2021.12.27
従業員満足度調査(ES調査)
「視野が広がった」「調査結果活用までのスピード化が実現」
リアルワン×エス・ジー ES調査活用のヒケツ
株式会社エス・ジーは、お客様が本当に欲している「モノ・コト」を、ITシステムを使って提供するシステムインテグレーターです。「顧客と社員に信頼される企業」を基本理念に、長年に渡って多くの企業との厚い信頼関係を築いてきました。
2020年には、さらなる企業価値の向上を目指して、社内にES調査プロジェクトチームを立ち上げ。チームを中心に調査内容の検討・実施を行いました。中でも、リアルワンとの調査結果を元にした分析や改善方針の共同検討は、様々な面で新しい示唆を与えてくれたと言います。
今回は、ES調査を外部委託されようとした経緯、導入前後のプロセス、社内を巻き込む調査結果の活用法など、調査において中心的な役割を担った曽我瑞枝様、村木裕介様、松永卓治様、大久保智寛様の4名にお話をうかがいました。
Interviewee:
曽我 瑞枝 氏 (株式会社エス・ジー 技術支援グループ グループマネージャー)
村木 裕介 氏 (株式会社エス・ジー ソフトウェア第三事業部 グループマネージャー)
松永 卓治 氏 (株式会社エス・ジー ソフトウェア第五事業部 部長)
大久保 智寛 氏 (株式会社エス・ジー ソフトウェア第三事業部 ユニットリーダー)
Interviewer:
青山 愼 (リアルワン株式会社 代表取締役)
荒木 美佐緒 (リアルワン株式会社 従業員満足度調査・360度評価 担当)
<ポイント>
・内製から外部委託へ、ES調査導入で「社員の忌憚のない意見」が見えた
・ポイントは”共に”作り上げられるかどうか、ES調査導入のプロセス
・徹底した現場主義の風土が、社内主導のES調査を後押し
・調査で測るのは「居心地の良さ」。仕事以外の側面の評価が可能に
・今後は施策の整理とテレワークの影響把握にもES調査を活用したい
従業員満足度調査(ES調査)を導入されたきっかけをお聞かせください。
- 曽我
品質マネジメントシステム(QMS)(※1)の認証を取得するために勉強した際に、「社員や会社の質の向上が重要である」と知りました。会社の質を向上させるにはお客様や社員ファーストの姿勢が求められる中で、まず自社の社員を大切にするために、現場の生の声を聞いて社内の改善を進めていくことにしました。ES調査(※2)はそのために必要だという判断です。
- 村木
エンジニアの会社なので、社内でES調査を行ってデータ分析する知見を得る目的もありました。QMS品質管理委員会から発案があり、自分とあとは改善業務を一緒にやっていた数名のメンバーで5〜6年前から着手しました。今回が3回目で、弊社独自で過去に2回実施しています。
調査を自社から外部委託に変更した理由は、社内事情が大きいです。社内のメンバーだけで実施した際に最も多かったのが、元のデータにはアクセスしないと言っても、自由記入欄や他の回答内容をクロス集計(※3)すれば「個人が特定できるのではないか」という声です。これは、どんなにこちらから説明しても不安を払拭できないため、悩みの種でした。その結果、やはり外部に依頼する方が実施する私たちも楽ですし、安心感を担保できた上で、忌憚の無い意見がもらえるならいいよねというところです。
当初内製されていた時や、弊社にご依頼いただいた時など、いずれもES実施に向けてはどのような思いや期待感をお持ちでしたか。
- 曽我
私も時々参画していましたが、社内でやっていた時は業務負荷がとても高かったです。その割には社員側は少し懐疑的というか、不安を持っている。そうであれば、弊社とは全く関係ない方にお願いして、さらに他社のやり方、調査の行い方など様々なアドバイスまでもらえると聞いて、期待してお願いしました。
- 村木
100%日常業務を持った上でES調査も行っていました。そもそもアンケートも手でやるわけにいかないので、システムをちゃんと構築して、設問の設計からレポート、分析まで全部大変でした。
- 大久保
調査結果を集計した後に経営陣に伝える際も、それらしい言葉で伝えようとしても、専門知識が少ないためそこも苦労しました。
(株式会社エス・ジー 技術支援グループ グループマネージャー 曽我 瑞枝氏)
弊社のES調査導入にあたっては、どのようなプロセスを踏まれましたか。
- 村木
まず、内製でやっていた頃のコストを工数から試算して、外部に頼んだ場合と比較しました。
あとはやはり調査内容です。弊社も既に実施経験があったので、一緒に取り組めるようなところにお願いしたいと思いながら、10社程度をピックアップしました。
リアルワンさんは実際にお会いした際に、「プランはないけどやってみましょうか」など、相性とノリの良さを感じました(笑)。私たちがやってきたことにもとても興味を持ってくださって、「こうすればもっと良い結果になるのでは」と、初めからディスカッションできたことが決め手です。最終的に経営陣には、「リアルワンさん一択です」と報告しました。
その上で、社長からもその内容を年1回の全体会議の場で発表いただきました。あとは、もう少し詳細な内容を書いたメールを全社員に流して理解を求めました。
(株式会社エス・ジー ソフトウェア第三事業部 グループマネージャー 村木 裕介氏)
あの時のディスカッションは、僭越ながら“一緒に作り上げる”感覚がありました。社長をはじめ、社内の反応はいかがでしょうか。
- 大久保
内製をしていた時に比べて、個人の特定を心配する声は聞かれなくなって、そこは狙い通りで安心してお任せできています。また、自由記入欄も、より突っ込んだ意見が社員から返ってくるようになったと思います。
- 曽我
社長は全ての回答に目を通して、自由記入欄に書かれた“耳の痛い指摘”には悩んでいました。
- 村木
私が言うのもなんですが、社長は真摯な対応でした。ボトムアップで出た話ですし、費用面も従来よりもかかることになりますが、止めるのではなくむしろ応援していただきました。
これも、弊社に元々あった親しみやすい風土のおかげかなと思います。トップダウンではなくサーバントリーダーシップ(※4)が、私たちの中では大きなキーワードです。
(株式会社エス・ジー ソフトウェア第三事業部 ユニットリーダー 大久保 智寛氏)
様々なご協力を頂きながら調査を実施しましたが、結果については率直にどのように感じられましたか。
- 大久保
以前からエス・ジーという会社は社内の風通しが良く、横だけでなく上下の繋がりも活発で、それがグッドポイントだと思ってきました。私は今もそう思っていますが、アンケートの結果を見ると、全国的に見て特筆して素晴らしいわけではなく、「やや良い」程度に終わってしまった。コロナ禍もあって、一年以上社員間で交流できなかったことが影響しているかもしれませんが、その点にギャップを感じました。
- 松永
多種多様な現場があるので、物理的な制約が大きかったのかもしれません。私の事業部はコミュニケーション量を増やそうと、若手中心の1on1ミーティングなどを試みていますが、道半ばです。いわゆる“心理的安全性(※5)”がまだできていない感じで、誰かが口を開くのを待っています。ここに役職者を投入すると、その人が主導権を握ってしまうのでここが我慢です。もう少し工夫して第二期をやろうとしています。
これを全社的にやろうとすると場所が離れていたり、本業がありつつの社内活動となったりしがちですので、実施にはもうワンステップ必要です。ES調査がそこの接着剤になると良いなと思っています。
(株式会社エス・ジー ソフトウェア第五事業部 部長 松永 卓治氏)
結果を受けた施策の立案や、実施体制、実行の手順など、社内展開について具体的にお聞かせください。
- 松永
一つは、リアルワンさんからのレポート説明会を3回ほどひらきました。今はリモート会議が主体ですので、その体制で集まってもらった方に資料を説明して、質疑応答に移ります。質疑応答した内容は全て議事録に残して、説明資料の後ろに足していくので、回が進むごとに内容が充実していきます。3回分の内容はまとめて「こんなやりとりがありました」と全社に向けて発信しました。
施策の立案に関しては、人事考課に対するテコ入れということで、「社長表彰」が挙がりました。結果的に採用には至っていませんが、副産物も生まれています。こうした施策を具体的に進めるにあたって、これまで上層部だけで決定して現場との温度差が生まれることも多かったため、小出しに情報発信する社内ブログを作りました。今日はこういう会議があった、集まってこんなことを喋ったといった情報に加えて、自由記入欄に書かれた鋭い意見に対しての回答も、逐次アップしていくようにしています。
将来的な希望としては、このブログにどんどんコメントがついて、さらにキャッチボールできたら良いですね。施策についても、人事考課表にスキルや能力以外にどんな社内活動をしたか記載できるようにするなど、情報収集していることをまず社員にアピールしようという流れになっています。
- 青山
ハーバード・ビジネス・スクールに組織の創造性を専門とする、テレサ・アマビール(※6)という教授がいますが、社員にモチベーション高く活躍してもらいたいのであれば、「普段の仕事に進捗がある」ことを感じさせ、その進捗に「良かったよ」ときちんとフィードバックすることだとおっしゃっています。今のお話は、このマネジメント論を思い出させてくれました。
最近では人事部も業務が細分化していますが、「HRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)(※7)」という言葉に代表されるように、ヒューマンリソースやオーガニゼーションデベロップメント(※8)の専門知識を持っていることも必要になっています。どうやって組織や人材を育てるのか、外部から専門家を呼んだり、アドバイザーを勤めてもらったりするのも良いと思います。
(リアルワン株式会社 代表取締役 青山 愼)
エス・ジー様のES調査チームはプロジェクトチームが主導ですが、その熱意の源はなんでしょうか。
- 大久保
ある面では他の社員のために、一肌脱いでいるところもあると思います。まず会社が良くなればいいなというのと、その結果、自分も居心地が良くなって満足感があります。それと、ESチームメンバー全体が、性格的に深掘りしたい人間が多いのも要因ではないでしょうか。
- 村木
そういう意味では弊社には人事部がなく、社員が様々な兼務をするのが普通です。ですが、これを組織化したからといって、良くなるものでもないと思っています。研修で社外の人事の方ともかなり話しましたが、同じ会社の社員でも仲間というよりは「対象者」といったクールな見方をされていることが多かったです。それを踏まえて弊社の規模感や風土で考えると、社内社員が主導というやり方はとてもあっていると思います。特にエンジニアは能力第一主義なので、ちゃんと現場を知っている人からの意見の方が効きますよね。
他に弊社との共同作業に加わっていただいた感想はございますか。
- 大久保
私たちはお客様にやりたいことや欲しいものを伺って、実現する「もの作り」の会社なので、一方的だったり、全部聞いてあげたりするようなコミュニケーションはマイナスに働くと感じています。
ES調査もこれと同じです。例えば、レポート執筆後にも意見交換をしたり、施策を考える時に専門的なアドバイスをいただいたり、チーム内で互いに会話して作る方がいいと意見が一致しました。あえて距離を置いて、第三者的な立場で調査結果を出すやり方もあったと思いますが、リアルワンさんからは、弊社の事情を理解した上でアドバイスをいただけましたし、その体制が実現できたので大変有意義だったと思っています。
- 松永
当初、ES調査は“仕事に対するモチベーション”を測るものだろうと考えていましたが、リアルワンさんとやりとりをしていて、実は“会社の居心地の良さ”を測っているのかなと気づかされました。
私は仕事人間ですし、査定する側の立場なので、仕事に対するモチベーションで相手を見てしまいがちです。ですが、会社の居心地の良さを感じている人は、モチベーションとは関係なく当たりが柔らかで、「いい奴」なんです。仕事と関係ない人間性の部分が、ES調査では出てくるのかなと思っています。これも仕事を円滑に回す一要素になり得ますし、自身にこうした新たな気づきがあってよかったです。
- 村木
やはりこの会社の、人間関係や風土が好きですし、もっと良くしていきたい。そこでESチームは、客観的な数字を参照しながら、大人としてしっかり意見交換して、皆で一緒によくする関係性が築ける立場だと思いました。また、強制的にそういう場所に自分を立たせれば、嫌でも会社を客観的に見なければなりません。外の視点が確実に自分の視野を広げてくれるとも思いました。
実際、ESチームでの共同活動は、どのような質問項目にするかの観点やディスカッションが、楽しくて勉強になったという印象が一番大きいです。既成概念に捉われない柔軟な提案ができるようになったと感じています。
- 曽我
社員の声が聞ける場はこれまであまりなかったため、そういう機会が提供できたのは良かったです。社員側もこういう窓口があることで、自由記入欄などで自分の意見を会社に伝えてくれるようになりました。経営陣がそれを一つずつ読んで、どういうことかと考えている姿を見ると、とても前向きに捉えられているなと感じます。上の立場の人が色々考えてくれる会社はいいなと社員として思いました。
今後のES調査の展望や、次のプロジェクトに期待することがありましたらお聞かせください。
- 大久保
前二回の調査を経て出てきた施策は、評価や給与面での改善でした。一つは、個々のスキルやキャリアを全社に公開できるキャリアアッププランの立ち上げ、もう一つは、業務以外の社内活動を人事考課で「見える化(※9)」する施策です。次回以降では、そろそろ評価以外のところにも手をつけたいです。毎回評価になってしまうと、2年ごとに新しい評価制度が出てきて、社員に倦厭されかねません。
あとは、社内の社員から、これまでやってきた施策に対する評価をしてほしいと思っています。他社さんの業務や評価のプロセスを聞いていると、複雑になりすぎて本業を圧迫しているケースも珍しくありません。新しい取り組みはどんどん増えてきますが、弊社の中にも見切りをつけなければならない施策があるのではと思っています。
- 曽我
現在は前回ES調査をして頂いた時と、社員のテレワークが増えて状況が変わっています。私が開発に携わっていた時は、開発チーム以外の社員と声を掛け合ったりして、気分が和むことがありました。ところが、おそらく今はそういった状況がなくなってしまい、それが社員や会社に与える影響を心配しています。調査項目を増やすことで、この実態が見えてくると対策も立てやすいです。
(リアルワン株式会社 従業員満足度調査・360度評価担当 荒木 美佐緒)
今後5〜10年後という長いスパンで考えた時にどんな会社、組織、人になっていたいと考えていますか。
- 松永
経営面で言えば、私たちはソフトウェア受託開発事業という形で、お客様からの要望があって初めて価値を生み出せます。ですから、今後は私たちからサービスを提供していきたいです。それがうまくいって売り上げが循環し始めれば、将来的には社員の仕事を本来業務とES調査の半分ずつにするようなこともできるかなと。
一方で、会社がうまく回り始めると従業員数が増えます。ところが、私たちはこれまでアットホームな会社であることを売りにしてきましたが、それが200名を超えたあたりから、昔の雰囲気が薄れつつあります。例えば就業規定がだんだん分厚くなって、何事も規定で縛らなければ回らなくなってきています。とはいえ、このまま規則だけが増えていくのは本望ではないので、5〜10年後に従業員数が250名だったとしても、社風と規則はバランスよく保っていたいです。そのためには、まず組織図作りが大切だと感じています。
社員の方を巻き込みながら、ES調査結果を有効活用するポイントやコツがあれば、教えてください。
- 村木
メンバー間や報告会では接する場を作っていますが、上方向への巻き込みはまだまだできていないと感じています。仮にそのような印象を持ってもらえているならば、弊社の社風によるところが大きいと思います。もともと人事部がありませんし、ES調査チームが実際の開発チームで改善策を検討する場には、必ず経営陣、役職者、普通の社員、さらに若手などが含まれます。それは、「ここだけの意見で決めた」ことがないようにとの配慮です。
こちらも、特定のグループの意見が強くなりすぎないようにメンバー構成を考えているので、そういう意味では巻き込んでいる風に見えるかもしれません。今は全社員の7〜8割にES調査を回答してもらっているので、さらに効果性を上げて全社的な流れにできればいいですね。
同様の取り組みをやってみたいと思う方々への、アドバイスやメッセージがあればお願いします。
- 村木
やはり自分たちだけで調査をしていた頃は、変に拡大解釈してしまったり、「数字がこうだから」と視野狭窄におちいったりしてしまいがちでした。それに加えて、改善策もありきたりなものしか出てきません。
そこで今回、調査結果と、その改善策を検討する過程の二つの機会で、共同作業の場を設けさせていただきましたが、検討過程の場にリアルタイムで生きた意見を出していただくことで、改善策のビルドアップがとても早かったです。せっかくES調査をして問題点が表面化しても、その対策が一年後では意味がありません。スピード感を持って、作り上げていく感覚が良かったです。
また、社員に対しても調査結果から、今こういうことを検討していて、こうなるよというのをリアルタイムで見せられたことが良いアピールになりました。他の企業さんも、ぜひこういう機会を逃さずに実施されたらいいのではないかと思います。
-
(注釈)
※1 品質マネジメントシステム(QMS)…「ISO 9001」と呼ばれる。企業などが、顧客や社会などが求めている品質を備えた製品やサービスを常に届けるための仕組みについて「国際標準化機構(ISO)」が定めた、世界共通の規格。※2 ES調査…従業員満足度調査。企業などに勤める従業員や職員が、自分の会社や仕事の様々な側面についてどのように感じているかを調査すること。組織の今の状態や課題を明らかにし、調査結果をもとにその後の施策に繋げていく。
※3 クロス集計…2つ以上の質問項目の回答内容をかけ合わせ、属性ごとの反応の違いを見るような際に用いられる集計方法。回答結果をより細分化して把握することができる。
※4 サーバントリーダーシップ…部下を支配するのではなく「まず相手に奉仕」し、その後にチームを先導するリーダーシップを指す。
※5 心理的安全性…組織の中で、上司や同僚の意見を恐れたり恥ずかしがったりせず、自分の考えや気持ちを安心して発言できる状態のこと。
※6 テレサ・アマビール…ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)名誉教授。組織の創造性や組織人のモチベーション、組織革新に関するマネジメントのあり方を社会心理学の面から研究する。
※7 HRBP(ヒューマンリソースビジネスパートナー)…採用活動や人事異動、労務管理などを担当した従来型人事部門に対し、経営者や事業責任者と同じ視点に立ち、パートナーとして、人事戦略の立案、実行を通じて事業成長をサポートする人事機能。
※8 オーガニゼーションデベロップメント…企業などの目的に合わせて、組織のパフォーマンスの最大化・活性化を図る組織開発のこと。
※9 見える化…企業や組織における業務、財政状況、将来戦略などの活動実態を具体化し、客観的に捉えられるようにすること。