チームの目標や理想を実現するため、メンバーが能力やスキルを最大限発揮できる環境を整えていく取り組みが「チームビルディング」です。人材の流動化、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の高まりと共にメンバーの価値観も多様化。リーダーが一人で、チームをマネジメントするという昔ながらのやり方では、成果を出すことが難しくなっています。このような変化の中で、メンバーの主体性を喚起してチームを活性化させるチームビルディングが注目されています。今回の記事では、チームビルディングを深掘りし、その意味や目的、そして企業の成功事例を解説します。
目次
組織開発の手法「チームビルディング」とは~その必要性

人と人との関係性に働きかけ、組織を活性化させる取り組みである組織開発。その手法のひとつが「チームビルディング」です。ここでは、チームビルディングとは何かについて解説します。
※組織開発については、コチラの記事を御覧ください。
チームの定義
そもそもチームとは何か。ここではまず、チームについて解説します。
チーム
共通の目的や目標を達成するために、共に活動するメンバーの集まりのこと。
ビジネスの現場でいえば、「同じ目標を持ち、目標達成に向けてお互いをサポートし合うチームのこと」です。単に複数の人が集まっている状態を表す「グループ」とは大きく違います。チームは、メンバー同士が一緒に問題を解決したり、相互作用の中で新しい価値を生み出していくという機能を持っています。
チームビルディングの意味
では、チームビルディングの意味とは何でしょうか。
チームビルディング
チームのメンバーの能力やスキル、そして経験を最大限に引き出し、目標を達成できるチームを作り上げていく取り組みのこと。強い組織を構築する手法。
多様な価値観を持つ人材が集まる企業では、各人材の能力やスキルを最大限に活用することが成果につながります。単なる人材の配置ではなく、一人ひとりが持てる力を十分に発揮し相互作用を生み出す中で、ひとつにまとまることが重要。目標達成というゴールに向かってお互いが尊重し合い、異なる能力やスキルを融合させていく取り組みがチームビルディングなのです。
チームビルディングの目的
チームビルディングの目的を見ていきましょう。
① メンバーの関係性強化
そもそもチームビルディングは、人と人との関係性に働きかける組織開発の手法のひとつ。メンバーの関係性の強化は、チームビルディングの大きな目的です。
② チームパフォーマンスの向上
チームビルディングを進めるためには、目標設定や役割の明確化が必要です。各メンバーの主体性が喚起される中で、メンバー同士の相互理解が進み結束力も強化され、チームパフォーマンスが向上します。
③ ビジョンの浸透
メンバー同士が目標を共有し、同じ方向性を持つチームを作るのがチームビルディングです。そのためには、ビジョンの浸透が不可欠。チームビルディングを行うことで、ビジョンの浸透を図れます。
④ マインドセットの形成
チームの結束力の強化やビジョンの浸透は、前向きに行動しようとするマインドにつながるでしょう。また働き続ける中で、無意識に蓄積してしまったバイアスをリセットする効果もあります。チームビルディングは、マインドセットの形成にも役立つのです。
チームビルディングの効果やメリット

次に、チームビルディングの効果やメリットについて解説します。
コミュニケーションの活性化
チームビルディングを行うことで、目標という共通認識が生まれます。目標達成に向け、メンバー同士の対話が活発化。対話の量と共に質も高まり、コミュニケーションが活性化します。コミュニケーションの活性化は、適切な人材配置や心理的安全性の向上にもつながるでしょう。
モチベーションアップ
チームビルディングによって相互理解が進み、チームの一体感が高まります。目標達成に向かうチームの一体感は、「チームへの貢献」という主体的な行動へのモチベーションにつながります。そしてそれが成果を生めば、さらにモチベーションがアップするという好循環につながるのです。
イノベーションへの期待
多様な価値観を持ったメンバーをまとめ、異なる能力やスキルを融合していくチームビルディングは、相互作用の中で新しいアイデアを創出します。創造力の高まりは、革新的なアイデアにつながりイノベーションへの期待が高まるでしょう。
チームビルディングの5段階プロセス~タックマンモデル

チームが成長する発達段階を、「形成期→混乱期→統一期→機能期→散会期」の5段階で示したフレームワークが「タックマンモデル」です。発達段階に応じたチームビルディングで、より強いチーム作りを目指しましょう。
ステップ1:形成期
形成期は、「フォーミング=形作る」を意味するチームビルディング最初の段階。チームが作られて間もないため、メンバー間の相互理解もなく目標や役割も明確ではありません。ここで求められるのは、コミュニケーションの「量」です。リーダー主導で相互理解を進め、目標の設定や役割の明確化に努めます。
ステップ2:混乱期
混乱期とは、目標が決まったもののメンバー間で意見が乱立し、対立や抵抗が生まれている段階です。混乱期のチームは、まだまだ一体感がありません。この時期に求められるのは、コミュニケーションの「質」です。チーム内で対話を重ね、チーム全体が納得できる最適解を模索します。
ステップ3:統一期
統一期は、意見を出し合い対話を重ねたことで、お互いの価値観や考え方への理解が深まりチームとして安定している段階。チームの目標を一人ひとりが意識できており、メンバーの役割も明確になっています。一体感は高まり、コミュニケーションも活性化。目標達成に向けて、各メンバーが役割を果たしていきます。
ステップ4:機能期
機能期とは、チームが成熟し最もパフォーマンスを発揮できている段階です。各メンバーは主体的に行動し、お互いをサポートしながら成果を出していきます。まさに、相互作用が最も高まっている理想の状態です。この機能期に求められるのは、高いパフフォーマンスを維持する取り組みになります。
ステップ5:散会期
目標を達成し、チームのメンバーそれぞれが次の道へと進む段階が散会期です。目標達成を振り返り、チームビルディングの効果を検証します。解散を惜しんだり、お互いを称賛する姿が見られればチームビルディングが成功した証でしょう。
チームビルディングの進め方~成功のコツ

それでは、実際にチームビルディングをどのように進めていけば良いのか。ここでは、チームビルディングを成功させるコツを解説します。
目標設定
チームビルディングでは、目標を設定しメンバー間で共有することが重要です。まずは、メンバー個人とチームの両方で明確な目標を設定します。ここで大切なことは、具体性です。各メンバーがモチベーションを保ち、目標達成に向けて進むには、抽象的ではなく具体的な目標を設定し共有する必要があります。
役割の明確化
目標が決まり目標達成という成果を出していくためには、メンバーの役割を明確にする必要があります。各メンバーの能力やスキル、そして経験。また、強みや弱みといった特性を見極めながら役割を明確化していきます。役割の明確化で、目標達成へのブレがなくなり集中して動けるようになるでしょう。
多様な価値観の容認
チームには、異なる価値観を持つメンバーが集まっています。多様な価値観が融合し、相互作用が生まれる中でチームは成長し成果を生み出します。多様な価値観の容認は、チームにとって必須のこと。メンバーの相互理解を進め、お互いの価値観を容認するチームを目指しましょう。
Web環境対策~オンラインやリモートへの対応
新型コロナウイルスのパンデミックは、オンライン環境やリモートワークを加速させました。それは、働き方改革やDXの流れの中で特別なことではなくなってきています。ただし、雑談が少なくなるなどの課題が見えてきたのも事実。チームビルディングも、Web環境を見据えた対応が求められています。
チームビルディングの方法

では、チームビルディングを行うための具体的な方法を紹介します。
ゲーム
チームができたばかりの形成期の段階では、「ゲーム」に取り組むことが効果的です。ゲームはエンタテイメント性があり、楽しむことで緊張を解き、お互いを理解するきっかけを提供してくれます。勝利を目指し協力することで、チームワークも育まれるでしょう。
ゲームの種類
NASAゲーム、レゴ、ペーパータワー、目的地移動ゲーム、ヒーローインタビューゲームなど
アクティビティ
成果をあげていくためには、チームが一体感を持ちまとまることが重要です。チームが一丸となるためには、スポーツやダンスなどの「アクティビティ」で体を動かすことが効果的です。チームワークが生まれ、コミュニケーションも活性化されます。
アクティビティの種類
運動会、登山、サバイバルゲーム、ドミノ倒し、条件プレゼンなど
イベント
メンバーの素顔、ありのままの一面を知りたいときには「イベント」を開催しましょう。仕事を離れて交流することで、相互理解が深まりメンバーの関係性を強化することができます。
イベントの種類
BBQ、キャンプ、ハイキング、ボーリング大会、宝探しなど
ワークショップ
ワークショップとは、体験型の講座のことです。参加者が取り組みやすい環境の中で、ファシリテーターの進行にそって課題解決を目指します。チームの発達段階に合わせて設定できるのも、ワークショップのメリットです。ワークショップは、参加メンバーの主体性を重視しながら目標達成を目指します。話し合いを繰り返し成果を出していくプロセスは、チームビルディングに大きく貢献するでしょう。
ワークショップの種類
チェックイン、ジョハリの窓、ブレインストーミング、ワールドカフェ、マインドフルネスなど
チームビルディングを導入する際の費用

チームビルディングの方法を解説してきました。ではチームビルディングを導入する際、費用をどのように考えれば良いのでしょうか。
- 研修費
- 備品代
- 会場費
- その他の費用
チームビルディングを外部に依頼する場合は、相応の研修費が発生します。自社で行う場合でも、ゲームやアクティビティ、イベントには様々な備品代、そしてグラウンド代や会場費がかかります。また、泊りがけでチームビルディングを行う際は、宿泊費や飲食代を予算に折り込む必要があります。
チームビルディングの成功事例

ここからは、チームビルディングを導入している企業の成功事例を紹介します。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリでは、おもちゃの「レゴ」をチームビルディングに取り入れています。その目的は、次の2つです。
- 相互理解を深め、一人では出せない大きな成果を目指す
- メンバー間のコミュニケーションをスムーズにし、お互いを深く知るためのきっかけを作る
「レゴ」というおもちゃを活用することで、上司や部下、先輩や後輩、経歴などに関係なく、楽しみながら相互理解を深めることができます。レゴを使ったタワー作りで重視するのは、完成したタワーを通したコミュニケーション。「どういう思いで作ったのか」を周囲に話すことで、メンバーの思考や発想、考え方を知ると共に、作った本人の新たな気づきにもつながっています。
株式会社日清食品ホールディングス
株式会社日清食品ホールディングスでは、チームビルディングの一環として「無人島サバイバル研修」を実施しています。その経緯は、社内の研究で「座学だけでは知識が身につかない」という結果が出たため。「知っていること」と「できること」は違うという考えから、無人島サバイバル研修の導入に至りました。メンバーは研修を通して、次のような学びを得ています。
- 食の大切さ
- 感謝の心
- 価値観の尊重
- コミュニケーション、チームワークの重要性
- 考え抜くことの必要性
無人島サバイバル研修を通して、チームの結束力が高まり、課題解決力や判断力、創造力やリーダシップが培われ、主体的に意見を発言する効果が生まれています。
株式会社タニタ
株式会社タニタは、「The商社」というビジネスゲームを使ってチームビルディングを行っています。「個々の長所を最大限に活かすことで組織を活性化させる」の思いのもと、コミュニケーションを意識してチームビルディングに取り組んでいます。その結果は、次のようなものです。
- メンバーの主体的な関わりが見られた
- 自分を変えていこうという姿勢が見えた
- ポジティブな思考の下地ができた
個人のモチベーションアップと共に、個人の能力が高まりチーム力も増していく。それを実感できるのがビジネスゲームです。問題解決力や関係構築力、リーダーシップといった様々な能力の向上が期待できるのも大きなメリットです。
チームビルディングでエンゲージメントを最大化させる

チームビルディングは、メンバーの立場や役職に関係なく導入することができます。新人や若手社員は、主体性やコミュニケーションの重要性を学べるでしょう。また中堅社員にとっては、リーダーシップの意識づけに役立ち、管理者は、育成能力やマネジメント能力を高めることができます。チームビルディングで、「一人ひとりの価値観が尊重されるチームを目指し、そのような環境を大切にする組織を作ること」は、エンゲージメントの最大化につながるのです。
リアルワン株式会社は、「エンゲージメント調査」をはじめ、「従業員満足度(ES調査)」や「360度評価」といった調査・評価の専門会社です。科学的根拠に基づいた信頼性の高いサーベイで、個人や組織の成長をサポートします。チームビルディングで、組織がどのように成長しているのか。リアルワンの各種サーベイが、データや数値で見える化します。組織の「今」を把握したい企業様は、ぜひリアルワンの各種サーベイをご活用ください。