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2021.10.25

360度評価

ここが知りたい!360度評価 〜導入6年、管理職育成手法として根付かせた、オリコ人事部がやったこと〜

2016年度に「360度評価」を導入以後、経年で実施しながら、そこに研修も取り入れることで社内のマネジメントパワーを高めてきたオリエントコーポレーション。当初は社員の方の受け止めにばらつきが生まれたり、結果が正しく活用されなかったりと困難もあったとのこと。しかし、試行錯誤の甲斐もあり、導入6年目となった今では人事施策の柱として社内に浸透し、風土形成に寄与するまでになっています。

今回は「360度評価」の導入に至った経緯から、評価項目のこだわり、そして調査結果の運用まで、人事部人材開発チームの欠塚晃平様、東一喜様に幅広くお聞きしました。評価制度に興味はあるが導入に踏み切れない、うまく活用できるか不安だという皆様は、活用事例としてぜひご覧ください。

Interviewee:
欠塚 晃平 氏
(株式会社オリエントコーポレーション 人事・総務グループ 人事部 人材開発チーム 課長)
東 一喜 氏
(株式会社オリエントコーポレーション 人事・総務グループ 人事部 人材開発チーム 課長代理)

Interviewer:
青山 愼
(リアルワン株式会社 代表取締役)
荒木 美佐緒
(リアルワン株式会社 従業員満足度調査・360度評価 担当)

<ポイント>
・360度評価導入の狙いは「マネジメント層のフォロー」と「魅力ある職場づくり」
・「評価」ではなく「育成」。人事部が徹底することで評価制度の浸透へ
・評価項目作成のポイントは人事部のポリシー。評価制度が社風を作る
・360度評価と研修をセットにすることで、正しい受け止めと行動につなげる
・評価とは被評価者が得られるギフト。前向きな活用が組織の大きなモチベーションに

(1 導入までの経緯)
2016年度に360度評価を導入されたきっかけや、目的をお聞かせください。

欠塚

その当時と今は環境が違いますが、当時はマネジメント職で営業店の課長に新任した時の課長研修以降、育成やフォローアップするような研修が全くありませんでした。その先は、例えば副支店長や支店長の職位に就く際に、ようやくまた研修がある状態でした。

もう一つは、風通しの良い魅力ある職場を作っていきたいと考えていました。そこで最も影響力があるのは、間に挟まれているミドルマネジメント層かなと想定し、営業店の課長に焦点を当てて、この課長がマネジメントに取り組んでいる行動を変えることで、魅力ある職場をつくれればと考えたことが導入したきっかけです。(左:株式会社オリエントコーポレーション 人事・総務グループ 人事部 人材開発チーム 課長 欠塚 晃平氏、右:同社同グループ 人事部 人材開発チーム 課長代理 東 一喜氏)

導入するにあたって、どういった成果を期待されましたか。

欠塚

弊社では営業店の課長に求められるコンピテンシー(※1)、社内で言うところの「行動定義」を設けていますが、まずはそこを改めてしっかりと認識してもらうことと、こちら側から示している行動定義なのでその行動をしっかりと実行できるような課長になってほしいと考えています。そのため、今回の導入では、この行動定義をもとにかなりこだわって設問を作らせていただきました。

その中で360度評価(※2)を実施すると、自分の認識と他者からの認識に良くも悪くも必ずギャップが出てきますので、そこで啓発課題を自分の中で捉えてもらい、どうしていくかを自分自身で考えられると良いなと思っています。これが、オリコの営業店の課長に求められる行動に、すべてつながってきます。

逆に導入への不安や懸念点はあったのでしょうか。

欠塚

そこで、人事から発信するメッセージには「評価」という言葉は一切使っていません。例えば、社内での実施を案内する通達文書やメールでは、サーベイ(※3)とか診断という言葉で発信するように意識しています。
また、セットで行われる研修でも、冒頭であくまでも評価に紐付くものではないとしっかりと伝えるように気を使っています。

それと研修では、回答する側にも時間を割いてもらっているので、「ちゃんと感謝してくださいね」と、被評価者に伝えています。そして、各々の職場に戻った時は、まず「レポートもらったよ」とメンバーに結果を見せながら、今後はこうしていきたいがどう思うか話をすると良いよと。
すると、「実際にやってみました」と反応をもらえることがあります。他にも、互いに距離感が縮まった気がするとか、できていなかったら指摘してねと話をしましたとか、とても前向きに360度評価の結果を使ってもらっている人がいるなと感じています。

導入の際にはこうした人事部からの丁寧な働きかけによって、受け取る側も意識が変わっていった経緯があります。 (リアルワン株式会社 従業員満足度調査・360度評価担当 荒木 美佐緒)

他の企業様で360度評価の実施にあたり、バイアスがかからない回答ができるように、回答者の方々へ事前の教育を行うケースもあるようですが、貴社ではいかがでしょうか。

欠塚

匿名性が確保されていることは説明していますが、それ以外には特に実施していません。直近に起こった印象的な出来事をもとに、評価をつけるケースも多いと思いますが、それはそれで一つの結果だと考えています。回答方法まで研修でやると回答する側も窮屈になるので、あくまでも育成のために、良いこと悪いことも含めて自由に答えてくださいと伝えています。

(2 導入・実行にあたり)
独自の評価項目を作成して実施されているそうですが、評価項目を作ったプロセスを教えてください。

欠塚

ベースにこんなコンピテンシーがあるという資料をいただいて、ある程度項目の準備はしていただきました。そこから私どもの方で監修させていただき、やり取りしながら最終的にまとめていきました。
そもそも「営業店の課長に求められる」コンピテンシーは、評価制度の評価のところに入っています。弊社では年に1回この17項目を元に、上司から評価されています。成果達成や戦略思考といった項目がありますが、その抽象的なものひとつ一つを3つに分けました。ですから、行動定義というものはすでに評価制度に組み込まれており、それをアンケートベースで他者が評価できるような形に落とし込んでいく作業を行いました。

実際の作成過程では、スタート時期を踏まえてご相談させていただいている中で、行動定義のように決まっている項目もあれば、そもそも設問自体がない、この設問で合っているかというレベルで試行錯誤していたため、とても大変でした。リアルワン様ともやり取りさせていただいて、この設問が答えやすいのではないかとアドバイスもいただいて完成に漕ぎ着けました。

「行動定義」自体は、貴社に昔からあったのでしょうか。

欠塚

2013年に評価制度を変えた際に導入しました。評価項目の作成にあたっては、「リーダーシップ」に着目するような切り口もあったと思いますが、いろいろ考えた時に、弊社では「行動定義」が、深いマネジメント、育成、業績アップといった多様な受け皿になれる基礎だと感じました。

加えて、受け手側の納得感も大事だと考えました。自分に求められているものがちゃんと発揮できているか、理想的な行動ができているかを正確に示すレポートを出すために、この設問があると思ってもらいたかった。おそらく汎用的なレポートでも、それはそれで受け止めてくれるでしょうが、比較してみるとより会社から求められている行動に直結する内容の方が、受け手側のモチベーションにもつながると感じています。

評価項目に関しては、こうした人事部が大切にするものがしっかりとあったことが突破口だったのかもしれませんね。もし柱がなく一から設問を作っていたら、弊社の風土やオリジナリティーは生まれなかったと思います。

これは評価項目の点で検討されているお客様にとっては、とても参考になるお話ですね。実際に作った評価項目では、テスト運用や微調整などはあったのでしょうか。

欠塚

実際に導入する際には、当時の人事部人材開発チームのリーダーに対して、人材開発チームのメンバーが実施し、レポートなどを出して違和感がないかを検討しました。
その結果フィット感があると判断したため、見直しは行わず、そのまま被評価者として、営業店の管理職の方に導入することを決めました。課長に対して、課長の部下と同僚と、上は副支店長と支店長を設定しました。

実際に評価を受ける方々は、周りから評価を受けたことに対して初めはどのように感じていらっしゃったのか、何かお声はありましたか。

欠塚

最初の1期生の時はレポートを研修で渡して、ここのページを見てください、こういうことをやってくださいと研修講師の方が伝えたのですが、誰一人としてそのページを見ない(笑)。
これはいけないと思って、しばらく時間を与えるので好きなところを見てくださいと。それだけレポートの内容が、目新しくて“刺さって”いたということでもあります。

反面、大半の人が納得感を持って見ている中で、一部あとから聞こえてきたのは「評価する人はちゃんと選んだ方が良い」「私はこんなものもらいたくない」という声です。おそらく、その人にとって内容が良くなかったんでしょうね。

しかし、実は2回目以降にはそんな声は出ていません。おそらく1回目を経て、こんなことをするのかなとか、同僚などから聞いて理解が深まっていたため、そういう声が出なかったのではと思います。直近の受講者では、だいぶ社内に浸透してきたこともあり、良い部分もそうでない部分も評価をしっかりと受け止めている印象があります。

反対に評価する側に、「管理職の方々とコミュニケーションが取りやすくなった」などの、良い変化があれば教えてください。

従業員の意識調査をやっていますが、影響は見えづらいです。課長だけで見ると400名以上いる中で、対象者が3年目の課長数十名だけなので、なかなかそこまでのリアクションは汲み取れていません。
ただし、実際にどういうところに焦点を当てて自分が取り組んでいくか、何をしていくかアクションプランを立てているので、周囲もそこでの変化は感じているのではとは思っています。

(3 360度評価の活用施策)
課長になられた方々に対して半年で2回の評価を実施するのに加えて、貴社では1回目の後に研修を取り入れられていますが、セットにする構想は当初からあったのでしょうか。

欠塚

弊社の360度評価はもともと秋だけでしたが、1年スパンでは異動や職場の変化などもあり、高い意識を保てません。せっかくレポートを出しても、その先の変化がもう一回の時に見えづらかったんです。そのため、秋に評価をとって12月くらいに研修を実施し、次の春まで3カ月間の短期でも取り組もうということにしました。短いスパンにしたことで、アクションプランなど、実際に自分が立てた計画に沿って行動している方が圧倒的に増えました。短期間に成果が見えやすい点が、奏功しています。

研修に関しては、被評価者はいくらガイドしてもレポートの結果に意識が集中してしまうので、そうならないように一旦環境を変えて、密室の空間で初めて見せて、読み方を説明する意図で取り入れています。
研修講師さんからもよく言われていますが、レポートの結果が全てではありません。これは良くも悪くも評価側の環境によって違ってきます。ここからどうしていくかが一番大事だから参考にするだけにしましょうと。こういう意識付けが必要だと思っていたので、最初から研修はセットで考えていました。
(リアルワン株式会社 代表取締役 青山 愼)

研修の一番の目的、ゴールはどこでしょうか。

欠塚

360度評価の読み取り方がしっかりと把握できるようになる事です。これは誰のためのものでもなく、皆さんのためのもので、評価されているわけではない。参考になる材料として、これをどう自分たちで料理するかは自分たち次第、というのをちゃんと伝えて、次の行動につなげるきっかけになることが研修の大きな目的です。ゴールというよりもスタートですね。

研修の中でアクションプランを立てていらっしゃるようですが、その作成や、次の評価までのフォロー体制はどのようにされていますか。

短いスパンでやって、最終的に本人たちには再評価の手前で、どこまでできたのかを提出してもらう前提で進めています。特段こちら側からのフォローはしていませんが、しっかりと振り返りをして、上司コメントにも「アクションとして立てていることが、行動として実践できている」と、書かれているものも多数見ています。自分が何を伸ばすのか、何を改善するのかを意識できているので、360度評価から研修に至るまでの一連の施策は、十分な効果を発揮していると考えています。

(4 導入後の成果・効果について)
実際に360度評価と研修を受けられた、被評価者の方々の感想は耳にしますか。

受講感想のようなものは聞いていますが、やはり自分自身をしっかり振り返ることができた、という声が一番多いかと思います。ブレイクアウトセッション(※4)などで感じたのは、自分はさほど強みだと思っていないことが、評価の中で「強みだよ」と指摘されていることで、色々な気づきを得られたという反応が多いです。全体的には、やってよかったなというポジティブな感想です。人事に提出するものなので、極端に後ろ向きな感想は出てこないとしても、前向きに捉えてもらっている人が多いのではないでしょうか。

今後も360度評価と研修は続いていくと思いますが、現時点で当初の目的達成や、課題解決はなされていますか。

欠塚

評価や研修を受けた社員からは、「今後何をすればいいかが明確になった」「目標に向けて行動していきたい」と前向きなコメントが多いので、やろうとしたことは達成できているのではないかと捉えています。

今後は課長職だけでなく、管理職層に対して360度評価を広げる構想もあります。現場トップの店長や部長といった、なかなか周りからの声が入ってこない、ある意味“孤独”な立場の人たちに対して、気づきを与えられるような形で調査結果を活用できたら理想的ですね。

(5 メッセージ)
最後に、今後360度評価の導入を検討されている企業様に、アドバイスやメッセージをお願いします。

欠塚

企業によって抱える課題は違うため一概には言えませんが、これまで評価制度をやってきていない組織であれば、実施する価値はあると思います。導入する際にはその企業の人事側のパワーもいるでしょうし、様々に神経を使う部分はあるかもしれませんが、その苦労の先には、被評価者への価値あるギフトが待っています。

普段そういったものは、上からの「評価」として得られるでしょうが、立場が上がるにつれて無くなっていきます。その中で実際に課長という初めての管理職になった時に、今まで同僚だった人たちが部下になって話も入ってこなかったりする。実際にどういうことを思われているのかという部分が、360度評価によってある程度見えてきます。これはサーベイを経てもらわないと気付けないものもあるため、迷っているのであれば、実施する価値は十分にあります。

色々とご不安もあるかと思いますが、しっかりと下準備をすることで、評価システムへの過剰反応や継続しづらさといったアクシデントも防げます。あとは評価の意図みたいなものをしっかりと伝えることですね。この“腹落ち感”がないと変に受け止めるだけで終わってしまいます。
そして実際に実施したなら、1回で止めずに最低2回目まではやった方がいいでしょう。1回目の結果があって、それを基に自分の行動改善につながって、その取り組みがどうなったか、ビフォアアフターが見える機会がある方が間違いなくモチベーションにつながるはずです。

私自身も360度評価に加えて、研修まで続けているからこそ、被評価者が与えられたものがどれだけ価値のあるものなのかを実感しています。どういった対象に対して評価するのか、またそもそも研修をするかのご判断は企業様によってあると思いますが、もし弊社と同じような対象層に対してということでお考えであれば、ぜひ評価を踏まえて研修にまでつなげられるような施策にしていただくと良いのではないでしょうか。
同じ被評価者同士でディスカッションするような場があるからこそ、ただ評価を渡して終わりにならず、そこに対してどう見ていくか、どうアクションするか、気づきを得ながら被評価者がしっかり前進できるのかなと思っています。

(注釈)
※1 コンピテンシー…ある職務や役割において優秀な成果を発揮する行動特性のこと。
※2 360度評価…評価対象者の上司や同僚、部下などさまざまな立場の人物が、評価対象者を多角的に評価する手法のこと。
※3 サーベイ…全体像や実態の把握のために、広く行う調査。
※4 ブレイクアウトセッション…Web会議ツールの機能の一つである「ブレイクアウトルーム」を利用した会議のこと。

株式会社オリエントコーポレーション

業種:カード・融資事業、決済・保証事業、個品割賦事業、銀行保証事業

従業員数:3,333人(2021年3月31日現在)

サービス名:360度評価

WEBサイト:https://www.orico.co.jp/company/

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