目次
- 1 はじめに:AI活用は、人事部にとっても重要なテーマになっている
- 2 AIは、仕事の進め方を大きく変える可能性がある
- 3 仕事でAIを活用している人は19.2%。今は「普及前夜」とも言える段階
- 4 AI活用格差を感じている人では、キャリア不安を感じる割合が66.7%
- 5 将来的なAI活用格差を感じている人でも、キャリア不安を感じる割合が高い傾向
- 6 会社・組織のAI支援・教育を感じている人では、エンゲージメントが高い人の割合が72.4%
- 7 なぜAI活用格差はキャリア不安と関連しうるのか
- 8 人事部が確認すべきこと:AI時代のチェックリスト
- 9 AI時代に人事部が避けたい対応
- 10 AI導入・教育・定着の3段階で考える
- 11 改善施策として考えられる取り組み
- 12 従業員意識調査・エンゲージメント調査でできること
- 13 まとめ
- 14 よくある質問
- 15 関連サービス
はじめに:AI活用は、人事部にとっても重要なテーマになっている
生成AIをはじめとするAI技術の活用が広がる中で、多くの企業がAI導入やリスキリングに取り組み始めています。
AIというと、情報システム部門やDX部門が中心になって進めるテーマだと思われがちです。しかし、AI活用は単なるツールの導入ではありません。従業員の「スキル」「学習機会」「キャリア不安」「エンゲージメント」にも関わるテーマです。
人事部門からは、「AIを使える人と使えない人で差が出ていないか」「従業員が将来のキャリアに不安を感じていないか」「AI研修を実施しても、現場でどのように受け止められているかわからない」といった声も聞かれます。
リアルワン株式会は、働く人の仕事や職場に対する意識を把握するため、2026年5月、働く人500名を対象にした独自調査「働く人の仕事と職場に関する意識調査」を実施。本記事では、その結果をもとに、AI活用格差とキャリア不安、AI支援・教育とエンゲージメントの関係を解説します。

AIは、仕事の進め方を大きく変える可能性がある
携帯電話からスマートフォン、電話やFAXからメール、チャットツールへと移行したように、新しい技術は仕事の進め方を大きく変えてきました。
AIも同じです。単に便利なツールとして導入されるだけでなく、「情報収集・資料作成・分析・顧客対応・企画立案・学習の進め方」など、日々の業務の前提を変える可能性があります。
世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025(※1)」では、2030年までに世界の雇用の22%に相当する職務変化が起こり、1億7,000万の新しい役割が生まれる一方、9,200万の役割が置き換わる可能性が示されています。(※1)出典:World Economic Forum「Future of Jobs Report 2025」
これは、AIを含む技術変化が、仕事やスキルのあり方に大きく関わるテーマであることを示しています。
また、OECDは、AIを含む自動化技術を考慮すると、OECD諸国で約27%の雇用が自動化リスクの高い職業にあるとしています(※2)。(※2)出典:OECD Employment Outlook 2023
ここで重要なのは、「仕事がすぐになくなる」と煽ることではなく、必要なスキルや仕事の進め方が変わる可能性を前提に、企業が学習機会を支援したりサポート体制を整えたりすることです。
AI活用は、情報システム部門やDX部門だけで完結するテーマではありません。従業員は、変化を「どう受け止め」「どんな不安を感じ」「どのような支援を必要としているか」。従業員の変化を把握するうえで、人事部門の役割が重要になっているのです。
仕事でAIを活用している人は19.2%。今は「普及前夜」とも言える段階
リアルワン株式会社の独自調査「働く人の仕事と職場に関する意識調査」では、仕事におけるAI活用状況を確認しました。
AIを「よく活用している」と回答した人は8.0%、「やや活用している」と回答した人は11.2%でした。両者を合わせると、「AIを活用している人」は19.2%となっています。
一方で、「あまり活用していない」と回答した人は19.0%、「まったく/ほとんど活用していない」と回答した人は36.4%でした。両者を合わせると、「AIを活用していない・活用度が低い人」は55.4%となっています。
また、「どちらともいえない/時々活用」と回答した人は25.4%でした。

この19.2%という数字は、単に「AI活用が少ない」と見るだけでなく、「本格的な普及の前段階」と見ることもできます。
新しい技術は、最初から全員に広がるわけではありません。初期に使い始める人がいて、その後、一定の壁を越えると普及が加速することがあります。AI活用も、今後職場での活用事例が増え、ツールやルールが整い、学習機会が広がることで、利用が進む可能性があります。
だからこそ、AI活用がまだ一部にとどまっている段階で、人事部門が従業員の不安や支援ニーズを把握し、学びや活用を支える仕組みを整えることには大きな意味があるといえるでしょう。
AI活用格差を感じている人では、キャリア不安を感じる割合が66.7%
次に、AI活用格差の実感とキャリア不安の関係を確認しました。
「AIを活用できる人とできない人で、すでに差が出ている」と感じている人では、キャリア不安を感じる割合が66.7%でした。一方、AI活用格差をあまり感じていない人では37.7%でした。両者の間には29.0ポイントの開きが見られました。

この結果から、AI活用格差を感じている人は、自身の将来のキャリアに対する不安を感じる割合が高い傾向が見られました。
ただし、これはAI活用格差とキャリア不安の因果関係を示すものではありません。AIに関する変化を強く意識している人は、「今後の仕事やキャリアについても不安を感じやすい可能性がある」という「ひとつの関連」として捉える必要があります。
将来的なAI活用格差を感じている人でも、キャリア不安を感じる割合が高い傾向
現在のAI活用格差だけでなく、将来的なAI活用格差についても確認しました。
「今後、AIを活用できる人とできない人の差が広がる」と感じている人では、キャリア不安を感じる割合が66.1%でした。一方、将来的なAI活用格差をあまり感じていない人では37.8%でした。
現在の差だけでなく、今後の変化に対する見通しも、キャリア不安と関連している可能性があります。AI活用が進む中で、人事部門には、従業員が「どんな不安を感じ」「どのような支援を必要としているのか」を把握する視点が求められます。
会社・組織のAI支援・教育を感じている人では、エンゲージメントが高い人の割合が72.4%
さらに、会社・組織のAI支援・教育についても確認しました。「会社・組織によるAI活用の支援や教育」を感じている人では、エンゲージメントが高い人の割合も高い傾向が見られました。
AI支援・教育を感じている人では、エンゲージメントが高い人の割合が72.4%でした。一方、AI支援・教育をあまり感じていない人では39.3%でした。両者の間には33.1ポイントの開きが見られました。

この結果から、AI活用を個人の努力だけに任せるのではなく、会社・組織として、学びや活用を支援することが働く人の前向きな仕事感情とも関連している可能性がうかがえます。
なお、MicrosoftとLinkedInの2024年の調査(※3)では、AI利用者の78%が自分のAIツールを職場に持ち込んでいること、また79%のリーダーがAI導入を競争力維持に重要と考える一方で、60%は自社にAI導入のビジョンや計画がないと回答していることが示されています。(※3)出典:Microsoft and LinkedIn「2024 Work Trend Index」
個人任せのAI活用が広がる前に、会社として方針や支援を整えることも重要な論点です。
エンゲージメントを把握する際は、質問項目の設計も重要です。詳しくは以下の記事でも解説しています。
関連記事:エンゲージメントサーベイは質問項目が重要!
なぜAI活用格差はキャリア不安と関連しうるのか
今回の結果を読み解くうえでは、いくつかの考え方が参考になります。
まず、「自己効力感」という考え方があります。これは、「自分にもできそうだ」「対応できそうだ」と感じる感覚です。AI活用において、「自分にも使えそうだ」「学べば対応できそうだ」と感じられるかどうかは、変化への受け止め方と関連している可能性があります。
次に、「組織的支援認知」という考え方があります。これは、従業員が「会社や職場は自分の貢献を評価し、気にかけてくれている」と感じる程度のことです。AI支援・教育を感じている人でエンゲージメントが高い傾向が見られたことは、「会社の支援が働く人の前向きさ」と関連しうることを考えるうえで参考になります。
また、「キャリア不確実性」という視点も大切です。働き方や必要なスキルが変化する中で、将来の仕事やキャリアの見通しが持ちにくくなると、不安を感じやすくなる可能性があります。
さらに、「職場学習」や「リスキリング」の考え方も重要です。AI活用は、個人が自力で学ぶだけではなく、職場の中で学び、試し、相談できる環境を整えることが重要です。
これらの考え方は、今回の調査結果の因果関係を示すものではありません。ただし、「AI活用格差とキャリア不安」「AI支援・教育とエンゲージメント」の関係を読み解くうえで参考になる視点といえるでしょう。
人事部が確認すべきこと:AI時代のチェックリスト
AI活用格差やキャリア不安に対応するには、まず従業員の状態を把握することが重要です。人事部門では、次のような点を確認するとよいでしょう。
- 従業員のAI活用状況を把握しているか
- 部署・職種ごとにAI活用機会の差を確認しているか
- AI活用格差を感じている層を把握しているか
- キャリア不安を感じている層を把握しているか
- AI支援・教育が従業員に届いているかを確認しているか
- 研修を受けた後、実務で使えているかを確認しているか
- AI活用について相談できる場があるか
- 管理職がAI活用を支援できているか
- 低活用層を責めず、使いにくい理由を確認しているか
- 競合他社や同業界のAI活用事例を把握しているか
- 外部のAI活用事例を社内で共有し、議論できているか
- AI活用とエンゲージメントの関係を継続的に見ているか
特に、外部動向にアンテナを立てることは重要です。自社だけを見ていると、AI活用がどの程度進んでいるのか、どのような業務で使われているのか、どのようなリスクや課題があるのかが見えにくくなります。
競合他社や同業界の取り組み、他社の活用事例、AIツールの進化を把握し、それを社内で共有することで、自社のAI活用方針を議論しやすくなるでしょう。
AI時代に人事部が避けたい対応
AI活用を進める際には、避けたい対応もあります。たとえば、以下のような対応です。
- AI活用を個人任せにする
- 使っていない人を「遅れている」と見なす
- 研修を実施しただけで終わる
- 部署・職種による活用機会の差を見ない
- キャリア不安を本人の問題として扱う
- ルールを作らず、社員が個別にAIツールを使う状態を放置する
- 外部の活用事例を収集せず、自社内だけで判断する
- 調査結果を見ても、改善アクションに落とし込まない
AI活用は、業務内容や職種によって向き不向きがあります。低活用層を責めるのではなく、「使う機会が少ないのか」「使い方が分からないのか」「不安があるのか」「会社のルールが不明確なのか」を確認することが大切です。
AI導入・教育・定着の3段階で考える
AI活用を進める際には、「導入」「教育」「定着」の3段階で考えると整理しやすくなります。
1. 導入前:不安と期待を把握する
AI導入前や導入初期は、従業員が「AIにどのような期待や不安を持っているか」を確認します。この段階では、AI活用状況だけでなく、「キャリア不安・業務への影響・学習意欲・支援ニーズ」を把握することが重要になります。
2. 教育段階:職種や業務に合った学びを用意する
AI研修は、全員に同じ内容を提供するだけでは十分でない場合があります。職種や業務内容に応じて、具体的な活用例を示すことが重要です。
たとえば、営業部門であれば提案資料作成や顧客情報整理、人事部門であれば文章作成や調査分析、管理部門であれば定型業務の効率化など、実務に近い形で学ぶ機会を用意すると、活用につながりやすくなります。
3. 定着段階:使えているか、支援が届いているかを確認する
研修を実施した後は、「実際に業務で使えているか」「困っていることはないか」「部署や職種によって支援の届き方に差がないか」を確認します。また、AI活用が進む中で、従業員の不安やエンゲージメントがどのように変化しているかを見ることも重要です。
改善施策として考えられる取り組み
AI活用格差やキャリア不安に対応するためには、AI研修を一度実施するだけでは十分でない場合があります。たとえば、以下のような取り組みが考えられます。
- 職種や業務内容に合わせて、AI活用の具体例を共有する
- AIを使った業務改善事例を部署内で紹介する
- 競合他社や同業界の活用事例を定期的に収集する
- 外部のAI活用事例を社内勉強会で共有する
- 初心者向けの短時間勉強会を実施する
- AIを試せる安全な環境を用意する
- AI活用に詳しい社員に相談できる仕組みをつくる
- 低活用層を責めるのではなく、使いにくい理由を確認する
- 研修後に、実際の業務で使えたかどうかを確認する
- キャリア不安が高い層には、今後必要になるスキルや学習機会を伝える
- 管理職向けに、部下のAI活用を支援するためのガイドを用意する
AI活用支援は、情報システム部門だけでなく、人事部門も関わるテーマです。AIを使うための環境整備だけでなく、従業員が安心して学び、試し、自分の仕事にどう活かせるかを考えられるようにすることが重要です。
従業員意識調査・エンゲージメント調査でできること
AI活用格差やキャリア不安は、見えにくいテーマです。ツールの導入状況や研修受講率だけでは、従業員がどのように受け止めているかまでは分かりません。
リアルワンの「従業員意識調査」や「エンゲージメント調査」では、「AI活用状況」「キャリア不安」「会社の支援・教育の実感」「仕事への前向きさ」などを可視化できます。
さらに、調査結果を見て終わりにせず、「どの部署・属性に不安が出ているか」「どのような支援が行き届いているか」「どの項目から優先して改善すべきか」についてもご相談いただけます。
AI時代の人材・組織課題は、単にツールを導入するだけで解決するものではありません。従業員の意識や職場の状態を把握し、学びや活用を支える環境づくりにつなげることが重要です。
エンゲージメントサーベイ(エンゲージメント調査)の基本については、以下の記事も参考になります。
関連記事:エンゲージメントサーベイ(エンゲージメント調査)とは
まとめ
リアルワン株式会社の独自調査「働く人の仕事と職場に関する意識調査」では、仕事でAIを活用している人は19.2%でした。一方、活用していない・活用度が低い人は55.4%でした。
また、AI活用格差を感じている人では、キャリア不安を感じる割合が66.7%でした。
さらに、会社・組織によるAI支援・教育を感じている人では、エンゲージメントが高い人の割合が72.4%でした。
この結果から、「AI活用格差への受け止め方」は「キャリア不安」と関連している可能性があり、「会社・組織の支援や教育」は「働く人の前向きさ」と関連している可能性がうかがえます。
AI活用は、個人のスキルだけの問題ではありません。「職種や業務内容」「学ぶ機会」「相談できる環境」「会社としての支援のあり方」とも関係します。
人事部門には、AI活用状況だけでなく、従業員が抱える不安や会社の支援がどのように届いているかを確認し、調査結果を具体的な支援策につなげることが求められるのです。
よくある質問
AI活用格差とは何ですか?
本記事では、AIを活用できる人とできない人で、仕事の進め方や成果に差が出ている、または今後差が広がると感じられる状態を指しています。
AI活用格差はキャリア不安と関係しますか?
今回の調査では、AI活用格差を感じている人では、キャリア不安を感じる割合が高い傾向が見られました。ただし、一時点の意識調査であり、因果関係を示すものではありません。
AI支援・教育とは何ですか?
会社・組織が、AI活用に関する「研修・情報提供・相談機会・活用事例の共有」などを行っていると感じられる状態を指します。
AI支援・教育はエンゲージメントと関係しますか?
今回の調査では、AI支援・教育を感じている人では、エンゲージメントが高い人の割合が高い傾向が見られました。ただし、これも因果関係を示すものではありません。
人事部はAI活用格差にどう対応すればよいですか?
まずは、従業員の「AI活用状況」「キャリア不安」「会社の支援・教育の実感」を把握することが重要です。そのうえで、職種や業務内容に応じた「学習機会・相談できる場・活用事例の共有」などを検討するとよいでしょう。
AIを使っていない従業員に対して、どのように支援すればよいですか?
AIを使っていないことを責めるのではなく、使いにくい理由を確認することが大切です。「業務上使う場面が少ないのか」「使い方が分からないのか」「不安があるのか」を確認し、必要な支援を考えることが重要になります。
競合他社や同業界のAI活用状況も確認すべきですか?
確認した方がよいでしょう。自社だけを見ていると、AI活用がどの程度進んでいるのか判断しにくくなります。競合他社や同業界の活用事例を把握し、社内で共有することで、自社に合った活用方針を議論しやすくなります。
エンゲージメント調査では、AI活用に関する不安も確認できますか?
確認できます。エンゲージメント調査や従業員意識調査に、「AI活用状況」「AI支援・教育」「キャリア不安」に関する項目を加えることで、AI時代の職場課題を把握しやすくなります。
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従業員意識調査・エンゲージメント調査
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従業員満足度調査とエンゲージメントサーベイ(エンゲージメント調査)の違いについては、以下の記事でも解説しています。
関連記事:従業員満足度調査とエンゲージメントサーベイの違い

