OJTは新卒や転職者などへ、業務をしながら基本的な知識やスキルを習得させるトレーニングとして、今や多くの企業が取り入れている人材育成手法です。とはいえ、OJTを導入して成功させるための、効果的な『やり方』『期間・スケジュール』『進め方』などを、もっとよく知りたいと感じている人事やOJTトレーナーの方も多いのではないでしょうか。そこで、ここではリテンション・マネジメントなども考慮した、OJT成功のポイントや効果的に機能させるコツなどを紹介します。
目次
OJT基本的なやり方

企業が実施する研修メニューのなかでも、ポピュラーなやり方として定着している『OJT』On-The-Job Training。業務や仕事の進め方、座学では習得できない様々なスキルを働きながら体得でき、新人や転職者の即戦力化を図れるのが特徴の一つです。
そもそも、OJTはアメリカの第一次世界大戦時に、実施していた訓練が基にされています。人材育成の専門家、チャールズ・R・アレン氏が生み出したそのやり方は、『1.やって見せる(Show)』『2.説明する(Tell)』『3.やらせてみる(Do)』『4.確認、追加指導(Check))』というステップで進められていました。これが現在のOJTへ進化し、4つのフェーズごとで習得していくフレームワークとして定着しています。
次はステップごとの、進め方のポイントを見ていきましょう。
ステップ1: Show(やって見せる)
OJTトレーナー(教える側)は、まずトレーニー(受ける側)にプロジェクトの全体像や進め方をイメージしてもらい、次にやり方を実際に見せます。OJTトレーナーのコミュニケーションによる説明だけでなく、現場でリアルな業務をやって見せることで、トレーニーは具体的なイメージが抱けます。5W1H『When(いつ)』『Where(どこで)』『Who(だれが)』『What(なにを)』『Why(なぜ)』『How(どのように)』の流れでゴールが目指せ、スキルや上達スピードもアップ。OJTの最終目標、トレーニーの即戦力化やOJTトレーナーの成長にもつながります。
ステップ 2:Tell(説明する)
情報整理や伝達、コミュニケーションを良好に図るために欠かせないフレームワークが5W1Hです。前のフェーズで業務を進める上でのポイントやコツを掴んでいるため、再度、5W1Hに沿って説明を受けることで業務イメージがより深まります。いつから、いつまでに、だれが、なにを、なぜどのように進めていくのか。OJTトレーナーが業務の意味や目的、役割や背景をていねいに伝えれば、トレーニーは自分に任された仕事の必要性も感じられるでしょう。トレーニーからのフィードバックも大事なことで、OJTを受ける側の疑問点などを言語化すると業務の理解度が深まります。
ステップ3: Do(やらせてみる)
このフェーズにきて、ようやくトレーニーが実際の業務をやってみます。これまで見て、聞いて習得してきた知識やスキルを、どこまで発揮できるのか不安を感じるかもしれません。けれど大切なことは、一人でやってみるという強い意識。OJTトレーナーは、横で見守りながらも思い切って任せてしまう覚悟が必要です。その姿勢が、トレーニーの自尊心や責任感を養わせます。失敗のフィードバックだけでなく、反省点や改善点を次のステップでどう活かすか、トレーニーだけなくOJTトレーナーの両者で理解しましょう。こういったスタンスでOJTを進めていくと、信頼関係も深まり離職率の低下にもつながります。
ステップ4:Check(評価・追加指導)
Checkの段階では、業務のできたこと、できなかったことを評価します。できていなかった点については、どの部分をどう改善すれよいかなどを細かく分析。OJTトレーナーとトレーニーが一緒に考えていくのが、大切なことになります。OJTトレーナーは、うまくいった点についてしっかりと褒めましょう。ポジティブなフィードバックこそ具体的であればあるほど、トレーニーの自信につながり成長も加速します。うまくいかなかった点は、再度『Show』→『Tell』→『Do』→『Check』のステップを踏んで、失敗点を振り返り習熟度を上げていきましょう。それぞれフェーズでの評価を基に、次の育成計画を立てていくのも大事なことです。
OJT成功に導く 3つのポイント

人材育成の手法の一つとして定着し、多くの企業で導入されているOJT。成功している企業は、どのような意識を持って導入しているのでしょう。制度として取り入れてはいるものの、「上からの命令だから、とりあえず実施しておこう」「新しい教育プログラムを導入するのは、面倒だからこれまで通りにしておこう」といった理由から、OJTが形骸化しているといった場合もあるのでは。OJTを形式的に導入してしまうと現場やOJTトレーナーの負担が増えるだけで、育成効果が期待できないケースも考えられます。
OJTを導入して、人材育成に成功している企業にはある一定の特徴があります。それは、経営陣と人事と現場が、共通の意識を持って、戦略的にOJTを進めている点。フォーカスしている意識は、次の3つです。
ポイント1:意図的
ポイント2:計画的
ポイント3:継続的
OJT成功のカギは、この3つを抑えてゴールを目指しているか否かです。次に、それぞれのキーポイントなどを解説いたします。
ポイント1:意図的
意図的とは、目的を指します。トレーニーの目指すべき姿、OJT終了後に習得できる知識やスキル、未来像などを明確にしておくのが大事なことです。また、実施しようとしている育成方法はほんとうに有効なのか、効果はどんなものか、経営陣と人事と現場が三位一体となって具体的なプロセスも共有して進めていくのも大切なこと。OJTトレーナーは、育成側の意図をしっかりとトレーニーに伝え、いつまでに、どれくらいのレベルまで成長したいかを、自身で決めさせましょう。
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ポイント2:計画的
計画的とは、意図に沿って進める育成プランのことです。掲げた具体的な目標を、いつまでに、どのくらいの知識やスキルを習得させるのか。OJTトレーナーは人材育成のスケジュールを設定し、習得までのステップやプロセスなどもチェックしていきます。OJTの実施過程では事前の計画や流れ通りには進まない、スケジュールが押しているといった問題も発生するかもしれません。そんな際に、大事なことがOJTトレーナーの柔軟な対応。経営陣や人事、現場の上司などに相談しながら、思わしくない進捗やトレーニーの習得力の改善に努めていきましょう。
ポイント3:継続的
継続的とは、OJTを1回きりで終わらせず反復的に一定期間に行うことです。トレーニーが担当する業務の全てを、1回のOJTで習得させるのは難しいもの。業務の流れや段階ごとにステップを設けて、OJTを一定の期間で継続・反復するのが大切なことです。1回目のOJTが終了したら、2回目、3回目のOJTは、その延長線上にあると考えて人材育成プランを設定しましょう。スキルや技術によっては習得や育成に時間を要しますので、OJTの期間の設定は大事なこと。OJT終了後も上司や先輩が継続的に後輩を成長させていく社内文化を醸成すると、リテンション・マネジメントも図れます。
OJT正しい進め方

トレーニーを自立した一人前の企業人として育成するための、人事やOJTトレーナーの役割とはなんでしょう。OJTを成功させるために必要なプロセスは6段階あります。ここでは、それぞれのポイントを見ていきましょう。
ポイント1:OJT目標の設定
トレーニーの育成後のあるべき姿、知識やスキルなどは、いつまでに、どのくらいのレベルまで成熟して欲しいかなどを考え、まずは目標を立てます。
「1カ月後には〇〇の最先端知識が身についている」「2カ月後には〇〇スキルを駆使して△△の業務ができるようになる」というように、より詳細な目標設定が大事なことになります。
具体的な目標を掲げ、そこに達成するまでの経過や結果を明確なプロセスとして見ていきましょう。また、その目標をOJTトレーナーとトレーニーで共有し、会社からの要望や上司が期待している着地点を理解します。現場だけでなく、経営層や人事部とも達成レベルを共有するためのコミュニケーションも大切なことです。
ポイント2:OJTトレーニーの現状把握
OJTトレーナーとトレーニーとの間には、少なからず何らかのギャップが生じてしまうものです。例えば、世代間のギャップ、価値観のギャップ、モチベーションのギャップなど様々な違いがあります。このギャップを理解せずに形式的にOJTを進めようとすると、トレーニーとの関係はギクシャクしてしまうかもしれません。
ここで大事なことは、まずは相手を理解するスタンス。OJTトレーナーが、これまでのバックグランドや人間性などを知ろうとする姿勢を見せると、トレーニーとの信頼関係も深まるはず。このような関係性を強化しておくのが、OJTを始める最初の一歩です。
その次に大切なことが、トレーニーの業務スキルの把握です。トレーニーの持つ能力を把握するのは、OJTを成功させるために非常に大事なことです。さらにトレーニーが、どんな仕事を成し遂げたいかまで理解できていれば、より有効性の高いOJTとなるでしょう。
ポイント3:OJTトレーナーの選出
OJTを成功させるキーパーソンが、OJTトレーナーといっても過言ではありません。そのため、OJTトレーナーの選出やアサインは非常に大事なことで、人事の側としても神経を使うところになると思います。
OJTトレーナーとトレーニーの年齢が近かければ世代間のギャップの緩和や、違和感のないコミュニケーションが期待できるとあって、選ばれるのは、一般的に入社3〜10年目の社員が多いようです。
OJTトレーナーに求められるスキルは、コミュニケーション能力、指導力、判断力など多岐にわたります。OJTトレーナーに最適な人材とは、そういったスキルにプラスその人の資質がポジティブか否かも大切なポイント。自分の成果だけでなく組織や会社全体の成長も考えて動ける人材が、OJTトレーナーに適しているのではないでしょうか。また、OJTの場を活性化させる雰囲気づくりができるのも大事なことになります。
ポイント4:OJT計画の立案
OJT をスタートする前に、OJTトレーナーとトレーニー間でのプランや進め方、スケジュールの確認などは、非常に大事なことになります。まずは、以下の4点を押させて、お互いの認識を深めておきましょう。
- 現状のレベル・課題
- OJTで達成する目標
- 達成するための具体的な方法
- 到達するためのスケジュール
トレーニーが新卒や業務未経験者の場合は、OJTトレーナーが業務の流れや内容、現状レベルなどを理解し目標を設定しなければなりません。トレーニーが業務スキルや経験値があるレベルの場合は、次のフェーズのスキル習得に向けた目標を段階的に設定しましょう。
ポイント5: OJT計画の実行
育成計画が決定したら、いよいよ現場でのOJTがスタートです。OJTトレーナーは前述で記した『Show(やってみせる)』『Tell(説明する)』『Do(やらせてみる)』『Check(評価・追加指導)』のプロセスで、ゴールを目指します。
最初は、トレーニーが難易度を感じない業務でスキルを習得させるのがセオリーです。OJTトレーナーは業務を見せ、随時フィードバックを行いながら難易度を上げていきましょう。トレーニーの成長具合を見ながら、フェーズごとの業務が一人で行えるような流れを作るのも大事なことです。
また、OJTトレーナーとトレーニーが具体的なゴールを共有すると、進捗の確認、達成状況が明確になります。さらには、OJT終了後の姿もイメージでき、両者が高いモチベーションを持って進めていけるでしょう。
ポイント6:OJTのフィードバック
OJTの実践中には、『Check(評価・追加指導)』の段階だけでなく、随時フィードバックができる環境を整えておくのは大事なことです。できれば、1日1回、難しければ週に1回程度でもかまいません。
フィードバックの場面では、計画していた目標、スキルの達成レベル、スケジュールなどを振り返ります。『できたこと』『できていないこと』『これから、できるようになるたこと』などを、OJTトレーナーとトレーニーで確認のコミュニケーションをとりましょう。
フィードバックは、上からのネガティブな指摘というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、『褒める』というポジティブなフィードバックもあります。フィードバックはOJTトレーナーがトレーニーを「ちゃんと見ているよ」というサインでもあり、究極的にはエンゲージメントの向上にもつながるともいわれています。
OJT効果的に機能させるコツとは

用意周到に計画を立てOJTをスタートさせたつもりでも、導入後は思うような成果が得られず「OJTがうまく機能していない」。などと、不安を抱くOJTトレーナーや人事の方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな心配を払拭するために、ここでは、OJT導入後に発生しがちな事例から考える、OJTを効果的に機能させるコツをご紹介します。
スケジュール通りにトレーニーを育成させるコツ
OJTをスタートしたものの、育成計画のスケジュール通りに能力の発達ができていないといった事例はよく聞きます。トレーニーの熟成度や、目標が達成できない原因などを探り、軌道修正をしてみましょう。OJTトレーナーとトレーニーは頻繁にコミュニケーションをとって、必要であれば目標レベルを変更するなど、お互いの負担を軽減するのも大事なことです。
OJTのスタート段階から高い効果を期待してしまったり、トレーニーへのフィードバックがうまくできていなかったりすると、人材育成を計画通りに進めるのが難しくなります。フィードバックは、できれば1日1回、ネガティブな改善内容だけでなく、ポジティブに褒めるのも大切なことです。フィードバックはOJTで成長を目指しているトレーニーを後押しするものです。OJTトレーナーはネガティブな感情を捨て頻繁に行い、トレーニーの知識やスキルの習得を計画通りに進めていきましょう。
また、OJTトレーナーに負担がかかりすぎるような育成計画では、うまくはいきせん。OJTトレーナーのキャパシティを配慮した育成計画を立てて、経営陣、人事、現場での認識を共有してフォローするのも大事なことです。
OJTトレーナーの指導力のバラツキを減らすコツ
OJTの現場ではOJTトレーナー個人が持つ指導力によって、トレーニーの熟成レベルにバラツキが生じるケースも多いようです。また、OJTを導入後は、経営陣や人事担当者は現場に関与せず、OJTトレーナー任せになっているという事例もあります。
このような状況でOJTが進んでいくと、体系的なトレーニングではなくOJTトレーナー個人の知識やスキル、経験値でトレーニーの育成度合いに差がでてしまいます。また、OJTトレーナーが感情的だったり、強要しすぎたりといった問題が生じる可能性もあるかもしれません。
このような事態を阻止するためには、経営陣や人事と現場の積極的な連携が大切なことになります。OJTトレーナーの指導力を均一化、レベルアップするための研修の実施や指導手順をマニュアル化する必要もあるでしょう。OJTトレーナーの能力任せにしないOJTのマネジメントの展開も、大切なことです。
トレーニーの反発心を軽減させるコツ
トレーニーが転職者で、担当する実務の経験値も高く一定の知識やスキルを備えている場合、OJTにモチベーションが持てないというケースも見られます。OJTトレーナーのスキルや経験値がトレーニーより浅い場合などは、なかなか指示通りに動いてくれないといった事例もあるようです。
このような状況を避けるには、トレーニーの自分がなりたい姿、キャリアプランなどを先にヒアリングしておくのが、大事なことになります。そして、その理想像を目指すために大切な取り組みが、OJTなのだと意識させましょう。業務内容が同じであっても、会社や現場によって業務ルールやフローが異なる状況も説明します。なぜ、なんのためのOJTなのか納得してもらうのが、大切なことです。
また、経営陣や人事、現場の上司などが、OJTトレーナーの選定段階で能力レベルを正しく把握して、トレーニーとの適切なマッチングも重要になります。
OJTリモートワーク・オンラインでの成功のカギ

OJTをリモートワークで実施する場合には、オンラインツールを駆使するのがキーポイントになります。現場で実施するOJT以上にコミュニケーションが、より重要で大切なことです。Web会議ツール、チャットツールなどを活用して、綿密にコミュニケーションをとりましょう。
毎日、朝と仕事終わりにオンラインミーティングを実施して、一人ひとりの目標や達成度合いを確認したり、業務の進捗や課題の報・連・相をしたり、ミーティングの日時を設定したり…。などと、対面のOJTの時より会話の機会を増やしている企業は、OJTを成功させているケースが多いようです。
また、リモートワークは、トレーニーの育成状況を正しく観察するのが困難になりますから、仕事の進め方や課題を細かく設定し習得レベルを正確にチェックしていきましょう。雑談や相談などの業務以外のコミュニケーションが取りやすいのも、オンラインならでは。トレーニーの不安解消のためにも、積極的に実施するのは大切なことです。
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