シリーズ|Leadership Development研究から学ぶ、人と組織がともに成長する組織づくり
本シリーズの第1回では、リーダー個人の育成(Leader Development)と、リーダーシップの開発・育成(Leadership Development)は、対象と育てるものが異なると説明しました。
リーダー個人の育成では、一人ひとりの知識、スキル、判断力、自己認識などを高めます。
一方、リーダーシップの開発・育成では、信頼、対話、協力関係、共通認識などを育て、組織全体でリーダーシップを発揮できる状態を目指します。
第2回と第3回では、組織調査によって組織の状態を把握し、心理的安全性のある場で対話と改善につなげる方法を取り上げました。
第4回では、360度評価と組織調査を組み合わせ、管理職本人の行動と、その行動に影響する職場や組織の環境を、重層的に捉える必要性を確認しました。
では、360度評価によってリーダー本人が自分の強みや課題に気づいた後、どのようにすれば実際の成長につながるのでしょうか。
評価結果を本人へ返す。フィードバック面談を行う。今後の目標を立てる。
これらは重要な取り組みです。
しかし、評価結果を理解し、目標を決めただけで、長年続けてきた行動が変わるとは限りません。
360度評価は、リーダー個人の育成を完了させるものではなく、成長の出発点をつくるものです。
その後に、
自分の現状を理解する
学ぶべきことを決める
仕事の中で新しい行動を試す
周囲から反応を得る
経験を振り返る
次の行動を修正する
という過程を繰り返すことで、評価結果が実際の行動変容へつながっていきます。
本記事では、360度評価を一度きりの評価で終わらせず、さまざまな学習・育成機会や仕事上の経験、周囲からの支援と結びつけ、リーダー個人の成長につなげる方法を解説します。
この記事の要点
- 360度評価は、リーダー個人の自己認識と行動改善を支援する出発点である
- 評価結果を返却するだけでは、継続的な行動変容が起きるとは限らない
- リーダー個人の育成には、集合型の学習だけでなく、オンライン学習、コーチング、メンタリング、仕事上の経験など、さまざまな方法がある
- 育成課題は一つか二つに絞り、日常の仕事で実践できる行動に置き換える
- 本人の努力だけでなく、上司や周囲からの支援、実践する機会、振り返りの仕組みが必要である
- 個人の行動変容が職場の対話や協働を変えることで、リーダーシップの開発・育成にもつながる
360度評価は、何を明らかにするのか

360度評価では、本人の自己評価に加えて、上司、同僚、部下など、複数の立場からリーダーの行動について評価を集めます。
これにより、本人だけでは気づきにくい強みや課題を確認できます。
例えば、本人は「部下の意見をよく聞いている」と考えていても、部下は「話は聞いてくれるが、最後には上司の意見で決まる」と感じているかもしれません。
反対に、本人は自分の説明力に自信を持っていなくても、周囲からは「複雑な状況を分かりやすく整理してくれる」と高く評価されていることもあります。
このような自己認識と周囲の認識の違いを知ることは、リーダー個人の育成において重要です。
360度評価を通じて、次のような問いを考えられます。
- 自分では気づいていなかった強みは何か
- 自己評価と周囲の評価に違いがある行動は何か
- 上司、同僚、部下によって見え方が異なる行動は何か
- 現在の役割で優先して改善すべきことは何か
- 今後さらに伸ばしたい行動は何か
ただし、360度評価で示されるのは、主として現在の行動や、周囲からの見え方です。
結果そのものが、具体的な育成方法や行動の変え方を自動的に教えてくれるわけではありません。
360度評価は、本人に答えを与えるものではなく、何を学び、何を試すかを考えるための手がかりです。
360度評価を実施しても、行動が変わらないことがある

Smither・London・Reilly(2005)は、360度評価を含む複数の人からのフィードバックについて、24件の継続的な調査結果をまとめました。
その結果、フィードバック後の評価の改善は、平均すると小さいものでした。
これは、360度評価に効果がないという意味ではありません。
評価結果を受け取るだけで、すべての人が大きく行動を変えるわけではないということです。
同研究では、本人が変化の必要性を認識し、結果を前向きに受け止め、実現可能な目標を設定し、具体的な行動を取った場合には、改善が起こりやすいと整理されています。
つまり、360度評価の効果は、次のような要素によって変わります。
- 本人が結果をどのように受け止めるか
- 取り組む課題を適切に選べるか
- 具体的な行動目標を立てられるか
- 仕事の中で実践する機会があるか
- 上司や周囲から支援を得られるか
- 実践後にフィードバックを得られるか
- 一定期間後に振り返る機会があるか
360度評価を実施することは、育成プロセスの始まりです。
評価の後に何が行われるかが、成長を左右します。
リーダー個人の育成は、集合型の学習だけではない

日本で「研修」というと、講師から知識を学ぶ集合型のプログラムを思い浮かべることが多いでしょう。
しかし、リーダー個人の育成には、さまざまな学習方法があります。
本記事では、それらをまとめて学習・育成機会と呼びます。
例えば、次のような方法があります。
- 集合型の学習プログラム
- オンライン学習や動画教材
- コーチング
- メンタリング
- 上司との定期的な対話
- 同じ立場のリーダー同士による相互学習
- 実際の経営課題や組織課題に取り組むアクションラーニング
- 部門横断プロジェクトへの参加
- 新しい役割や難しい仕事への挑戦
- 仕事の経験を振り返る機会
- 周囲からの継続的なフィードバック
それぞれに異なる役割があります。
知識や考え方を整理するには、体系的な学習プログラムやオンライン学習が役立ちます。
自分の考え方や行動の癖を見直すには、コーチングや上司との対話が役立ちます。
他者の経験から学ぶには、メンタリングやリーダー同士の相互学習が有効です。
新しい行動を身につけるには、実際の仕事で試す機会が欠かせません。
重要なのは、どれか一つの方法を選ぶことではありません。
360度評価で明らかになった育成課題に応じて、複数の学習・育成機会を組み合わせることです。
学習・育成機会は、どのように選ぶのか

例えば、360度評価で「部下の意見を十分に聞いていない」という課題が見つかったとします。
この場合、傾聴についての知識を学ぶだけでは、十分とは限りません。
次のような学習・育成機会を組み合わせることが考えられます。
- 傾聴や質問方法について学ぶ
- コーチや上司と、自分が話しすぎる場面を振り返る
- 日常の会議で、自分が意見を言う前に部下へ質問する
- 会議後に、部下から短いフィードバックを得る
- 1か月後に、実践できたことと難しかったことを振り返る
「部署間の連携」が課題であれば、異なる方法が必要です。
- 他部署との協働や利害調整について学ぶ
- 部門横断プロジェクトへ参加する
- 相手部署の役割や事情を直接確認する
- 上司や関係者から、調整の進め方について助言を得る
- プロジェクト終了後に、うまくいった点と改善点を振り返る
育成課題によって、必要な学び方は異なります。
学習方法を先に決めてから参加者を当てはめるのではなく、本人が変えたい行動から、必要な学習・経験・支援を選ぶことが重要です。
体系的な学習機会にも効果はある

集合型やオンライン型を含む、体系的なリーダーシップ学習にも重要な役割があります。
Lacerenzaら(2017)は、リーダーシップ育成プログラムの効果を扱った335の調査結果をまとめました。
その結果、体系的な学習プログラムは、参加者の反応や知識の習得だけでなく、職場での行動や成果にも、平均的にはよい影響を与えていました。
ただし、効果の大きさは、設計や実施方法によって異なっていました。
特に、次のような工夫を含むプログラムは、効果が高い傾向にありました。
- 実施前に、参加者や組織の課題を確認する
- 知識を伝えるだけでなく、実際に練習する
- 行動に対するフィードバックを行う
- 一度にまとめず、複数回に分けて実施する
- 複数の学習方法を組み合わせる
- 参加者だけに任せず、進行役や支援者を置く
体系的な学習機会は、リーダー個人の育成に有効な手段です。
ただし、それだけで育成が完了するわけではありません。
学んだことを、どの仕事で実践するのか。
誰が実践を支援するのか。
いつ、どのように振り返るのか。
そこまで設計することで、学習内容が日常の行動につながりやすくなります。
経験すれば、必ず成長するわけではない

リーダーは、実際の仕事上の経験から多くを学びます。
新しい部署の責任者になる。これまでより大きな組織を担当する。部門横断プロジェクトを進める。業績が低迷している組織の立て直しに取り組む。
こうした難しい仕事は、これまでの考え方や行動を見直す機会になります。
しかし、難しい仕事を経験すれば、誰もが自動的に成長するわけではありません。
DeRue・Wellman(2009)は、60人の管理職が経験した225件の仕事上の経験を調べました。
その結果、挑戦の程度が高い経験は、リーダーシップに関するスキルの向上と関係していました。
一方で、難しさが増すほど、際限なく成長が大きくなるわけではありませんでした。
また、周囲からフィードバックを得られる環境は、難しい経験から学ぶことを助けていました。
難しい仕事を任せるだけでは、本人が余裕を失い、目の前の問題を処理するだけで終わることがあります。
失敗を隠したり、自分のやり方に固執したりすれば、同じ経験をしても学びは深まりません。
経験を成長につなげるには、次のような条件が必要です。
- 何を学ぶための経験なのかが明確である
- 現在の能力より少し難しい課題である
- 必要な権限と資源がある
- 上司や周囲へ相談できる
- 行動に対するフィードバックを得られる
- 経験を振り返る機会がある
- 次に試す行動を決められる
重要なのは、難しい仕事を与えることではありません。
仕事上の経験から学べるように支援することです。
360度評価から成長につなげる6つのステップ

360度評価を起点としたリーダー個人の育成は、次の六つのステップで進めることができます。
結果を理解する
育成課題を決める
学習・育成機会を選ぶ
仕事の中で実践する
周囲から反応を得る
振り返り、次の行動を修正する
ステップ1.結果を多面的に理解する
360度評価の点数だけを見て、すぐに課題を決めないようにします。
次の点を確認します。
- 自己評価と周囲の評価に違いがある行動
- 上司、同僚、部下で評価が異なる行動
- 複数の回答者から共通して指摘されていること
- 自分では意識していなかった強み
- 現在の役割や組織課題との関係
- 組織調査に表れている職場の状態との関係
例えば、360度評価で「部下の意見を聞く」という行動が低く評価され、組織調査でも「意見を伝えにくい」という傾向が見られる場合は、優先して確認したい課題だと考えられます。
一方、360度評価の結果が低くても、回答者の立場や、特定の状況によって見え方が異なっている可能性があります。
結果を正しい、間違っていると急いで判断せず、具体的な場面や行動を確認します。
ステップ2.育成課題を一つか二つに絞る
360度評価では、多くの強みや課題が示されます。
しかし、すべてを同時に変えようとすると、実践する行動が曖昧になります。
育成課題を選ぶ際には、次の点を確認します。
- 現在の役割にとって重要か
- 周囲や組織への影響が大きいか
- 本人が変える必要性を理解できるか
- 日常の仕事で実践できるか
- 一定期間後に変化を確認できるか
例えば、
コミュニケーション能力を高める
では、範囲が広すぎます。
会議で自分の意見を述べる前に、メンバーへ質問する
部下との対話では、途中で結論を示さず、最後まで話を聞く
というように、具体的な行動へ置き換えます。
ステップ3.課題に合った学習・育成機会を選ぶ
課題を決めた後に、必要な学び方を選びます。
| 育成したいこと | 活用できる学習・育成機会 |
|---|---|
| 知識や考え方を理解する | 集合型プログラム、オンライン学習、書籍・動画 |
| 自分の考え方や行動を見直す | コーチング、上司との対話、内省 |
| 他者の経験から学ぶ | メンタリング、リーダー同士の相互学習 |
| 新しい行動を試す | 日常業務、プロジェクト、役割変更 |
| 協働や調整を学ぶ | 部門横断プロジェクト、アクションラーニング |
| 行動を修正する | 上司、同僚、部下からのフィードバック |
一つの方法だけで、すべてを学ぶことは困難です。
例えば、部下育成について知識を学び、職場で実践し、部下から反応を得て、上司と振り返るというように、複数の方法をつなげます。
ステップ4.日常の仕事を実践の場にする
学んだことは、仕事の中で試して初めて行動に変わります。
例えば、「仕事を任せる」という課題であれば、
- 次の案件で、部下に計画作成を任せる
- 目的と期待する成果を伝え、進め方は本人に考えてもらう
- 任せる権限の範囲を明確にする
- 途中で細かく介入せず、確認する時期を事前に決める
といった形で実践します。
「部署間の連携」が課題であれば、
- プロジェクトの初期段階から関係部署を招く
- 相手部署の目標や事情を確認する
- 双方の役割と意思決定方法を明確にする
- 意見が対立した際の調整方法を決める
という行動を試します。
上司や人事は、本人に目標を立てさせるだけでなく、実践できる仕事や役割を用意する必要があります。
ステップ5.周囲から短いフィードバックを得る
次回の360度評価まで、周囲から何も意見を得られないのでは、改善の方向が合っているか確認できません。
日常の中で、短いフィードバックを得る機会をつくります。
例えば、本人から周囲に次のように尋ねます。
最近、以前より話を聞けるようになっていますか。
仕事の任せ方で、分かりにくいところはありますか。
会議で意見を出しやすくなったでしょうか。
続けた方がよい行動と、変えた方がよい行動を教えてください。
大がかりな評価制度を設けなくても、月に一度、上司や部下、同僚から短い意見を得ることで、行動を調整できます。
このフィードバックは、本人の成長を支援するためのものです。
回答者を特定して責任を問うことや、周囲の意見をそのまま人事評価に用いることが目的ではありません。
ステップ6.振り返り、次の行動を修正する
一定の間隔で、次の点を振り返ります。
- 何を実践したか
- どのような結果になったか
- うまくいったことは何か
- 想定と違ったことは何か
- 周囲はどのように反応したか
- 自分のどのような考え方や癖が影響したか
- 職場環境に妨げられたことはあるか
- 次回は何を変えるか
振り返りは、自分を責めるためのものではありません。
うまくいかなかった原因をすべて本人の能力不足に求めず、状況、周囲との関係、制度、仕事の進め方なども含めて考えます。
一度決めた行動目標が適切でなかったと分かれば、修正します。
成長とは、最初に決めた目標をそのまま達成することだけではありません。
実践から得た情報をもとに、より適切な行動を選べるようになることも成長です。
本人・上司・周囲・人事が、それぞれ役割を持つ

リーダー個人の育成は、本人だけの責任ではありません。
| 担い手 | 主な役割 |
|---|---|
| 本人 | 結果を理解し、課題を決め、行動を試し、振り返る |
| 上司・支援者 | 挑戦する機会を与え、相談に乗り、助言する |
| 同僚・部下 | 行動の変化について率直な反応を返す |
| 人事・組織 | 評価、学習機会、経験、支援、振り返りの仕組みを整える |
本人に「成長してください」と求めるだけでは、育成は進みません。
上司は、本人の育成課題に合った仕事や役割を任せ、必要な権限と資源を与える必要があります。
同僚や部下は、本人が新しい行動を試したときに、どのように受け止めたかを返す役割を持ちます。
人事は、360度評価、学習・育成機会、配置、仕事上の経験、振り返りが、別々の施策にならないように設計します。
また、本人の努力だけでは行動を変えられない場合には、組織調査などを通じて、業務量、制度、職場の関係性、上位者の支援といった環境も確認する必要があります。
リーダー個人の育成を妨げる5つの対応

1.360度評価の結果を返して終わる
結果を理解し、育成課題を決めても、実践の機会や振り返りがなければ、行動変容にはつながりにくくなります。
結果返却後の支援まで設計します。
2.学習機会への参加を育成の完了とする
集合型プログラムやオンライン学習へ参加した時点で、本人が成長したと判断してはいけません。
学んだことを、どの仕事で試し、どのように振り返るかまで確認します。
3.育成課題を増やしすぎる
多くの課題を同時に与えると、本人は何から手をつければよいか分からなくなります。
現在の役割で重要な課題を一つか二つに絞ります。
4.難しい仕事を任せるだけで支援しない
挑戦的な仕事は、成長の機会になります。
一方で、権限、情報、相談相手、フィードバックがなければ、本人を疲弊させるだけになることがあります。
挑戦と支援を組み合わせます。
5.一度の失敗で以前の方法へ戻す
新しい行動を試した直後は、うまくいかないこともあります。
一度の失敗で「やはり任せられない」と判断すると、本人は挑戦しなくなります。
何がうまくいかなかったのかを確認し、次の方法を考えます。
リーダー個人の育成を、リーダーシップの開発・育成へ広げる

ここまで、360度評価を起点としたリーダー本人の成長を中心に考えてきました。
しかし、個人の成長だけで終わらせず、職場や組織へ広げることも重要です。
例えば、ある管理職が360度評価を通じて、「部下の意見を十分に聞いていない」という課題に気づいたとします。
本人が会議で質問を増やし、メンバーの意見を最後まで聞くようになった結果、発言が増え、仕事上の問題が早く共有されるようになれば、個人の行動変容が職場の関係性の変化へ広がっています。
また、本人が育成課題を必要な範囲で周囲に伝え、
360度評価を通じて、皆さんの意見を十分に聞かずに判断することがあると気づきました。今後は、会議で自分の意見を述べる前に、皆さんから意見を聞きます。変化を感じた点や、まだ改善が必要な点があれば教えてください。
と協力を求めれば、育成は本人だけの活動ではなくなります。
周囲も、本人の行動変容を支援し、フィードバックする役割を持つようになります。
さらに、その職場でうまくいった取り組みを、ほかのリーダーや職場と共有すれば、個人の学びを組織全体へ広げられます。
360度評価で、自分の課題に気づく
新しい行動を仕事の中で試す
周囲が反応やフィードバックを返す
職場の対話や仕事の進め方が変わる
学びがほかのリーダーや職場にも共有される
この流れによって、リーダー個人の育成が、リーダーシップの開発・育成へつながっていきます。
リアルワンが、360度評価の「後」を重視する理由

リアルワンでは、360度評価の結果を本人へ返却することだけを、リーダー個人の育成とは考えていません。
360度評価は、自分の強みや課題、周囲への影響に気づくための重要な機会です。
しかし、その後に、
- 取り組む課題を絞る
- 課題に合った学習・育成機会を選ぶ
- 職場で新しい行動を試す
- 上司や周囲から支援を得る
- 行動についてフィードバックを受ける
- 振り返り、次の行動を修正する
という過程がなければ、気づきは日常の行動へ定着しにくくなります。
また、本人が努力しても行動を変えにくい場合には、組織調査を通じて、職場の関係性、業務量、制度、上位者の支援なども確認する必要があります。
私たちが目指しているのは、360度評価を実施したという事実をつくることではありません。
360度評価による気づきを、学習、経験、支援、振り返りへつなぎ、リーダー本人が仕事の中で成長し続けられる仕組みをつくることです。
まとめ:360度評価は、成長の始まりである

360度評価は、リーダー本人が自分の行動や、周囲に与えている影響を理解するための有効な手法です。
しかし、結果を返却し、目標を立てただけでは、行動が継続的に変わるとは限りません。
リーダー個人の育成には、次の流れが必要です。
360度評価で現状を理解する
育成課題を絞る
必要な学習・育成機会を選ぶ
仕事の中で新しい行動を試す
周囲からフィードバックを得る
振り返り、次の行動を修正する
学習・育成機会は、集合型のプログラムだけではありません。
オンライン学習、コーチング、メンタリング、仕事上の経験、周囲との対話など、さまざまな方法があります。
重要なのは、360度評価で明らかになった課題と、学習方法、実践する仕事、周囲からの支援を、一つの育成プロセスとしてつなげることです。
自社の360度評価は、結果を返却した時点で終わっていないでしょうか。
本人が取り組む行動は、具体的になっているでしょうか。
その行動を仕事の中で試す機会があるでしょうか。
上司、同僚、部下から、変化について率直な反応を得られるでしょうか。
必要なのは、一度きりの評価や学習機会ではありません。
360度評価を起点に、リーダーが仕事の中で挑戦し、振り返り、周囲とともに成長し続けられる仕組みです。
よくある質問

360度評価を実施すれば、リーダーの行動は変わりますか
360度評価は、自分の強みや課題に気づくために役立ちます。ただし、結果を返却するだけで行動が大きく変わるとは限りません。育成課題の具体化、学習・育成機会、仕事での実践、周囲からの支援、振り返りを組み合わせる必要があります。
リーダー個人の育成には、どのような方法がありますか
集合型プログラム、オンライン学習、コーチング、メンタリング、上司との対話、リーダー同士の相互学習、部門横断プロジェクト、難しい仕事への挑戦、継続的なフィードバックなどがあります。
360度評価後には、何をすればよいですか
結果を理解したうえで、育成課題を一つか二つに絞ります。その課題に合った学習・育成機会を選び、日常業務で実践する行動を決めます。その後、上司や周囲から短いフィードバックを得て、一定期間後に振り返ります。
難しい仕事を任せれば、リーダーは成長しますか
挑戦的な仕事は成長の機会になりますが、仕事を任せるだけでは十分ではありません。経験の目的、必要な権限、相談相手、周囲からのフィードバック、振り返りを組み合わせることが重要です。
育成課題は、いくつ設定すべきですか
一度に取り組む課題は、一つか二つに絞ることが望まれます。課題が多すぎると、日常業務で実践する行動が曖昧になります。
360度評価は、どのくらいの間隔で繰り返すべきですか
組織の目的や負担によって異なります。次回の360度評価までの間にも、上司、同僚、部下から短いフィードバックを得ることで、行動の変化を確認できます。再評価だけに頼らず、日常的な振り返りを設けることが重要です。
リーダー個人の育成は、リーダーシップの開発・育成にどうつながりますか
リーダー本人の行動が変わることで、周囲との関係、職場の対話、協力の仕方が変わります。本人の学びを周囲と共有し、職場で支援することで、個人の成長を組織全体へ広げられます。
参考文献
- Day, D. V., & Dragoni, L.(2015)“Leadership Development: An Outcome-Oriented Review Based on Time and Levels of Analyses.” Annual Review of Organizational Psychology and Organizational Behavior, 2, 133–156. DOI: 10.1146/annurev-orgpsych-032414-111328
- DeRue, D. S., & Wellman, N.(2009)“Developing Leaders via Experience: The Role of Developmental Challenge, Learning Orientation, and Feedback Availability.” Journal of Applied Psychology, 94(4), 859–875. DOI: 10.1037/a0015317
- Smither, J. W., London, M., & Reilly, R. R.(2005)“Does Performance Improve Following Multisource Feedback? A Theoretical Model, Meta-Analysis, and Review of Empirical Findings.” Personnel Psychology, 58(1), 33–66. DOI: 10.1111/j.1744-6570.2005.514_1.x
- Lacerenza, C. N., Reyes, D. L., Marlow, S. L., Joseph, D. L., & Salas, E.(2017)“Leadership Training Design, Delivery, and Implementation: A Meta-Analysis.” Journal of Applied Psychology, 102(12), 1686–1718. DOI: 10.1037/apl0000241
- Blume, B. D., Ford, J. K., Baldwin, T. T., & Huang, J. L.(2010)“Transfer of Training: A Meta-Analytic Review.” Journal of Management, 36(4), 1065–1105. DOI: 10.1177/0149206309352880
次回予告
最終回では、これまで取り上げてきた、リーダー個人の育成、組織調査、心理的安全性、360度評価、職場での実践を一つにつなげます。
人と組織がともに成長する仕組みとは――リアルワンが目指すリーダーシップの開発・育成
個人と組織を別々に育てるのではなく、相互に影響しながら成長を続けられる仕組みについて考えます。

