OJTとは? 制度の目的や具体例、メリット・デメリットを解説

OJTとは?正式名称“On-The-Job Training”の頭文字をとって使われているHR用語の一つです。人事の方なら、どのようにOJT制度を導入して効果をだすべきかなど常に頭を巡らせ、ある意味、OJTは常用語となってしまったという方も多いのではないでしょうか。一方で、新人の方であればOJT、言葉は聞いてはいるものの、意味や定義、目的、有効性までは、実はあやふやではっきりしていないこともあるのでは。そこで、本記事では今さら聞けないOJTのアレ・コレ、メリット・デメリットなどをわかりやすく説明していきます。

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

『OJT』On-The-Job Trainingとは?

OJTはOn-The-Job Trainingの略で、働く現場で実践的にトレーニングしながら、仕事を覚える教育手法のことです。ここではOJTの意味や定義、目的などをわかりやすく説明します。

OJTの意味や定義

『OJT』On-The-Job Trainingは、現任訓練(げんにんくんれん)と訳され、職場で実務をさせることで行う従業員の職業教育のこと、と一般的には説明されています。
出典:ウィキペディア
OJTの発祥は第一次世界大戦時のアメリカで、人材育成の専門家であるチャールズ・R・アレン氏が実施した実地訓練が起源とされています。当時、造船所で働く莫大な人数の作業員の育成が急務となっていました。そこで、アレン氏は『1.やってみせる(Show)』『2.説明する(Tell)』『3.やらせてみる(Do)』『4.確認、追加指導(Check))』というサイクルからなる『4段階職業指導法』を生みだしたのです。これが現在のOJTへと進化し、企業の研修メニューのなかでもポピュラーな手法として定着しています。

そもそも、日本に伝来したのは高度経済成長期で、多くの労働力が必要とされるなか即戦力の育成につながる実践型のOJTは、時代にマッチしていたのでしょう。そして、また労働力不足が深刻化する現在でもOJTの意義や価値が改めて見直されており、OJTに再び注目する企業が増えています。

OJTの目的

OJTの目的として挙げられるのは、次の3つです。

  1. トレーニー(教えられる側)の即戦力化
  2. OJTトレーナー(教える側)の指導力向上
  3. 採用力と組織力の強化

トレーニーの即戦力化

業務効率を上げていくためには、新人や新たな部署に配属された社員であるトレーニーがどれだけ早く職場に馴染み、部署の業績アップに貢献できるかがポイントです。OJTなら、業務内容や仕事の進め方を働きながら体得できるだけでなく、座学では習得できない先端技術の対応も可能になります。訓練を受けながら習得したことを早期に発揮でき、即戦力となれることでトレーニーの成長意欲や自己実現意欲を満足させモチベーションを高めることもできるでしょう。OJTは責任意識も持った戦力として自主的、意欲的に業務に取り組み、成果、結果をだしていくことができる研修・制度です。

OJTトレーナーの指導力向上

OJTの効果には、トレーニーを教育する立場のOJTトレーナーの指導力の向上も期待できるといわれています。日々の業務内容をわかりやすく伝授するには、5W2Hも駆使して仕事の組立て方や目的、進捗などをロジカルに説明できなければなりません。そのためにOJTトレーナー自身も、スキルアップが必要です。業務を遂行するのと教育するとでは求められるスキルが異なりますから、OJTトレーナーは論理的思考力も鍛えなければなりません。OJTトレーナーには、職場の先輩や上司がなるのが一般的です。OJTを通じて、先輩社員と新入社員の距離を縮めて、良好な人間関係を築いてもらう目的もあります。

採用力と組織力の強化

OJT制度がしっかりと浸透され機能し、即戦力となる優秀な社員が輩出されている企業で自分の力を試したいと思う人は多いはずです。就職・転職した当初のOJTだけでなく、計画的に将来、必要とされるマネジメント力や経営面のスキルまで、個人の資質や能力に沿って開発・育成していくような段階的なOJT制度を敷いておくことが重要になります。このような取り組みが実施され、成長できる環境が確立されていることを社外にアピールできれば、採用力の強化にもつながります。また、OJTを継続的に実施して習慣化されると、社内に「人が人を育てる」という文化が根づき、持続可能な組織力の向上にもなるのです。

OJTの効果的な運用方法

OJTを教育制度として効果的に運用するには、現場のトレーナーに全てを任せてしまうのではなく、企業全体でのサポートが重要です。OJTトレーナーに不足しているスキルを、上司や先輩、人事部門などが支援できるような仕組みを構築しておくことを推奨します。OJTトレーナーのサポーターとして次のポジションの人たちと連携して、役割分担をしながらチーム体制で実践すれば有効性の高い結果が得られるでしょう。

  1. OJTトレーナーの上司
  2. トレーニーと年齢が近い先輩
  3. 人事部のOJT担当者

では、次にこの3者の具体的な役割を紹介します。

OJTトレーナーの上司の役割

OJTトレーナーの上司はOJTトレーナーが作成した育成プランや訓練内容、目標の着地点などをチェックしながら、PDCAサイクルが適切に回せているかなどを把握しておく必要があります。OJTの実施部署での全体像を理解した上でOJTトレーナーの果たすべき役割、トレーニーの成長度合いなどを見ながら、両者の中長期的なキャリアプランも提案しましょう。OJTトレーナーに負担が掛からないように、業務のコントロール、訓練のフォローなどもしていかなければなりません。大枠を見た俯瞰からのマネジメントで、OJTトレーナーが気づいていないアドバイスが可能になります。

トレーニーと年齢が近い先輩の役割

新入社員のフォローやメンタルケアを行なうためにブラザー・シスター制度を敷いている企業も多いと思います。年齢が近い先輩社員のブラザー・シスターであればOJTトレーナーには話せない人間関係や組織に馴染むフォロー、業務上の不安などを打ち明けやすいことから、その役割を担っているようです。OJTトレーナーには分からない本音の部分を聴きだし、自分だけで問題の解決をするのではなく上司や人事担当と連携をとりながら、トレーニーをサポートしていくことが役割となります。また、OJTトレーナーと役割を分担することで、新入や転職者が安心、安全に働ける環境づくりにも貢献できるでしょう。

人事部OJT担当者の役割

人事部は現場と協働しOJTの育成計画を立て実践に移し、評価と改善をしていかなければなりません。OJTトレーナーが自分の業務で手いっぱいの場合は、OJTを実施するために、業務量の調整を行う必要もあります。また、もし「OJTトレーナーをやらされている」といった意識がある場合には、担当者に選んだポジティブな理由や任せたい理由を明確に伝えましょう。自分は選ばれてOJTトレーナーを任されたというモチベーションになることで、やりがいを見いだせるはずです。人事部のOJT担当者は、直接的にOJT訓練に携わらないからこそ果たせる役割があります。OJTトレーナーを任されることで、トレーニーだけでなく自身の成長にもつながることも伝え支えて、OJTを成功させてください。

関連記事:「OJT担当の役割 求められるスキル・能力や評価方法について」

OJT導入のメリット

OJTは企業側、社員側の双方に一定の効果が認められ、多様なメリットをもたらす訓練として定着しています。

コストを削減した効果的な教育が可能

OJTを導入すると、OJTトレーナー、トレーニー、企業や人事の3者の立場によって異なるメリットが生まれます。ここでは、それぞれにもたらす効果やメリットを見ていきましょう。

OJTトレーナーのメリット

OJTトレーナーのメリットは、トレーナー自身が成長できることです。新人、部下の教育や育成は容易いことではありません。教える側のOJTトレーナーは、業務の目的や方法、もたらす成果などを改めて学習し理解度を深めることが求められます。その結果、OJTトレーナー自身の指導スキルや育成スキルの向上にもつながるのです。

OJTトレーナーはOJTを適用させるために、社内の各部署と連携して業務を進めていくことも必要になります。他部署の業務を理解するためには、コミュニケーションスキルも駆使しなければなりませんから、おのずと対応能力の向上が図れるのです。部署間を超えてコミュニケーションをとることで、社内の風通しも良くなり活性化にもつながります。

トレーニーのメリット

トレーニーのメリットは自分の理解度や習得度をその都度、確認でき、直接指導を受けながら成長していけることです。OJTの訓練では、OJTトレーナーとトレーニーが1:1で取り組むことが多く、現場の業務に携わりながら、個人のレベルに合わせて進めていくのが一般的です。分からないことを、その場で直ぐにOJTトレーナーに確認することができ、フィードバックを受けられるので、実践でしか身に着けられない教育効果が養われます。OJTの訓練中は上司や先輩社員とのやり取りが密になるため、コミュニケーションを通じて良好な人間関係や信頼関係を構築できるのもメリットになるでしょう。

OJTを実施する企業や人事のメリット

企業や人事のメリットとしては、研修費用や人事業務のコスト削減できることにもあります。社員教育や人材育成は、従業員の能力がアップすることで生産性が高まるとあって、その重要性、必要性は常に課題とされています。同時にそのコストに関しては、悩みの種なのではないでしょうか。実際の現場で仕事をしながら教育を行うOJTなら、特別な場所や時間、外部の研修やセミナー費用なども掛けずに実践で訓練が行えます。コストや人事業務の削減ができ負担が少なければ継続的にOJTを取り込んでいけ、中長期的な人材戦略を立てることも可能です。繰り返し訓練を続けることで優秀な人材の輩出につながれば、会社としても大きなメリットになります。

OJT導入のデメリット

OJTは多様なメリットを生み出す一方で、デメリットも存在すること知っておかなければなりません。日常業務に加えて実施するOJT研修には、どんな注意点が潜んでいるのでしょう。

OJTトレーナーのスキルで効果に差がつく!?

OJTを導入する際のデメリットも、3者の立場によって異なります。ここでは、OJTトレーナー、トレーニー、企業や人事にある問題点などに注意してみましょう。

OJTトレーナーのデメリット

OJTトレーナーは、OJT研修だけに専念できるわけではなく、通常の業務に加えて実践でトレーニーの訓練をしなければなりません。定めた期間までに目標のレベルへ育て、業務効率を上げるミッションも託されます。OJTトレーナーはOJT研修を実施するための、特別なスキルや経験が豊富というわけでありませんから、教育や指導の準備に時間も必要でしょう。そのため、OJTトレーナーがプレッシャーを感じてしまう、業務過多に陥いり実務が滞るといったケースもあるようです。トレーニング中は、指導方法や進捗などOJTトレーナー間で情報共有を行うことも必要になります。また、上司や人事担当とも連携をとって、サポートしてもらうのも大事です。

トレーニーのデメリット

OJTトレーニー側のデメリットでよく聞くのが、次の2点です。

  1. 体系的に学べない
  2. 成長レベルに差がでる

●体系的に学べない
OJTは現場レベルで業務の進め方を体験しながら、スキルを習得するのに適したトレーニングです。ただ、目先の業務は熟せるようになっても、プロジェクト全体でどんな役割を果たしているのか。中長期的な戦略で、プロジェクトの目標達成に向けたモチベーションなどの体得が難しいことも多いようです。業務の全体像、取り組む姿勢、基本的な知識やノウハウなどを体系的に習得するには、OFF-JTの方が向いているのかもしれません。

●成長レベルに差がでる
OJTは、現場の上司や先輩がトレーニングを行うため、指導者の能力レベルや指導方法がトレーニーの成長に大きく影響します。OJTトレーナーの経験値やバックグランドによっても指導力が異なるため、同じ期間でOJTを行っても、トレーニーが現場で発揮するパフォーマンスや修練度に差がでたということもあるようです。座学や基礎知識などは、OFF-JTで専門の外部業者などに依頼して、スキルにバラつきが生じないよう一定のレベルを保つ工夫も大切でしょう。

関連記事:「OJTとOFF-JTの違い 割合や組み合わせ、メリット・デメリットを解説」

OJTを実施する企業や人事のデメリット

企業や人事にとってのデメリットは、OJTによりOJTトレーナーの実務が滞ってしまい、多大な残業時間が強いられてしまうといった問題が発生することでしょう。OJTの実施により、生産性が低下し人件費が増してしまうようでは、会社としてはコストパフォーマンスが悪いといった評価を下さなければなりません。人事は、OJTの導入にあたって長期的な視野で人材教育の施策をプランニングしたのか。などといったフィードバックを、受けることも考えらます。OJTを失敗に終わらせないためには、OJTトレーナーの教育も大きな課題です。人事は教育マニュアルを作成したり、OJTトレーナーのタスクの管理をしたりチームとして推進していくことが求められます。
関連記事:「OJTは意味がない? うまくいかない問題点や課題を解説」

OJT成功事例から学ぶ特徴や共通点

OJTを成功させるための、決め手となる施策が分からないとお悩みの人事の方も多いのではないでしょうか。OJTを成功させている企業には、ある一定の共通点があります。ここではOJTに成功した企業の特徴や共通点などを見ていきます。

OJTトレーナーの意欲を尊重する重要性

OJTに成功している企業の特徴として、OJTトレーナーの意欲や熱意、その人が持ち合わせる才能を尊重し任せているケースが多いことです。OJTの取り組みを通して、社員の一人ひとりのモチベーションを高めて主体性の向上にもつなげています。目的意識を持たせて、自ら考えトレーニーを育成していこうという前向きな気もちにさせるバックアップも忘れてはいません。企業全体のサポート体制が敷かれていて、信頼してOJTトレーナーを任せてもらえることで、自主的な行動力が養われます。OJTを実施することでトレーニーだけでなく、必然的にOJTトレーナーの成長につながるのです。

明確化された目的の必要性

OJTの目的が明確化されている場合のトレーニーの成長は着実です。OJTトレーナーは、このOJTでは何を目的として、いつまでに、どのような能力までに育てるかを明確にして着地点を目指します。実施方法や進め方、スケジュールも、具体的なゴールを設定。また、現場と経営層との間で、OJTへの目的や意思疎通ができている企業ほど成功しています。ボトムアップでOJTトレーナー候補にヒアリングをしたり、スキル調査の実施をしたり、現場の現状分析をする必要があります。トップダウンでOJTの設計をすると、期待はずれな結果になるケースが多いようです。

成功している企業の具体例

では次に、離職率の低い企業として知られるスターバックスジャパンコーヒー(以下スターバックス)の事例を紹介しましょう。

●自主的にミッションが果たせるよう育成
スターバックスがOJTに費やす時間は、なんと80時間。飲食業界でのOJTは、通常2~3日といわれていますから、賭ける熱意に伴う結果が異なるのでしょう。まず、学ぶのが基本理念。「私たちはコーヒーを売っているのではない。コーヒーを提供しながら人を喜ばせるという仕事をしているのだ」。という志を働く一人ひとりが心に刻んで、自主的にミッションが果たせるように育成されるそうです。学生アルバイトから正社員まで、OFF-JTを含めてみんな同じ時間と内容で実施されます。

●考えることでポジティブな行動を慣習化
現場でのトレーニングもユニークです。通常であれば、何か誤りがあった場面でフィードバックを受けることが多いと思います。ところが、スターバックスではミッションが成功したときに、褒めるフィードバックを行っています。その方法にも特徴があり、具体的に良かった点を本人に分析をさせます。成功事例は何が良かったのか、自分で考えることでポジティブな行動を慣習化させています。

また、うまくいかなかったときは否定するのではなく、どうすれば良かったのかを気づかせるコミュニケーションをとります。どうして、何のために、その行動を取ってしまったかを考えてもらうのだそうです。

●サービス提供のためのマニュアルはない
80時間のOJTが終了すると、一人ひとりが明確な目標を持てるようになり、決められた役割を的確に熟せるようになっています。スターバックスのサービスの基本である、『接する、発見する、対応する』といった行動も、自ら考えて提供できるようになるそです。スターバックスにはコーヒーを作るマニュアルはあっても、サービス提供のためのマニュアルはありません。自分で考えた行動が好評価されるから、仕事に対するモチベーションが上がりさらなる成長へとつながるのでしょう。

関連記事:「OJTのやり方 期間(スケジュール)や進め方のコツを解説」

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ユニークなビジョンやパーパスに社員がどのくらい共感し、目指すべきベクトルに向かって一丸となっているかは企業の発展には欠かせないことです。スターバックスのような働く人たちの高いエンゲージメントは、組織を活性化させ組織風土を変革させます。また、社員のモチベーションやリテンションの向上にもつながります。『OJT』On-The-Job Trainingプログラムのなかでも、最近、見直されているのがパーパスやベクトルの一致。ぜひ、OJTと共に社員の志の育成に向けた施策として、エンゲージメント調査も取り入れてみてください。

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