昨今、従業員のエンゲージメントを数値として可視化し、継続的な改善の取り組みに役立てることを目的に、エンゲージメントサーベイを実施する企業が増えています。
一方、50人以上の従業員が働く事業所では、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。また、50人未満の事業所でも実施に努めることとされています。
エンゲージメントサーベイの実施を検討する中で、ストレスチェックとの違いが気になる方も多いのではないでしょうか。
この記事では、エンゲージメントサーベイとストレスチェックの概要の説明とともに、両者の違いについて詳しく解説します。
【本記事で得られる情報】
・エンゲージメントサーベイの概要
・ストレスチェックの概要
・エンゲージメントサーベイとストレスチェックの違い
目次
エンゲージメントサーベイとは
人事労務や健康経営の観点でのエンゲージメント(engagement)という用語には、「会社に対する愛着」や「企業と従業員の心の結びつき」など、さまざまな定義があります。
リアルワンでは、エンゲージメントを「1.思考面、2.情緒面、3.行動面の3つの側面において、自己が仕事に対し積極的に関与している状態」と定義しています。
近年では「人的資本経営」の考え方の普及や人材の流動性の高まりに加え、価値観やライフスタイルの多様化が進む中で、エンゲージメントの重要性が高まっています。
エンゲージメントの高い従業員は、企業の業績や生産性向上に寄与するとともに、周囲に良い影響を与えるなど、企業や組織に大きく貢献します。
こうした背景から、従業員のエンゲージメントを数値として可視化するエンゲージメントサーベイ(エンゲージメント調査)の実施を検討する企業が増えています。
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ストレスチェックとは
ストレスチェックの目的は、従業員一人ひとりが自身のストレス状態を正しく把握し、心身の不調を予防することです。
2015年12月から、従業員50人以上の従業員が働く事業所では、年1回のストレスチェックの実施が義務付けられています。また、50人未満の事業所でも実施は「努力義務」とされています。
なお、ストレスチェックの実施は義務として法律に規定されましたが、罰則はありません。しかし、メンタルヘルス不調者の発生時には、事業者の安全配慮義務違反とみなされるリスクがあります。
ストレスチェックでは、旧労働省の研究班が開発した「職業性ストレス簡易調査票」が最も多く使われています。
この調査票は全57項目の質問で構成されており、「職場のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つを同時に評価できます。
エンゲージメントサーベイとストレスチェックの違い
エンゲージメントサーベイとストレスチェックでは、実施する目的のほか、実施者や回答形式、質問項目やデータの取り扱いなどに違いがあります。
エンゲージメントサーベイ | ストレスチェック | |
実施目的 | 従業員のエンゲージメントの可視化、改善策への活用 | 従業員のストレスの把握、心身の不調の予防 |
改善施策の対象 | 会社・組織全体 | 高ストレス者 |
実施者 | 事業者(経営陣、人事部門など) | 医師(産業医)、保健師など |
回答の形式(匿名/実名) | 実施者が任意で選択 | 実名 |
質問項目 | カスタマイズ可能 | 定型的(職業性ストレス簡易調査票など) |
データ取得・分析 | 実施者である事業者がデータを取得・分析できる | 本人の同意なしで事業者はデータを取得・分析できない |
実施目的の違い
エンゲージメントサーベイとストレスチェックは、いずれもストレス低減につながる取り組みです。しかしながら、両者では評価する側面が異なります。
エンゲージメントサーベイでは、従業員が積極的に仕事に関与している状態である「エンゲージメント」を対象としており、ポジティブな側面を評価します。
ストレスチェックは仕事のストレス要因やストレス反応など、ネガティブな側面を評価します。
改善施策の対象の違い
エンゲージメントサーベイは、企業・組織全体を対象として改善施策を検討・立案します。
ストレスチェックは、高ストレスで面接指導が必要と実施者が判断した「高ストレス者」を対象として、その治療につなげるとともに、予防対策を講じます。
実施者の違い
エンゲージメントサーベイは、企業・団体の経営陣や人事部門が実施者となります。
ストレスチェックの実施者は、医師、保健師、一定の研修を受けた看護師・精神保健福祉士に限られます。
回答形式の違い
エンゲージメントサーベイを匿名または実名で行うかの決定は、実施者である企業にゆだねられます。一般的には、匿名性を確保しつつ従業員の率直な意見を収集するため、匿名での実施が推奨されます。
ストレスチェックでは、従業員は個人が特定される形式で回答します。ストレスチェックの結果は要配慮個人情報に当たるため、実施者と実施事務従事者には法律により守秘義務が課せられます。
質問項目の違い
エンゲージメントサーベイでは、質問項目は実施者が任意にカスタマイズ可能です。
ストレスチェックでは、厚生労働省が「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)の使用を推奨しており、実質的に定型となっています。
データ取得・分析に関する違い
エンゲージメントサーベイでは、実施者である事業者がデータの取得と分析をすることが可能です。ただし、個人情報保護の観点から個人が特定されないための配慮が求められます。
ストレスチェックでは、実施者は事業者ではなく医師や保健師などです。結果を本人の同意なく事業者に提供することは禁止されています。
まとめ
エンゲージメントサーベイとストレスチェックは、両方とも従業員のストレス軽減につながる取り組みです。また、いずれにおいても、個人情報保護の観点から匿名性を確保した実施が求められる点で共通しています。
一方で、エンゲージメントサーベイがエンゲージメントというポジティブな側面を評価するのに対して、ストレスチェックではネガティブな側面を評価する点に違いがあります。
今回の記事では、より詳細な違いとして、実施する目的のほか、実施者や回答形式、質問項目やデータの取り扱いなどに相違点があることを解説しました。
最後に、リアルワン株式会社は、調査・評価の専門会社です。匿名性の確保とともに信頼性も担保された「エンゲージメント調査」で従業員の成長と組織の活性化をサポートします。
「組織の今を可視化したい」とお考えの方は、ぜひリアルワン株式会社のエンゲージメント調査をご活用ください。