360度評価は管理職を育てる。組織調査は組織を育てる。

二つの視点を重ね、個人と組織をともに変える

シリーズ|Leadership Development研究から学ぶ、人と組織がともに成長する組織づくり

本シリーズの第1回では、リーダーシップ開発研究の代表的な論文であるDay(2000)をもとに、リーダー個人の育成(Leader Development)と、リーダーシップの開発・育成(Leadership Development)の違いを取り上げました。

リーダー個人の育成では、管理職一人ひとりの知識、スキル、判断力、自己認識などを高めます。

一方、リーダーシップの開発・育成では、個人の能力だけでなく、職場の信頼、対話、協力関係、共通認識などを育て、組織全体でリーダーシップを発揮できる状態を目指します。

第2回では、従業員満足度調査やエンゲージメント調査などの組織調査は、職場の状態を把握し、対話と改善を始めるための出発点であることを説明しました。

第3回では、調査で見えてきた課題について率直に話し合い、行動に移すためには、心理的安全性が必要であることを確認しました。

ここまでの内容を整理すると、個人と組織を育てるためには、次の二つの視点が必要だと分かります。

管理職本人は、どのように行動しているのか。
その行動が行われる職場や組織は、どのような状態なのか。

管理職本人の行動や、周囲からどのように見えているかを把握するのに適しているのが、360度評価です。

職場の関係性、仕事の進め方、制度、組織風土などを把握するのに適しているのが、組織調査です。

360度評価と組織調査を組み合わせる理由は、二つの点数を一つにまとめるためではありません。

管理職個人の行動と、その行動に影響する職場や組織の環境を、重層的に捉えるためです。

本記事では、360度評価と組織調査の違いを確認したうえで、二つの視点を重ねることで何が分かり、個人と組織の改善をどのように進められるのかを解説します。

この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

目次

この記事の要点

  • リーダー個人の育成と、リーダーシップの開発・育成は、対象と育てるものが異なる
  • 360度評価は、主に管理職個人の自己認識と行動改善を支援する
  • 組織調査は、主に職場や組織の関係性、制度、仕事の進め方を把握する
  • 二つを組み合わせる意義は、個人、職場、会社という複数の層から課題を捉えることにある
  • 二つの結果は単純に合算せず、それぞれを読み解いたうえで、改善の仮説を考える
  • 改善行動も、管理職本人、職場、人事・経営の三つに分けて設計する

なぜ、リーダー個人の育成だけでは足りないのか

第1回で紹介したDay(2000)は、リーダー個人の育成と、リーダーシップの開発・育成を区別しました。

リーダー個人の育成は、一人ひとりの管理職の知識、スキル、判断力、自己認識を高める取り組みです。研究では、これを人的資本(Human Capital)の形成として捉えます。

一方、リーダーシップの開発・育成では、信頼、相互尊重、対話、協力関係、共通認識など、人と人との関係の中に蓄積される力を育てます。研究では、これを社会関係資本(Social Capital)の形成として捉えます。

優れた管理職が一人いても、メンバーが率直に話せず、部署間で協力できず、必要な情報が共有されていなければ、組織全体として十分な力を発揮できません。

反対に、職場の関係性が良好でも、管理職が方針を示さず、部下を支援せず、意思決定を先送りしていれば、組織は前に進みにくくなります。

つまり、組織をよりよくするには、

管理職個人の行動を育てること
その行動が生かされる関係性や組織環境を育てること

の両方が必要です。

360度評価と組織調査は、この二つを理解するために、それぞれ異なる役割を持っています。

360度評価と組織調査は、何が違うのか

360度評価と組織調査は、どちらも複数の人から回答を集めるため、似た調査に見えることがあります。

しかし、把握する対象と目的は異なります。

360度評価組織調査
主な対象特定の管理職やリーダー職場、部署、組織全体
主に把握するもの本人の行動と周囲からの見え方職場環境や従業員の認識
回答者上司、同僚、部下、本人など組織で働く従業員
主な目的自己認識と行動改善組織の強み・課題の把握と改善
結果の単位原則として個人原則として集団
中心となる問いこの管理職は、どのように行動しているかこの職場は、どのような状態にあるか

例えば、「部下の成長を支援する」というテーマを考えてみます。

360度評価では、管理職の次のような行動を確認できます。

  • 部下の話をよく聞いている
  • 部下の強みや課題を理解している
  • 成長につながる仕事を任せている
  • 必要な助言やフィードバックを行っている
  • 部下の努力や成果を認めている

一方、組織調査では、次のような職場の状態を確認できます。

  • 上司から必要な支援を受けられている
  • 能力を生かす機会がある
  • 仕事を通じて成長を実感できる
  • 必要なフィードバックを得られる
  • 能力開発の機会が用意されている
  • 新しいことに挑戦しやすい

360度評価は、管理職の具体的な行動に焦点を当てます。

組織調査は、その行動を含めて、職場で働く人がどのような経験をしているかを捉えます。

同じテーマを扱っていても、見ている対象と範囲が異なります。

二つを組み合わせる意義は、個人と組織を重層的に捉えること

360度評価と組織調査を組み合わせる最大の意義は、調査項目や点数を増やすことではありません。

管理職の行動、職場の関係性、会社の制度や環境を、複数の層から捉えられることです。

例えば、360度評価で「部下へ仕事を任せる行動が不足している」と分かったとします。

管理職本人の行動に改善の余地がある可能性があります。

しかし、組織調査を見ると、その職場では役割分担が曖昧で、失敗が許されにくく、管理職自身も上司から細かな指示を受けているかもしれません。

この場合には、管理職本人の行動改善とあわせて、仕事を任せやすい環境や、上位者の関わり方も見直す必要があります。

反対に、組織調査で「上司支援」の評価が低かったとしても、管理職のどのような行動が影響しているかは、調査結果だけでは分かりません。

  • 部下の話を聞いていない
  • 必要な助言をしていない
  • 仕事を任せず、細かく指示している
  • 一部のメンバーにしか関わっていない
  • 多忙で、部下と話す時間を確保できていない

など、さまざまな可能性があります。

360度評価や職場での対話を組み合わせることで、どのような行動や環境を見直すべきか、より具体的に検討できます。

ここでいう「重層的に捉える」とは、問題を複雑にすることではありません。

管理職本人が変えること
職場のメンバーと一緒に変えること
人事や経営が変えること

を分けて考えることです。

二つの結果を考えるためのシンプルな整理

360度評価と組織調査の結果を考える際には、次のような整理が参考になります。

これは現実のすべてのケースを四つに分類するものではありません。個人と組織のどちらに主な改善余地がありそうかを考えるための、シンプルな見取り図です。

管理職の行動職場・組織の状態検討の中心
概ね機能している概ね機能している強みを維持し、ほかの職場にも生かす
改善の余地がある概ね機能している管理職本人の行動改善を中心に支援する
概ね機能している改善の余地がある職場の関係性や制度、仕事の進め方を見直す
改善の余地がある改善の余地がある個人と組織の両面から取り組む

実際の結果は、このようにきれいに分かれないこともあります。

管理職の行動が一部では高く、一部では低いこともあります。職場内でも、立場や経験によって受け止め方が異なることがあります。

また、360度評価と組織調査では、回答者、設問、集計単位が異なります。

したがって、この整理だけで結論を出すのではなく、結果を読み解き、本人や職場のメンバーとの対話を通じて、実際に何が起きているかを確認します。

個人の行動だけを見ても、組織の問題は分からない

管理職の行動には、本人の知識、能力、考え方だけでなく、次のような環境も影響します。

  • 上司からどのような管理を受けているか
  • 仕事を任せられる人材が育っているか
  • 失敗をどの程度許容できるか
  • 業務量に余裕があるか
  • 役割や権限が明確か
  • 部署間で協力できる関係があるか
  • 組織がどのような行動を評価しているか

例えば、360度評価を受けた管理職が、「部下へ仕事を任せる」という行動目標を立てたとします。

しかし、失敗が許されず、管理職がすべての結果責任を強く問われる職場では、細かな確認や指示を減らすことは難しいかもしれません。

「部下の意見を聞く」という目標を立てても、上位方針がすでに細部まで決まっており、現場に判断の余地がなければ、意見を生かすことはできません。

本人の努力は必要です。

ただし、本人の努力で変えられることと、職場や組織の仕組みを変えなければ実現できないことを分ける必要があります。

組織の数値だけを見ても、誰が何を変えるかは決まらない

反対に、組織調査だけで、必要な改善行動まで特定できるとは限りません。

例えば、「情報共有」の評価が低い場合には、次のような背景が考えられます。

  • 管理職が必要な情報を伝えていない
  • 経営や上位組織から情報が届いていない
  • 情報量が多すぎて、重要な情報が埋もれている
  • 部署内の情報共有方法が統一されていない
  • メンバーが情報を確認できていない
  • 部署間の関係が悪く、情報が途中で止まっている

組織調査は、情報共有に問題がありそうだという手がかりを与えてくれます。

しかし、誰が、どの場面で、どのような行動を変えればよいかまでは示しません。

そこで、360度評価の結果や職場での対話を組み合わせます。

管理職の「方針を分かりやすく伝える」「必要な情報を適切な時期に共有する」「部下の理解を確認する」といった行動について、周囲がどのように見ているかを確認します。

管理職の行動に改善余地があれば、具体的な行動改善につなげます。

一方、管理職の行動だけでは説明できない場合には、情報共有の仕組み、部署間の関係、経営からの情報伝達などを検討します。

研究が示す、フィードバック後の支援と職場環境の重要性

360度評価を実施して結果を返却すれば、管理職の行動が自動的に大きく変わるわけではありません。

Smither・London・Reilly(2005)は、360度評価を含む複数の人からのフィードバックに関する24件の継続調査をまとめました。

その結果、上司、同僚、部下から見た行動や成果の改善は、平均すると小さいものでした。

一方、本人が変化の必要性を認識し、結果を前向きに受け止め、実現可能な目標を立て、具体的な行動を取った場合には、改善が起こりやすいと整理されています。

つまり、フィードバックを受け取ること自体ではなく、受け取った後に何をするかが重要です。

また、Blumeら(2010)は、学んだことを実際の仕事へ生かすことに関する89件の研究をまとめました。

その結果、本人の能力や意欲だけでなく、上司や同僚からの支援、実践する機会などを含む職場環境も、学んだことを仕事で生かせるかどうかに関係していました。

これらの研究は、360度評価と組織調査を組み合わせれば、必ず大きな成果が生まれることを直接証明したものではありません。

一方で、

管理職個人へフィードバックするだけでは十分ではない
行動を変えるには、目標、実践、周囲の支援、職場環境が必要である

という考え方を支持しています。

360度評価で本人の行動を確認し、組織調査でその行動を支える環境を確認することには、研究上も合理的な背景があります。

同じテーマを、異なる層から確認する

実務では、360度評価と組織調査の結果を、無理に一つの点数へまとめる必要はありません。

共通するテーマを見つけ、管理職の行動と職場環境の両面から改善の仮説を考えます。

例1.部下の育成

360度評価で確認すること

  • 部下の話を聞いているか
  • 部下の強みや課題を理解しているか
  • 成長につながる仕事を任せているか
  • 必要なフィードバックを行っているか

組織調査で確認すること

  • 上司から必要な支援を受けられているか
  • 能力を生かす機会があるか
  • 成長を実感できているか
  • 能力開発の機会があるか

検討すること

  • 管理職の育成行動に改善余地があるのか
  • 管理職は行動しているが、部下の期待とずれているのか
  • 人員や業務量のため、育成の時間が取れないのか
  • 会社として能力開発の機会が不足しているのか

例2.心理的安全性

360度評価で確認すること

  • 部下の意見を聞いているか
  • 異なる意見を受け止めているか
  • 失敗を一方的に責めていないか
  • 相手によって態度を変えず、公平に接しているか

組織調査で確認すること

  • 意見や懸念を率直に伝えられるか
  • 失敗や問題を共有できるか
  • 周囲へ助けを求められるか
  • メンバー同士に信頼があるか

検討すること

  • 管理職の反応が発言を抑えているのか
  • 管理職だけでなく、同僚同士の関係にも問題があるのか
  • 過去に意見を伝えても何も変わらなかったのか
  • 評価制度や組織文化が失敗を許容していないのか

例3.部署間の連携

360度評価で確認すること

  • 他部署の立場を理解しているか
  • 必要な関係者を巻き込んでいるか
  • 組織全体の視点から判断しているか
  • 部署間の対立を調整しているか

組織調査で確認すること

  • 部署間で必要な情報が共有されているか
  • 他部署と協力できているか
  • 部署間の役割が明確か
  • 全社の方針や優先順位が共有されているか

検討すること

  • 管理職の調整行動に改善余地があるのか
  • 部署ごとの目標が対立しているのか
  • 部署間の情報共有の仕組みが不足しているのか
  • 経営から優先順位が明確に示されていないのか

同じ問題に見えても、必要な対応は異なります。

複数の層から情報を見ることで、個人だけに変化を求めたり、制度だけを変えたりするのではなく、より適切な組み合わせを考えられます。

改善行動を「管理職本人・職場・会社」の三つに分ける

360度評価と組織調査の結果から課題を整理した後は、改善行動を三つの層に分けます。

1.管理職本人が取り組むこと

  • 部下の話を最後まで聞く
  • 会議で自分が話す前に、メンバーへ質問する
  • 仕事を任せる際に、目的、期待、権限を明確にする
  • よい行動を見つけたら、具体的に伝える
  • 定期的に周囲から改善状況について意見を得る

2.職場のメンバーと取り組むこと

  • 会議の進め方を見直す
  • 役割分担を明確にする
  • 仕事上の困りごとを共有する時間をつくる
  • 情報共有の方法を統一する
  • 行動計画の進捗を定期的に確認する

3.人事・経営が取り組むこと

  • 管理職の業務量や役割を見直す
  • 管理職の上司による支援を強化する
  • 評価制度や権限のあり方を見直す
  • 部署間で対立している目標を調整する
  • 管理職向けの学習・育成機会や対話支援を用意する

管理職本人だけに変化を求めず、職場や会社が変えることも明確にします。

二つを組み合わせて活用する6つのステップ

ステップ1.二つの施策の目的をつなげる

360度評価はリーダー個人の育成、組織調査は組織改善というように、目的が完全に分かれていると、結果をつなげにくくなります。

例えば、

リーダーの成長を通じて、メンバーが力を発揮できる職場をつくる

という共通の方向性を設定します。

それぞれの施策の目的は保ちながら、最終的にどのような組織を目指すのかを共有します。

ステップ2.共通するテーマを整理する

二つの調査で、まったく同じ設問を用意する必要はありません。

例えば、次のような共通テーマを整理します。

  • 上司支援
  • 部下の育成
  • 心理的安全性
  • 情報共有
  • 権限委譲
  • 部署内外の連携
  • 方針の共有
  • 承認やフィードバック

設問を無理に一致させるのではなく、関連する管理職の行動と職場環境を整理します。

ステップ3.それぞれの結果を、まず別々に読み解く

最初から二つの点数を合算したり、一方の結果で他方を説明したりしません。

まず、360度評価から管理職本人の強みと課題を読み解きます。

次に、組織調査から職場や組織の強みと課題を読み解きます。

それぞれが何を測っているのかを保ったまま、結果を理解します。

ステップ4.結果を重ねて、改善の仮説を考える

二つの結果を並べて、次の問いを考えます。

  • 両方の結果に共通するテーマはあるか
  • 管理職の行動と、職場の認識は一致しているか
  • 管理職が努力している一方で、職場環境が妨げていることはないか
  • 職場の状態はよいが、管理職個人に将来へ向けた課題はないか
  • 管理職本人だけでは解決できない課題が含まれていないか

ここで考えるのは結論ではなく、対話によって確認するための仮説です。

ステップ5.それぞれに適した場で、背景を確認する

360度評価の個人結果は、本人とのフィードバック面談などで扱います。

組織調査の結果は、職場のメンバーとの対話で扱います。

個人の評価結果を、そのまま職場全体に開示する必要はありません。

それぞれの情報の取り扱いと匿名性を守りながら、共通するテーマについて対話します。

例えば、管理職本人が自分の判断で、

360度評価を通じて、部下の意見を聞くことを今後の課題にしました。
職場の結果でも、意見を伝えにくいという課題が見られます。
どのような場面で話しにくさを感じるか、教えてください。

と、自分の課題を必要な範囲で共有し、周囲へ協力を求めることは考えられます。

ただし、人事が本人の同意なく個人結果を公開してはいけません。

ステップ6.三つの層で行動し、振り返る

管理職本人、職場、人事・経営のそれぞれが取り組むことを決めます。

1~3か月後などに、次の点を確認します。

  • 管理職の行動は変わったか
  • メンバーの受け止め方に変化はあるか
  • 職場の仕事の進め方は変わったか
  • 人事や経営が対応すべき課題は進んでいるか
  • 続けること、修正することは何か

360度評価や組織調査の再実施を待たず、日常の変化も確認します。

二つの結果を組み合わせる際の注意点

1.組織調査を管理職の成績表にしない

組織調査には、管理職の行動だけでなく、経営方針、制度、人員、同僚との関係など、さまざまな要因が影響します。

部署の点数を、そのまま管理職の能力評価に置き換えることは適切ではありません。

2.点数を単純に合算しない

360度評価と組織調査では、測定する対象、回答者、設問、集計方法が異なります。

点数を単純に足し合わせて、総合的な管理職ランキングをつくるためのものではありません。

3.結果の違いを、重要な情報として扱う

360度評価がよく、組織調査が低いこともあります。

これは、どちらかが間違っているとは限りません。

管理職は望ましい行動を取っていても、制度や業務量などの影響で、職場の状態がよくならないことがあります。

反対に、職場の状態がよくても、管理職個人には、将来に向けて伸ばしたい行動があるかもしれません。

二つの結果の違いは、個人と組織のどこに働きかけるかを考えるための重要な情報です。

4.個人が特定される使い方をしない

組織調査は、原則として集団単位で扱います。

少人数部署の結果や自由記述から回答者を特定しようとしてはいけません。

360度評価についても、誰がどの評価をしたのかを探る行動は、制度への信頼を損ないます。

5.課題を増やしすぎない

二つの結果を見ると、多くの課題が見つかります。

しかし、一度に多くのことを変えようとすると、実行できなくなります。

管理職本人が取り組む行動、職場で取り組む課題、会社が取り組む課題を、それぞれ一つか二つに絞ります。

リアルワンが、二つのサービスを提供する理由

リアルワンでは、360度評価と組織調査を、単に異なる二つの調査として捉えていません。

360度評価は、管理職が自分の行動を振り返り、成長するための手がかりを提供します。

組織調査は、管理職を含むメンバーが働く職場や組織の状態を明らかにします。

管理職の行動が職場に影響し、職場の環境が管理職の行動にも影響する以上、リーダー個人の育成と、リーダーシップの開発・育成を完全に切り離すことはできません。

だからこそ、私たちは、

360度評価を通じて、リーダー個人の育成を支援すること
組織調査を通じて、リーダーシップの開発・育成を支援すること

を、一つの成長の流れとして考えています。

ただし、二つの調査を同じ時期に実施すること自体が目的ではありません。

それぞれの結果を正しく読み解き、背景について対話し、管理職本人、職場、人事・経営が行動し、振り返るところまでつなげることが重要です。

私たちが目指しているのは、管理職だけに変化を求めることでも、組織調査の数値だけをよくすることでもありません。

リーダー個人の成長と、組織全体のリーダーシップの向上が、互いに支え合う仕組みをつくることです。

まとめ:個人と組織を、重ねて見る

360度評価は、管理職本人の行動や、周囲からどのように見えているかを把握する手法です。

組織調査は、職場の関係性、制度、仕事の進め方など、管理職を取り巻く環境を把握する手法です。

どちらか一方だけでは、組織で起きていることの一面しか見えない場合があります。

二つの視点を重ねることで、次の問いを考えられます。

管理職本人が変えるべき行動は何か。
メンバーと一緒に変えるべき職場の習慣は何か。
人事や経営が変えるべき制度や環境は何か。

360度評価と組織調査を組み合わせる目的は、管理職をより細かく評価することではありません。

個人と組織の複数の層から現状を理解し、それぞれが担う改善行動を明確にすることです。

360度評価で、管理職の行動を見えるようにする。
組織調査で、職場や組織の状態を見えるようにする。
二つの結果と現場の対話から、個人と組織の両方を育てる。

この流れをつくることが、リーダー個人の育成と、リーダーシップの開発・育成をつなぐことになります。

よくある質問

360度評価と組織調査は、なぜ組み合わせる必要があるのですか

管理職の行動と、その行動に影響する職場や組織の環境を、両方の視点から確認するためです。個人、職場、会社という複数の層から課題を捉えることで、それぞれが取り組むべき行動を考えやすくなります。

360度評価と組織調査は、同時に実施する必要がありますか

必ずしも同時に実施する必要はありません。実施時期が近ければ結果を関連づけて考えやすくなりますが、組織の負担や年間計画を踏まえて設計します。重要なのは、二つの施策の目的と、その後の改善活動をつなげることです。

組織調査の結果を、管理職の人事評価に使えますか

組織調査の数値には、管理職の行動だけでなく、制度、人員、経営方針、同僚との関係なども影響します。そのため、部署の点数だけで管理職の能力や成果を判断することには慎重さが必要です。

360度評価と組織調査の点数は、直接比較できますか

原則として、単純な比較や合算はできません。両者は測定する対象、回答者、設問、集計単位が異なります。関連するテーマを確認し、個人と組織の両面から改善の仮説を考えるために利用します。

二つの結果が一致しない場合は、どう考えればよいですか

どちらかが誤っていると決めつける必要はありません。管理職の行動以外の組織要因が影響している場合や、管理職の意図とメンバーの受け止め方に違いがある場合があります。結果の違いを手がかりに、対話を通じて背景を確認します。

360度評価の個人結果を、職場へ共有してもよいですか

本人の同意なく、個人結果を職場へ公開すべきではありません。本人が自分の改善課題や行動計画を必要な範囲で共有し、周囲に協力を求める方法は考えられます。

二つを組み合わせる際、最初に何をすればよいですか

まず、二つの施策を通じて、どのような人や組織を育てたいのかを明確にします。そのうえで、上司支援、心理的安全性、情報共有、部下育成など、関連するテーマを整理します。

参考文献

  • Day, D. V.(2000)“Leadership Development: A Review in Context.” The Leadership Quarterly, 11(4), 581–613. DOI: 10.1016/S1048-9843(00)00061-8
  • Day, D. V., Fleenor, J. W., Atwater, L. E., Sturm, R. E., & McKee, R. A.(2014)“Advances in Leader and Leadership Development: A Review of 25 Years of Research and Theory.” The Leadership Quarterly, 25(1), 63–82. DOI: 10.1016/j.leaqua.2013.11.004
  • Smither, J. W., London, M., & Reilly, R. R.(2005)“Does Performance Improve Following Multisource Feedback? A Theoretical Model, Meta-Analysis, and Review of Empirical Findings.” Personnel Psychology, 58(1), 33–66. DOI: 10.1111/j.1744-6570.2005.514_1.x
  • Blume, B. D., Ford, J. K., Baldwin, T. T., & Huang, J. L.(2010)“Transfer of Training: A Meta-Analytic Review.” Journal of Management, 36(4), 1065–1105. DOI: 10.1177/0149206309352880

次回予告

次回は、360度評価によって明らかになった課題を、実際の行動変容へつなげる方法を取り上げます。

360度評価を、リーダー個人の成長につなげる――評価・学習・経験・支援を一つの育成プロセスにする

360度評価を一度きりのフィードバックで終わらせず、仕事上の経験、さまざまな学習・育成機会、周囲からの支援、振り返りへつなげる仕組みを解説します。