の紹介ページに譲りますが、ラーニングデザインセンター様が実施されるワークショップや研修の場に参加させていただくと、毎回参加者の方が「目から鱗」といった反応をされるのが非常に印象的です。そして単なる驚きだけでなく、組織が着実に変わり成果を上げていくため、導入された企業の多くでは社内に幅広く浸透し定着しくご様子です。なお、ラーニングデザインセンター様では、質問会議(アクションラーニング)を実践するアクションラーニングコーチを養成し認定されるサービスも提供され、顧客が外部の力を借りるのではなく、自らの力で変革していける組織力を養う後押しもされていらっしゃいます。

記事の中で清宮様がご指摘されているように、従業員満足度調査(ES調査)をはじめとした組織向けの調査は、組織開発(OD)との親和性が非常に高く、共に取り入れていただいたお客様にはより大きな効果を実感いただいています。

研修やOJTなど「人材開発」一辺倒になっている企業様にはぜひ「組織に対しても介入できないか?」という視点を持っていただき、「人材開発」と「組織開発」という両輪のアプローチを検討されてみてはいかがでしょうか。

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