「対話」から活路を見出す - 従業員満足度調査・360度評価のリアルワン株式会社 - 人と組織の成長を支援

従業員満足度調査

エンゲージメント調査

360度評価

その他サービス

事例・インタビュー

組織づくりコラム

リアルワンについて

お問い合わせ

お客様の声

2017.06.20

従業員満足度調査(ES調査)

「対話」から活路を見出す

日本ATM株式会社は、銀行、コンビニ等に設置されるATMの運用・管理業務で、日本トップクラスのシェアを誇るリーディングカンパニーである。しかし、その創業に至る経緯は、リストラ的意味合いからの独立(スピン・アウト)であった。社員の多くは「俺たちは必要とされていないんだ」と誇りを失い、「この先どうなるんだ」と言い知れぬ不安感で苦しんでいた。ある種、マイナスからのスタート。そこから僅か10年。今では業界リーディングカンパニーへと成長を遂げ、社員の満足度は高く、いきいきと働かれている。その過程で苦しみながら蓄積されたノウハウ、取り組みには、元気をなくした企業が学ぶべきところがたくさんある。日本ATM株式会社の鵜飼信久氏にうかがった。

Interviewee: 鵜飼 信久 氏
(日本ATM株式会社 企画本部 経営企画室室長)
Interviewer: 青山 愼 
(リアルワン株式会社 代表取締役)

御社の会社概要をご紹介下さい。

鵜飼

もともとはATM関連システムの販売・開発・保守という、NCR(正式名:日本NCR株式会社)の一部門でした。
NCRはグローバルベースで、ATM設置台数がNo1の会社です。
ただ、日本のATMは世界に流通しているものとは違った独特の機能を持っていますから、その機能の違いから、世界No.1の企業でありながら、メイン機種は国産メーカーからOEM供給を受けていたんです。自分たちで生産しないので、経費を削減するのはなかなか難しいわけです。したがって採算が合わない。
なんとかしなきゃならないということで、スピンオフしたというかスピンオフさせられたというか…。

なるほど。今はATM生産をされているのですか?

鵜飼

現在もしておりません。我々はATMの機械を開発、製造するつもりはなく、その後のビジネス、つまりATMの監視や運用サービスで日本ATMを立ち上げたんです。
ATMはご存じのようにセルフサービスです。銀行窓口の多くは3時で閉まりますが、ATMは誰もいないまま稼働しています。
なおかつ、中には多額のお金が入っているわけです。機械が安全に、且つ正常に動いているかを遠隔監視しているんです。
昨今は何かトラブルが起こると遠隔操作で直すことができる。
また、日本のATMは電話機が付いています。ということは電話をとる人が必要です。
つまり監視業務というのは、自動監視システムとコールセンターのことになります。
24時間365日、国内18万台のうち約5万2千台は弊社がサービスを行っています。

25%強ですね。このサービスの中で一番の業務は何ですか?

鵜飼

圧倒的にATM監視業務です。
その他、ATMソフトウェアの開発をやっています。
それから機械が壊れた時の保守サービス。
もう1つ大事な仕事というのが、ATM内に入っている現金の補充と回収です。
様子を見ながらお金を定期的に補充しなくてはならない。
時間外、店舗外での現金補充は警備会社様と共同でやっています。

ハード以外でATMがきちんと稼働する仕組の提供が中心なんですね。 お客様は?

鵜飼

99%は銀行様です。

社員は何名いらっしゃいますか?

鵜飼

全664名(6月末)です。
その他にコールセンターの派遣のオペレーターが840名います。
圧倒的に男社会ですね。
正確な数字は分からないですがオペレーターを除くと大体85%は男性です。

それは職種の関係でしょうか?

鵜飼

そうですね。保守や技術は男性ですからね。
ソフトウェア開発部隊は最近女性も増えてきていて、男女混在ですが、それでも80%は男性ですね。
あとは営業とか企画とか。昨今は女性の営業も増えていますが、元々はほぼ100%男性でしたから(笑)。
ただ、オペレーターの方は、圧倒的に女性ですね。男性もいらっしゃいますが、8:2の割合が逆転するくらいですね。

監視業務の国内シェアではトップにいらっしゃるとのことですが…

鵜飼

そうですね。我々の会社は独立から10年が過ぎたのですが、創業時はバブルがはじけたり、証券会社が倒れたりと、銀行は身軽にならなくてはならなかったので、そのあたりでうまくビジネスチャンスを掴めたということですね。
ただし、この先ATMが飛躍的に増えることは多分ないでしょう。
増えるところを考えると、コンビニ代表3社のうちローソンとファミリーマートには、実はまだ75%くらいしかATMが入っていません。
全部に入ると想定すると、4,000台強はまだ余地があります。そこは伸びるでしょう。
反対に、大手銀行さんの統合にともなって、店舗の統廃合が出てくると思いますので、そこで減ることになります。
つまり全体で考えたらATM監視業務は今後成長するビジネスではないということです。

業界のトップ、リーダー企業に成長されたわけですが、 今後はどのような展開を考えていらっしゃるのですか?

鵜飼

次の展開として銀行の営業店舗に対するビジネスを考えています。
最近では、銀行は預金を集めるところではなく商品を販売するところだという流れになりました。
投資信託も、保険商品も売れるようになりました。
「集める、貸す」だけではなく、営業店舗が「相談をしたり、販売する所」といったイメージでもう少し流通業っぽくなってくるだろうと。
そこにはいろんなビジネスがあると思います。

今までに培われたATM運用ノウハウや人材を 店舗で活かすことができるのではないかということですか?

鵜飼

そうです。それともう1つは、中国市場ですね。まだまだ発展地域ですから。

貴社のホームページにありますように、創業当時から社員満足を 重視されていらっしゃったとのことですが、 それはなぜですか?

鵜飼

NCRから独立したというと聞こえが良いですが、つまりリストラされた会社です。採算性が良くなかった部門が独立したわけです。
前向きにやらなくてはいけないというのはありましたが、社員の気持ちから言えば、ビジネスがまだ成功していないわけですから、しょげる気持ちの方が大きかったわけです。正直言ってその気持ちが強かったでしょうね。
だから創業期から社員に対する満足度をあげるために色々なことをやりました。
当時はそんなにお金に余裕があったわけではないですけど、注力してきました。

社員様にすれば、利益採算の面からリストラされたという 印象を受けてしまったということですか?

鵜飼

そうです。当時の社長も正直にそのメッセージは出していましたから。
ただ、我々はこうやっていこうとビジョンも伝えていたわけです。

なるほど。最初は社員満足を重視する姿勢を示さなければならない 理由があったということなんですね。 HPを見ますと2001年頃から調査も始められていらっしゃいます。

鵜飼

そうですね。社員の満足度というよりも、対話することを重要視しています。
当時は350名くらいでしたし、10年前と今ではビジネスモデルも変革しています。
その中でも、対話をしていかなければならないというのは一貫していますね。

対話を重視しようと思われたきっかけは何ですか?

鵜飼

やっぱりさっきの、元々は社員の気持ちとしてはリストラされた会社だということ。
もう一つはリストラされたということで一人ひとりが持っている感情を前向きにさせるために、経営陣としてはどういう施策を打つかと考えた時に、できるだけ対話でやっていくのが良いだろうと。
幸いなことに、会社もそんなに分散していなかったので、頑張れば会話ができる。
だから色々な通達を出すだけではなくて、対話をして行こうと。
正社員、契約社員、シニア社員、派遣社員、出向社員等々、色々ですから、様々な対話をしていこうと試みています。
人事政策としては、役割評価主義です。制度としては短期的(1年間)な個人業績目標を毎年設定する。
もう1つは成長、育成に主眼を置いたコンピテンシー(期待される役割の発揮具合)評価制度があります。
四半期ごとにマネージャーはヒアリングをしてフィードバック・コーチングをしなくてはいけない。そういう制度的なことがあります。
もう1つ、自己申告制度があります。これは、自分はこういうことをやってみたいという制度ですよね。
それ以外に年初にキックオフ会議を行い、全社員に対して年度方針とか、昨年の業績説明などを行います。
ただコールセンターなどは24時間365日対応する人が必要ですので、全員が一度に出席することが出来ません。
ですから、キックオフといっても今までは東京で2回、大阪で2回に分けて行っていました。
今年はちょっとやり方を変えて、東京で3回にしました。去年は十周年だったので、中学生までのお子さんと奥さんを対象に家族同伴で東京ディズニーランドに一泊二日で招待しました。
大阪はUSJ。近くのホテルでビジネスミーティングして、食事会をして。そして一泊してもらい、次の日は入場券渡して(笑)。
次に「中野です」というコラムです。これは社長の中野がイントラに毎月出しているものです。投稿もできるようにしています。
あと、昨年からの試みですが各本部長持ち回りで月に3人ずつ、年に四回コラムを出しています(笑)。
次に全体会議。年に1回は全社全体でやりますが、それ以外に四半期に一回は各本部別会議をやることにしています。

すごいですね。

鵜飼

バランススコアカードも毎年やっています。
既に4,5年は続いています。
中身はおわかりだと思いますが、いわいる利益以外の目標を発表する。
四半期ごとに結果の発表をしています。
中身も毎年1月にどんどん変わっていきます。

結果のレビューもされているのですか?

鵜飼

やります。
もちろんキックオフでも、会議でもフィードバックしています。
上の人にとってはこれも個人目標の一つなんです。
きちんと行っているかを管理し、スコアリングする。
下の社員たちにとっては、指針になりますよね。

それもホント、コミュニケーションのツールですね。 自分の目標として降りてくるというか、すごく可視化されているということですね。

鵜飼

そうです。それから、去年から始めたDNA研修。キャリア採用の方に向けた実務教育です。
コミュニケーションを図ることを念頭に置いてやっています。
社歴が長い我々が気づかないことに対して、キャリアの方からの意見やアドバイスをもらえることもあります。

DNA研修では、どんなことをされているのでしょうか?

鵜飼

本部長レベルの者が、自分が育ってきた過去だとか、そこから何を考えてどうしているか、経験談だったり仕事に対する心構えだったりモットーだったり、ビジネスリザルトとは違ったものを30分ほどプレゼンしてそこからディスカッションして意見を引き出していくというもので、長くても半日くらいです。
この研修で、本部長や上の人とコミュニケーションを早い時期にとれるということは、双方にとって良いことではないでしょうか。
キャリアの方から見れば、全体ミーティングと違って、キャリアの方の横串なので、絆というかそういうのも生まれるようです。

あと、貴社のVOA(Voice of Associates)という活動は何でしょうか? 年間20回程行われているというのも気になるのですが…。

鵜飼

年間20回というのは、大体10月、11月くらいに、各部署に社長ないしは副社長が出向きます。
夕方くらいに出向いて、話をして、通常であると軽く缶ビールを飲みながら話をするという感じですね。

これはどういう経緯で始められたんですか?

鵜飼

VOAは歴史が長いんです。キックオフは1月とか2月とかですよね。
で、秋口にかけて当年度業績の予測とか今後の方向性などを話します。
まあ昔は人数も少なかったので、みんなの様子や顔色を見ておいた方がいいんじゃないということで始めました。

では、次年度に活かそうということと、社員の様子を確かめようということですか?

鵜飼

そうですね。どちらかというと、話を聞くという感じですね。
VOAの実施は、小さな単位でやりますから20回くらいになりますね。時間は2、3時間くらいですけど。ただ、VOAは部署単位なので、どうしても意見に偏りが出てきます。
そこで、色々な部署の社員を混ぜて10人くらいの単位で月に2度、「いろりの会」というのも東京と大阪で行います。
これは、社長の中野しか出ません。中野と10人です。
ただ、全員回るのに2年間かかります(笑)。去年の春から始まったので、まだ半分終わったか終らないか…。

社員の皆さんの反応は如何ですか?

鵜飼

どうしても不平不満とかになりがちなので、「10年後になにをやりたいか?」をテーマとして出すんです。
それ以外の意見とかは中野が全部書き出します。
その場で答えられるものは答えますが、無理なものは各本部長や役員に渡して、それに対するコメントを書かせて、それらは全部公開しています。

意見というと?

鵜飼

小さいことから大きいことまであります。
それは全部、個人名を伏せてイントラに出します。中にはアクションを伴うものもあるわけです。
たとえば小さなところだと、ドアのカギが壊れたとか。それだと何時までに直すと回答をしたり。
アクションがきちんと行われているかどうかを管理しなくてはいけないのが大変ですよ(笑)。

そうですよね。放っておいたら意見が出てこなくなりますもんね。

鵜飼

「いろりの会」はオフィシャルな時間にやります。
できるだけそういった時間を利用して、大阪の人は東京に来てオフィスの見学をしたり、反対に東京の人は大阪に行ったりしています。

実施の成果はどう感じていらっしゃいますか?

鵜飼

あると思っています。社員満足度調査は、過去からの推移を見たいので、基本的には項目を変えずにずっとやっています。
そして、「いろりの会」や色々な試みを通してスコアは上がってくるだろうと考えます。スコアリングはちゃんと公開します。
その他としては、参加型でバーベキュー大会や家族参加で東京湾花火大会。去年初めてだったんですけど。
奥さんとかお子さんとかに夕方来て頂いて、テーブルディナーじゃないですけど、ピザをとったりして。
去年は150名くらい集まりました。後は、誕生日休暇。
それからリフレッシュ休暇制度は夏に限らず年中いつでも約1週間取って良いことにしています。後、ファミリー休暇。
これは年次休暇じゃないのですが、「明日女房の誕生日だから休みます」とか「明日子供の運動会なんで休みます」とかね(笑)
ファミリー休暇は今年の3月から始めましたけど、誕生日休暇はもう1年経ちました。
取得率は相当高いんじゃないですかね(約70%取得)。
あとは家族を招待して、職場見学会も去年やりましたけど、これらは社員の声からですね。

職場見学会は社員の方からやりたいと言われたんですか?

鵜飼

そうです。DNA研修もキャリアの方からの声を拾った結果出来たものです。

ここまで説明して頂いて、 一貫しているのはやはり最初に戻りますが「対話」ということなのでしょうか?

鵜飼

そうですね。色々な試みを通して普段しゃべれない社員とコミュニケーションをとることが出来ますからね。
満足度調査の結果を見ると、何が良かったかは分かりませんが、いろんなことが貢献してきているということが分かります。
もちろん会社の業績の良し悪しの影響が出ることは出ます。それはしょうがないですよね。

ご提示頂いた過去の調査結果を拝見すると、軒並みスコアが上がっていますね。

鵜飼

逆に言うと、何かを試みて実施すると満足度は上がるんだなということですね。

御社では毎年調査をやられているとのことですが、 どんなスケジュールで実施されているのでしょうか?

鵜飼

11月半ばから約3週間、12月頭までです。回答自体に時間はかかりません。
ただ、書きたい人は全ての項目に対して意見が付けられるようになっています。
個人が特定出来るものや誹謗中傷以外のものは、基本的にイントラで回答を出しています。
その準備に12月中旬から1月中旬位までかかります。それから公開です。

では、1月中旬のキックオフ後に「去年はどうでした」と発表するわけですか?

鵜飼

全部のコメントが出せるかどうかは分かりませんが、できるだけキックオフのときには出したいと思っています。

やっぱり「対話」をする、結果を公表すること、「やるべきこと」「やれること」を きちんと公表することが大事ということなのでしょうか?

鵜飼

そう思ってやっています。

振り返ると10年にわたって満足度を高めようとされてきたわけですけれど、 それは御社にどんな影響を及ぼしたと思われますか?

鵜飼

風通しの良さですね。それは間違いないと思います。
ただ、この先、組織の規模に合わせて何らかの工夫変更をしていく必要はあると思います。
対話方式だけだと限界が出てくるだろうと考えます。
じゃあそれに代わるものって何があるのかと問われると、まだ模索中です。

なるほど。風通しを保つことは、具体的にどのようなところに役立つのでしょうか?

鵜飼

経営者側から見ると、分かり易いということですね。
人が分かるというのは経営にとっては重要なことですからね。

最後に、満足度調査をされるにあたって大事なことは何だと思いますか?

鵜飼

それは「継続性」と「フィードバック」ですね。 評価フィードバックは6年目です。

日本ATM株式会社 (ATM Japan Ltd.)

業種:電気機器

従業員数:618名(2008年12月31日現在)

サービス名:従業員満足度調査(ES調査)

SNSでシェア

03-6222-8741

[営業時間] 9:00~18:00