チームマネジメントとは?リーダーに必要なスキルと優れたチームの特徴を解説

優れたチームは、複雑化する現代のビジネスシーンにおいて不可欠な要素となっています。しかし、チームワークを実現するためには、適切なチームマネジメントが必要です。本記事では、チームを持つマネジャーやチームワークを強化したい方々を対象に、チームワークとチームマネジメントについて解説し、リーダーに必要なスキルや優れたチームの特徴についてご紹介します。

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

なぜチームワークが重要なのか

不確実性が高く、変化の激しい近年においては、優秀な個人の集まりよりも、チームワークが機能しているかどうかの方が、競争優位性につながると考えられています。

ハーバード・ビジネス・スクールのグロイスバーグ氏らが1000人以上のアナリストを対象に実施した研究によると、業績がトップクラスの人材が転職した場合、転職先での業績は、元いた職場よりも低下する傾向にあることが明らかになりました。しかも、その低下効果は最低5年継続することが、統計分析で示されたそうです。

一方で、転職先でも業績が下がらなかった一部の人材の共通点について調べてみたところ、個人ではなくチーム全体で転職していたことが分かりました。

このような結果から、優秀な人材であっても、一人で達成できることには限界があると考えられます。逆に、チームワークが機能していれば、「1 + 1」を「2」以上にできる可能性があると捉えられます。

なぜなら、チームで連携することによって、個人ではカバーしきれない業務、専門知識、多様な視点を手に入れることができ、相互作用を生むことができるからです。この相互作用が、高い成果につながると、この研究でも結論づけられています。

チームとは?チームのハード面とソフト面

一体どのような状態をチームと呼ぶのでしょうか。ここでは、チームをハード面とソフト面の側面から解説していきます。

チームのハード面

チーム研究の領域では、チームは次のように定義されています。

チームの定義1:目標が共有されている

チームの定義で挙げられている「目標」とは、連携しないと達成できないものを指します。また、この目標は明確且つ具体的である必要があります。例えば「社会に貢献する」は抽象度が高すぎる目標のため、チームとして達成できるレベルまで目標の解像度を上げなければなりません。

チームの定義2:目標達成のために連携する構造がある

連携する構造とは、具体的には「情報共有ができる状態」や「作業が相互依存している状態」を指します。情報共有や協力・サポートなどのやり取りを通じて、目標達成を行う集団をチームと呼びます。逆に、個々のアクションで目標を達成する集団は、ただの個人の集まりと表現します。

チームのソフト面

「明確な目標」と「連携する構造」を持つだけでは、チームは機能しません。チームを機能させるためには、「感情(Affect)」・「行動(Behavior)」・「認知(Cognition)」の3つの要素が必要であると言われています。チームのソフト面はこれらの頭文字を取って、「チームのABC」と呼ばれています。

感情(Affect)

チームの感情とは、チームメンバーのエネルギーを方向づける要素のことです。チームの感情を高め、方向性を定める上での鍵となるのが、チームアイデンティティです。

チームアイデンティティとは、チームへの所属意識を感じ、チームメンバーが互いを運命共同体であると考えている心理状態を指します。チームアイデンティティが高い状態では、助け合いや協力が生まれ、一丸となって目標達成に向かう意識が働くようになります。

行動(Behavior)

チームの行動とは、情報共有、連携、助け合い、振り返りなどの集団行動を指します。業務の中には、事前に担当を規定できないものや、特定の人に集中してしまうものがあります。その際、メンバーが自身の役割を越えて、情報共有、連携、助け合いなどを行う必要があります。

集団行動はチームワークを機能させる基本的な効果だけではなく、困難な状況に陥ったときの粘り強さや、お互いが本音でぶつかり合える関係性の構築にもつながっています。

認知(Cognition)

チームの認知とは、情報の認識や解釈、情報の処理をチームとして行う思考活動のことを言います。チームメンバーが、同じ知識を認識し合っていると感じることで安心感を得られます。この安心感がチームの土台となり、メンバー間の交流を活発化させます。

チームの認知活動、すなわち知識の共有に関する理論は2つあります。共有メンタルモデルとトランザクティブ・メモリー・システムです。

共有メンタルモデルとは、チームの課題、作業手順、役割や責任について、メンバー間で共有された知識を指します。これらの情報が共有されている程度が高いほど、メンバーはお互いの行動を予測しながら行動でき、協調しながら業務を遂行できます。

トランザクティブ・メモリー・システムとは、「誰が何を知っているか、知っていること」を指します。チームメンバーが、互いの専門分野や不得意分野を理解している状態とも言えます。

トランザクティブ・メモリー・システムが成熟しているチームでは、誰に何を伝えるべき、誰に何を聞けばいいか分かっているため、チームが様々な情報に対処できるようになります。

リーダーに求められるチームマネジメントのスキル

チームマネジメントとは、チームの目標を達成するためにコミュニケーションを促進し、必要なタスクを適切に割り当ててメンバーの役割を明確化し、チーム全体の生産性と成果を最大化させるプロセスです。

リーダーは、チームメンバーとコミュニケーションをとり、モチベーションを高め、プロジェクトの進捗状況を管理するなどして、チーム全体の成功に貢献します。ここでは、チームマネジメントに欠かせない、リーダーとしてのスキルを5つご紹介します。

1. コミュニケーションスキル

リーダーは、メンバーと適切なコミュニケーションを行い、目標やプロジェクトについて共有する必要があります。コミュニケーション能力が高いリーダーは、チームメンバーとの関係を良好に保ち、信頼関係を築くことができます。

2. モチベーション管理スキル

チームメンバーのモチベーションを高めることもリーダーにとって重要なスキルです。リーダーは、メンバーがやりがいを感じ、成果を出せるようにサポートする必要があります。また、メンバーがモチベーションを失った場合には、リーダーは彼らのモチベーションを再び高めなければなりません。

>関連記事:「従業員のモチベーションを向上させる方法とは?」

3. プロジェクト管理スキル

リーダーには、プロジェクトのスケジュール、予算、リソース配分などを管理するスキルが必要です。また、プロジェクトの内容や状況によっては、チーム外との連携や交渉が必要となる場面もあることから、自身のチーム内だけではなく、チーム外のプロジェクト関係者と物事を調整するスキルも求められます。

4. チームビルディングスキル

リーダーには、チームのメンバーが協力して働くことができるように、チームビルディングのスキルが必要です。チームビルディングは、メンバー間のコミュニケーションを促進し、メンバーのモチベーションやモラルを高めることにつながります。

>関連記事:「チームビルディングとは?」

5. プレッシャー下での対処スキル

リーダーは、プロジェクトの期限が迫っているとき、プロジェクトが難航しているときなど、プレッシャーがかかっている状況下でも冷静さを保ち、的確な意思決定をするスキルが求められます。プレッシャー下での対処能力を高めるためには、事前に計画を立て、予測されるリスクに対処することが重要です。

優れたチームの特徴とは?

チームやチームワークの向上・改善を図る際、まずはチームがどのような行動をとっているか明らかにする必要があります。

ここでは、20年に渡ってチームの診断と評価を実施し、コーチングをしてきたアメリカのグリーンライト・リサーチ・インスティテュートが、実際にチームを診断・評価する際にチェックしているポイントを、優れたチームの特徴としてご紹介します。

特徴1:対立を避けずに意見を言い合える

目標を達成するために、対立を恐れたり、避けたりすることなく、率直に意見を言い合えるチームは優れたチームの特徴のひとつです。また、専門外の分野においても、リスクを恐れずに意見を言えるチームになっているかどうかも重要です。

特徴2:サイロ化していない

サイロ化したチームとは、連携が分断され、個人がそれぞれ独立した状態で業務を進めている状態のチームのことを言います。チームワークを機能させ、チームとしてのアウトプットを最大化させるためには、メンバーが協同し、相互に頼り合う関係が不可欠です。

特徴3:共通のミッションを道標とし、コミットしている

チームの中に共通のミッションがあり、それが道標となっている状況をつくれているチームは変化や対立に強いと言えます。なぜなたら、共通のミッションがあることで、状況が変化したり、意見が対立したりした場合に、取り組み方や優先順位の見直しが的確にできるからです。

特徴4:上下関係にわずらわされていない

上下関係やヒエラルキーがあると、行動に忖度が発生してしまいます。目標達成や成功に必要な行動は何か考え、チーム内のメンバー、そしてチーム外のステークホルダーと健全な関係を戦略的に構築できている必要があります。

特徴5:メンバーは目標実現のためにコミットメントしている

チームメンバーが目標達成に向けて本気で行動しているかどうかは、チームを評価する上で重要なポイントです。具体的には、成功するために必要なことは何でもする意識を持ち、メンバーが行動に移せている状態を指します。

特徴6:探究心を持って行動している

チームメンバーが、自分たちが伸ばすべき領域について認識していることで、自発的に助け合ったり、教え合ったりします。わからないことや知らないことを放置せず、常に探究心を持って行動することは、目標達成やチームの成長に必要です。

特徴7:メンバーのエンゲージメントが高い

チームメンバーのエンゲージメントが高く維持されている場合、互いのエネルギーを高め合うことができます。メンバー同士で成功を祝ったり、感謝の言葉を述べ合ったりすることを積極的に行ったりすることは、エンゲージメントが高いチームの特徴的な行動です。

>関連情報:リアルワンの「エンゲージメントサーベイ」

特徴8:メンバーは互いと深く関わり合っている

チームメンバーが互いと深く関わり合うためには、寛容さや思いやりが必要です。信頼関係が構築され、互いを支え合っているかどうかが、チームワークをうまく機能させる上で大切です。

特徴9:チームは可能性を最大限に発揮している

チームが可能性を最大限に発揮できるような意思決定ができる状態は、画期的なイノベーションや変革を追求する上で重要です。

優れたチームが競争力の源泉となる時代

近年、ビジネス環境は複雑化しており、個人ですべてをこなすことは困難な状況です。複数の人材がチームを組み、それぞれの得意分野を活かし、協力することで、より高度で複雑な業務を効率的にこなすことが可能となります。また、チームがうまく機能することで、市場の変化や競合他社の追随に迅速かつ適応的に対応することができます。

本記事でご紹介した、チームの定義や構成要素、リーダーに必要なスキル、優れたチームの特徴が、皆さまの組織におけるチームづくりの参考となれば幸いです。

【参考文献】

  • 加藤容子, 三宅美樹. 「産業・組織心理学 個人と組織の心理学的支援のために」. 株式会社ミネルヴァ書房. 2020
  • DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー 2023年 3月号 特集「チームづくりの原則」. ダイヤモンド社. 2023