2023.03.17
従業員満足度調査(ES調査)
「組合員の声」を活かした職場環境の改善に向けて
~トーハン従業員組合のES活用術~
“出版業界の商社”である株式会社トーハン。1949年の創業以来、本が読者に届くまでに必要な、出版社と売場を繋ぐ出版流通の要として業界をリードする存在です。
2022年、トーハン従業員組合はリアルワンの従業員満足度調査(ES調査)を利用し、約10年ぶりとなる組合員の意識調査を実施しました。
これまで企業の人事部門などからの依頼が圧倒的に多かったES調査を、今回なぜトーハン従業員組合が主導するかたちで導入したのでしょうか。
ES調査導入への経緯や目的、これからの展望について、トーハン従業員組合執行委員長の岡崇文様と書記長の杉山啓太様にお話をうかがいました。
<インタビュイー>
トーハン従業員組合
執行委員長 岡崇文様
書記長 杉山啓太様
<インタビュアー>
リアルワン株式会社
カスタマーサクセスチーム マネージャー 鈴木恵美
セールスチーム 荒木美佐緒
まず、トーハン従業員組合のおもな活動内容を教えてください。
- 岡
我々の組合は、職場代表として選ばれた15名が執行委員を務めています。おもな活動は、就業規則の変更やパパ育休の開始など、社会や時代の変化に合わせて新しい方法が導入された際、会社側の意図の確認や法律などと照らし合わせるなどした上で、労使協定を結ぶことです。
また、自分たちの職場環境をより良いものに改善するため、会社側と組合員、組合員同士を“つなぐ”活動に力を入れています。加えて、弊社は本を扱う会社なので、児童養護施設への図書寄贈や読み聞かせ会など、社会貢献活動も行っています。
会社側は“経営効率をどう上げるか、組織をどう効率化するか”という視点が中心にあると思いますが、我々は、会社と組合員のパイプ役として、「働きやすい職場にするには」「もっと楽しく仕事をするには」ということを組合員たちと考えたり、「こんな不安や課題を感じている人が多いですよ」といった率直な声を会社側に伝える立場だと思っています。
今回、組合主導で従業員満足度調査(ES調査)を導入された理由や経緯を教えてください。
- 杉山
創業から70年を超えたいま、社会情勢や会社の方針も大きく変化し、株式会社トーハンは第二創業期ともいうべき時代を迎えています。2021年5月には本社が新社屋に移転し、全国にある支店も建て替えや移転が相次ぎ、従業員の働く環境や働き方は様変わりしました。そのような中で、従業員たちがどのように考え、どのような課題をもっているのかを客観的に把握する必要があると考えました。
今回、リアルワンさんのES調査を導入した目的は2つあります。
1つ目は、従業員の意識や考えを知り、それを活かして従業員組合が今後、会社や一緒に働く仲間たちに対し、どういった働きかけをしていくかを見つけるための第一歩として。
2つ目は、より働きやすい環境づくりに向け、会社へ働きかける方法の一つとして。
これまで組合として、定期的な意識調査は実施していませんでした。これからは従業員の心の健康診断として、継続的にこのような意識調査を行う必要があると考えています。実際に、調査結果に対する社長や人事部の関心はとても高く、従業員の声を伝えるためのよい材料になったと感じています。
- 岡
トーハン従業員組合の執行委員は専従でなく、全員が通常の業務と兼業しており、任期は5年程度です。今後、メンバーが代わっても継続的に調査を実施していくには、多くの実績やノウハウをもつリアルワンさんのES調査がベストな選択だと思い、導入を決めました。
弊社のサービスを選んでいただき、嬉しい限りです。では次に、ES調査の結果についてお聞かせください。想定とのギャップや気づきなどはありましたか?
- 岡
まず、90%以上という回答率の高さに驚きました。多くの組合員が調査の趣旨を理解し、働き方に関心をもっていることを実感しました。本社の移転などで環境が変わったことに対し、多くの人の満足度が高かったのは、想像通りだと感じました。
- 杉山
前回、このような意識調査を行ったのは約10年前で、当時は紙によるアンケートでした。久しぶりということもあり、どんな結果が出るのかあまり予想ができなかったのですが、今回の調査結果をみると、年代や属性による意識のバラつきが少なかったことは意外な発見でした。
- 岡
質問の中に「自分の仕事は会社から感謝されていると感じる」という「待遇の領域」にまつわる項目があり、これに対する満足の割合が低く、全国平均と比べても下回っていることが分かりました。日頃あまり意識していなかった切り口でしたが、結果が出てみると確かに実感と重なる部分で、事実として納得感を持って受け止めることができました。
- 杉山
確かに、この数字はこれからの課題として、大きな気づきになりました。「感謝」といっても、会社の待遇面への感謝や従業員同士の感謝、取引先からの感謝など、人によってさまざまなとらえ方があると思います。こうした一つひとつの感謝への満足度を上げるために、今後どのような活動ができるのか、具体的に検討していきたいと考えています。
- 岡
また、今回の調査結果では「経営者が組合員に直接、会社のビジョンを伝えている」という項目の数値が高かったのも印象的でした。確かに近年、会社の方針や考え方を、従業員に向けてもっと明確に打ち出していこうという動きがあり、その結果がこんなに如実に現れるんだな、と。従業員それぞれが、自分たちの会社がどこに進もうとしているかを把握し、関心を抱いているのがよくわかりました。
今回の調査結果を、組合員の皆さまにどのように周知されましたか? また、結果を踏まえて会社側とどのようなコミュニケーションを図っていかれたのでしょうか?
- 岡
各職場の代表が集まる職場集会で、今回の調査結果のサマリー版というか、我々が少し解釈を加えたものを報告しました。また、組合員用の社内向けHPに調査結果を公開し、それぞれが自由に確認できるようにしています。
社長や人事部には、定期的に行われる労使協議の場で、調査結果を伝えました。これまで我々が社内的に独自アンケートをとり、組合員の状況を伝えていましたが、それより外部の専門機関のES調査はかなりインパクトがあり、関心の高さが伝わってきました。現在は、この結果を踏まえて、どのような施策が必要なのかを会社側や組合員の代表者たちと話し合っているところです。
現在のフェーズについて、進行状況はいかがでしょうか。お困りのことや今後への手ごたえ、変化の兆しなどがあればお聞かせください。
- 岡
導入を経て、想像以上によかったと感じているのは、会社側が大きな理解を示してくれたことと、組合員にも趣旨が伝わり、多くの協力を得たことです。今回の調査を一過性のインパクトで終わらせず、継続的に、具体的なアクションにつなげていくという点については、正直苦労しているところはありますね。たとえば、他社の成功事例を取り入れるのが一番近道だとしたら、その事例を集めるにはどうしたらいいかなど、いろいろ考えている段階です。
- 杉山
変化の兆しという点では、上半期の賞与の時期に、経営層から「日ごろ生産性を高めてくれていることに感謝しています」と従業員向けにメッセージがありました。ES調査の結果を踏まえて、「感謝」ということばを使っているのがわかり、会社全体に“気持ちよく働きたい”という空気感が生まれているのを明確に感じました。
- 岡
調査によって具体的なテーマや課題が浮かび上がったことで、労使協議の回数が増え、“もっと話し合いましょう”という良い雰囲気ができているのを実感します。これは大きな変化ですね。
社内での具体的な取り組みや、組合員の方々の意識はいかがでしょうか。
- 岡
社内で自然に「感謝の気持ち」を体現できるように、いろいろアイディアを出し、試しているところです。まずは身近なところで、組合員同士が感謝を伝え合えるように、「THANK YOU CARD企画」をスタートしました。会社の各エリアにカードを設置し、さまざまな場面で感謝を伝えたいときに使ってもらえるよう、アナウンスしています。
また、他社の従業員組合同士の交流機会があるので、そういう場で今回のES調査の結果を話し、他社の方々に「感謝を伝えるために、御社ではどのような取り組みをしていますか」とお話を伺い、よい事例を取り入れていきたいと思っています。
今後の展望や次回の満足度調査に期待すること、組合員様へのメッセージなどをお聞かせください。
- 杉山
次回の調査は、2年後または3年後に実施したいと考えています。継続することで、組合員が会社に対して意見を出せる機会を増やし、伝えやすい雰囲気づくりにつなげていきたいと思います。
- 岡
我々の活動の原点は、自分たちで自分たちの職場を良くしていくことです。そのために、組合員一人ひとりの声を把握し、集めるための一つの手段が、今回の意識調査だと思っています。継続していくにあたり、ぜひみなさんに忌憚のない意見をいただき、協力をお願いしたいと思っています。
最後になりましたが、導入から調査実施、納品物に至るまで、リアルワンのサービスをご利用いただいた感想やご意見をお聞かせください。
- 杉山
調査を始めるにあたって、事前にサンプル文を提供いただいたり、効率的にスケジュールを組んでいただいたりと、全面的にサポートしてくださったおかげで、スムーズな導入ができました。結果的に予想をはるかに超えた回収率を達成し、多くの声を集めることができ、本当に感謝しています。これからも継続してお願いしたいと思っています。