採用難が続く現在、人材流出が止まらない事態は組織力を低下させ、企業に多くのデメリットをもたらします。採用活動にくわえ、人材流出を防止するための対策に追われる人事担当者も少なくないでしょう。本記事では人材が流出してしまう原因と引き起こされるリスクを整理するとともに、人材定着に向けた対策、組織の状態を可視化する手法まで解説します。
【本記事で得られる情報】
- 人材流出の原因と引き起こされるリスク
- 人材流出を防ぐための対策
- 組織の状態を可視化する3つの手法
目次
人材流出が止まらない組織に共通する6つの原因

人材流出とは、自社の従業員が他社に流れてしまうことです。若手人材の早期退職が問題視されてきましたが、昨今は戦力の中心として活躍する中堅層においても様々な理由から流出してしまう傾向が見られ、企業はこれまで以上に人材流出を防ぐための対策に迫られています。
まずは人材流出が止まらない状況に陥っている組織において、従業員がどのような不満を抱えているのか、原因を見ていきます。
1.仕事内容への不満
仕事内容についての不満では、状況によって様々な要因が潜んでいます。主なケースを以下に挙げます。
- 会社が目指している方向やビジョンが不明瞭で、仕事にやりがいを感じられない
- 単調な仕事が多く、仕事にやりがいを感じられない
- スキル・ノウハウが身につかず成長実感を得られない
- 経験や能力を発揮できる機会がない
- 希望している職務に就けない
- 裁量権がなく自分の考え・意見が反映されない
- 人によって業務量に差がありストレスを感じる
上記からわかる通り、仕事内容への不満はやりがいやモチベーションの低下によって引き起こされることが多くなっています。多岐にわたる要因が考えられるため、自社の組織で起きている問題を明確にした上で改善策を検討する必要があります。
2.人間関係への不満
人間関係についての不満は、退職に至る大きな原因です。次のようなケースがあります。
- 職場の風通しが悪く、コミュニケーションがあまりない
- 上司との相性が悪い
- ハラスメントがある
- 出産・育児・介護などの事情に配慮してもらえない
人間関係が希薄だったりトラブルがあったりする場合、従業員は心理的に大きなダメージを受けるため、仕事のパフォーマンスが下がり負のスパイラルに入りやすくなります。人間関係の悪化はメンタルヘルスの観点からも深刻な問題であるため、組織の状況を把握した上で早期に対策を講じる必要があります。
3.キャリアパスへの不満
キャリアパスとは、キャリアを形成するための道筋のことです。キャリアパスが示されていないと従業員は自身の将来性に不安を感じ、具体的なキャリアパスを提示している他社へと転職してしまうことがあります。 具体的には次のような事象です。
- 思い描いていた将来像を実現できるイメージを持てない
- 目指す職務・職位に就くためのステップがわからない
- どのような経験・スキルを積み上げればいいのか目標を定められない
裏を返せば、キャリアパスを明確にすることで従業員自身が目指したい像や目標が明確になり、能動的に取り組めるようになります。キャリアパスへの不満が挙がっている場合は、制度設計の検討をおすすめします。
4.人事評価制度への不満
人事評価制度に対して従業員の納得感を醸成できていない場合、モチベーションが著しく低下する原因となります。具体的には以下のようなケースです。
- 業績に貢献しているのに適正に評価されていない
- 上司の評価に偏りがあり不公平感がある
- 評価基準が曖昧・不透明で納得できない
- 評価のフィードバックがない
従来、年功序列が主流だった日本では、人事評価制度の整備が遅れているケースも見られます。従業員の不満が大きくなっている場合は、制度の見直しが必要です。
5.待遇面の不満
給与や手当、インセンティブなどの報酬面に対する不満も人材流出の原因です。次のようなケースがあります。
- 業務内容・責任に対して給与が見合っていない
- 業績を伸ばしても給与が上がらない
- 物価が高騰する中で現在の給与では生活が苦しい
- より給与水準の高い企業や手当が厚い企業に転職したい
とくにノウハウ・スキルを保有している即戦力人材は中途採用市場での評価が高いため、より良い待遇を求めて転職するケースが珍しくなくなりました。報酬の引き上げは簡単に決断できることではありませんが、相場との差が大きい場合は対策が必要といえるでしょう。
6.労働環境への不満
働き方改革によって多様な働き方が推進されている昨今、柔軟な働き方ができなかったり過重労働になっていたりすると、より働きやすい環境がある他社へと流出してしまう原因になることがあります。以下のような不満が代表的です。
- 業務負荷が高すぎてつらい
- 残業や休日出勤が多くてつらい
- ワークライフバランスが乱れて心身ともに疲弊している
- 事情に合った働き方ができない
- 休暇を取得しづらい
これらの問題が起きている場合は、従業員の働きやすさに目を向けて改善を図る必要があります。
人材流出によるリスクとは

人材流出は企業に深刻なリスクをもたらします。一つずつ見ていきましょう。
労働力が不足する
人材が流出した分の労働力を採用等で埋める必要がありますが、すぐに採用活動を行ったとしても自社に合う人材をすぐに確保できるとは限りません。また、採用できたとしても人材育成には期間を要します。労働力が足りない状態が続けば残った従業員の負担が増え、それが新たな不満を生む悪循環になってしまいます。その結果、慢性的な労働力不足に陥るリスクが生じます。
採用・教育コストが増大する
人材流出が止まらない場合、人材を補充して育成するための採用コスト・教育コストがかかり続けることになります。また、人事部門の業務負荷が高まり、本来注力すべき人事戦略にリソースを充てることができなくなるリスクも生じます。
組織全体のモチベーション低下につながる
退職者が後を絶たない状況になると、他の従業員も会社に対する不信感を持ち始めたり、モチベーションが下がったりして、組織全体の雰囲気が悪くなってしまうことがあります。個々のパフォーマンスが落ちるほか、チームの結束力が弱くなるなど組織力の低下が懸念されます。
知識・ノウハウを損失する
人材の流出とともに、従業員が積み重ねてきた知識・ノウハウを失ってしまう恐れがあります。また、長年にわたって自社に貢献してきた人材が退職した場合は顧客とのリレーションシップも失ってしまうことがあり、企業にとっては大きな損失となります。
企業のイメージ低下につながる
離職率の高い企業は社会的な評価が下がりやすく、企業イメージの低下につながります。採用活動にマイナスの影響が出てしまうことにくわえ、場合によっては取引先や顧客の信用低下を招くリスクもあります。
人材流出を防ぐための5つの対策

人材流出を防止するには、自社の問題点を整理した上で有効な施策を検討することが重要です。先述の人材が流出してしまう原因を踏まえ、5つの観点から対策を解説します。
やりがい・達成感を醸成する取り組み
臨床心理学者のフレデリック・ハーズバーグ氏が提唱している二要因理論では、仕事の満足度を高める動機付け要因として「仕事そのもの」「達成感」「成長実感」「承認」「責任」「昇進」などがあるとしています。
従業員のやりがいや達成感を生むには、これらの要因に着目しつつ取り組むとよいでしょう。ただし、動機付けにつながる要因は個々の価値観や経歴などによっても変わるため、組織の状態を見極めた上で施策を検討することが必要です。
以下に取り組み例を挙げるので参考にしてください。
- 責任ある仕事に挑戦する機会を提供する
- キャリアアップの機会を提供する
- 1on1ミーティングを通じて適切なフィードバックを行う
- お互いに褒めあう・感謝しあう承認・称賛の文化を根付かせる
- 従業員満足度調査やエンゲージメント調査を実施する
コミュニケーション活性化の取り組み
コミュニケーションが活発に行われている職場ではモチベーションが安定し、人材が定着しやすい傾向があります。また、従業員同士の情報共有がスムーズに行われることで、業務効率化や生産性向上につながるというメリットも生まれます。
昨今はテレワーク導入によるコミュニケーションロスが問題視されているため、遠隔でも円滑に交流できるようにすることもポイントです。コミュニケーションを活性化する取り組み例を以下に挙げます。
- 社内SNSやチャットツールなどのコミュニケーションツールを活用する
- リフレッシュスペースなど部署を超えて気軽にコミュニケーションできる場所を設ける
- 社内イベントやサークル活動を推進する
- 部門横断の勉強会を実施する
- 経営層や幹部とコミュニケーションできる機会を設ける
能力開発の機会創出
能力開発は従業員の自己実現欲求に働きかけることにくわえ、自社の競争力強化につながるため、積極的に推進したい取り組みです。実施する際は育成計画を立てて、従業員・組織にスキル・ノウハウを定着させることがポイントとなります。
次のような取り組みがあります。
- リスキリング(職業能力の習得)によって業務スキルの高度化を図る
- 集合型研修やeラーニング、従業員同士の勉強会など、学ぶ機会を提供する
- ジョブローテーションや社内フリーエージェント制度など、実践経験を高められる制度を設ける
人事評価制度の見直し
従業員の納得感を生む人事評価制度のポイントは、「自分の仕事や行動が正当に評価されている」と感じられる公正で客観的な評価基準を設定することです。また、管理職の主観によって評価がぶれないようにする、適切にフィードバックするなど運用面での取り組みも必要です。
従来は上司が部下を評価する一方向的な評価制度が一般的でしたが、現在は上司・同僚・部下・他部署など、立場が異なる関係者が多面的に評価を行う360度評価の導入も進んでいます。評価の客観性を維持できることにくわえ、被評価者となる従業員にとっても新たな気づきを得られる機会になるというメリットがあります。
- 公正かつ客観的な評価基準を設定する
- 管理職向けに評価やフィードバックのスキルを高める研修を行う
- 360度評価を実施する
労働環境の見直し
過重労働になっていたり柔軟な働き方ができなかったりすることで人材流出につながっている場合は、労働環境の見直しを急ぐ必要があります。多様な働き方ができる環境を整えるほか、福利厚生を見直して働きやすさを向上させるのも一案です。
以下に具体例を挙げます。
- デジタル化やアウトソーシングなども視野に入れて、業務負荷が適切になるよう調整する
- テレワークや時短勤務、フレックスタイム制など多様な働き方ができる体制を検討する
- 休暇制度の充実と取得促進の仕組みをつくる
- 従業員のニーズが高い福利厚生を検討する
組織の状態を可視化する3つの手法

人材流出が起きないようにするには、まず組織の状態を正しく把握することが第一歩となります。ここでは、組織の課題を的確に抽出できる3つの手法について見ていきます。
従業員満足度調査(ES調査)
従業員満足度調査は、従業員が仕事や組織に対してどの程度満足しているのかを計測する手法です。「ES(従業員満足)なくしてCS(顧客満足)なし」といわれるように、従業員満足度は企業の業績に大きな影響を与えるため、経営指標の一つとして定期的に実施する企業も多くなりました。
具体的には、総合満足度と仕事内容・組織・職場仲間・待遇などの領域別満足度を調査し、自社の問題点を明らかにします。調査結果は制度の見直しや改定、人材育成計画、管理職のマネジメントツールなど多様な場面に活用できます。人材流出が起きてしまう前に、早期の対策を取りやすくなります。
<こんな課題におすすめ>
- 従業員が何に満足・不満を感じているのか正しく把握したい
- 離職率を下げたい
- 働きやすい環境をつくりたい
調査・評価専業「リアルワン」の従業員満足度調査の詳細を見てみる
360度評価
360度評価は、上司・同僚・部下など関わり方が異なる複数の人が職務行動や遂行能力などを評価する手法です。調査内容は管理職向け・一般職向けで変わるのが一般的で、日常業務における行動、人間関係の構築・維持、変革の意識・思考など様々な面から評価します。
360度評価は多面評価と呼ばれることもあり、自己認識と他者から見た自分とのギャップを知ることで成長のヒントを得られる、自信が生まれるなど行動変革の意識を高められる点が大きな特長です。また、人事評価やコンピテンシー、1on1ミーティング、次世代リーダー育成など人材管理の面でも活用されます。従業員のモチベーションを高め、離職を防ぐ効果が期待できます。
<こんな課題におすすめ>
- 従業員のモチベーションや成長意欲を高めたい
- 従業員の行動やスキルを把握したい
- 次世代リーダーを育成したい
エンゲージメント調査
エンゲージメント調査は、企業と従業員の結びつきを数値化する手法です。「人材流出が多い」「個人・チームのパフォーマンスが落ちている」「管理職と従業員の意識に差がある」といった事象は、エンゲージメントが低いケースが多くなっています。
エンゲージメントの定義は様々な解釈がされており調査手法も多種ありますが、思考面・感情面・行動面などから企業と従業員の結びつきをスコア化します。エンゲージメント調査を行うことで組織の問題点が明確になり、従業員のパフォーマンス向上のための有効な施策を検討できるようになります。また、従業員にとっては「自分の意見が反映される」「働きがいが生まれる」といったメリットがあり、組織の活性化につながります。
<こんな課題におすすめ>
- 離職率を下げたい
- 従業員・チームのパフォーマンスを高めたい
- 従業員の自律性を高めたい
調査・評価専業「リアルワン」のエンゲージメント調査の詳細を見てみる
信頼性の高い調査で組織の成長を支援する調査・評価専業のリアルワンとは

人材流出は慢性的な労働力不足を招いて企業の成長を阻むうえに、残った従業員のモチベーションを低下させる、採用・教育コストを増加させるなど負の連鎖を引き起こしてしまいます。離職率を下げるには、まず組織の問題点を正しく把握することが必須です。
調査・評価専業のリアルワンでは、豊富な実績と経験をもとにした信頼性の高い「従業員満足度調査」「360度評価」「エンゲージメント調査」を提供しています。
<リアルワンの特長>
- 確かな理論に基づいた信頼性・妥当性のある調査設計
- 標準項目にくわえ、課題に応じたオリジナル項目の設計も可能
- 組織・人事の専門家としての視点から考察ポイントを提供
- 調査結果の詳細を簡単に集計・分析、ダウンロードできるWeb集計システムを活用
リアルワンでは、業種や規模を問わず、貴社のご要望に合わせた柔軟な対応を持ち味としております。「自社の組織課題を正確に把握したい」「プロの視点から分析・アドバイスしてほしい」といった企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。