リーダーを育成・教育する方法/次世代リーダーの育て方

変化の激しい時代。企業が生き残り成長を続けるためには、事業を力強く引っ張るリーダーの存在が欠かせません。さらに、多様な価値観を持つ社員を一体感ある組織にまとめ上げ、新しい価値を生み出す先頭に立つのもリーダーでしょう。まさに組織の核となるリーダーですが、その育成や教育は簡単ではありません。本記事では、そのリーダーを深掘り。リーダーの育成が難しい理由を考察すると共に、リーダーの育成方法、そしてこれからを担う次世代リーダーについて解説します。

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

リーダーの育成が難しい理由

会社員

リーダーがうまく育たず、「どうやってリーダーを育てていくべきか」と疑問を持っている人事担当者も多いでしょう。ここではまず、リーダーの育成が難しい理由を考察します。

なぜリーダーが育たないのか

なぜリーダーが育たないのか。どうしてリーダーの育成は難しいのか。「人材不足」「育成の優先順位が低い」「育成環境が整っていない」「候補者を選ぶ基準や方法が曖昧」「育成効果がわかり難い」「リーダーになる意欲の低下」など、様々な理由が考えられます。どれも間違いではないでしょう。このような理由をクリアすることは、リーダーを育てる上で大切なことです。しかし、最も本質的な理由は別のところにあります。

リーダー、特に優秀なリーダーについて考えてみましょう。優秀なリーダーには、誰もがなれるわけではありません。この記事を読んでいただいている方の中にも、優秀なリーダー像があるはずです。具体的な人物の名前も浮かんでいるかもしれません。どうでしょう。誰でもなれそうでしょうか。おそらく、そうではないでしょう。

先の理由をクリアしたからといって、リーダーの育成研修を実施したからといって、誰もが優秀なリーダーになれるわけではない。なぜならば、優秀なリーダーはリーダーになるための「コンピテンシー」を持っているからです。この「コンピテンシー」を無視しては、リーダー、特に優秀なリーダーを育てることは難しいのが現実なのです。

リーダー育成のポイント

リーダー育成のポイントは、コンピテンシーです。リーダーになる「適性」ともいえるコンピテンシーを持っているか否かが、リーダー育成最大のポイントです。コンピテンシーを持っていない人材に対して、どれだけ多くの研修や教育の機会を与えても、優秀なリーダーに育てることは難しいのが現実です。

コンピテンシー(competency)とは、「能力やスキルを発揮する力」のことです。一般的には、「高いパフォーマンスを発揮する人材に共通する行動特性」といわれています。どれだけ高い能力やスキルを持っていても、行動に結びつかなければ成果は生まれません。コンピテンシーは、能力やスキル、そして知識を活用し成果につなげる行動力のことなのです。

人はそれぞれ、違った能力やスキルを持っています。コンピテンシーも同じです。人それぞれ違ったコンピテンシーを持ち、リーダーになれる人は“メンバーを統率し目標達成に向かって引っ張っていく”コンピテンシーを持っているのです。組織に求められるのは、リーダーとなるコンピテンシーを持っている人材を見つけ出すことなのです。

「ないもの」を伸ばす、そして身につけることは難しい。時間もかかるし、時間をかけたからといって身につくとは限らない。だから、「あるもの」を伸ばす発想がリーダーの育成には必要です。リーダー、特に優秀なリーダーを育成するには、リーダーの適性ともいえるコンピテンシーの有無を見極めること。最大のポイントは、そこにあるのです。

リーダー適性の見極め方

リーダー適正を見極める軸になるのは、コンピテンシーです。優秀なリーダーのコンピテンシーを特定できれば、リーダー適正のある人材を選ぶことができます。では、どうやってコンピテンシーを特定するのか。まずは、現在の自社において高いパフォーマンスを発揮するリーダーにヒアリング調査を行います。

  • 業務に取組む際に意識すること
  • 成果をあげるためにとった行動
  • その行動をとった理由
  • うまくいかなかった場合の対処法とその結果

上記は、あくまでも一例です。優秀なリーダーの行動特性を洗い出し分析することで、自社のリーダーに必要な「リーダーが持っている行動特性=コンピテンシー」が見えてきます。それに、企業の将来ビジョンやパーパスを折り込み調整したものが、自社にマッチするリーダーのコンピテンシーです。あとは、このコンピテンシーを持っている人材を選んでいく。これが、コンピテンシーを軸にしたリーダー適性の見極め方です。

※コンピテンシーについて詳しく知りたい方は、「コンピテンシーディクショナリー/ Spencer & Spencerのコンピテンシーモデル」を参照してください。

リーダーとは何か

プレゼン

ここでは、改めて「リーダーとは何か」について解説していきます。

リーダーの定義

リーダーとは、次のような人材のことです。

明確な目標を持って、チームをまとめ引っ張っていく役割を担う者

「リーダー=leader」には、「指導者・統率者・先導者」といった意味があります。目標を達成するために、想定される様々な課題を発見し、その解決に向けて具体的な方策やプランを立て、メンバーの能力を最大限引き出しながら、目標達成というゴールに導いていくのがリーダーなのです。

リーダーに必要な能力・スキル

リーダーに必要な能力・スキルとして良くあげられるのが、「コミュニケーション能力・課題解決能力・目標設定能力・判断力・実行力」などです。「論理的思考力・人材育成力・決断力」も欠かせないでしょう。しかしリーダーの定義から考えれば、最も必要とされる能力・スキルは次の3つがその本質です。

  1. リーダーシップ
  2. ファシリテーションスキル
  3. コンピテンシー

リーダーにとって、リーダーシップが必要不可欠であることに異を唱える人はいないでしょう。目標達成のために、メンバーを指導し統率する行動力がリーダーには求められます。それは、リーダーシップに他なりません。

ファシリテーションスキルもまた、リーダーにとって必要な能力・スキルです。ファシリテーションスキルとは、会議やミーティングをスムーズに進める能力のことです。具体的には、メンバーの意見を引き出して傾聴し、様々な意見を理解し整理しながら方策をまとめ上げ、合意形成をはかる能力。これは会議やミーティングに限らず、リーダーにとって必要不可欠な能力といえるでしょう。

能力・スキルというより、行動特性であるコンピテンシーが重要であるのは、先に述べた通りです。

リーダーの育成方法

説明

リーダーを育成するには、リーダー適性を見極めることが最大のポイントと先に述べました。ここでは、それとセットで取組むべきリーダーの育成方法を解説します。

中長期的な育成目標を設計する

リーダーの育成には時間がかかります。自社に合った中長期的な育成目標を設計し、現場経験を重ねることでコンピテンシーを磨き伸ばしていきます。リーダーの育成目標を共有しておくことは、いうまでもありません。

役割やゴールを明確化する

リーダーに求める役割やゴールを明確にします。どのような役割を期待し、どれだけの成果をあげればゴールになるのか。役割とゴールを明確化し、育成にかかわるメンバー全員で共有することが重要です。

育成環境を整備する

リーダーの育成が難しい理由のひとつに、育成環境が整っていないことがあげられます。優秀なリーダーを育てるには、コンピテンシーを明確にすると共に、教育や評価システムを構築するなど育成環境を整備する必要があります。

人事制度に反映する

リーダーの成長を人事制度に反映し、「等級・評価・報酬」と連動させる必要があります。優秀なリーダーが評価される人事制度を構築することは、リーダーへのインセンティブなのです。

育成研修を行う

一般的なリーダー研修ではなく、明確になったコンピテンシーを伸ばす研修を行います。コンピテンシーを伸ばすことで、さらに高いパフォーマンスが期待できると共に、良きロールモデルとなるはずです。

今求められる次世代リーダー

社員

変化が激しく価値観が多様化する時代。求められているのは「次世代リーダー」です。ここでは、これからを担う次世代リーダーについて解説します。

次世代リーダーとは~求められる背景

次世代リーダーとは、もちろん次の時代を担うリーダーのことです。ただし「次世代」には、大きな意味があります。それは、これまでのリーダーに求められていた能力・スキル、そして役割に加えて「激しい変化」への対応や「多様性」への取組みが今まで以上に求められるといことです。

時代は刻々と変化し、そのスピードは早くなるばかりです。これまでとは違う多様な価値観や考え方は、今後ますます浸透していくでしょう。ビジネス環境や社会構造の変化は、私たちにも大きな変化を要求します。働き方だけではなく生き方が問われる今、時代の変化に反応してスピード感を持って柔軟に対処できる次世代リーダーが求められているのです。

次世代リーダーの要素

次世代リーダーといっても、その役割は企業によって様々でしょう。しかし、次世代リーダーの要素として重要なことは、次の3つに集約されます。

① D&I(ダイバーシティとインクルージョン)への理解と尊重
ダイバーシティが多様性を受入れることなら、インクルージョンは多様性を活かす考え方。D&Iを理解し尊重する。そして、新しい価値の創造に向かって組織を引っ張っていく役割が次世代リーダーには求められます。

② 傾聴できる
人を引っ張って行くリーダーにとって、傾聴できることは信頼関係の構築に欠かせない大切な要素です。D&Iを尊重し、新しい価値を生み出すのが次世代リーダーの役割。これまで以上に、傾聴の必要性が増すのは当然のことでしょう。

③ 共感できる
多様な価値観への共感。企業の将来ビジョンやパーパスへの共感。共感できる力がなければ、一体感ある組織づくりは難しいでしょう。次世代リーダーには、高い共感力が求められます。共感をもとに自らが行動することで、次世代リーダーに対する共感も育まれるのです。

次世代リーダーの教育研修

人生100年時代となった今、雇用環境や社会構造は大きな変革期にあります。転職は当たり前となり、セカンドキャリア、サードキャリア、その後も…と、自らのキャリアを自律的かつ主体的にデザインしなければならない時代になりました。

このような時代に意識すべきことは、中長期的な「キャリアデザイン」です。キャリアデザインとは、仕事や働き方だけではなく、生き方も含めた人生全体を自律的かつ主体的に「デザイン=構築」することです。キャリアデザイン自体は、新しい概念ではありません。しかし、大きな時代の変化の中で今再び注目されています。

キャリアデザイン研修を効果的に取り入れることで、より自律的かつ主体的な次世代リーダーの育成につながります。それと連動しキャリアパスを見える化することで、優秀な次世代リーダーの離職防止にもつながるでしょう。

リーダー育成における課題

会議

ここまで、リーダー育成について解説してきました。リーダーの育成には様々な課題があり、簡単ではないことがわかります。企業の将来ビジョンやパーパスと、リーダーのベクトルをどう合わせていくのか。さらに、キャリアデザインや離職防止への取組みなど、優秀なリーダーを育成していくにはクリアしなければならない多くの課題が存在します。

特にコンピテンシーについては、育成や評価に活かすこと。そして採用にもコンピテンシーを導入していくことが、リーダー育成における最も重要な課題といえます。多くの課題をクリアするには、まず社員の特性を把握すること。そのためには、「360度評価」といったサーベイを有効活用することが望まれます。

リーダーを育成し強い組織へ「360度評価」の活用

書類

「360度評価」は、リーダーや管理職を対象に、成長や能力開発の促進、人事考課に役立てるために実施されます。従来の「上司が部下を評価」する手法とは異なり、上司に加えて同僚や部下の視点も反映する評価手法です。「360度=全方位」から対象者を評価するため、多面的で客観的なフィードバックが得られ、自律的かつ主体的な意識改革そして行動変容を促します。

リアルワン株式会社は、100万人超にご利用いただく調査・評価の専門会社。360度評価を様々なサービスで支援します。評価項目には、「リーダーシップアセスメント」と「コンピテンシーサーベイ」の2種類をご用意。リーダーシップアセスメントは、リーダーシップやマネジメントに着目した360度評価。評価対象者が、現場でどの程度リーダーシップを発揮し、効果的なマネジメントを行っているかを診断します。またコンピテンシーサーベイは、卓越した成果や行動に結びつく個人特性に着目した360度評価。評価対象者が職務成果につながる行動を取っているかを診断します。

その他、「フィードバックレポート・評価システムの提供・実施のフォロー」など、初めての導入から見直しをご検討されているケースまで、あらゆるニーズに対応します。リーダーを育成し強い組織を作るには、まず社員の特性を知ること。リアルワン株式会社の「360度評価」をぜひご活用ください。

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