エンゲージメントサーベイの結果をどう活かすか。評価・見方も解説

組織のパフォーマンスを高め、生産性や業績の向上を図るためのキーワードとして、エンゲージメントが注目されています。実際に多くの企業で、組織の改善施策の立案やアクションプランの策定に活用するため、エンゲージメントサーベイ(エンゲージメント調査)が実施されています。

しかしながら、組織改善の取り組みに繋げるためには、エンゲージメントサーベイの結果を正しく評価することが重要であり、専門的な知見とノウハウが必要になります。

この記事では、エンゲージメントサーベイの結果の活用方法や評価・見方を詳しく説明するとともに、組織改善のポイントまでを具体的に解説します

【本記事で得られる情報】

 

・エンゲージメントサーベイの概要
・エンゲージメントサーベイの結果の評価・見方
・エンゲージメントサーベイを活用できない5つの原因
・エンゲージメントサーベイに基づく組織改善の5つのポイント

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

エンゲージメントサーベイとは

エンゲージメントサーベイとは、従業員のエンゲージメント、つまり「1.思考面、2.情緒面、3.行動面 の3つの側面において、自己が仕事に対し積極的に関与している状態」を評価するための調査です。

エンゲージメントの高い従業員は、「頭も、心も、体も」、仕事に対して積極的(ポジティブ)に関わり、仕事で高い成果やパフォーマンスを上げるとともに、周囲に良い影響を与えるなど、企業や組織に大きく貢献します。

会社は、エンゲージメントサーベイを通じて、従業員の会社に対する貢献意欲や帰属意識、愛着などを数値として把握できます。そして、結果を適切に評価して活用することで、組織全体の生産性向上や離職率低下など、企業の持続的な成長に寄与します

エンゲージメントサーベイの結果の評価・見方

リアルワンでは、エンゲージメントサーベイの結果(スコア)を、3つの側面から把握し、評価する見方を採用しています。具体的な評価の内容は、次の3点です。

思考面:仕事に集中して考えられているか

仕事に集中して主体的に考えられている度合いを測定し、評価します。

仕事に集中できている従業員は、表面的ではなく本質を理解して行動します。また、高度な業務管理や計画などにも対応できます。さらに、仕事に必要な知識・技術・経験を自発的に学習します。

情緒面:仕事に熱意を感じられているか

仕事に楽しさ・面白さを感じ、熱意を持って向き合えている度合いを測定し、評価します。

仕事に楽しみや熱意を感じられている従業員は、仕事の遂行を促すポジティブな感情(興味、好奇心、熱中など)を持続できます。

また、仕事の遂行を妨げるネガティブな感情(苦悩、怒り、不安、恐れなど)を抑制する傾向もみられます。

行動面:仕事で積極的に行動できているか

自ら積極的に仕事に取り組み、行動できている度合いを測定し、評価します。

仕事で積極的に行動できている従業員は、集中力や注意力、エネルギーを仕事に注ぎ込みます。また、高度な努力や持続的な取り組みを自ら行います。

エンゲージメントサーベイの結果を活用できない5つの原因

エンゲージメントサーベイを実施したものの、本来の目的である組織改善の取り組みに繋がらないケースがあります。その5つの原因について解説します。

経営幹部や人事部門にしか結果が共有されていない

エンゲージメントサーベイの結果は、経営幹部や人事部門だけでなく、現場の従業員へ共有することが重要です。結果の共有により、現場の従業員が自分たちの課題を理解することで、有意義な改善や具体的なアクションプランの策定に繋がるからです。

従業員が課題を「自分事」として捉え、会社と一体感を持って主体的に行動するように働きかけることが大事です。

エンゲージメントサーベイの結果の見方がわからず評価できない

調査結果であるデータの見方がわからず、適切に評価できないことが原因で、活用に至らないケースがあります。得られたデータの意味を正確に把握できなければ、サーベイの目的である組織改善の取り組みにならず、むしろ不適切な施策に繋がる懸念もあります。

一口にエンゲージメントといっても、その原因には複数の要因が考えられます。例えば、従業員の裁量の範囲が狭い部署では数値が低くなる傾向があります。

また、長時間労働によって仕事に積極的に関与する意欲が薄れる場合もあるでしょう。職場のコミュニケーションの不十分さが、エンゲージメントを抑制している場合もあります。

エンゲージメント向上施策の検討にあたっては、データの背後にある意味を正しく分析する知見・ノウハウが求められます。

結果に基づいた改善施策やアクションプランが策定できない

結果の評価・見方が適切に行われたとしても、効果的な改善施策やアクションプランが策定できない場合があります。

組織改善の主体となるのは現場の管理職ですが、多くの企業では、組織改善の取り組み経験がない管理職が大半です。まずは課題改善に向けた方法論や進め方を習得する必要があります。

具体的には、ワークショップを通じて調査結果の中身を理解するとともに、自組織の課題を「自分事」と捉えることから始まります。その後、成果が測定可能なアクションプランを策定します。

こうした一連の取り組みを自社で推進することはハードルが高く、専門家の手厚い支援が成功を左右します

改善施策やアクションプランが実施されない

策定した改善施策やアクションプランが当初の予定どおりに実施されない場合があります。原因としては、掲げた施策の難易度が高く、現実的には実施できなかったケースです。

また、後日の振り返りなどの運用がうまく回っていないために、施策が形骸化するケースもあります。

目的と手段が入れ替わってしまった

エンゲージメントサーベイの目的は、組織に内在する課題を改善し、従業員のエンゲージメントを向上させ、生産性の向上や離職率の低下などを実現することです。

しかしながら、エンゲージメントサーベイの数値を高めることが目的になってしまい、真の組織改善が疎かになる事例も見られます。

例えば、エンゲージメントサーベイの目的が「業績の向上」だったにも関わらず、エンゲージメント向上のために設備投資に過剰なコストをかけた結果、会社の業績が悪化してしまうようなら本末転倒です。

エンゲージメントサーベイに基づく組織改善の5つのポイント

エンゲージメントサーベイの結果を活用できない原因を踏まえ、次に組織改善に繋げるためのポイントを解説します。

現場の管理職にエンゲージメントサーベイの結果を報告

組織改善にとって重要なステップは、現場部門に対してエンゲージメントサーベイの結果を報告することです。その際、分析データは差し支えない範囲で共有するとともに、丁寧な説明が求められます。

特に現場の管理職は、その後の改善施策やアクションプランの策定と日々の運用の主体となるため、会社や組織の課題を「自分事」化し、納得できるように伝える必要があります。

サーベイの結果に基づく課題への理解を深めることで、より具体的で効果的な改善施策とアクションプランの策定に繋がります。

会社としての方針とロードマップを策定・提示

現場部門で改善施策やアクションプランを策定するためには、その前提として、会社としての方針や方向性と、ロードマップの策定・提示が欠かせません。

なぜなら、組織改善の取り組みや人的資本への投資といった戦略は、経営戦略と連動して策定される必要があるからです。現場の組織改善の取り組みが経営戦略と乖離しないように、最初に会社全体での方針を定めることが重要です。

また、改善施策やアクションプランをどのような時間軸で実施し、成果を評価するのか、といったロードマップの策定も重要です。全体ロードマップを策定することで、現場の管理職は改善施策の優先順位をつけやすくなるからです。

さらに、副次的な効果として、こうした会社としての方針やロードマップの公表は、従業員に対してポジティブな影響をもたらすこと期待できます。

スモールスタートで改善施策を実施する

組織改善の施策は、人事制度の改定のような全社的なものから、部署のミーティング方式の変更のような個別の取り組みまで大小さまざまです。

大きな施策には相応の効果が期待できますが、実現には一定の時間が必要です。よって、小さな施策から着手して成果を積み上げていくことが重要になります。

例えば、組織の課題が上司・部下のコミュニケーションであった場合、1on1ミーティングを定例化することで改善が図れます。会社全体での情報共有が課題であった場合、部署の垣根を越えた会議を新たに設定することにより、風通しが良くなる可能性もあります。

組織改善の取り組みをスモールスタートで開始することで、従業員のモチベーションが維持できます

特定された課題に関する情報提供を行う

エンゲージメントサーベイの結果から、特定の課題を解決するために、従業員の情報提供が有効な施策となる場合があります。

例えば、長時間労働の働き方について、管理職の労働関連法規への認識の欠如が明らかになったとします。その場合、管理職向けに研修を開催して「管理監督者としての安全配慮義務」や「時間外労働時間を超過した場合の罰則」を認識してもらうことで、是正に繋がるケースもあります。

特定された課題に関連する情報提供の場を会社が用意することで、管理職の行動変容を促します。

PDCAサイクルの確立(効果検証)

PDCAサイクルを回し、改善施策やアクションプランの取り組みを継続することが重要です。施策を定期的に振り返って報告する機会を設けることにより、施策の定着を促します。

具体的には、管理職が月次会議などで進捗状況を報告することなどが挙げられます。また、施策の進捗や成果を人事評価に組み込むことも、実行性を高める取り組みの1つです。

まとめ。エンゲージメントサーベイの結果を活用するために

組織改善の取り組みに繋げるためには、エンゲージメントサーベイの結果を正しく評価することが重要であり、専門的な知見とノウハウが必要になります。

近年、人的資本経営への意識の高まりを受けて、エンゲージメントサーベイを実施する企業が増えています。しかしながら、「調査結果をうまく活用できない」とお悩みの声も比例して増加しているように見受けられます。

そのため、この記事では、エンゲージメントサーベイの結果の活用方法や評価・見方を詳しく説明するとともに、組織改善のポイントまでを具体的に解説しました。

最後に、リアルワン株式会社は、調査・評価の専門会社です。信頼性の担保されたエンゲージメント調査」で従業員の成長と組織の活性化をサポートします。「組織の今を可視化したい」とお考えの方は、ぜひリアルワン株式会社のエンゲージメント調査をご活用ください。

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