「従業員満足度調査は意味がない」と言われる理由とは?実施にあたっての課題や注意点

従業員満足度調査は、社員一人ひとりの満足度を調査することで組織の現状と課題を把握し、満足度向上と組織の活性化を目指す優れた調査です。組織と従業員の活力を映し出す「経営指標」としても活用されています。しかし一方で、従業員満足度調査は「意味がない」「うまくいかない」といった声があるのも事実です。ではなぜ、そう言われてしまうのでしょうか。本記事では、「従業員満足度調査は意味がない」と言われる理由を考察すると共に、実施にあたっての課題や注意点を解説します。

本記事は、従業員満足度調査を実施(検討)している、次のような人事関係者に役立ちます。

  • 従業員満足度調査がうまくいかない原因を知りたい
  • 社員が「意味がない」と感じる理由を調べている
  • 実施する際の課題や注意点を理解したい
この記事を監修した人
青山 愼
青山 愼

立命館大学経済学部卒業。早稲田大学ビジネススクールでMBAを取得。在学中に、「組織学習」や「個人の知の獲得プロセス」に関する研究を経て、リアルワン株式会社を設立。企業や組織が実施する各種サーベイ(従業員満足度調査・360度評価・エンゲージメントサーベイ等)をサポートする専門家として活動。現在は累計利用者数が100万人を超え、多くの企業や組織の成長に携わる。

従業員満足度調査がうまくいかない根本原因

なぜ、従業員満足度調査がうまくいかないのか。その根本原因は、調査の本質が理解されていないことにあります。「何のために従業員満足度調査を実施するのか」という本質的な部分に対する理解が社内で共有できていないのです。

従業員満足度調査の本質とは、「社員・組織の状態把握」と「抽出した課題の改善」によって、社員の満足度を向上させていくことです。ここへの理解が進んでいない、あるいは間違って理解されてしまうと、本音が引き出せなかったり調査の実施が目的化したりしてしまい、従業員満足度調査が思うように機能しなくなるのです。うまくいかない従業員満足度調査は、社員のネガティブな感情につながり、ついには「意味がない」ということになってしまいます。次項では、この「従業員満足度調査は意味がない」と社員が感じる理由を細かく掘り下げていきます。

社員が「従業員満足度調査は意味がない」と感じる理由

では、社員が「従業員満足度調査は意味がない」と感じる理由を考察していきましょう。 

調査への理解が進まず本音が引き出せない

従業員満足度調査への理解不足は、たとえ匿名式の調査であっても、「個人が特定されるのではないか」「評価に反映されるのではないか」といった懸念を生みます。そのような中で、「異動したい」「上司とうまくいかない」「チームの雰囲気が悪い」「やる気が出ない」といった、ネガティブな「本音」の回答は難しいでしょう。このように、従業員満足度調査への理解が進まず本音を引き出せないことが、社員の「意味がない」という感情につながってしまうのです。 

調査の実施が目的化している

従業員満足度調査は、「実施」が目的ではありません。「やりっぱなし」では意味がないばかりか、従業員満足度調査の形骸化をまねいてしまいます。先に述べた通り従業員満足度調査は、社員の満足度を向上させることがその本質です。そのためには、従業員満足度調査から見えてきた課題を改善していくことが必要不可欠。調査の実施が目的化しては、「無難な回答」「建て前だけの回答」ばかりが集まり、結局「意味がない」と感じることになってしまうのです。 

結果のフィードバックがない

従業員満足度調査の結果は、ネガティブなものであっても必ずフィードバックを行いましょう。経営層や上層部が「結果を見て終了」では、それこそ「意味がない」のです。また、「この内容は見せない方がよい」「伏せておくべき」といった情報操作や忖度も、社員が「意味がない」と感じる大きな要因です。時間を使って回答した結果は、社員も気になるのが当たり前。結果のフィードバックは、必ず行う必要があります。「何のために従業員満足度調査を実施するのか」、このことは常に頭においておきましょう。 

実施後の改善ができていない

「調査の実施が目的化している」でも述べましたが、「やりっぱなし」では「意味がない」のです。従業員満足度調査を実施すれば、様々な課題が浮き彫りになります。その改善なくして、社員の満足度の向上はありえないでしょう。それどころか、モチベーションの低下につながりかねません。「やりっぱなし」は、「意味がない」につながります。調査の実施後は、改善に向けての「本気」を見せる。従業員満足度調査の実施は、経営層や人事関係者の姿勢も問われているのです。

従業員満足度調査“実施の課題”

従業員満足度調査がうまくいかない根本原因、そして社員が「意味がない」と感じる理由を考察しました。ここで、従業員満足度調査を実施する上での「課題」を整理してみましょう。

調査概要に対する理解の促進

見てきたように、従業員満足度調査が機能しない根本原因は、調査の概要が社員に理解されていないことにあります。社員の理解がなければ本音も引き出せず、モチベーションの低下をまねきかねません。社員に向けて、従業員満足度調査の意義・概要をしっかり周知する必要があります。「何のために従業員満足度調査を実施するのか」に対する共通理解をどう促進していくのか。従業員満足度調査を実施する上で、最も大きな課題といえるでしょう。 

心理的安全性の確保

社員が本音を回答できる「心理的安全性」の確保が必要です。従業員満足度調査のアンケートを分析しても、その結果が社内の実態と大きく掛け離れていては全く意味がありません。アンケートの回答方法には「記名式・匿名式」があり、それぞれメリット・デメリットがあります。どちらを採用するにせよ、アンケートの設計次第では、社員のネガティブな本音を引き出せない可能性があります。従業員満足度調査を実施するにあたって、社員の心理的安全性をどう確保するのか。これも大きな課題といえるでしょう。

適切な設問の設定

社員の本音を引き出し、その本音を組織の活性化に活かしていくためには、適切な設問を設定することも重要です。内容が抽象的でわかりにくい設問は、回答しにくいばかりでなく、課題の改善に反映することもできません。また、「〇〇という社員が当社の理想。あなたは〇〇ができていますか」といった誘導的な質問では、選択肢である「できていない」を社員は選びにくくなります。適切な設問の設定には、しっかり時間をかけると共に、設問に対する選択肢は奇数にするか偶数にするか(奇数選択肢の中間「どちらでもない」を設定するか否か)なども十分な検討が必要です。 

関連記事:従業員満足度アンケートとは?設問項目例・テンプレートもあり

定期的な実施

従業員満足度調査は、「定期的な実施」を意識することが重要です。なぜなら、「社員の満足度に変化はあったのか」「課題は改善されているのか」「社員のモチベーションは維持できているのか」といったことについては、継続的な「分析・検証」が欠かせないからです。従業員満足度調査は、「一度実施すれば終わり」ではなく、定期的かつ継続的に実施することを意識しておきましょう。社員の高い満足度を維持するためには、改善対策だけでなく「定期的な実施」も実施することで、より実態に即した調査をおこなうことができます。

従業員満足度調査“活用の注意点”

ここでは、従業員満足度調査を活用する上での注意点を解説します。  

実施目的・意味を明確にする

「何のために従業員満足度調査を実施するのか」に対する「解」である、「実施目的・意味を明確にすること」が最初の注意点です。ここが曖昧では、前述したような様々な弊害が起こり、従業員満足度調査が機能しなくなってしまいます。

従業員満足度調査を活用する際は『何のために実施するのか、その目的と意味』を次のように明確にします。

  • 社員の満足度をアップさせ離職を防ぐ
  • 仕事に対する社員のモチベーションを高める
  • 生産性を向上させ業績をアップさせる
  • 組織の課題を発見する
  • 働きやすい組織に向けて環境を改善する

以上のように、目的の明確化と実施への意味づけを行いましょう。実施目的・意味が明確になったら、社員に周知していきます。十分な周知を行うことが、調査に対する理解を深めると共に信頼関係の構築にも役立ちます。社員の本音を引き出す質問項目の作成のためにも、目的そして意味の明確化は欠かせないのです。

回答しやすいアンケートにする

回答しやすいアンケートにして、社員の時間的・心理的負担を軽減しましょう。設問を工夫することはもちろんですが、簡単に回答できる方法を取り入れると良いでしょう。回答のしやすさは、社員の心理的なハードルを下げ、本音を引き出しやすくしてくれます。さらに、個人を特定されにくくするために、アンケートの集計を外部機関に委託し社員の安心感を醸成することも、回答しやすい環境を整備する上での大切なポイントです。

設問の数にも注意する

回答しやすいアンケートを意識すると同時に、設問の「数」にも注意しましょう。「あれもこれも聞きたい」という気持ちはわかりますが、あまりにも多くの設問を設定すると、回答する社員の集中力が続かなくなります。加えて、回答の「集計・分析」にも時間がかかってしまうでしょう。だからといって、設問が少なすぎては調査の意味が薄れてしまいます。従業員満足度調査の実施目的にあった、適切かつバランスの取れた設問の数を意識することが重要です。 

調査結果を課題解決につなげる

従業員満足度調査の実施は、改善への始まりです。調査結果を課題解決につなげてこそ、従業員満足度調査は本当の意味を持ちます。調査で課題が明確になったら、必ず改善対策を立て実行する。「どの部分を具体的にどう改善していくのか」を検討し、改善に向けて行動していく。この繰り返しの中で、改善は目に見える形となっていきます。目に見える改善効果は、「調査結果が課題解決につながる」「アンケートへの回答は、しっかり反映される」といった社員の共通認識を育み、従業員満足度調査の継続的な取り組みを後押しする環境を作り上げていくのです。

質問項目の作り方

従業員満足度調査をより効果的なものにするには、「質問項目」が重要ポイント。質問項目の「質」が調査結果を左右するといっても過言ではありません。ここでは、質の高い質問項目を作るポイントを整理してみます。

【質の高い質問項目を作るポイント】

  • 調査の実施目的を定義する
  • 調査目的にそった質問項目を設定する
  • 質問項目は「多すぎず・少なすぎず」を意識する
  • わかりやすい表現にする
  • 選択肢のバランスに注意する(誘導するような選択肢を避ける)
  • 簡単かつシンプルを意識する
  • 公平で中立な立場を保つ

従業員満足度調査は、社員の満足度向上のためにあります。「何のために実施するのか」を忘れず、質問項目を作るよう心がけましょう。 

専門の調査会社による従業員満足度調査で組織を活性化!

従業員満足度調査は「意味がない」、そして「うまくいかない」と言われる理由を考察してきました。見てきたように、調査の「実施・運用」には多くの課題をクリアする必要があり、実務を担当する経営層や人事関係者にとっては、「実施・運用」自体が大きな負担となる可能性があります。社員の満足度向上のためにある従業員満足度調査が、一部の社員の負担やストレスになっては本末転倒。やはり「実施・運用」にあたっては、専門の調査会社に依頼する方が効率的であり、社員の心理的安全性を担保する上でもベターでしょう。

リアルワン株式会社は、100万人超の利用実績を持つ調査・評価の専門会社。科学的根拠に基づく信頼性の高い「従業員満足度調査(ES調査)」で、個人や組織の成長をサポートしています。「社員の満足度を向上させたい」、「組織を活性化したい」とお考えの経営者や人事関係者の方は、ぜひリアルワンのES調査をご活用ください。