大組織を動かす、人事部からの変革。-大東建託 従業員満足度調査5年の歩み- - 従業員満足度調査・360度評価のリアルワン株式会社 - 人と組織の成長を支援

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2020.02.05

従業員満足度調査(ES調査)

大組織を動かす、人事部からの変革。
-大東建託 従業員満足度調査5年の歩み-

「生きることは、託すこと。」というブランドメッセージを掲げ、すべてのステークホルダーが夢や将来を託せる企業を目指して躍進する大東建託。

従業員満足度調査においては、「D-COMPASS(ディーコンパス)」というわかりやすく親しみやすい社内名称を付けて運用されています。単体で9,000名を超える大組織において、どのように調査結果を活用されているのか。今回は、執行役員 業務統括部長の中村武志様にお話をうかがいました。

Interviewee:
中村 武志氏
(大東建託株式会社 執行役員 業務統括部長)

Interviewer:
青山 愼
(リアルワン株式会社 代表取締役)
麻生 知里
(リアルワン株式会社 従業員満足度調査・360度評価担当)

<ポイント>
・従業員満足度調査の導入により「対症療法的な人事施策」から「先手を打つ人事戦略」へと転換
・従業員への浸透を促した「D-COMPASS(ディーコンパス)」という社内名称
・経営計画書の指標の一つに位置付ければ、自ずと次の行動につながる
・人事部と各部門とが協働する形をつくり、円滑な運用サイクルを実現
・従業員一人ひとりが「自分事」として期待できる会社になれば、組織に大きな流れが生まれる

はじめに、貴社についてのご紹介をお願いします。

中村

当社は遊休地の有効活用を考える土地オーナー様へ向け、事業用賃貸建物(倉庫・工場・店舗)を建築し、家賃収入を創出する新しい事業モデルでスタートした会社です。バブル崩壊を契機に居住用賃貸住宅への転換を図り、時代や社会の変化に柔軟に対応しながら、現在の賃貸経営受託システムを構築してきました。資産運用や資産承継を考える土地オーナー様がもっとも困るのは、入居者様が入らなかった場合の家賃収入です。当社では一定の割合でこのリスクを補償して「安心・安全・安定」を提供する仕組みをつくり、社会的な評価をいただきながら歩みを進めてきました。

経営理念は「我が社は、限りある大地の最有効利用を広範囲に創造し、実践して社会に貢献する」です。ここで表現している通り、大東建託グループは賃貸事業を中心に置きつつ、シナジー効果を得られる周辺領域に事業を展開しながら現在に至っています。

このたび、2019年4月より代表取締役社長が交代し、これを機に賃貸住宅専業から総合賃貸業を核とした「生活総合支援企業」へと事業領域を広げていく成長戦略を打ち出しました。主力である建設・不動産事業を強化しながら、これまでのように成長を続けられる企業を目指し、新領域にも取り組んでいきます。そうした意味では、当社は今まさに変革の時期に突入しています。

貴社は業界最大手のリーダー的存在ですが、一方で外部から業界を見たときに、まだまだ「男社会、閉塞的、厳しさ、古い気質」といったイメージを持つ方もいらっしゃるようです。企業として課題に感じていることを教えてください。

中村

従来の日本に代表されるような縦割りの組織が根付いている業界ですので、そういったイメージを持たれる方も多いだろうと思います。最近では、いろいろなニュースが流れた影響もあって、サブリース事業そのものにネガティブなイメージを持たれている方もいらっしゃいます。

実際に働いている当社の従業員からすると、仕事を通じて真摯にお客様と向き合っていますので、問題があるような会社ではないと理解してくれています。ただ、日本が抱える社会課題に対して、この会社を通して解決していこうといろいろな提案をする中で、業界全体へのマイナスイメージを持たれているのは、やはり残念なことです。仕事を誇れない、プライドを持てないという従業員が出てしまったら、非常に寂しいですね。

そういう意味で、当社が今後さらに注力していく経営課題の一つに、従業員の働きがいや、やりがいの創出があります。当社で働くことに誇りを感じ、夢や将来を託せる会社といえるような企業になろうということで、様々な取り組みをスタートしているところです。

従業員満足度調査を導入されて5年になりますが、実施する意義をどのように捉えていますか?

中村

従業員満足度調査を導入したのは2015年です。その2年前となる2013年から導入準備を進めたのですが、その当時、日本ではコンプライアンスに関する問題が取り沙汰され、また、ワーク・ライフ・バランスという言葉も注目を集めていました。日本の社会全体が変わらなければいけないというトレンドにあって、当社も変わらないと生き残れないのではと経営陣が認識し、旗振りを始めたのがこのタイミングですね。

従業員としっかり向き合う企業でなければ、離職者が増える可能性が高まりますし、新しい人材も集まらなくなります。さらに数年後には、いま当社で中核を担うポジションにある中堅社員が介護で働けなくなる可能性も出てきます。事業が回らなくなって困るという事態は近い将来に起こり得ることで、けっして他人事ではないわけです。

そこで、いろいろな人事施策を矢継ぎ早に実行したのですが、従業員のリアルな声と人事部の認識にギャップがあってはうまくいきません。制度はつくったものの、ちゃんと活用されているのか、足りない部分はないのか。従業員の正直な意見を聞き出す仕組みが必要ということで、従業員満足度調査を実施するに至りました。

これによって、人事部としても大きな変革を遂げるきっかけになったと考えています。
それまでは、問題が起きたら制度をつくって解決するという対症療法的な人事施策が多かったんですね。従業員満足度調査を導入したことにより、将来を見据えて先手を打てる人事戦略へと形を変えることができたと思っています。

貴社では従業員満足度(ES)調査に「D-COMPASS(ディーコンパス)」という社内名称を付けられました。なぜ、あえて社内名称を付けられたのでしょうか?

中村

「D-COMPASS」は、Daitokentaku-Corporate Management & Performance Annually Supporting Surveyの頭文字をとって命名しました。

調査を実施するうえでは従業員から率直な意見を引き出すことが重要になるわけですが、「従業員満足度調査を実施します」というと、どうしても身構えてしまいそうな硬いイメージがあるかなと。だとすれば、従業員が愛称で呼べるような親しみやすい名前を付けて、自然に浸透していくような形をつくりたいと考えたんですね。

ネーミングは当時、私を含めた3人の担当者でいろいろ案を練りました。そこで思いついたのが、従業員の考えを会社経営に反映させるための「羅針盤」という意味を持つ、「D-COMPASS」です。経営会議でも一発で通りましたので、これは我ながらヒットだったかなと(笑)。

社内では今はもう従業員満足度調査という名称よりも、D-COMPASSのほうが根付いていますね。

親しみやすい名称とはいえ、調査の導入にあたっては従業員様に抵抗感はありませんでしたか?

中村

じつは、調査の回答率は高いだろうと予想していました。なぜなら、これまでもいろいろなアンケートを実施してきているので、回答するのは当たり前という文化はすでにできていたからです。私が懸念していたのは回答率ではなく、従業員が正直に答えてくれるのかという点でした。

実施する前に、「外部のシステムを使うので、誰がどう回答したのかわからない仕組みになっている」と何度も説明はしたものの、実際のところ、不安を払拭するのは難しいだろうと考えていました。この予想が的中しまして、悪いことは書けないという意識が働いたためか、1年目の調査では満足度がすごく高かった(笑)。

こういった調査は、心理的な安心感がとても重要だと痛感しましたね。何を言っても大丈夫という組織風土が根付いていない限り、ある程度の時間がかかることは覚悟しなければならないものだと思います。

当社の場合は、実際に1回経験してみて「本当に何を書いても、何も言われない」と理解してくれたようで、2年目からは率直な意見が目立つようになっていきました。

貴社では毎年作成される経営計画書の指標の一つに、D-COMPASSの数値を置かれています。どのような狙いがあるのでしょうか?

中村

じつは、もともとD-COMPASSを導入する段階では、経営計画書に載せることは想定していませんでした。しかし、それではダメだということで、このときに動いたのが経営管理本部長です。D-COMPASSの結果をまとめて、部門ごとに来期の改善策と行動計画を提出し、経営計画書に載せるように指示を出しました。

経営計画書に載せた以上は、経営課題として確実に取り組まないといけない事項という共通認識になり、各部門、各担当者に目標がおりてきます。個々の目標として設定されるわけですから、当然、達成に向けて動くしかない。さらに当社の場合、達成状況と評価制度を連動させているので、しっかり結果を出さないと報酬面にも影響します。もう、一生懸命やるしかないですよね。

経営管理本部長の狙いはまさにここで、D-COMPASSの結果を受けてどう改善するのか、次の行動につなげる仕組みづくりと、社員一人ひとりが自分事として行動するために経営計画書という手段を使ったわけです。

そもそもD-COMPASSは、従業員の生の声と経営陣が感じていることとのギャップを埋めて、強みは伸ばし弱みは改善しようという狙いでスタートしました。これを経営トップに近い人間が動いて、実際に仕組み化するところまで踏み込んだわけです。これにより、D-COMPASSがスタートすると同時に、スピード感を持って全従業員を動かす仕組みができたということです。

各部門の改善だけですと、それぞれの強み弱みにしか対応できなくなってしまいますので、全社共通の課題に対しては人事部やダイバーシティ推進課が対策を講じるというように横串を刺して、部門ごとの縦串と合わせ、面で捉えた戦略を実践しています。

D-COMPASSの調査結果をどのような流れで運用されているのか、具体的に教えてください。

中村

スケジュールでいうと、毎年12月に調査結果をまとめて経営陣に報告し、次に全従業員に開示しています。1月から3月にかけて各統括部門が来期の改善策を検討して、経営計画書に載せる原案を作成するという流れですね。事前に年間スケジュールを引いているので、滞りなく進んでいくサイクルをつくれています。

当社は毎年4月に全従業員に向けて、経営計画発表説明会を実施しています。前期の振り返りと今期の戦略を発表し、全従業員とコミットメントする場です。ここで、部門ごとの戦略やミッションも明らかになるわけですが、従業員は事前にD-COMPASSの結果を知っている状態ですので、各部門の目標を見たときに腹落ちしやすいんですね。

D-COMPASSの結果は包み隠さず開示して、公明正大にやっていくという宣言のもと運用しているのですが、調査結果は部門ごとに公表されるので、部門長は毎回ヒヤヒヤしていますね(笑)。だからこそ、本気で改善しようという意識が強くなっている部分もあると思います。

人事部だけでやっていたら手が止まってしまいがちですが、各部門と協働する形をつくったことで、うまく機能してくれているのかなと思っています。

実際に、従業員様の声を制度に反映された事例を教えていただけますか?

中村

D-COMPASSを始めてから、従業員から直接、働き方で悩んでいるといった相談を受ける機会が増えました。一つの事例を挙げると、不妊治療をしている従業員からの相談がありました。不妊治療ではステージが上がるほど、会社に来られない日が増えるんですね。辞めずに働きたいものの、今の人事制度では難しいという相談でした。

そこで、1日3時間、週3日勤務を選択できる短縮勤務制度を取り入れることにしました。働く意欲はあるのに、様々な事情で休業や離職しなければならない従業員をつくらないためにはどうすればいいのか。限られた時間のなかで結果を出すにはどうすればいいのか。従業員と一緒になって考えるという流れをつくることができた事例です。

このほかにも、小学校3年生までのお子様を持つ従業員が利用できる短時間勤務制度を用意していたのですが、従業員からもう少し延長してほしいという意見が多く寄せられました。そこで、中学校卒業まで利用できるように制度改定した例もあります。また、看護休暇は子どもの看護が必要なときに使える制度ですが、当社では従業員のニーズを反映して、子ども以外のご家族の看護にも利用できるようにしています。

当社は、働き続けることを支える制度を様々取り入れてきたほうだと自負しているのですが、社歴の長い従業員ほど、制度を認識していなかったり活用しきれていなかったりする傾向が見られるんですね。新入社員のほうが入社前によく調べているので、入社動機に「福利厚生の充実」を挙げてくれるなど、じつはとても詳しかったりします(笑)。

D-COMPASS をスタートされて、5年間に様々な知見が蓄積されたと思います。今後の課題として捉えていることを教えていただけますか?

中村

D-COMPASSの結果を受けながら、働き方改革やダイバーシティの推進という両輪はよく浸透して根付いてきたと思います。経営計画書の指標に盛り込んだことで、ビジョンの共有、意思決定スピードという点でも良くなっていますし、従業員、課長職、部門長と各レイヤーにおける動きも活発になり、会社全体として取り組んでいるなという実感があります。

ただやはり、調査結果に出ている「組織の風通し」というところが、なかなか向上していかない現状があります。これは、長年根付いてきた業界的な傾向でもありますが、縦社会の厳しさみたいなものを感じているからだろうと思っています。

縦社会には精神的な安定を得やすいというメリットもあるのですが、一方では自由度が下がる印象が強くなりますよね。時代の流れを汲めば、やはりもう少し自由を感じられる風土をつくらなければならない。社風そのものを刷新するのは難しいことですが、今後、生活総合支援企業を目指すには、しっかり目を向けていくべきと捉えています。D-COMPASSをうまく使いながら、組織に新しい風を取り入れていきたいなと思いますね。

5年後、10年後を見据えた組織づくりに必要なことは何だとお考えですか?

中村

これは今のポジションで考える私の個人的な見解ですが、いろいろなことに挑戦できる環境と、それを育む組織風土をつくる必要があると思っています。

当社は業界の中では大手になりますが、日本全体で見ると、まだまだ限られた市場の中で事業を展開しているわけです。今後、日本の人口が減少していく中で当社が100年企業を目指すには、違う領域にも積極的に目を向けなければなりません。そうしたときに、自由な発想を持って新たな領域にも挑戦できるような、イノベーティブな人材が必要になってきます。

当社には守るべき良い文化ももちろんありますが、過去の成功体験を塗りかえていくような気概が必要になる場面も将来的には出てくるだろうと思います。そうしたときに、従業員が臆することなくチャレンジできる組織風土をしっかりつくっていきたいと考えています。

働き方という観点では、時間と場所という制約をできるだけなくす方向で検討したいと考えています。プライベートでいろいろな事情があっても当社で働き続けられるよう、制度と環境の整備を進めていきたいですね。

他社さんの事例もよくリサーチします。最近では個人が持っているスキルを多方面で発揮できる制度を実施している企業さんもあり、面白い取り組みだなと思っています。他社さんの良いところを学びながら、次の一手を練っているところです。

大きな組織を人事から動かしていくという観点で、意識されていることを教えてください。

中村

当社は単体で9,000人ほど、グループで2万人弱の組織です。人を動かすという観点で私が管理職に向けてよく話すのは、「目標を達成した先にある成功イメージを描いてほしい」ということです。目標は目に見える形につくるわけですが、私たち人事部のミッションというのは、目標をクリアしたときに従業員はどんなメリットを享受できるのか、それによって会社はどんな風に良くなっていくのか、これをイメージできるようにしてあげることなんです。

その期待感が、従業員一人ひとりの「自分事」となったときに、組織全体に大きな流れを生むのではないかと思っています。従業員がワクワクするようなビジョンを描くうえでも、D-COMPASSが果たしている役割は大きいと思います。

最後に、人事部として貴社の従業員様に伝えたいメッセージをお願いします!

中村

当社は人が生きるうえで必要となる衣食住の「住」の分野で、様々な社会課題を解決しながら世の中に必要とされる事業を営み、成長を続けてきました。まずは、そのことに誇りを持ってほしいと思っています。そして、もっと社会に貢献できる企業になるために、一緒に考え、一緒に取り組むことを楽しんでほしいというのが私の思いです。

世の中では「仕事がすべてではない」という文脈で語られることもありますが、たとえば1日8時間働くとなると、人生の3分の1は仕事をしているわけです。実際には、仕事がつまらなかったら人生も面白くなくなるということもあるのではないでしょうか。

個人のバックグラウンドはますます多種多様になっていくと思いますが、人事部としては、「この会社でずっと働き続けたい」「家族に自慢できる会社」という言葉をもらえるような土台をつくっていきたいと考えています。

大東建託株式会社

業種:建設業務、不動産仲介業務および管理業務

従業員数:9,274名(単体)※2019年9月末現在

サービス名:従業員満足度調査(ES調査)

WEBサイト:https://www.kentaku.co.jp/

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